「 IT インフラの運用負荷軽減により、医薬品の品質に関わる信頼性保証、
副作用情報、研究開発などのシステム領域にもシステム部員が関与し、
IT の利活用の提案ができるようになっています。」

竹田 幸司 氏 沢井製薬株式会社 システム部長

ジェネリック医薬品大手の沢井製薬株式会社は、複数のデータセンターサービスに分散していた IT インフラの運用負荷増大に直面していました。そこで日立システムズの支援のもと、医薬品・医療機器製造業に義務付けられている CSV* ガイドラインに準拠した形で AWS への移行を開始。管理負荷の軽減と運用コストの20% 削減を実現し、システム部は全社的な IT 活用の高度化、IT リテラシー向上に注力できるようになっています。  

* CSV:Computerized System Validation。
コンピュータ化されたシステムが正しく開発・導入・運用されることの担保


高品質なジェネリック医薬品の提供を通じて、患者さんの負担軽減と医療費の節減に貢献する沢井製薬。長年培ってきた製品の安定供給力と研究開発力/製剤技術力の強みを活かし、より優れた医薬品の提供に取り組んでいます。また、2017 年に北米のメーカー Upsher-Smith Laboratories を子会社化して米国市場に進出するなど、世界的な認知度向上も目指しています。

業務を支える同社のシステムは、基幹業務、生産計画、ファイルサーバーなど個々の案件に対応して拡張を続け、2015 年の時点で 4 つのデータセンターサービスを使い分けていました。データセンターの併用はリスク分散という観点ではメリットがある反面、サービスレベルの体系化が難しく、管理負荷の増大につながっていました。

そのため負荷を下げるとともに、事業環境の変化に柔軟に対応するには、インフラ運用を見直す必要があったと、システム部長の竹田幸司氏は振り返ります。「複数のデータセンターを維持/強化していくだけでも、数に応じたコストが発生します。また、システム部の要員が運用に追われ、本来やるべき IT 戦略の立案などに時間を割くことが難しくなっていました。この状態を 5 年、10 年と続けていくわけにはいかず、会社としての成長の足かせにしないためにも、IT インフラのクラウド化と運用のアウトソーシングへの切り替えへと踏み出しました。

沢井製薬はクラウド活用を前提として複数社から提案を受け、最終的に日立システムズが提案した AWS クラウドを採用しました。複数のデータセンターに分散していたサーバーを AWS 上に再構築、運用は日立システムズが提供する『クラウド向け統合運用サービス』に一元化することで、システム部の負荷を軽減することが狙いです。

特定のクラウドサービスにこだわるつもりはなかったという同社ですが、一部のシステムで AWS を採用した実績から、マルチアベイラビリティゾーン(AZ)で冗長構成が簡単に構築できることに可能性を感じたといいます。また、医薬品業界では、医薬品・医療機器製造業に対しコンピュータ化された業務システムへのガイドライン(CSV)が通達されており、その遵守が義務付けられるシステムも存在します。製薬業界での採用実績も豊富で、日立システムズが AWS 環境で CSV に準拠した製薬会社向けクラウド利用リファレンスを作成していたことも後押しとなりました。システム部 IT・インフラグループ リーダーの西川俊之氏は「CSV への対応は重要なポイントであり、AWS が数あるクラウドサービスの中でも最先端という印象を持ちました。」と語ります。

AWS を同社に提案した日立システムズも、AWS の圧倒的なサービスの豊富さ、セキュリティや可用性などの機能の高さ、第三者認証の圧倒的な実績などを評価したといいます。

沢井製薬は AWS 環境を構築後、複数のデータセンターに分散していたサーバーの統合を開始。2015 年 10 月の開始当初、AWS 上で稼働するサーバーは 5 台でしたが、新規システムの導入や既存システムの移行のたびに AWS 環境にシフトしていき、2019 年 8 月には 150 台に達しました。2019 年末までには約 200 台となる見込みです。

「AWS への移行は、ハードウェアの保守終了やバージョンアップのタイミングごとに段階を追って進めました。当初インスタンス上に稼働させるのが難しいと判断した SAP ERP の本番環境など一部のシステムはデータセンターで運用していますが、2020 年中にはほぼすべてのシステムを AWS に移行する予定です。」(西川氏)

現在は、アウトソース先の日立システムズが提供する運用の月次レポートに基づき、システムの安定化とコストの最適化を進めています。日立システムズからは、モニタリングしたリソースの利用率をベースに、必要に応じてインスタンスタイプの変更やリソースの割り当ての提案などを得ています。

AWSへの移行は、沢井製薬にさまざまなメリットをもたらしました。1 つはサーバー手配の迅速化です。新規サーバーの提供にかかる時間は、最大で 6 か月程度かかっていましたが、導入後、3 営業日と劇的に短縮されました。2 つ目は運用コストの削減で、約 20% の削減を実現しています。「サーバー台数はここ数年で 1.5 倍に増えていますが、人件費を除く年間の IT コストは横ばいを維持しています」と竹田氏が語るように、コストの最適化が進んでいます。さらにハードウェア資産を保有しなくなったことで、数年おきに対応を迫られていたハードウェアのリプレース作業も不要になりました。

システム部員が運用保守のタスクから開放された結果、全社的な IT 活用の高度化に向けた業務に時間を割くことが可能になりました。以前は SAP ERP と営業系システムの運用/保守に追われていたのに対して、医薬品の品質に関わる信頼性保証、副作用情報、研究開発などのシステム領域にもシステム部員が関与し、IT の利活用の提案ができるようになっています。

「 IT インフラを考慮する必要がなくなった結果、システム部の仕事の進め方が変わりました。エンジニアは、要件定義、設計、マネジメントなどの上流業務に注力できるため、製薬会社ならではのシステム開発の面白さを感じられるようになったといいます。業務部門からも IT を使った業務効率化などについて気軽に相談できるようになったという声があり、期待が高まっていることを実感しています。」(竹田氏)


 

業務部門からのシステム部に対する信用が高まり、IT リテラシーの向上に向けた取り組みもしやすくなりました。今後はシステム部主導で RPA、Web 会議システムなど、高度な IT 活用や業務の効率化に向けた社員教育を積極的に展開していく考えです。社員の IT スキルが向上することでビジネス力が強化され、全社のマインドチェンジや働き方改革への貢献につながることが期待されています。

IT インフラについては、BCP に向けた DR 環境の構築も検討しています。また、システムの高度化に向けて、Amazon RDS などのデータベース、サーバーレスアーキテクチャー、マイクロサービスなどの活用も視野に入れ、固定資産を極力持たない方向にシフトしていくといいます。

沢井製薬は業務システムの IT インフラ以外にもコーポレートサイトのシステムも AWS への移行を開始するなど、クラウドシフトを継続していきます。竹田氏は「数年先を見据えた IT 全体のグランドデザインを描きながら、沢井製薬独自のデジタルトランスフォーメーションの実現に向けて、クラウドサービスを積極的に活用していきます。」と話しています。

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竹田 幸司 氏

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西川 俊之 氏


APN コンサルティングパートナー
株式会社日立システムズ  

幅広い規模・業種にわたる業務システムの構築と、多彩なサービスを生かしたシステム運用・監視・保守が強みの APN コンサルティングパートナー。 AWS と連携した独自のサービスによってお客さまのデジタライゼーションに貢献している。

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AWS への移行に関する詳細は、クラウド移行の詳細ページをご参照ください。