AWS へ移行したことで、50% 以上のコスト削減を達成できました。これは社内的にもかなりインパクトの大きい実績です。
システム自体が壊れないようにするのではなく、どこかに問題が発生してもサービスが動き続けるようにする、これまでオンプレミス環境で運用を行ってきたメンバーのマインドチェンジができたことも AWS 導入の大きなメリットだと考えています。
梅原 直樹 氏 株式会社リコー OS開発本部 SI開発センター 第四開発室 クラウドPFグループ

株式会社リコーは、1936 年に創業し、マルチファンクションプリンターや複写機などを中心とする『画像 & ソリューション』、サーマルメディア、光学機器、半導体、電装ユニットなどの製造・販売を行う『産業』、デジタルカメラ、全天球カメラ、時計などの製造・販売、関連会社によるリース、物流などを行う『その他』の 3 つの分野で事業を展開しています。

画像 & ソリューションの事業として展開しているものの 1 つに、インターネット経由で利用するテレビ会議サービス『RICOH UCS(Unified Communication System)』があります。RICOH UCS は、2011 年 8 月からサービスを提供しており、テレビ会議専用の端末とクラウドの組み合わせで高品質な音声と映像の配信を実現しています。シンプルな操作で簡単につながること、さらにグローバルに接続拠点数の制限がないという点が RICOH UCS の特長です。RICOH UCS は、グローバル展開をしている大企業はもちろん、極めて簡単に使えることから IT 部門を持たない小さな組織に至るまで幅広いユーザーが利用しています。現在は日本国内での利用が中心となっていますが、今後はグローバルへさらなるビジネスの拡大を目指しています。

リコーではグループ全体の方針として、当初は自社インフラを使ったプライベートクラウドの利用を推奨しており、RICOH UCS のサービスも同様に国内のプライベートクラウド上で運用されていました。「海外からの接続が増えたことによるネットワーク遅延を回避するため、米国のデータセンターでも運用を始めましたが、すでにユーザーは米国だけでなく世界中に広がりつつありました。米国以外のデータセンターを拡充するためには、設備面はもちろん人的にも難しい面がありました。」と言うのは、株式会社リコー OS開発本部 SI開発センター 第四開発室 クラウドPFグループの梅原 直樹氏です。そこでリコーでは、2015 年頃から外部のクラウドサービスの利用を検討しはじめました。

さらにその頃プライベートクラウドのインフラに問題が発生し、RICOH UCS のサービスが停止する障害が発生しました。プライベートクラウドのインフラは同じリコーグループ内で運用しているものの別部門が対応していたため、サービスを提供している梅原氏の部門で対処できることはほとんどありませんでした。RICOH UCS はユーザーにとってもはやビジネスに欠かせないツールとなっており、この障害を機にさらなるインフラの安定稼働を求める声が上がっていました。そこでリコーでは、可用性を向上させ『落ちないサービス環境を実現する』ことを最優先事項として、クラウド利用を視野に入れたインフラ環境の見直しに着手しました。

リコーでは、まず可用性の向上とサービスの安定稼働のため、従来日本と米国のデータセンター間で行っていた災害対策(DR)構成をクラウド上で構築する検討を始めました。「グローバルに多数のデータセンターがあること、また、当時検討していたシステム環境の自動構築がうまくできそうだという理由で AWS クラウドの導入を決めました。また、海外だけでなく、東京リージョンも利用できるという点も AWS を選択した理由の 1 つです。」(梅原氏)

導入を決定してから半年ほどで、プライベートクラウド上の災害対策構成が Amazon EC2 と Amazon RDS for MySQL を中心とした AWS 環境で構築されました。この災害対策構成の構築が成功したことを確認した上で、リコーでは、メインのサービス環境の AWS 移行を開始しました。「短期間での移行を優先するのであれば、従来の構成に手を入れることなく行うことができますが、弊社では AWS のサービスを最大限に活用するため、単純な移行ではなく古いものは捨てて新しいものを取り入れることを決断しました。これらはトレードオフの関係になりますが、クラウドのメリットを得るために妥協したくはありませんでした。」(梅原氏)

メイン環境の AWS 移行にあたっては、アプリケーションのデプロイ部分にコンテナ技術を新たに採用し、環境の自動構築化に取り組みました。自動構築を実現するために利用したのが、AWS CloudFormation と Amazon EC2 Container Service(ECS)、マネージド型の Docker コンテナレジストリである Amazon EC2 Container Registry(ECR)です。Amazon ECR については、ちょうど東京リージョンでサービス提供を開始したタイミングであったため、自動構築化に取り組む判断ができたと梅原氏は振り返ります。また、データベースについても 2017 年 6 月 に Amazon RDS for MySQL から Amazon Aurora への移行を完了しました。 

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リコーでは、サービスの安定稼働を最大の目標に掲げて AWS への移行を進めてきました。「AWS 移行後、可用性は自信を持って上がったと言えるレベルまで向上しました。オンプレミスでは、ストレージ障害が起きただけでサービス全体が止まることもありますが Amazon RDS の Multi-AZ 配置 であれば、どこかに問題が発生してもサービス自体は動き続けます。システム自体が壊れないようにするのではなく、どこかに問題が発生してもサービスが動き続けるようにする、これまでオンプレミス環境で運用を行ってきたメンバーのマインドチェンジができたことも AWS 導入の大きなメリットだと考えています。」(梅原氏)

さらに、インフラの自動構築を実現したこともリコーにとって大きなメリットとなっています。単純に自社インフラで動いていたものを Amazon EC2 上に移すだけでは運用管理の作業を大きく軽減できない面もあります。そこで、既存インフラを全てコード化(Infrastructure as a Code)し、AWS CloudFormation と Amazon ECR を使って障害が発生しても自動的に同じ状態に復旧できる仕組みを構築したのです。これもまた可用性や稼働率の向上に大きく貢献しています。

オンプレミスのプライベートクラウドで運用していた際には、日本と米国のデータセンターに同じ規模のサーバーリソースを用意していました。これには本番環境だけでなく開発環境や評価、ステージ環境も含まれており、さらにサービス利用負荷のピークに併せたキャパシティを確保していたため膨大な規模となっていました。さらに月単位での課金だったこともあり、開発環境を夜間に停止してもコストダウンはできませんでした。「これらの環境を AWS へ移行したことで、50% 以上のコスト削減を達成できました。これは社内的にもかなりインパクトの大きい実績です。AWS の従量課金制をうまく活用して開発環境を必要な時だけ稼働させる等サーバーリソースの最適化を図ることで、今後はサービスを拡充しつつさらなるコスト削減を目指しています。」(梅原氏)

また、従来の環境では 2 日間ほどかかっていたリソース調達時間も人が介する社内プロセスが大幅に省略されたことで、必要な環境を即時に調達できるようになりました。運用管理面の負担削減という意味では、データベースを Amazon RDS for MySQL から Amazon Aurora へ移行したことも大きく貢献しています。「これまで役割ごとに分けていたデータベースを、Amazon Aurora に統合したことで、運用の手間とコストを削減できました。また、Amazon RDS for MySQL では数分かかっていたフェイルオーバーが、Amazon Aurora では MariaDB Connector と組み合わせて最短数秒で完了できるので、ダウンタイムも短縮できました。」(梅原氏)

Amazon Aurora の自動でディスクサイズを変更できる機能も、運用管理面の負担を減らしています。さらに Amazon Aurora と AWS Database Migration Service を組み合わせ、テーブル単位でのレプリケーションを可能にすることで無駄のないデータ転送量となり、レプリケーションの失敗もすぐに検知できるようになりました。Amazon Aurora の採用で必要なデータが必要なところにある環境が構築できたのです。

また、世界中で利用しているデータセンター監視システムは AWS Lambda を利用したサーバーレス環境で構築しています。以前は 1 分に 1 回の頻度で接続可否を検知収集する API を作り、Amazon EC2 と Amazon RDS for MySQL を組み合わせた環境で監視していましたが、現在ではこれを AWS Lambda と Amazon API Gateway、Amazon DynamoDB を組み合わせたサーバーレスの仕組みで運用しています。「AWS Lambda を活用したことで、サーバーレスのメリットを大きく感じています。このフルマネージドなサーバーレスの仕組みは、リソースの最適化とサービスの安定稼働に役立っています。他にも AWS Lambda のような新しいサービスに置き換えられるものは、まだまだたくさんあると考えています。」(梅原氏)

また、リコーでは AWS サポートのエンタープライズサポートプランを利用しています。「エンタープライズサポートプランでは問題が発生した場合『非常事態』でケース登録すれば 15 分以内に最初の対応をしてもらえるので、RICOH UCS のような安定稼働を必要とするサービスを運用をする上で非常に大きな安心感につながっています。社内のエンジニアからも、的確で問題の深い部分まで調査された回答がもらえる等、AWS のサポートを高く評価する声を聞いています。また、AWS の技術担当者と月次のミーティングで事前に課題共有ができることも、結果的に RICOH UCS の安定稼働につながっていると考えています。」(梅原氏)

リコーでは、今後も RICOH UCS の新機能を中心に AWS を積極的に活用していく方針です。すでに複数の Elastic Load Balancing を利用している部分をまとめて Application Load Balancer に置き換える計画や、Amazon Redshift などの分析系のサービスを活用した顧客ごとのカスタマイズなど、さらにサービスを進化させていくための機能の導入も検討されています。

「AWS がなければ今後の RICOH UCS のビジネス拡大はないと考えています。これから目指すのは、AWS クラウドを活用してさらに機能を拡大しつつ、トータルコストを下げていくことです。また、弊社では現在クラウドを活用したサービスの拡大傾向があり、RICOH UCS の AWS 移行による成功事例を公表したことで、他部門からクラウド導入に関する相談を受ける機会も増えています。私たちの部門が、リコー社内でのクラウド活用を普及する立場にもなっていると言えるでしょう。」(梅原氏)

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- 株式会社リコー OS開発本部 SI開発センター 第四開発室 クラウドPFグループ 梅原 直樹 氏

AWS クラウドがエンタープライズ企業でどのように役立つかに関する詳細は、AWS によるエンタープライズクラウドコンピューティングの詳細ページをご参照ください。