サービスインフラとして 40 台ほどのサーバーを利用していますが、これをオンプレミスでセットアップしていれば 10 人月を超える工数になったでしょう。1 人月を 100 万円とすると、1,000 万円以上のコストとなりますが、AWS で構築したことで期間も人件費も 1/3 程度に削減されました。
AWS を活用することでインフラ担当との調整が最小限で済み、削減できた工数はアプリケーションの迅速な提供のために費やすことができました。
土屋 敏行氏 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社 情報システム部 新ビジネス開発グループ 特命課長

SOMPO ホールディングスグループの中で国内生保事業を担う損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社は 1981 年に設立され、近年では「日本一イノベーティブな生命保険会社」として、国民が健康になることを応援する「健康応援企業」への変革を目指しています。その一環として、2016 年 9 月には健康サービスブランド「Linkx(リンククロス)」を立ち上げました。「新しい保険商品だけでなく、ウェブサイトやアプリなどを通してお客さまの健康を支えるサービスを提供したいと考えました。」と言うのは、事業企画部 課長代理の大島 由佳氏です。

現在では、スマートフォンアプリから利用できる健康情報アプリ「Linkx siru(リンククロス シル)」、生活習慣改善に向けたダイエットアプリ「Linkx reco(リンククロス レコ)」、健康促進を図る散歩アプリ「Linkx aruku(リンククロス アルク)」、人それぞれの「わたしらしい健康」をサポートする「Linkx」ブランドサイトなどを提供しています。

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健康応援企業への変革を推進するのためのアプリケーションやウェブサイト、IoT 等の新たな取組みには、様々な IT システムが駆使されています。とはいえ「保険事業の事務処理をシステム化するノウハウは蓄積してきましたが、コンシューマ向けのサービスのシステム構築経験はありませんでした」と言うのは、情報システム部 新ビジネス開発グループ 特命課長の土屋 敏行氏です。

さらにこれらの新しいサービスは、いわゆる「Systems of Engagement(SoE)」の領域にあり、この SoE の仕組みを多くのコンシューマに提供するためにモバイルの活用も必要でした。しかし、当時損保ジャパン日本興亜ひまわり生命ではコンシューマ向けモバイル対応システムの構築経験はまだなく、全く新しいサービスであるため今後どのように成長するかを見極めるのも難しい状況だったため、スモールスタートで SoE のシステムを迅速に構築できる環境が必要不可欠でした。

これらの新しいサービスを立ち上げるにあたって、ITインフラをオンプレミスで用意するのでは時間が足りず、またサービスの性質から事前のキャパシティプランニングが困難との考えがあり、ITインフラにはリソースの柔軟な拡張できるクラウドの活用方針が立てられました。

2015 年度の下期からクラウド利用の検討が開始され、社内に利用経験がある技術者がいたこと、さらには数多くの事例があったことなどから AWS が採用されました。「AWS はマーケットシェアが大きく、サービスラインナップも豊富です。さらに積極的に値下げに取り組んでいることも魅力のひとつです。その上でパートナーや技術者のコミュニティが充実しており、他のクラウドとは情報の厚みが違うと感じました」(土屋氏)

2016 年 3 月からまずは Linkx siru の具体的な要件定義を行い、5 月から開発を開始しました。8 月までにシステムの構築はほぼ完了し、その後のテストを経て 10 月にサービス提供を開始しました。「3 月スタートで、ハードウェアを購入しデータセンターにセットアップして、と進めていたら、10 月のサービス開始には間に合わなかったでしょう。少なくとも 2 ヶ月以上はスタートが遅れたと思います。AWS を採用したことで、ビジネスサイドの要望に応えることができました」(土屋氏)

2014 年の FISC(公益財団法人金融情報システムセンター)による「金融機関におけるクラウド利用に関する有識者検討会報告書」の取りまとめ、それを受けた 2015 年に安全対策基準(金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準・解説書)が改訂された状況を踏まえ、今回の新しいサービスについてクラウド利用の承認がなされました。

また、クラウドに関わる外部環境が変わり、クラウドを利用しないことが、ビジネス機会を逸失し競争優位性を下げることになりかねない、というリスクを IT 部門では認識しており、「そういう面からも AWS の利用は積極的に行うべきとの判断ができました」(土屋氏)

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損保ジャパン日本興亜ひまわり生命では、Amazon VPC を活用するとともに、サードパーティーのサーバーセキュリティや監視ツールなどを組み合わせることでセキュアなシステム基盤を構築しました。 「世界中に公開される Web サーバーを運用するので、安全性の高い環境が必要でした。セキュリティの観点からオンプレミスとクラウドを比較するということがよく聞かれますが、クラウドでなければできないセキュリティ対策もあるため、すべてをオンプレミスで作り込むのは現実的ではないと考えています」(土屋氏)

この運用共通基盤の上に Amazon EC2 や Amazon S3 を基本とし、データベースには Amazon Aurora を、さらには Amazon CloudFront や Elastic Load Balancing、Amazon ElastiCache、AWS Lambda などを組み合わせてサービスごとにシステムを構築しています。各サービスの基本的なセキュリティは、共通の運用基盤で確保されています。

Linkx siru の開発と並行し、ウェアラブルデバイスの Fitbit を社員および一部の契約者モニターに貸与し、その活動データを収集する仕組みの開発も進められました。このサービスではウェアラブルデバイスの Fitbit で集められるユーザーの活動データを収集し利用する仕組みも構築しています。Fitbit のデータは Fitbit 社のサーバーに蓄積され、そこから API 経由で取り出すことができます。ここで収集されたデータは個人の健康に関するデータでもあるため、ユーザーの許可を得たものだけを AWS の上に安全に収集する必要がありました。2016 年 4 月にまず社員に Fitbit 端末を配布し、活動データを収集する仕組みを構築しました。ユーザーからの許可情報のトークンを使い、歩数や分単位の心拍データなどを API 経由で Fitbit 社のサーバーから定期的に収集しています。このシステムは、Elastic Load Balancing や Amazon Aurora、AWS Lambda を組み合わせて 3 ヶ月という短期間で安全性の高い環境を構築しました。2016 年 11 月からは一部の契約者モニターからもデータの収集を開始しています。

損保ジャパン日本興亜ひまわり生命では、AWS 導入によるコスト削減も実現しています。 オンプレミスと比較するとハードウェアなどの調達費用が大きく低減され、同時にセットアップのための人件費も削減できています。「現在サービスインフラとして 40 台ほどのサーバーを利用していますが、これをオンプレミスでセットアップしていれば 10 人月を超える工数になったでしょう。1 人月を 100 万円とすると、1,000 万円以上のコストとなりますが、 AWS で構築したことで期間も人件費も 1/3 程度に削減されました。情報システム部には約 100 人の社員が在籍していますが、インフラ基盤に携わっている人数は多くありません。AWS を活用することでインフラ担当との調整が最小限で済み、削減できた工数はアプリケーションの迅速な提供のために費やすことができました」(土屋氏)

コンシューマ向けサービスを展開する上で必要となる可用性の確保でも、Elastic Load Balancing による負荷分散の仕組みがすでに確立されており、Amazon Aurora には標準機能で高度なデータ保護の仕組みがあることも、安全性の面で評価されています。「自前で用意すれば、膨大な手間とコストがかかったはずです。これらの機能には大きな安心感があり、むしろオーバースペックかなと思うくらいです」(土屋氏)

これまでシステム構築の際、インフラ部分はハードウェアベンダーなどに、アプリケーション部分は開発ベンダーに、と外部ベンダーに委託する形でしたが、「AWS を活用することで自分たちにシステム開発の主導権を取り戻すことができました」(土屋氏)。また、「AWS のおかげで IT 部門の人たちと一緒にサービスを作ることができました。これがなければ短期間での実現はできなかったと感じています。今後も走りながらバージョンアップを続け、より良いサービスに育てていく。そこでも、IT 部門と一緒に主導権を持って進められるメリットは大きいと考えています」と、大島氏も AWS 導入のメリットを感じています。

また、得られるデータをいかにして価値に変えるかも重要となります。損保ジャパン日本興亜ひまわり生命では、今後データ活用を推進するにあたり、一気に大規模なデータ活用のシステムを構築するのではなく、小さなサービスを組み合わせるマイクロサービス化で柔軟かつ迅速に作っていく方針です。このマイクロサービス化を進めるために AWS Lambda や Amazon API Gateway、Amazon Cognito など、クラウドならではのサービスの採用を検討しています。

「今後も Linkx ブランドのサービスに力を入れていきます。それを具現化するのが AWS ではないかと感じています」(大島氏)

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- 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社 情報システム部 新ビジネス開発グループ 特命課長 土屋 敏行氏
-損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社 事業企画部 課長代理 大島 由佳氏

 

AWS クラウドが金融サービスにおけるデータ管理にどのように役立つかに関する詳細は、クラウドでの金融サービスの詳細ページをご参照ください。