「サービスの安定稼働と安全・安心を大前提に、レコメンドエンジンやスコアリングの質を高めて
お客様の価値向上やオンリーワンの出会いをサポートできるよう、AWS のサービスを積極的に活用していきます。」

恩田 拓也 氏 株式会社エウレカ Head of SRE

日本、台湾、韓国で恋愛・婚活マッチングアプリ『Pairs(ペアーズ)』を展開する株式会社エウレカ。2008 年の創業以降アマゾン ウェブ サービス(AWS)を使い続ける同社は、デーティングサービスに重要な安全・安心を確保するためのセキュリティの確保や内部統制を AWS の機能を使って実現しているほか、Amazon ECS と AWS Fargate を使ったコンテナ技術で、インフラの有効活用と開発の迅速化を実現しています。


「かけがえのない人との出会いを生み出し、日本、アジアにデーティングサービス文化を定着させる。」をビジョンに掲げるエウレカは、1,000 万人(2019 年 1 月現在)以上が利用する国内最大級の恋愛・婚活マッチングアプリ『Pairs』を運営し、東アジアを中心にサービスを展開しています。「Pairs は日本で、MAU(Monthly Active Users)と売上ベースでトップを維持しています。また、新しい『Pairs エンゲージ』というサービスは独身証明書などの提出による入会審査で安心・安全に結婚意志の高いお相手と出会える仕組みとなっており、こちらもシェアを拡大していきたいと考えています。」と、同社の SRE Team 責任者を務める恩田拓也氏は語ります。

インフラに AWS を活用している理由を、同氏は 3 つ挙げます。「クラウドサービスプロバイダの最大手で Web サービスにおける活用事例が豊富に存在すること。次に、マネージドサービスを積極的に利用することでインフラ管理の手間を省きつつ柔軟なキャパシティ調達ができ、開発者が開発に集中できること。そして、リザーブドインスタンスなど購入オプションや、スポットインスタンスとオートスケーリングの組み合わせなど、コストを抑えるための手段が豊富に存在することです。」

「私たちは Pairs を『人のライフステージを変えるサービス』と考えています。日本国内では、いわゆる“出会い系”と混同され、ネガティブなイメージを持っている方もまだいらっしゃるので、『オンラインデーティングサービス』としての地位を確立するには『安全・安心』が最も重要になると考え 24 時間 365 日のオペレーター常駐体制を整えています。さらにコミュニケーションの行き違いやトラブル、サービスの使い勝手などでお客様が不快に思われないように、カスタマーケアチームが問題を迅速に拾い上げられる体制や、ユーザーが不適切な行動などを行っても自動検知できる仕組みを作ってきました。」(恩田氏)

また、ユーザーのプロフィールなどの個人情報やユーザー同士のメッセージなどを扱うため、セキュリティには非常に気を使っています。さらに 2015 年からは米国 NY に本拠地を置く NASDAQ 上場のインターネット企業である InterActiveCorp(IAC)グループに参画し、IT の内部統制にもより一層注力する必要が出てきました。「セキュリティや内部統制は非常に重要ですが、お客様へのサービス価値提供のための開発と対立構造になるべきではありません。どうやって両立できるかを考えながら AWS のサービスを積極的に利用しています。」(恩田氏)

エウレカでは、マスターアカウントを中心にマネージド型脅威検出サービスの AWS Amazon GuardDuty で脅威検知を行ってセキュリティのベースラインを確保。また、インターネットに露出しているすべてのアプリケーションロードバランサーに AWS WAF や AWS Shield Advanced を標準装備し、管理やメンテナンスの手間を省くために AWS WAF マネージドルールを使って保守コストを抑えながら、セキュリティ品質を高める努力をしています。「AWS のサービスを活用することで、広い範囲を少ない手間で守ることができます。オンプレミスの WAF などはメンテナンスや管理に手間がかかりますが、AWS なら導入コストも適切で手間もかかりません。」(恩田氏)

サービスが成長して行く中で、インフラにもさまざまな機能追加や工夫を行ってきたと、Head of Development の森川拓磨氏は説明します。「ユーザー数が増え、広告や露出が増えていくにつれてトラフィックの増減が予測しづらくなる一方、新たな機能の追加や機能のリッチ化も求められます。その中でも開発速度を落としたくないため、変更を迅速に適用できるコンテナ技術を使おうと考え、Amazon ECS と AWS Fargate を活用しています。コンテナ化によって機能別に小さく作ることが可能となり、ビルドやデプロイを迅速に行うことができるようになりました。」

さらに、シニアエンジニアの山本真嗣氏も付け加えます。「開発やデプロイに時間を費やしていると、機能を試せる回数が少なくなってしまいます。以前は大規模な修正を行うとテストなどに時間がかかっていましたが、コンテナ化によって気軽に試して修正することが可能になり、サービス改善によい影響が出ていると思います。」

マッチングアプリのユーザーにとって最高の体験は“よいお相手を見つける”ことにあり、おすすめの相手をレコメンドする精度がサービスの満足度に直結します。エウレカでは、蓄積されたマッチングの傾向などをベースに、30 項目以上のプロフィールや Pairs 内で参加しているコミュニティなどの情報をもとに、相性度をスコアリングしてレコメンドに活用。しかし、全ユーザー×全ユーザーで計算を行うと、計算量が膨大なものとなります。また、プロフィールや趣味嗜好は変わっていくため、1 度計算して終わりではなく、ユーザーの増減や行動変化を常に拾っていかなければなりません。そのため従来のバッチ処理ではなく Amazon DynamoDB や AWS Lambda で Amazon SQS を使って膨大な計算を滞りなく行えるようにし、レコメンドの精度を高めています。

また同社は、AI を使った画像処理もマッチングサービスに活用しています。「メッセージのやり取りや嗜好ベースでのマッチング以上に、顔写真は重要な情報といえます。Amazon Rekognition を使って好みに近い顔を検出してレコメンドに反映するなど、マッチング率の向上に向けてさまざまな改善をしています。」(恩田氏)


 

AWS のサービスのアップデートの速さを評価していると山本氏は語ります。「自前で作ると時間がかかってしまうようなものも、AWS のサービスを使ってすぐに利用できるのがいいですね。また、新しい機能をユースケースベースで相談でき、よりよい提案も行ってくれる点も助かっています。」

エウレカで活用している AWS のサーバー台数とコストは、2014 年と比較して約 4 倍に増えています。2016 年 4 月にエンタープライズサポートの利用も開始。

「AWS は技術的な相談はもちろん、コストの抑え方も親身になって話してくれるので助かっています。引き続き、サービスの安定稼働と安心・安全を大前提に運営し、レコメンドエンジンやスコアリングの質を高めてお客様の価値向上やオンリーワンの出会いをサポートできるよう、AWS のサービスを積極的に使っていきたいです。」と語る恩田氏は、現在は東アジアを中心に提供しているサービスを将来的に東南アジアに展開する場合、アジア圏の AWS リージョンも活用していきたいと、さらなる期待を示しました。

恩田 拓也 氏

森川 拓磨 氏

山本 真嗣 氏



AWS が提供するコンテナ関連サービスに関する詳細は、AWS でのコンテナの詳細ページをご参照ください。