AWS を基盤としたモニタリングシステムとすることで、初期費用を 2 分の 1、ランニングコストを 20 分の 1 に削減することができ、管理、機能のカスタマイズ、データ保管などの自由度が格段に高まりました。

 

竹田 純哉 氏 株式会社 QTnet 技術部 技術開発グループ長

 

「未来を拓く新たな“光”を九州から」をビジョンに、暮らしとビジネスに“感動品質”を提供する QTnet。家庭向け光インターネット接続サービスの『BBIQ』、モバイル サービスの『QT モバイル』、法人向けの『QT PRO』などさまざまな通信サービスを提供しています。IoT や人工知能(AI)の分野にも進出し、宮崎県では棚田の稲作環境データ収集、高齢者見守りサービス、バス運行状況サービス、チョウザメ養殖場管理サービスの実証実験を実施しています。

同社は、2015 年より宮崎市と高千穂町にて橋梁インフラのモニタリングにも取り組んでいます。「これは今後 20 年で急速に老朽化が進む橋梁の維持に向け、劣化を早期に発見して迅速にメンテナンスを実施したり、劣化傾向をもとに緊急度や優先度を判断し効果的な補修計画を立案することで、橋梁の維持管理コストを低減することが目的です。」と語るのは、技術部 技術開発グループ長の竹田純哉氏です。

QTnet では宮崎県内のコンサルティング会社とともに橋梁のモニタリングシステムを構築し、実証実験として劣化診断と亀裂変移の測定に最適な橋を 2 ヶ所ピックアップしてデータを取得しています。実証実験では、橋に亀裂計、変位計、温度計、傾斜計、加速度計などのセンサーを設置して、目的に応じて 1 分、1 秒、100 分の 1 秒などの間隔でゲートウェイを介してデータを収集し、可視化しました。

実証実験を開始した当初は、橋梁モニタリングのプラットフォームをパッケージベースで構築し、インフラ管理やデータ保管をベンダーに依頼していました。そのため、システムの維持費(ライセンス費用)がかさむだけでなく、ノウハウを自社に蓄積することができませんでした。そこで同社は、クラウドサービスの利用を検討しました。技術部 技術開発グループ 主任の児玉雅文氏は次のように語ります。

「橋梁モニタリングなどの IoT ソリューションサービスをビジネス化するためには、コストを抑えて環境を構築する必要があります。そのために、クラウドサービスを活用するとともに、システム開発と運用を自社で行うことでノウハウを蓄積し、異分野のビジネスでも活用できる IoT プラットフォームの構築することにしました。」

複数のクラウドサービスを検討した中から同社は、AWS を採用しました。その理由は、豊富な機能に加え、多くの技術情報が公開されていたことにあったといいます。

「検証環境をクラウド上に作って実際に利用した中で、AWS が最も扱いやすいと感じました。また、参考となる文献が豊富で実績があることや、クラウドに特化したセキュリティ監査制度の SOC2/SOC3 を取得済みであることもポイントになりました。」(児玉氏)

開発は、2017 年 12 月から AWS の機能や構成、ゲートウェイ側のカスタマイズに着手し、2018 年 1 月から構築を開始。2 ヶ月後の 2018 年 3 月には新たな橋梁モニタリングシステムへの切り替えが完了しました。

新橋梁モニタリングシステムは AWS IoT を用いてデバイスとの接続管理とデータの送受信を実行します。ストリーミングデータは Amazon Kinesis を介してリアルタイム処理し、可視化用のデータは Amazon Elasticsearch Service を介して可視化ツールのKibanaで表示します。可視化表示期間は 3 ヶ月分とし、長期保存用データは Amazon S3 上に蓄積しています。その他、サーバーレスの AWS Lambda でデータ加工と整形を施し、異常検知時にはメッセージング機能の Amazon Simple Notification Service を介してアラートメールを送信します。可視化ツールへのログインには、Amazon Cognito を利用して認証を行い、セキュリティを確保しています。

「開発は、AWS の技術担当者からもサービスの組み合わせや構成など、アーキテクチャに関するアドバイスを適宜受けながら進めたことで、短期間に構築することができました。検討や開発期間中の技術フォローも参考になりました」(児玉氏)

橋梁モニタリングシステムの IoT プラットフォームを AWS ベースのシステムに切り替えたことで、以前はブラックボックス化されていた IoT 機能が可視化されました。その結果、QTnet が独自にクラウド管理やデータ保管が可能になり、カスタマイズの自由度も格段に向上しています。

コスト面においても大幅な削減が実現し、旧システムと比較して初期費用 2 分の 1、ランニング費用は 20 分の 1 となりました。「機能を利用した分だけ支払う AWS であればソフトとハードのライセンス費用が不要になるため、2 年目以降のランニング費用も変わらず、安価に運用を続けることができます。」と竹田氏は語ります。

AWS を採用したことにより、インフラ調達にかかるリードタイムも短縮でき、開発期間もわずか 2 ヶ月と早期にサービスを立ち上げることができました。また、追加機能を検討しやすい柔軟性の高さといった AWS のメリットを活かし、サービス立ち上げ後に認証機能などを追加することができました。

IoT プラットフォームを共通化した結果、2018 年 4 月には宮崎市で検証している農業モニタリングに、5 月には QTnet 本社のオフィスモニタリングにも導入されました。農業モニタリングでは、いちご農場に設置したセンサーデバイスから温度、湿度、照度などを取得して生産者にデータを提供しています。オフィスモニタリングでは、同社が進める働き方改革に向けて、オフィスの温度、湿度、照度、開閉、人感などのセンサーを用いて労働環境をモニタリングしています。これらは、実用化に向けてデータ分析を続けていく考えです。

橋梁モニタリングについては、今後の実用化に向けてコンサルティング会社や大学、企業などと検討しています。

「例えば、震災などの際、平常時のデータと比較して橋の安全性をチェックするなどの活用が期待されます。将来的には劣化予測が可能なシステムの構築を目指しています。」(竹田氏)

QTnet では現在の IoT プラットフォームをより進化させるために、BI サービスの Amazon QuickSight の利用を検討しているほか、機械学習やディープラニングと連携した分析サービスの情報収集を行っています。

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竹田 純哉 氏

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児玉 雅文 氏

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