AWS にはグローバルで公共分野も含めた実績があり、当市の掲げる要件を高いレベルで満たしていました。

 

牧田 泰一 氏 鯖江市 政策経営部情報統計課 情報政策監

眼鏡フレームの生産地として知られる福井県鯖江市は、行政データのオープン化を積極的に推進する自治体として、その先進性で全国から大きな注目を浴びています。オープンデータを市民や民間企業に公開するシステムのプラットフォームとして AWS を採用した同市は、高度な安定性と可用性に加え、突発的なアクセス急増などに備える柔軟な拡張性も実現。同市の取り組みには、市民と行政をつなぐ IT 活用における多くのヒントが詰まっています。


   

福井県の嶺北地方のほぼ中央に位置する鯖江市。古くからの地場産業である繊維、漆器に加え、近代以降は眼鏡フレームの生産地として発展を遂げ、現在では国内生産フレームのシェア 95% 以上を占める『めがねのまち』として、全国のみならず海外に向けても『SABAE』ブランドの製品を発信しています。

一方で同市は IT 活用を積極的に推進し、IT を眼鏡、繊維、漆器に続く第 4 の産業に育成しようという方針を掲げています。例えば、同市の NPO が主催する『Hana 道場』は、伝統的ものづくりと最先端の IT を掛けあわせた将来のものづくりの担い手を輩出していくことを目的に、子どものときからプログラミングに加え 3D プリンターやレーザーカッターの利用法などを学べる場となっています。

鯖江市の IT 活用において特に大きな注目を浴びている領域が、行政データのオープン化と広範な活用です。この領域は、2016 年 12 月に公布・施行された『官民データ活用推進基本法』などを背景に、多くの自治体にとっての重要課題となっています。

「当市がオープンデータ化の取り組みに着手したのは 2010 年でした」と語るのは、鯖江市 政策経営情報統計課 課長の高島克人氏です。同年 3 月には積極的な情報公開や情報提供の運用を進め市民との間で情報の共有化 / 活用を図るという条例を掲げるとともに、『データシティ鯖江』というキャッチフレーズを打ち出し、XML/RDF をベースとするデータ公開に向けて舵を切りました。「2012 年から、市内の公衆トイレの位置情報をはじめ、コミュニティバスの運行状況など、当市が有するさまざまなデータの公開を進めてきました」(高島氏)

また 2014 年には、総務省によるオープンデータ推進に向けた実証実験『情報流通連携基盤構築事業』にも横浜市とともに協力。ここでは、国際基準に基づく “5 つ星オープンデータ”の形式で記述されたデータを共有し、データ提供者および利用者が効果的に利用できる環境整備に関する検証が行われました。「この実証実験で、鯖江市と横浜市のように規模が異なる自治体のオープンデータも、標準的な形式であれば単一のアプリから共通して扱えることが確認できました」と鯖江市 政策経営部情報統計課 情報政策監 牧田泰一氏は語ります。この実証実験も踏まえて鯖江市が取り組んだのが、オープンデータの公開基盤の再整備でした。

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当初、鯖江市が利用していたのは外部のレンタルサーバでしたが、契約に手間がかかるなどの課題があり、新たなプラットフォームの選定に乗り出しました。自治体におけるクラウドの利用については、セキュリティ上の懸念などもあって、さまざまな制約があるのが実情です。しかしオープンデータはそもそも公開を前提とした機密性を持たない情報で、導入のハードルが低い領域でした。

「セキュリティという観点で言えば、堅牢性に優れ、厳密なセキュリティチェックが行われているデータセンターで運用されているクラウドサービスに比べ、職員が自由に出入りする庁内のマシンルームで運用されるシステムの方がむしろリスクが高いという捉え方もできます。今回のチャレンジは、当市が目指すクラウド活用の端緒としては最適だったとも言えます」(高島氏)

クラウドプラットフォームの要件として、まず市民、民間に向けたサービスであることから、サービスが停止することのない安定性、可用性が重要でした。また、同市の予算内で継続的に運用していけること、導入期間などさまざまな観点で検討した結果、AWS が採用されました。

「AWS の採用に際しては、地元発の IT ベンチャーである jig.jp グループ B Inc. から、同社での活用実績を踏まえて推奨されたことも後押ししました。鯖江市民でもある株式会社 jig.jp 取締役会長(創業者)で株式会社 B Inc. 代表取締役社長の福野泰介氏は、当市のオープンデータに関する取り組みを 2010 年当初から支援し、IT 活用の強力な牽引役となってくれています。もちろん、AWS にはグローバルで公共分野も含めた実績があり、当市の掲げる要件を高いレベルで満たしていました。」(牧田氏)

福野氏は日々牧田氏、高島氏と密に連絡を取り合い、さまざまなアプリケーションの開発から人材育成まで、鯖江市の取り組みを強力にバックアップするアドバイザーとして欠かせない存在となっています。

AWS を基盤とする新たなオープンデータプラットフォームは、2014 年 6 月に稼働を開始。これまでに、市の人口や気温などに関する各種統計情報、災害時の避難所の位置、市営駐車場や車椅子スペース、消火栓、AED などの設備案内、観光や議会情報、地図情報など 20 以上のカテゴリによるオープンデータが公開され、広く市民や民間企業の活動で利用されています。

また、一方通行とはならないデータ活用もポイントです。例えば道路の陥没など補修が必要な箇所を市民が見つけた場合、スマートフォンで撮影してその画像を『さばれぽ』というアプリで投稿。画像はオープンデータとして扱われ、市職員が現場を確認し、必要性や優先順位を判断して補修工事を手配するという市民参加型の行政サービスが行われています。

このような鯖江市の先進的な取り組みは、各種メディアで取り上げられ注目を浴びるようになり、特にオープンデータ関連施策を進める自治体が数多く視察に訪れています。

AWS を基盤とするオープンデータプラットフォームは、同市の期待通り安定稼働を続けています。「災害などの非常時こそ情報が必要とされますから、当市としてもできる限り要望に応えていきたいと考えています。災害時の避難所の情報なども公開しているので、災害の発生時には平常時とは桁違いのアクセス数が発生することも想定されます。従来のようなオンプレミス環境でデータ量の急増を見据えたキャパシティを用意した場合、平常時は不要なリソースを待機させることになり、コストが問題になります。クラウドであればこのようなスケール対応の問題も解消できますから、AWS の採用は、理に適った意志決定であったと考えています」(高島氏)

今後も鯖江市では、IT の活用をベースにさらなる行政事務の効率化、市民サービスの向上に取り組んでいく構えです。さらに、先進デジタル技術も積極的に活用していきたいといいます。例えば 2004 年の福井豪雨による被害などを教訓に、防災の観点から市内の河川の水位を IoT デバイスで計測。それをオープンデータ化して市民がリアルタイムに参照できるような仕組みをすでに構築しています。

「IoT に加えて、AI や RPA の活用によって庁内業務の生産性をどのように向上させていけるか、さらには市民に対していかに価値ある新サービスを提供していけるか、今後も検討を続けていきます」と牧田氏は展望を語ります。また最新の技術に関しては、一般企業やメディアの情報をチェックする

ほか、jig.jp からのアドバイスも得て情報収集に努めているといいます。IT を地域創生に活かすモデルケースとして、鯖江市の今後の動向から目が離せません。

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牧田 泰一 氏

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高島 克人 氏

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政府機関、教育機関、非営利組織における AWS の活用についての詳細は、公共部門における AWS ページをご参照ください。