AWS のサーバーレスアーキテクチャを採用することで、
バックアップやリストア機能など機能強化に繋がり、申込数も増加しました。
また、サービス環境の構築自動化により、
ヒューマンエラーや手戻りもなくなり、運用人員の負荷は大幅に削減できました。

大西 直樹 氏 株式会社NTTデータ イントラマート 執行役員 開発本部 本部長

NTT データグループの一員として、システム共通基盤『intra-mart』の開発・販売を手がける株式会社 NTT データ イントラマート。2013 年に『intra-mart』の機能を PaaS(Platform as a Service) として提供する『Accel-Mart』をリリースし、BPM・AI・IoT・RPA などの最新テクノロジーと組み合わせた業務プロセスのデジタル化を支援してきました。2018 年 5 月には、アマゾンウェブ サービス(AWS)版をリリースするとともに、大幅な機能強化を図りました。『Accel-Mart』の AWS 対応により、運用機能のサーバーレス化、サービス環境の自動構築化、開発プロセスの効率化などが実現し、サービス品質が格段に進化しています。


NTT データの社内ベンチャーとして 1998 年に発足し、2000 年 2 月より本格的な事業を開始した NTT データ イントラマート。現在、Web システムを構築するためのシステム共通基盤『intra-mart』の開発・販売を手がけています。2019 年 3 月末の時点で導入実績は 国内ワークフロー市場では 10 年以上にわたり国内トップクラスのシェアを獲得しています。

業務の効率化やコスト削減に貢献するシステム共通基盤は、近年注目されている AI・IoT・RPA(Robotic Process Automation)などと業務プロセスが密接に連携し、自動化を実現するツールとしてのニーズが高まっています。

同社の製品ラインアップで、intra-martAccel Platform の機能に加え、intra-mart に対応したアプリケーションをクラウドサービスとして提供しているのが『Accel-Mart』です。ユーザーやパートナーの要望に応じて開発された『Accel-Mart』は、2013 年 5 月から国内のクラウド事業者の基盤を使って提供していました。近年では、運用管理面におけるさらなる安定性や管理機能の充実が求められるようになりました。

そこで同社は『Accel-Mart』の AWS 版を新たに開発し、安定性強化と PaaS 機能の強化を図ることを決断しました。「ユーザーの選択肢を増やすという意味でも、市場でのシェアが高い AWS 版を用意するのは自然の流れでした。加えて当社のグループ会社において、すでに『intra-mart』を AWS 上で開発・稼働させていた実績があり、そのノウハウが活かせると思ったのが選定の理由です。」と語るのは、執行役員 開発本部 本部長の大西直樹氏です。

『Accel-Mart』AWS 版の開発は 2018 年 1 月から本格的にスタートしました。同社の開発本部のクラウドグループが中心になり、アーキテクチャをゼロベースで設計・開発。4 ヶ月後の 2018 年 5 月には提供を開始しています。

設計・開発の過程で同社が最も注力したのが、運用機能のサーバーレス化と、サービス環境構築の自動化です。クラウドグループクラウドチーム チームリーダーの横山慎一氏は「『Accel-Mart』のサービスを利用しているお客様の管理者には、標準としてバックアップ、モジュールリリース、サーバー起動管理などの機能を運用管理サイトとして提供しています。以前の環境では、サーバー側でジョブの実行を管理し、処理もサーバー側で実施しているため、サーバーが停止するとバックアップができないという課題がありました。そこでサーバーレスの AWS Lambda と AWS Step Functions を採用し、Amazon CloudWatch から指示を実行する構成としました。」と語ります。

ユーザーに提供するサービス環境の構築では、AWS CloudFormation を採用してリソースの割り当てを自動化しています。さらにオープンソースの構成管理ツール Ansible を利用して OS とミドルウェアの構築も自動化しました。

「従来までのサービス環境の構築は、手動で対応していたためヒューマンエラーがあり、チェックするための人的リソースも必要でした。構築の自動化によって運用人員の負荷は大幅に削減でき、管理レベルも平準化されました。」(横山氏)

開発プロセスにおいても、AWS のサービスを 積 極 的に 活 用し、開 発 環 境 は AWS Cloud9 を採用して統一しました。CI/CD 環境はソース管理からデプロイまでを AWSのツールを用いて一気通貫とし、ヒューマンエラーやリソースのミスを削減しています。

「開発は AWS のベストプラクティスを使う方針としました。AWS の自動化サービスに加えて、『intra-mart』のノンコーディングツール『IM-LogicDesigner』などを活用することで開発期間を短縮し、4 ヶ月でのリリースを実現しています。」と大西氏は語ります。

『Accel-Mart』AWS 版のサービス基盤は、サーバーを Amazon EC2、DB を Amazon RDS(PostgreSQL、Oracle の選択も可)、ストレージを Amazon EBS で構成しています。ユーザーはリソース課金型のプランを、Small、Medium、Large、Development の 4 種類から選択ができ、導入後もスケールアップ・スケールアウトが可能です。

『Accel-Mart』は申込みから最短 5 営業日で利用できます。リソース課金を採用しているため、利用人数を気にすることがなく、ユーザーが多くなるほどコストメリットを得ることができます。セールス&マーケティング本部 営業推進グループ グループ リーダーの田中幹也氏は「サーバーの調達から構築まで数ヶ月を要するオンプレミスと比べると、『Accel-Mart』は大幅な期間短縮になります。コスト面でもサービス提供費用と運用費用を合わせると、かなりのメリットが提供できます。」と語ります。

『Accel-Mart』AWS 版をリリースして約 1 年半が経過した現在、システムは安定稼働を続けており、ユーザーも順調に増加しています。バックアップ、リストアなど運用管理機能も従来と比べて大幅に強化しているため、ユーザーの運用負荷軽減にも貢献しています。

「すでに自社のインフラで AWS を利用しているお客様は、『Accel-Mart』との接続が簡単で、AWS の他のサービスとの親和性が高いので、『Accel-Mart』への理解も早く、導入がしやすくなっています。」(田中氏)


 

同社は今後もユーザーニーズに応じて『Accel-Mart』の機能を強化していく方針で、その一例が機械学習の Amazon SageMaker を用いたサジェスト機能の追加です。大西氏は「ワークフローの自動分岐、スケジュール入力のサポートなどへの適用に向けて技術検討を進めています。」と話しています。

ビジネス面では、製品機能のマイクロサービス化を進めて機能単位のクラウドサービスの提供を検討しています。そのひとつが、『intra-mart』の強みであるワークフロー/BPM の機能に、営業の案件管理や製造管理など特定の業務ノウハウを連携させたソリューションとして 2018 年に発表した intra-mart DPS(Digital Process Solutions)です。これによって業務プロセスの標準化・可視化を可能とし、業務の品質とスピードの向上に貢献します。intra-mart DPS は現在のところセールス、メンテナンス、パートナーポータルの 3 つのコンポーネントで構成し、単機能または複数機能を組み合わせて利用することができます。

2019 年 10 月には第 1 弾としてセールス向けの機能に特化した『intra-mart DPS for Sales』をリリースしました。田中氏は「現時点ではパッケージ版での提供で、ユーザー自身が『intra-mart』や『Accel-Mart』の上に自由に導入可能となっています。今後は『Accel-Mart』と一体化した SaaS として提供していくことも検討していきます。」と将来の展望を明らかにしています。

大西 直樹 氏

横山 慎一 氏

田中 幹也 氏



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