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NTTドコモ : 『d払い』アプリのバックエンドシステムを AWS に移行、CX 向上施策を短サイクルで実施

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年間約 1,000 万ユーザーの増加に対応しながら、短周期に多くの機能追加・改善を実施することが可能になったのは、AWS 活用による運用負荷軽減により、お客様に新たな価値を提供するための時間を増やすことができたからです

大堀 哲央 氏
株式会社NTTドコモ
プロダクトデザイン部 ウォレットサービス担当 担当課長

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スマホ決済サービスの『d払い』を提供する株式会社NTTドコモは、お客様にとって価値ある機能追加・改善をスピーディにリリースするため、アプリからバックエンドのロジックを分離してアマゾン ウェブ サービス(AWS)に移行。マネージドサービス、サーバーレス、コンテナを中心としたアーキテクチャに刷新しました。これにより、2 週間に 1 回のサイクルで継続的な機能追加や機能及びUI改善が可能になり、サービスの進化速度は大幅に向上しました。

お客様への素早い価値提供に向けて
バックエンドシステムをリアーキテクト

NTTドコモの『d払い』は、スマートフォンアプリでバーコード決済・ウォレット・決済履歴表示などができるサービスとして、2018 年 4 月にリリースされました。以来、ユーザー数は年間約 1,000 万人以上のペースで増加し、2022 年 3 月末時点で 4,375 万人に達しています。NTTドコモでは、価値あるお客様体験の提供に向けて、アプリのユーザービリティ向上や基盤強化に取り組んでいます。初期のアプリはサービスの多くがアプリ側のロジックとして実装されており、API を介して基幹システムと密に連携していました。そのため、サービスの機能追加・改善を短いサイクルで実施することが難しく、新機能をリリースしても、アプリのアップデートをお客様にお願いする必要がありました。
 
そこで、バックエンド側のロジックをアプリから切り離して機能改善のサイクルを早めるとともに、アプリ側はユーザーインターフェースの開発に特化することで、UI/UX をクイックに改善することを決断しました。「キャッシュレス決済が社会に浸透し、競合他社サービスがひしめき合う中、競争力を強化してお客様に新しい価値や使いやすいアプリを更に素早くリリースしたいと考えました。そこで、大規模なリアーキテクトと同時に、開発体制もアジャイル型にシフトすることにしました」とプロダクトデザイン部 ウォレットサービス担当 担当課長の大堀哲央氏は語ります。

セキュリティ強化とNoOps(運用レス)を目指し
AWS のマネージドサービスを活用

アプリ側のロジックをバックエンドシステムとして切り出すことにした同社は、移行先のプラットフォームに AWS を採用しました。その理由は、ご利用いただくお客様数の増加への拡張対応や、CI/CDの推進がしやすく、同社が求める高いセキュリティ基準を満たしていることにありました。

「豊富なマネージドサービスとAWSサポートによってエンジニアがアプリの開発に注力できる環境が整っていることが 1 つ。もう 1 つは、金融サービスを提供するうえで、第三者のセキュリティ認証を取得済みで、ログ管理、アクセス制御、アイデンティティ管理等のセキュリティ機能が充実していることにありました。加えて、当社では 2012 年から AWS を利用中で、社内に知見が多くあること、お客様を大切にする Amazon の文化、サービスの進化スピード、継続的な値下げによりお客様に還元する姿勢への共感もありました」(大堀氏)

バックエンドシステムの開発は、2020 年 10 月から 2021 年 3 月までの 6か月で実施。新旧システムの並行稼働を経て、2021 年 7 月から 9 月にかけて新たなサービス提供基盤に切り替えました。アーキテクチャは、サーバーレスとコンテナ(Amazon DynamoDBAWS Fargate 等)をベースとした構成とし、デプロイの自動化とコスト削減に向けて CI/CD 環境を構築しました。セキュリティ機能は AWS のマネージドサービス(AWS WAFAmazon GuardDuty 等)を活用して実装する事で、各種要件を遵守しています。

「目指したのは、NoOps(運用レス)です。お客様への価値提供に開発リソースを割くために、マネージドサービスを積極的に活用しました。さらに、コンテナとサーバーレスを活用してアクセス量に応じて自動スケールするアーキテクチャとすることで、サービスを安定運用しながら、運用負荷軽減とコスト最適化を実現しています」(大堀氏)

スクラム開発で 2 週間に 1 回機能改善
パフォーマンス強化等の施策を実施

アプリとバックエンドの分離により、問題発生時には AWSのサービスの利用状況やログ等から原因を推定して速やかに解決することが可能になりました。Android と iOS の機能差分や、どちらかの OS だけで発生する問題も削減されています。

開発生産性も飛躍的に向上しました。現在は役割を分担した少数のメンバーからなるスクラム開発に移行し、複数のスクラムチームがアプリやAWS上で稼働するシステムをアジャイルで開発。2 週間スプリントで機能追加や機能・UI改善を実施しながら、並行して突発的に発生する開発要件、お客様から頂いたご指摘に対する開発に対応しています。

「その結果、AWS上で稼働するシステムだけで年間数十件以上の機能追加・改善を行うことが可能になりました。現在は、アプリとシステム合わせて週 1 回のペースで新たな機能・UI改善をリリースしています。システムリリースによる機能提供時、以前と異なりお客様にはアプリのアップデートを実施していただく必要もなく、全てのお客様に即時に反映されます」(大堀氏)

スクラム開発で実施している代表的な施策の 1 つは、アプリの性能改善です。キャッシュレス決済では、アプリのレスポンスが決済機会やお客様の満足度に直結します。そこで、開発チームでは TOP 画面、決済画面等の高速表示に向けた改善を日々重ねています。お客様体験の向上に向けた施策としては、ポイントやクーポンと連動したサービスやキャンペーンの随時提供です。2022 年 6 月には、ポイントプログラム「dポイントクラブ」のサービスを刷新し、d払いをご利用いただく事でdポイントがよりお得に溜まるサービスをリリースしました。

「こうした施策が実現できたのは、AWS 活用による運用負荷軽減により、お客様に新たな価値を提供するための時間を増やすことが可能になったからです。その結果、サービスの進化速度は大きく向上し、お客様体験価値の向上に貢献することができました。スクラム開発による早期リリースにより、お客様から頂戴する様々なお声にも今までより素早く対応でき、エンジニアのモチベーションも高まっています」(大堀氏)

NTTドコモでは、新たな環境と体制を活かして今後もアプリとバックエンドを改善しながら、より使いやすく、安全・安心な決済サービスの提供を目指していきます。

「d払いは、当社の金融サービスを日常的に触れていただく接点として、多くの役割を担うようになっております。今後も、より幅広いお客様に安心・満足して使っていただける、やさしいキャッシュレスサービスを目指していくために、AWSのサービスを最大限活用して性能改善・機能改善を進めていきます」(大堀氏)

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