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2024 日産自動車株式会社

日産、自動車に関するさまざまなデータを蓄積したビッグデータ分析基盤を AWS 上に構築。3 年間で 229 の全社プロジェクトで活用

オートモーティブ

概要

長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」のもと、カーボンニュートラルとゼロ・エミッション車の実現に取り組む日産自動車株式会社(以下、日産)。同社はビッグデータ分析基盤にアマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用し、プロジェクトの中期より日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社(日本 TCS)の支援を受けて日産全社共通のデータ分析基盤サービスを構築しました。リリースから約 3 年間でこのサービスを活用したプロジェクトは全社で 229 に達し、データ活用の民主化が進んでいます。

"Nissan Global Information System Center sign on a white wall in a modern office setting."

課題・ソリューション・導入効果

課題

ビッグデータ分析基盤を Data as a Service として提供へ

2023 年をゴールとした事業構造改革計画「NISSAN NEXT」を支える中期デジタル戦略「NISSAN DIGITAL NEXT」を展開する日産。NISSAN DIGITAL NEXT の柱の一つであるドライブイノベーションを支えているのが AWS をベースに構築し、2021 年より本格稼働を開始したデータ分析基盤サービスで、そのデータウェアハウス(DWH)には、開発、製造、サプライチェーン、セールスなどの、自動車に関するありとあらゆるデータが蓄積され、全社のプロジェクトで活用されています。

日産が新たな統合データ分析基盤を構築した背景には、データとそれを活用する環境の早期かつ効率的な提供にありました。同社では 2015 年にオンプレミスの共通データ基盤を構築し、全社に向けて提供を開始しました。しかし、利用部門からのリクエストに迅速に対応できないという課題がありました。「データ基盤は必要リソースの先読みがしづらく、オンプレミスの場合、環境の準備や増強に 3 か月から 1 年はかかります。構築後も負荷が高い処理を実行するとトラブルが発生することも多く、インフラとミドルウェアの運用に頭を痛めていました」と語るのはデジタルトランスフォーメーション推進本部 エンタープライズデータサービス部 部長の馬場昭典氏です。

また、当時のエンタープライズデータサービス部はインフラ管理を主たる業務としていたため、データのサイロ化やブラックボックス化が進んでいました。そこで、日産では 2018 年より自動車のライフサイクルに関するすべてのデータをエンタープライズデータサービス部が統合管理するプラットフォームに集約する方針を打ち出し、誰でも簡単・安全に使えるデータ分析基盤を提供するプロジェクトを立ち上げました。立ち上げ当初は車両に関わるデータを中心としていましたが、その後、データの範囲を、顧客、部品、車両走行情報、EV 用バッテリーなどにも拡大しています。

ソリューション

AWS のマネージドサービスを活用し、3 階層のデータ基盤を構築

データ分析基盤サービスの構築に際しては、日産グループの共通クラウド基盤に定められている AWS を採用しました。デジタルトランスフォーメーション推進本部エンタープライズデータサービス部 主担の吉田高明氏は「情報量が豊富で、機動力が高く、使いやすいというのが AWS の第一印象です。私たちは 2019 年からDWHとしてクラウドベースの Snowflake を使っているため、Snowflake が AWS の東京リージョンで利用でき、AWS との連携性に優れていたこともポイントになりました」と語ります。

同社が構築したデータ分析基盤は、大きく 3 つの層で構成されています。1 層目はソースのデータを蓄積するデータレイクで、Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)を採用しています。2 層目は Snow flake による DWH で、内部は RAW データ、成形加工データ、ユーザー加工用のデータマートの 3 つに分けています。3 層目はデータ活用ツールで、機械学習フレームワークの Amazon SageMakerや、Amazon Elastic Container Service(Amazon ECS)を活用した ETL ジョブの実行基盤を整備し、BI ツールとして Amazon QuickSight を採用しています。

「エンタープライズデータサービス部にとって、AWS のマネージドサービスをフルに使ったプロジェクトは初めてのことで、Snowflake との接続について試行錯誤しながら取り組んだことで、ノウハウを蓄積することができました」(吉田氏)

データ基盤の構築と並行してデータの整備も進め、データカタログの作成、データ利用ルールや利用範囲の決定、データアクセスに関する社内プロセスの制定などを行いました。デジタルトランスフォーメーション推進本部 エンタープライズデータサービス部 主担の中村光晴氏は「ゼロの状態からポリシーを決めていく難しさと、エンタープライズレベルのデータガバナンス設定の難しさ、さらに当社のオフショア開発拠点である Nissan Digital India の開発メンバーとのコミュニケーションの難しさがありました」と振り返ります。

インフラ構築全般とデータ整備の一部は日本 TCS が支援し、サービスリリース後の運用・保守も同社が担当しています。日本TCS の森本大樹氏は「新しいサービスの立ち上げには、幅広い知識とノウハウが求められるため、オンサイトで参画した当社のメンバーも含め、バイリンガルで幅広いスキルセットを持つ要員をアサインしました」と語ります。

日本 TCS の支援体制について馬場氏は「インフラやデータ整備に関して、end-to-end のカバレッジを持つエンジニアをトータルパッケージで提案していただけたことで、安定的で持続可能なチームへ成長を遂げました」と評価します。

導入効果

新車の開発、新機能の開発、不具合の解消などに貢献

2021 年に正式版をリリースして以来、日産のデータ分析基盤サービスは多くのプロジェクトで活用され、2023 年 8 月末時点のプロジェクトの述べ件数は 229 に達しています。

「オンプレミスのデータ基盤では、2015 年から 2019 年までの実質 5 年間でデータ活用のプロジェクト数は 17 でした。今回新たに構築したデータ分析基盤サービスでは 2020 年のパイロット版からの 3 年間で 229 に達しました。データの利活用は想定以上のペースで進んでいます」(馬場氏)

ユーザーからの反響も大きく、利用のしやすさが高く評価されています。

「欲しいデータが揃っていて、データカタログやトレーニングメニュー、説明書も充実しているので、今まで以上に便利だという声がありました」(中村氏)

クラウドのメリットを活かして、タイムリーにコンポーネントやデータを払い出せるようになったことも導入の効果で、機会損失を最小限に抑えることが可能になりました。新たなコンポーネントを追加する際も、ハードウェアコストや設定コストを気にする必要がなくなり、ユーザーの要求にもフレキシブルに対応できるようになりました。運用負荷もなくなり、人的リソースの最適化も進んでいます。

今後はビジネス部門の社員がデータをもとにインサイトを獲得し、新たな価値を創造していけるよう、サービスの改善、拡大、浸透をはかっていく考えです。さらに、海外にもデータ分析基盤サービスを拡大し、世界中の日産社員が世界中の日産のデータにアクセスできることを目指しています。

「データ分析基盤サービスの活動開始から 5 年が経ち、ようやくデータマネジメント基盤を確立することができましたので、これからが本格的な活用フェーズです。あらゆるユーザーが負荷なく自由に使えるように改善を重ね、データ活用の民主化を進めていきます。日本 TCS とは引き続き連携を密にしながら、二人三脚で新たな施策にチャレンジしていきます」(馬場氏)

オンプレミスのデータ基盤では、5 年間でデータ活用のプロジェクト数は 17 でした。AWS 上に構築したデータ分析基盤サービスでは 3 年間で 229 に達しました。データの利活用は想定以上のペースで進んでいます

馬場 昭典 氏

日産自動車株式会社 デジタルトランスフォーメーション推進本部 エンタープライズデータサービス部 部長

企業概要

「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける。」を企業パーパスに、グローバルで革新的なクルマやサービスを提供。電動化推進を長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」の中核に据え、2030 年度までに 19 車種の EV を含む 27 車種の電動車を導入し、ニッサン、インフィニティの両ブランドをあわせてグローバルに電動車のモデルミックスを 55 %以上とすることを目指す。

取組みの成果

  • 229
    ビッグデータ分析基盤上で実施されたプロジェクト数(約 3 年間)
              • 開発、製造、サプライチェーン、セールス、マーケティング、アフターセールス、品質管理など、自動車に関するありとあらゆるデータを蓄積
                  • 新車開発や新サービスの開発等、ビジネスへの貢献
                      • データ活用の活性化
                          • ユーザーの満足度向上
                              • タイムリーなコンポーネントやデータの払い出しによる機会損失の抑制
                                  • 運用負荷の軽減による人的リソースの最適化

                                  日本タタ・コンサルタンシー・ サービシズ株式会社

                                  AWS プレミアティア サービスパートナー 

                                  日本 TCS は、IT とデジタル技術を活用し、ビジネス、テクノロジー、 エンジニアリングの分野にまたがるサービス・ソリューションを提供。 日本の商慣習や日本企業の強みへの深い理解に基づいた日本 TCS 独自の「ジャパンセントリックデリバリーモデル」を構築し、タタコンサルタンシーサービス(TCS) の確かな知見と実績をもって日本のお客さまのビジネスを支援して いる。

                                  Logo for Tata Consultancy Services (TCS), featuring the acronym 'tcs' in gradient colors and the company name in blue text on a white background.

                                  本事例のご担当者

                                  馬場 昭典 氏

                                  A person wearing a dark sweater over a checkered collared shirt, standing against a plain background.

                                  中村 光晴 氏

                                  Portrait of a man in a black jacket and white shirt against a plain background

                                  吉田 高明 氏

                                  A person smiling and wearing a dark blazer over a white shirt, standing in front of a plain light background. Used for solution case studies.