freee株式会社は、「経営者が創造的な活動にフォーカスできる」ことを目指し、「全自動のクラウド会計ソフト freee (フリー) 」 のサービスを 2013年3月19日に開始しました。

「freee」は簿記の知識がなくても簡単につかえる個人事業主や中小企業のためのクラウド会計ソフトで、銀行やクレジットカードの web 明細を自動で取り込み、記帳を自動化する新しいタイプの会計ソフトです。2013年12月には20,000を超える事業所にご利用いただいています。

2012年7月に創業して開発を開始し、2012年11月に「freee」β版のリリースを行った当初は、他社の PaaS を利用していました。最速でアイデアの実現性を検証する環境として当時利用していた PaaS は非常に有効でしたが、実際のプロダクトを運用する際には、会計ソフトに求められるセキュリティを考慮すると別の環境に移行する必要があると感じていまし た。しかし、前例のないクラウド会計ソフトを最速でローンチするために、限られた時間、資金、人材で、いかにクラウド会計ソフトとして求められるセキュリ ティを担保するかという課題がありました。

そこで検討したのが AWS でした。AWS であれば、ファイアウォールや通信の暗号化、データのバックアップ、監視などを踏まえた柔軟なシステムアーキテクチャの構築が可能でありながら、自社で物 理的なサーバーを管理するコストがかからないため、最小限の構成からスタートできることがわかりました。サービスの正式リリースの1ヶ月前から本格的に検 討を開始しましたが、その時点で社員はまだ3人で、全員が 100% プロダクト開発にフォーカスするソフトウェアエンジニアだったので、いかにインフラ環境の整備に時間をかけずにセキュリティを担保した環境を構築するかと いう点を最も重視しました。

AWS の採用を決定した理由は、Amazon VPC を使うことで自由なネットワーク構成を作成できること、Amazon EC2 に加えて Elastic Load Balancing, Amazon S3, Amazon RDS, Amazon Route53, Amazon SQS といったシステム構築に便利なパーツが揃っていて、それぞれセキュリティグループで簡単にアクセス制限ができ、スケーリングの手間がかからないこと、簡単 な設定でデータのバックアップや監視ができること、そして API を利用して構成管理の自動化が容易なことでした。

導入決定から、システム構築、リリースまでの期間の短さも特筆すべきポイントです。AWS で Amazon VPC を構築することを決めてから APN パートナーの cloudpack 社に設計・構築の詳細を相談したのが、正式リリースの2週間前でした。Amazon EC2 はすべて Linux 環境で構築し、Trend Micro 社の Deep Security の導入を含めたサポートを受けながら1週間で実装を完了することができました。残りの 1週間でアプリケーションの構築とテスト/デプロイの自動化や検証を行いました。並行して国際的な認証である TRUSTe による認証を取得することで、セキュリティに関しても信頼性のあるシステムを最短で構築することができました。

cloudpack 社のサポートもあり、この 2週間程の間でセキュリティを担保したうえで、運用も最小限の開発エンジニアでまかなえる環境を構築できました。

 

 

 

「freee株式会社様 システム構成図」


freee_diagram

AWS を使うことで、物理的なサーバーやネットワークといったインフラレベルでのセキュリティや、データの安全なバックアップの仕組みを素早く用意することがで きたため、開発チームはアプリケーション層でのセキュリティにフォーカスすることができました。金融機関にもとめられる FISC 基準を満たした運用が AWS で可能であるというレポートが日本の大手 SIer から発表されたことも追い風でした。

また、AWS を利用する以前は海外にサーバーを持つ PaaS サービスを利用していたため、AWS の東京リージョンを利用することによってレイテンシーも抑えることができました。

システム全体の詳細な可用性の監視/記録には Zabbix を使用しており、サーバーやアプリケーションのログは Fluentd でログ集約サーバーに集められます。障害発生時やパフォーマンス低下時には即座にインスタンスタイプを上げたり AMI を複製してボトルネックを解消し、原因を特定してサービスを継続できるため、サービスの可用性が大きく向上しました。

こうしたメリットによりリリースから8ヶ月で20,000を超える事業所にご利用いただいており、新規に利用される事業所の数も毎月劇的に増加しておりますが、サービスの提供は問題なくできています。

最近では、AWSに詳しいインフラエンジニアもジョインし、監視を強化するとともに、耐障害性やスケーラビリティを担保するための運用コスト削減を 狙って、これまで Amazon EC2 上で運用していた Redis サーバーを Amazon ElastiCache へ移行しました。リザーブドインスタンスを活用したコストダウンや、ビジネスメトリクスの収集・分析を行うためのデータウエアハウスとして Amazon Redshift の活用も行っています。

創業直後のスタートアップにはインフラ専属のエンジニアが不在で、開発エンジニアがインフラの構築・運用を兼任することが多々あるかと思います。構 築・運用コストを最小限に抑えつつ厳しい可用性やセキュリティをクリアすることが求められる中で、AWS を使えばインフラの可用性やセキュリティを AWS に任せることができ、開発エンジニアはサービス開発に集中することができます。さらに API を利用することで、いつもの言語、いつものバージョン管理ツールでインフラの管理ができ、開発と運用の垣根を意識することがなくなります。後にインフラ担 当者がチームに参加してからもシームレスに育てることができるため、AWS は顧客とチームが急拡大するスタートアップの開発環境に不可欠であると考えています。

 

 

- freee株式会社 取締役/ソフトウェアエンジニア 横路 隆 様

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