252 台の AWS Snowball Edge を活用し
25PB の大容量データ移行を約 2 年で完遂

2022

総合通信事業者としてさまざまなネットワークソリューションを提供する KDDI株式会社。同社は、モバイル通信サービスの au ユーザーに提供しているストレージサービスにおいて、バックエンドのシステムをオンプレミス環境からアマゾン ウェブ サービス(AWS)に移行しました。ストレージデータの移行では、物理アプライアンスを用いた AWS Snowball Edge を活用し、約 2 年で 25PB の大容量データの移行を完遂。AWS への移行と合わせてストレージの階層型最適化機能の有効化を合わせることでお客様の体感を損なわずに運用コストを約 50% まで抑制しています。

AWS 導入事例  | KDDI株式会社
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AWS 採用の決め手は、移行支援プログラムの AWS Migration Acceleration Program(MAP)を活用して、計画立案フェーズの段階で技術的な価値やコストメリットが見えたことです。当初は無理だと思っていた 25PB の大容量データの移行も、AWS Snowball Edge を使った PoC によって実現できると確信できました

築嶋 健輔 氏
KDDI株式会社 
技術統括本部 エンジニアリング推進本部 副本部長

ストレージサービスの柔軟なリソース拡張に向けて AWS へ移行

「豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献する」を理念に、国内外でモバイルとインターネットサービスを中心とした事業を展開する KDDI。AWS とはユーザーとしてクラウドサービスを利用する関係の他、au の 5G ネットワーク内において、超低遅延アプリケーションの構築を可能にする AWS Wavelength を提供するなどビジネス面でも連携しています。

今回、KDDI が AWS に移行したのは、au ユーザーに提供している『データお預かりサービス』のプラットフォームです。データお預かりサービスとは、スマートフォンで撮影した写真や動画、アドレス帳、カレンダーなどを保管するストレージサービスで、au スマートパス / au スマートパスプレミアム会員であれば 50GB まで、非会員でも 1GB まで利用できます。

2012 年のサービス開始以来、オンプレミス環境で運用してきたデータお預かりサービスは、ユーザー数の増加に伴い、サーバーやストレージリソースの最適化が求められていました。技術統括本部 エンジニアリング推進本部 アプリケーションエンジニアリング部の片山貴充氏は次のように語ります。
「カメラの高性能化により、写真や動画のデータ量は飛躍的に増加しています。オンプレミス環境では、年に 2 回程度サーバーやストレージを増設してきたものの、必要となる容量を算出するのが難しく、運用負荷も増加していました。そこで、柔軟なリソース拡張の実現、ストレージコストの最適化、パフォーマンス強化による顧客体験の向上に向けて、クラウドサービスに移行することにしました」

クラウドサービスは、高いリソース効率を実現するサーバーレスやコンテナサービス、抜本的なコスト改善が可能なマネージドサービス、自動スケールによるパフォーマンスとコストの両立などを総合的に評価して AWS を採用しました。

技術統括本部 エンジニアリング推進本部 副本部長の築嶋健輔氏は「AWS 採用の決め手は、移行支援プログラムの AWS Migration Acceleration Program(MAP)を活用して、計画立案フェーズの段階で技術的な価値やコストメリットが見えたことです。当初は無理だと思っていた 25PB の大容量データの移行も AWS Snowball Edge を使った PoC によって実現できると確信できました」と語ります。

252 台の AWS Snowball Edge を利用

さまざまな工夫で 1 サイクル 40 日に短縮

AWS への移行プロジェクトは 2018 年 10 月にスタートしました。AWS Snowball Edge を使った 25PB の大容量データ移行については、2019 年 5 月から 7 月にかけてトライアル、8 月よりデータ移行を開始して、2021 年 7 月で完了しています。

AWS Snowball Edge は、専用の物理アプライアンスの AWS Snowball Edge にデータを格納して AWS に搬送し、クラウド上にデータを移行するサービスです。今回、同社は 1 回のサイクルで AWS Snowball Edge を 18 台使用して移行し、それを 14 サイクル(合計 252 台)繰り返しました。

データ移行では、予備機 2 台を加えて 1 サイクル 18台、それを 2 セット分用意して合計 38 台を用意して 2 つのサイクルを並行稼働させました。オンプレミス環境から AWS Snowball Edge へのデータ転送を高速化するために、インメモリー処理を実施してスループットの改善も図りました。
「結果として AWS Snowball Edge へのデータ転送期間を 1 サイクル 40 日程度まで短縮し、約 2 年間で 25PB のデータを移行することができました。移行時は AWS のエンタープライズサポートチームのテクニカルアカウントマネージャー(TAM)とも緊密に連携し、筐体故障の可能性、移行の進捗状況、今後の進め方など、適宜フィードバックを受けました。おかげで、不安なくプロジェクトを進めることができ、工期の短縮にもつながりました」(片山氏)

サーバーレス、コンテナを活用しアーキテクチャをモダン化

データお預かりサービスの新プラットフォームは、2019 年 4 月と 2020 年 8月の 2 段階に分けてリリースしました。オンプレミスから移行した Phase1 では、リフトによるシステム移行に加えて AWS Lambda によりイベント駆動のサムネイル生成をサーバーレスで実現。Phase2 では、DB を Amazon RDS から Amazon Aurora へ、Amazon EC2 からコンテナの実行環境を AWS Fargate へ移行して、クラウドネイティブなアーキテクチャにシフトさせています。

Phase2 の終了以降は、コストの最適化に取り組み、2021 年 3 月には階層型ストレージサービスの Amazon S3 Intelligent-Tiering を導入しました。
「長期間にわたって使用されないデータをコスト効率の高い階層に自動的に移動する機能などにより、右肩上がりだった Amazon S3 のコストを抑えることができ、AWSへの移行によってお客様の体感を損なわずにストレージ運用コストを約 50% まで抑えることができました。新しいストレージ階層のアップデートやさらに利用料金の値下げが進んでいますので、コスト効率化へつながるように取り込んでいきたいと思います。」(片山氏)

エンジニアリソースの有効活用により新たなユーザー向けサービスをリリース

AWS への移行によりスケーラビリティが確保され、増え続けるユーザーやデータに対して柔軟に対応できるようになりました。
「システム運用の大半を占めるストレージの運用コストが約 50% 削減でき、TCO の削減に貢献しています。サーバーのスケールアップ / スケールアウトや、ストレージ容量の増設にかかるリードタイムもなくなり、最大の懸念事項が解決されました」(築嶋氏)

サーバーレスやマネージドサービスで、運用負荷が軽減されたことも大きな効果です。技術統括本部 エンジニアリング推進本部 アプリケーションエンジニアリング部長の鈴木信貴氏は「結果として、エンジニアのリソースを新サービスの開発にシフトすることが可能になり、それが『データお引っ越しサービス』のリリースにつながりました。エンジニアのモチベーションも向上し、DevOps 的な開発に積極的にチャレンジする機運が高まっています」と語ります。

今後もコストの最適化や運用の高度化に向けて、システムのモダン化、クラウドネイティブ化を進め、サービス品質の維持・向上への取り組みも進めていく予定です。
「サービス品質の向上に向けて、AWS の大阪リージョンを活用したマルチリージョンアーキテクチャには可能性を感じています。AWS には今後も新たなサービスの提供とコスト軽減の支援を期待しています」(鈴木氏)

通信サービス全体の保守・運用を担う技術統括本部のエンジニアリング推進本部においても、今回の移行で得たノウハウを横展開し、ミッションクリティカルなサービスを支えていきます。
「オンプレミスとクラウドを適材適所で活用しながら、ハイブリッド環境を実現し、高品質のサービス提供を目指します。AWS とは協業体制を維持しながら、よい関係性を築いていきたいと思います」(築嶋氏)

築嶋 健輔 氏

鈴木 信貴 氏

片山 貴充 氏


カスタマープロフィール:KDDI株式会社

  • 設立: 1984 年 6 月 1 日
  • 資本金: 1,418 億 5,200 万円
  • 従業員数:連結 47,320 名(2021 年 3 月 31 日現在)
  • 事業内容:電気通信事業

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • 25PB の大容量データを約 2 年間で移行
  • ストレージ運用コストを約 50% 削減
  • リソースの調達や増設にかかるリードタイムを短縮
  • システムのモダン化、クラウドネイティブ化を推進

ご利用中の主なサービス

AWS Snowball Edge

Snowball Edge は、AWS Snowball サービスによって提供されるエッジコンピューティングおよびデータ転送デバイスです。オンボードストレージとコンピューティング能力を備えており、エッジロケーションで使用するための厳選された AWS サービスを提供します。

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AWS Lambda を使用することで、サーバーのプロビジョニングや管理をすることなく、コードを実行できます。料金は、コンピューティングに使用した時間に対してのみ発生します。

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Amazon Elastic Container Service (Amazon ECS) は、完全マネージド型のコンテナオーケストレーションサービスです。Duolingo、Samsung、GE、Cook Pad などのお客様が ECS を使用して、セキュリティ、信頼性、スケーラビリティを獲得するために最も機密性が高くミッションクリティカルなアプリケーションを実行しています。

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AWS Fargate

AWS Fargate は、Amazon Elastic Container Service (ECS) と Amazon Elastic Kubernetes Service (EKS) の両方で動作する、コンテナ向けサーバーレスコンピューティングエンジンです。Fargate を使用すると、アプリケーションの構築に簡単に集中することができます。

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