今まで確認ができなかった位置と追跡データが新たに取得でき、
しかも 97% という高い追跡成功率を達成できたことは、大きなインパクトでした。
既存の監視カメラの映像が作業性や生産性に直結するツールへと進化した付加価値のメリットは計り知れません。
北川 倫太郎 氏 株式会社ニチレイロジグループ本社 業務革新推進部長

食品の低温物流事業で国内トップのシェアを誇る株式会社ニチレイロジグループ本社(以下、ニチレイロジグループ)。持続的な物流を実現するべく、全社を挙げて業務改革を推進している同社は、冷蔵倉庫内のフルデジタル化に向けて、監視カメラの映像を AI で分析するシステムを AWS のサービスを用いて構築。フォークリフトやカゴ車などを個別に識別して追跡する実証実験を 2018 年 4 月から 9 月にかけて実施しました。精度検証の結果、97% の追跡成功率を達成し、次のステップでは 2019 年度中の実用化を目指して開発を急ピッチで進めています。


 

“国内 No.1 の高度な低温物流を世界のスタンダードへ。”をグループのビジョンとして、保管事業、輸配送事業など生活に必要不可欠な物流ビジネスを展開するニチレイロジグループ。2016 年度から 2018 年度までの中期経営計画において、“事業基盤のさらなる強化”を目標に定めている同社は、重点項目に業務革新の推進、働き方改革の伸展、国内投資と海外投資の強化の 4 つを掲げています。2016 年度には組織として、具体的な取り組みを指揮するコントロールタワー的存在となる業務革新推進部と、必要な要素技術の適用・導入をリードする技術情報企画部を新設し、事業会社を加えた 3 者が連携して業務革新を進めています。「少子高齢化で労働人口が減少していく中、マイナス 22 度にもなる冷蔵冷凍倉庫内での作業や、大量の荷物の積み降ろし作業は敬遠される傾向にあり、人手に頼っているばかりでは将来的に立ち行かなくなる可能性があります。持続可能な物流サービスの提供のためにも、業務革新による生産性向上を進めていかなければなりません。」と語るのは業務革新推進部長の北川倫太郎氏です。

業務革新の第一歩として同社が最初に取り組んだのが、庫内作業のペーパーレス化でした。それまでの検品作業は、倉庫管理システムから検数表やピッキングリストを大量にプリントアウトして手作業でチェックしていました。そこで 2017 年にタブレット端末による入荷検品システムを一部の物流センターに導入し、2018 年度からは全国展開し、現場の検品作業を効率化しました。同社が、次のターゲットに定めたのが画像を用いたモノの認識・追跡です。冷蔵冷凍倉庫内のカメラ映像を基に庫内のフォークリフト、カゴ車、パレット、貨物を個別に認識することで、オペレーションの効率改善を検討しました。

「倉庫内でモノの位置を認識するのに、最初はセンサーや RFID の利用を考えましたが、すべてにセンサーを付けることは手間やコストを考えると現実的ではありませんでした。そこで、フードディフェンス(食品防御)の目的で以前から倉庫の各所に設置してある監視カメラの映像から物体認識、追跡できないかと考えました。」(北川氏)

 

具体化を模索した同社は、複数のベンダーに声を掛ける中から、Deep Learning の手法を用いた画像・動画解析エンジンを手がける Automagi 株式会社の『AMY Insight』ソリューションに着目しました。業務革新推進部 部長代理の勝亦充氏は「Automagi さんは Deep Learning だけでなくいろいろな手法に精通しており、どんな AI を使うと何ができるか、広い視点で議論することができました。その中で、最終的に Deep Learning による画像解析技術を使うことにしました。同社は物流現場で画像から荷物を自動的に判別する物流画像判別 AI エンジンの開発実績もあったことから、今回のパートナーにふさわしいと判断しました。」と振り返ります。

準備フェーズとして、実際の映像からモノの個別認識ができるかどうか、追跡のための差分画像の分析ができるかどうかを確認し、十分な手応えが得られたことから、実証実験を決断しました。AWS の採用にあたり Automagi の担当者は「自社内でのノウハウの蓄積とエンジニアのスキルセットの観点から画像認識・映像認識では AWS を基準にして開発をしています。」と語ります。映像分析システムは、AWS の Deep Learning 用のエンジン AWS Deep Learning AMI を用いて Amazon EC2 上に構築することで、環境構築の準備に要する時間を大幅に短縮することができ、プロジェクトに要した 5 ヶ月のうち、インフラ環境の準備自体は約 1 週間で終えることができました。

「インフラ環境の構築を早く終えた分、監視カメラの映像データから個々の物体を抽出して AI に学習させる作業や、認識モデルの作成とチューニングに時間をかけて取り組んでもらうことができました。」(勝亦氏)

また、クラウドのメリットであるオンディマンド、スケールアウト・インが容易、従量課金といった点も AI プロジェクトを始めるにあたって重要なポイントであったといいます。

「このプロジェクトは新しく、実験的要素が強い取り組みでした。もし、AI を行うために自社でサーバーを一から調達して、監視カメラにつないで、といった環境構築を行う必要があったのであれば、そもそもプロジェクトをスタートすることができなかったと思います。既存のカメラと AWS のサービスだけでほぼ解決することができました。」(北川氏)

精度検証のための実証実験は、2018 年 4 月から 9 月までで実施。そこで高い精度の追跡が可能であることが確認できました。

「今まで確認ができなかった位置と追跡データが新たに取得でき、しかも 97% という高い追跡成功率を達成できたことは、大きなインパクトでした。既存の監視カメラの映像が作業性や生産性に直結するツールへと進化した付加価値のメリットは計り知れません。」(北川氏)

第 1 フェーズの検証を終えてみて、映像認識や AI のメリットが実感できたという北川氏。プロジェクトの気付きについて次のように語ります。

「AI や画像認識に 100% を求めず、まずは人をサポートする役割から始めてみることが有効な活用法であると実感しました。特に今回、Automagi の技術を使ったことで、1 つの対象物に対して最大 3,000 枚弱のデータだけで学習できたことはハードルの低さと可能性を感じました。また、AWS がなければ実証実験を容易に実現することができなかったでしょう。」

実証実験は、2018 年 10 月から第 2 フェーズが進められており、監視カメラの映像をリアルタイムに処理してログを出力する環境を構築して、2019 年 4 月から本格的な検証を実施する予定です。さらに第 3 フェーズでは、作業員やフォークリフトの個別認識と識別追跡の機能を追加して実証実験を実施し、最終的には 2019 年度中の実用化を目指しています。

「対象物の位置をリアルタイムに把握することで、配送に最適なトラックが事前に準備でき積込作業が効率化される期待があります。識別追跡が加わることでオペレーションレスやデジタルシミュレーションの世界に近づけるのではないかと考えています。」(北川氏)

Deep Learning を用いた画像解析は別の分野への適用も視野にいれており、現在は、紙質も印字方法も異なる段ボールに書かれた賞味期限をタブレットで撮影して読み取る実証実験を Automagi とともに進めています。勝亦氏は「今後も画像・映像認識で得られたログや IoT で取得したデータを活用しながら、予測の分野に拡大していきたいと思います。」と話します。

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北川 倫太郎 氏

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勝亦 充 氏


APNアドバンスドテクノロジーパートナー
Automagi 株式会社

2010 年の設立以来、独立系ソフトウェア企業として、通信、金融、エネルギーインフラ、製造業、物流業界向けに大規模なシステム開発や独自開発したソリューション「AMY」(エイミー)を提供をしている。AWS アドバンスドテクノロジーパートナーに認定され、最新のクラウド技術を活用したシステム開発・運用の知見や実績が豊富。

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