3 か月
1 人月、2.5 人月
グループとして一貫性を保った IT インフラの構成
VMware Cloud on AWS に関するノウハウの獲得
概要
富士フイルムグループの IT 戦略策定・企画・構築・保守運用などを担う富士フイルムシステムズ株式会社。各種システムのクラウド移行を支援する同社は、外部のデータセンターで運用していた VMware vSphere 環境のサーバー基盤の移行先としてアマゾン ウェブ サービス(AWS)の VMware Cloud on AWS を採用。43 台の仮想サーバーの移行を、3 か月の短期間で終えました。共通基盤上で運用を開始したシステムは、移行直後から安定稼働を続けています。
課題 | 企業統合により 5 か月後までにサーバー基盤統合が必須に
「ヘルスケア」「マテリアルズ」「ビジネスイノベーション」「イメージング」の 4 つの事業領域で商品・サービスを提供している富士フイルムグループ。現在、DX ビジョンに“イノベーティブなお客様体験の創出と社会課題の解決”と“収益性の高い新たなビジネスモデルの創出と飛躍的な生産性向上”を掲げ、「製品・サービス DX」「業務 DX」「人材 DX」の 3 つを推進しています。
3 つの DX を支えるのが IT インフラで、富士フイルムシステムズはセキュアかつ柔軟で強靱なインフラを構築・運用する役割を担っています。グループの IT インフラは、1997 年から自社データセンターの運用を開始し、2009 年には VMware vSphere によるサーバー仮想化、さらに 2017 年には VMware vSphere のプライベートクラウドへの拡張を行いました。2014 年頃からは AWS をはじめとするクラウドサービスの利用を始めており、現在は自社データセンター、プライベートクラウド、クラウドサービスを運用しています。
同グループでは、IT インフラのクラウド戦略としてクラウドネイティブへのシフトを掲げています。「データセンターで運用しているシステムは、過渡期としてプライベートクラウドにリフトし、そこからクラウド移行によるモダナイズを目指します。新規で構築するシステムのクラウド推進と並行して、プライベートクラウド上で運用している既存システムをネイティブクラウドへ移行し、将来的にはマルチクラウド化とサーバーレスを実現します」と語るのは、アプリケーション統括部 基盤技術部 部長の榎本啓氏です。
M&A による企業統合により、合併先のデータセンターの VMware vSphere 環境で稼働する業務システムを、富士フイルムグループのサーバー基盤に統合するプロジェクトが立ち上がりました。しかし、ハードウェアの更新期限により、移行期間は 5 か月しかありません。加えて、リスクを避けるために移行元のシステム基盤やアプリケーションに手を加えないことと、移行時のサーバー停止は週末のみとする要件がありました。
短納期で移行しながらも、セキュリティやガバナンスを含めてグループとして一貫性を保った IT インフラを構成できたことが最大の効果です”
榎本 啓 氏
富士フイルムシステムズ株式会社 アプリケーション統括部 基盤技術部 部長
ソリューション | 既存環境を踏襲できる VMware Cloud on AWS を選択
移行先を検討した富士フイルムシステムズは、既存の自社データセンター、プライベートクラウドと比較した中から VMware Cloud on AWS の採用を決めました。アプリケーション統括部 基盤技術部の湯淺愛氏は「VMware Cloud on AWS であれば、グループの設計環境やセキュリティ基準を踏襲できることと、保有する AWS アカウントを使って自社データセンターとのアクセス経路が確立できることが決め手となりました」と語ります。
2022 年 5 月から 2 か月の検討期間を経て、7 月よりプロジェクトを開始。約半月で VMware Cloud on AWS の環境を構築した後、毎週末を利用して 43 台の仮想サーバーを 8 回に分けて移行し、3 か月間で全サーバーの統合を実現しました。
プロジェクトのポイントは、既存のインフラ設計を利用したことと、VMware vSphere 環境で利用しているバックアップツールの Veeam Backup & Replication を用いてバックアップの運用環境を設計したこと、さらに仮想サーバーの移行においても同じバックアップツールを利用したことにあります。
VMware Cloud on AWS と広帯域、低遅延で接続可能な Amazon Virtual Private Cloud (Amazon VPC) である Connected VPC と、移行元のデータセンターの間をAWS Direct Connect でつなぎ、移行元のシステムコピーを Connected VPC 上のバックアップサーバーに転送し、VMwareCloud on AWS の Software-Defined Data Center (SDDC) にリストアする形を取りました。AWS Direct Connect により移行元データセンターと Connected VPC 間のネットワークは安定しており、さらに Connected VPC と VMware SDDC 間の通信が非常に速く、想定より短時間で移行することができました。
今回のプロジェクトは、構築で 1 人月、移行で 2.5 人月と大きな工数をかけることなく進行できました。アプリケーション統括部 基盤技術部 サーバ基盤グループ グループ長の佐伯修良氏は「データ移行に関する AWS の知見と、私たちが持つVMware vSphere 運用に関する実績を組み合わせることで、難しいプロジェクトをスケジュール通りに完遂することができました。加えて、VMware Cloud on AWS のノウハウを得ることもできました」と語ります。また、プロジェクトの中で確認事項がある場合、VMware サポートデスクはチケットベースでのサポートに加えて、チャットでも気軽に日本語で質問する環境を提供していることもスムーズなプロジェクト遂行に寄与しました。アプリケーション統括部 基盤技術部の鈴木治仁氏も「これまでのサーバー移行といえば、ハードディスクをデータセンターに持ち運び、そこからデータを吸い出してクラウドに移行する形でした。そのため、移行時間やシステム停止時間に長時間を要していましたが、今回はネットワークを介することで短期間かつ少ない工数で移行できました」と語ります。
導入効果 | 若い社員数名の手で 3 か月の短期移行を実現
VMware Cloud on AWS に移行した業務システムは、安定稼働を続けています。バックアップサーバーは Connected VPC 上に構築した Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2)上で運用し、バックアップデータは Amazon Simple Storage Service (Amazon S3)に保存しています。
今回の VMware Cloud on AWS への移行により、M&A で取得した他社のサーバー基盤を、富士フイルムグループの運用ポリシーに準じて統合できました。
「短納期で移行しながらも、セキュリティやガバナンスを含めてグループとして一貫性を保った IT インフラを構成できたことが最大の効果です。今後も M&A 案件が発生する可能性が高く、外部のサーバーを統合する機会も増えてくると思われます。その際も今回のノウハウを活用してプロジェクトに臨めます」(榎本氏)
今後も、自社データセンターで運用しているシステムを状況に応じて VMware Cloud on AWS に移行するとともに、VMware Cloud on AWS 上で稼働しているシステムをネイティブな AWS 環境に移行していく考えです。
「クラウド戦略において VMware Cloud on AWS は、プライベートクラウドと同列の位置付けとなるため、順次ネイティブな AWS に移行し、スケールや BCP 対策などクラウドサービス本来のメリットを享受していきます」(榎本氏)
グループの IT 戦略会社として、IT インフラを支える富士フイルムシステムズ。現在も研究所が利用する High-Performance Computing(HPC)を AWS 上に移行するなど活用範囲を拡大中で、今後も DX 活動を強力に推進していきます。
カスタマープロフィール: 富士フイルムシステムズ株式会社
富士フイルムグループにおける IT 活用の企画・設計と構築・運用をリードするシェアードサービス会社。富士フイルムグループのグローバルなバリューチェーン全体を事業領域として、個々のビジネスや地域特性を踏まえ、日々進化するテクノロジーを活用し、最適なソリューションを提供している。また、IT を通じて富士フイルムグループ全体のオペレーションの高度化を支援している。
榎本 啓 氏
佐伯 修良 氏
鈴木 治仁 氏
湯淺 愛 氏
ご利用中の主なサービス
VMware Cloud on AWS
ソフトウェアのクリエイターである VMware と、パブリッククラウドのリーディングプロバイダーである AWS が、完全にサポートし、すぐに実行可能なサービスとして、コンピューティング、ネットワーク、ストレージの機能を組み合わせたマネージドサービスを提供し、ビジネスの変革目標を加速させます。
詳細はこちら »
AWS Direct Connect
AWS Direct Connect クラウドサービスは、AWS リソースにつながる最短のパスです。ネットワークトラフィックは転送中に AWS グローバルネットワークに残り、公開インターネットにアクセスすることはありません。
詳細はこちら »
Amazon EC2
Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、極めて幅広く、詳細な機能を提供するコンピューティングプラットフォームを提供します。
Amazon S3
Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) は、業界をリードするスケーラビリティ、データ可用性、セキュリティ、およびパフォーマンスを提供するオブジェクトストレージサービスです。
詳細はこちら »
今すぐ始める
あらゆる業界のさまざまな規模の組織が AWS を活用してビジネスを変革し、日々ミッションを遂行しています。当社のエキスパートにお問い合わせいただき、今すぐ AWS ジャーニーを開始しましょう。