導入事例 / 卸売業

2024

ミスミグループ本社、顧客時間価値を追求

基幹システムをマイクロサービス化

2 分の 1

メインフレームからのインフラコスト

44 %

オンライン確定処理のレイテンシ削減

2 分の 1

夜間バッチの処理時間

3 倍

基幹システムの開発スピード

概要

オートメーションの現場で必要とされる機械部品や工具・消耗品などをグローバル 32 万社(2023 年 3 月時点)以上に販売しているミスミグループ本社。同社は「確実短納期」と「顧客の工数削減(無駄な業務、作業削減)」を追求し、革新的なサービス開発へ挑むべくメインフレームの基幹システムをアマゾン ウェブ サービス(AWS)に移行。さらにマイクロサービス化に取り組み、グローバル展開を進めています。AWS へのリフトにより安定性の向上と運用コストの最適化を実現。さらにマイクロサービス化により開発スピードを 3 倍へ向上させています。

ビジネスの課題 | ビジネスの時間戦略に対して硬直化した基幹システムが足かせに

ミスミグループ本社は「顧客時間価値」をモットーに世界12か国へECサイトを展開し、オートメーションの現場で必要とされる3,000万点超の生産材を国内外32万社(2023年3月時点)以上の顧客に「確実短納期」で提供しています。本来は部品ごとに図面を書き受注生産となる部品を独自の方法でカタログ化することで、図面不要の型番によるWEBオーダーを実現、さらにはmeviyをはじめとするCAD連携サービスの提供などにより、お客さまの非効率解消を追求しています。

事業を支える基幹システムは、30 年近くにわたりメインフレーム上で運用してきましたが、お客様からのサービス改善要望は蓄積し、急速なビジネスの成長とビジネスモデルの変化に対して硬直化したシステムは限界に近付いていました。「オンライン系システムと組み合わせて柔軟に対応してきたものの、データ連携の複雑化やベンダーに依存したリソース確保など、徐々に柔軟性を失ってきていました」と語るのは NEWTON 基幹開発推進室の脇木恒一郎氏です。

このままでは事業成長の足かせになるという危機感から、同社はクラウドへの移行とマイクロサービス化を決断しました。NEWTON 基幹開発推進室 ジェネラルマネジャーの力田章氏は「トップマネジメントの強力なリーダーシップのもと、オペレーションだけではなくビジネスモデルまで遡り、新しいミスミの姿を定義、それを実現するために新たな技術の導入とIT部門の技術水準向上の方針が示されました」と語ります。

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「クラウドネイティブな最新技術を導入したことによって、従来の仕事の仕方・考え方から大きく変化しています。新しい技術へ挑戦することで会社を成長させているという働き甲斐が生まれました」

石原 昌尚 氏
株式会社ミスミグループ本社 NEWTON インフラ・運用統括室セクションリーダー

ソリューション | 第 1 ステップで AWS にリフトし、第 2 ステップでマイクロサービス化

第 1 ステップとして基幹システムのクラウド移行に着手した同社は、すでに同社の EC サイトで採用実績があり、業界シェア、コスト、豊富なデータベース群、新技術への対応スピードにおいて優位性がある AWS を採用しました。力田氏は「検討した 2017 年当時、エンタープライズ分野では AWS の実績が圧倒的で、他を選択する考えはありませんでした」と振り返ります。

移行プロジェクトは 2018 年 10 月にスタート。2020 年 3 月までにオンプレミス資産の 98 % にあたる 3,200 台のサーバー群を AWS 上に移行しました。

「AWS Database Migration Service(AWS DMS)を用いた Amazon Aurora への移行では、AWS の担当者と毎日のように議論し、課題解決に向けて取り組みました。」(力田氏)

第 1 ステップが終了し、AWS 移行は順調に進んだものの、“リフト”状態のままではアプリケーション構造が密結合のままで、開発効率が高いとはいえません。第 2 ステップとして、クラウドネイティブなアーキテクチャを前提としたマイクロサービス化、疎結合化に踏み切りました。NEWTON インフラ・運用統括室の石原昌尚氏は「複雑な構造のままリフトした基幹システムは、改修するにも学習コストが高く、影響の読み切れない部分は大規模な結合テストで確認するしかありませんでした。障害発生時には、システム間が密結合しており、一部の重要ではないはずの機能で発生した障害が、重要な機能にまで影響してしまうこともありました。第 1 ステップで紐解いた旧基幹システム内部の知見と最新の技術思想をもとに、次のステップへ進めました」と語ります。

最新技術を積極導入する IT プロジェクトは「NEWTON(NExt generation & World class Technology Oriented New platform)」と名付けられ、2019 年 4 月にスタート。蓄積したお客様の声を紐解き、現場のヒヤリングから取り組みを始め、2022年8月に事業規模や事業機能を踏まえて台湾へ導入。2023 年 4 月にはタイへ展開し、2024 年 2 月に日本、その後も各国の法要件に対応しながら、韓国・欧州へとグローバル展開を計画中。

NEWTON は、社内ユーザーの業務インターフェースを集約したアプリケーション層、基幹業務を集約したマイクロサービス層、ERP 領域のエンタープライズ層の 3 層で構成しています。マイクロサービス層は、受注、発注、入出荷、売買掛、業務共通というように業務単位で6つのグループに分け、合計約 30 のアプリケーションで構成。マイクロサービス化によって複雑になるシステム環境を適切に管理するため、クラウドネイティブな最新の開発・運用ツールを多数導入し、標準化・自動化を推進しました。

「業務単位のマイクロサービスチームが自律的にビルド・デプロイできるようにするだけではなく、リポジトリ上のインフラのコードから自動で環境を立ち上げ、効率よく管理できるように CI/CD 環境を整備しました。また、複雑化するシステム環境に対し、アプリ・インフラ横断、システム横断の可観測性を高めることにも取り組んでいます。その他にもAPI Gatewayやコンテナ管理、フロントエンドからバックエンドまで、これまでミスミでは実績のなかった技術を多数導入してマイクロサービスの思想実現へ取り組みました。」(石原氏)

アーキテクチャ

導入効果 | 基幹システムの非機能性に加え、社員の技術力が向上、新サービス立ち上げを加速

基幹システムのマイクロサービス化を通し、運用コストの削減、開発スピード向上、人材の成長が得られました。

まずクラウド化により AWS を最大活用することで、基幹システムの性能、安定性、信頼性、機動力が向上し、運用コストの最適化が進んでいます。

「データベース関連の障害が 0 になったほか、パフォーマンス関連の障害もほぼ 0 になりました。パフォーマンスについては、オンライン受注確定の応答時間が44%削減したほか、それまで 5 時間かかっていた夜間バッチが 2.5 時間にほぼ半減してリカバリーにも余裕ができました。運用コストはメインフレームを継続していた仮定で比較すると、半分以下に削減できたと試算しています」(力田氏)

マイクロサービス化により、サービス単位で疎結合化されたことで学習コストとテスト工数の削減が実現し、障害発生時も影響範囲を極小化してリカバリーも迅速に行うことができるようになりました。現在も基幹システム全体の開発スピード3倍を目指し取り組んでいます。

「導入直後は不具合対応等もあり各チームがほぼ毎日のようにリリースし、安定化した現在もほぼ毎週、各チームの好きなタイミングで新しい機能をリリースしています。また、最新技術導入の一環で、UI系のアプリケーション層へはローコード開発プラットフォームを導入しました。ユーザーから寄せられる画面系の改善要望等は、経験の浅いエンジニアでも対応できるようになり、改修スピードが加速しました。従来のように業務要求を単に機能へ置き換えていくのではなく、新しい技術へ挑戦することで会社を成長させているという働き甲斐が生まれています」(石原氏)

大規模かつ新技術への挑戦は、人材を成長させました。クラウド化・マイクロサービス化を通じて自社システムに対する社員の理解度が大きく進展(手の内化)し、今後の事業成長加速に向けた足掛かりとなりました。IT 部門のエンジニアは、海外の最新技術を導入したことで、海外のエンジニアと直接コミュニケーションをとる機会も増え、社員自身も成長を実感しています。

「社員の成長としては、エンジニアが自らリソースの使用率を見ながら、障害の予兆を検知できるようになったことも成果のひとつです。これまではリアルタイムに見ることもできませんでしたが、今ではシステム改修後のパフォーマンスもエンジニアが自主的に確認して結果をフィードバックしています」(脇木氏)

今後はグローバル展開に合わせてAWSのグローバルインフラストラクチャを活用していくほか、最新技術を投入したNEWTONを使い倒してお客様の時間価値を高めていきます。

「基幹システムの機能をシンプルなサービスとして広く利用できるようになったことで、新しい事業やサービスの立ち上げの際にもミスミグローバル標準の業務機能を容易に利用できるようになりました。これまでB2Bの慣習で行っていた人手の調整業務をWebで完結できるようにし、また従来の受注と発注という関係を前提にしたサービスからプラットフォーム上でサプライチェーンの状況を共有するという考え方でサービスを見直しています。新しい技術も積極的に活用していきますので、引き続きAWSからの支援にも期待しています。」(石原氏)

企業概要 株式会社ミスミグループ本社

オートメーションの現場で必要とされる機械部品や工具・消耗品などをグローバル 32 万社(2023年3月時点)以上に販売。FA 製造装置用部品や金型用部品、自動化関連の間接材を製造・販売する「メーカー事業」と、他社製品も含めた自動化関連の間接材から消耗品まで幅広い商品群を販売する「流通事業」を併せ持つユニークな事業を展開する。

力田 章 氏

石原 昌尚 氏

脇木 恒一郎 氏

ご利用中の主なサービス

Amazon Aurora

Amazon Aurora は、MySQL および PostgreSQL と互換性のあるクラウド向けのリレーショナルデータベースであり、従来のエンタープライズデータベースのパフォーマンスと可用性に加え、オープンソースデータベースのシンプルさとコスト効率性も兼ね備えています。

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AWS DMS

AWS Database Migration Service を使用すると、データベースを短期間で安全に AWS に移行できます。移行中でもソースデータベースは完全に利用可能な状態に保たれ、データベースを利用するアプリケーションのダウンタイムを最小限に抑えられます。

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Amazon DynamoDB

Amazon DynamoDB は、規模に関係なく数ミリ秒台のパフォーマンスを実現する、key-value およびドキュメントデータベースです。完全マネージド型マルチリージョン、マルチマスターで耐久性があるデータベースで、セキュリティ、バックアップおよび復元と、インターネット規模のアプリケーション用のメモリ内キャッシュが組み込まれています。

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Amazon Kinesis

Amazon Kinesis でストリーミングデータをリアルタイムで収集、処理、分析することが簡単になるため、インサイトを適時に取得して新しい情報に迅速に対応できます。

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