ソネットエンタテインメント株式会社(以下So-net)は約427万人(内ブロードバンド会員数:189万人) [2011年6月30日現在]の会員数を誇る大手インターネット接続事業者です。ネットワーク事業とメディア・エンタテインメント事業に注力しており、後 者の事業領域では2008年7月にソネット・メディア・ネットワークス株式会社を連結子会社化し、アドネットワークを中心としたインターネット広告事業を 強化しつつあります。
インターネット広告事業において重視されるのは「誰がどのメディアのどのページを、いつ、どのような経路から訪れ、何を探し、何分後に、どこから出て行っ たのか」といったビジターの行動特性を追ったログ情報です。既にSo-netでは1カ月分のログ情報を社内のファイルサーバに蓄積し分析していました。し かしながら近年、広告配信ビジネス市場の拡大と顧客数の増加に伴い、より長期間のログ情報を即座に分析し、それに基づいたより精度の高い出稿プランをクラ イアントに提案することが求められていました。
大容量のログ情報を迅速かつタイムリーに処理する -- この課題に対して2010年3月、So-netは5名から成る開発プロジェクトチームを立ち上げました。プロジェクトのリーダーであるサービス開発部の安 田崇浩氏は次のように述べています。「1日平均10GB、年間平均3.65TB(当時)ものログ情報を、自社構築のサーバに蓄積・分析するという案は、コ スト面でも運用面でも現実的とはいえませんでした。ちょうど私が別の業務でAmazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2)を使った経験がありましたので、クラウドを使えば、コストをかけて自社インフラを構築する必要も外部の専門企業に頼ることもなく、自社のエンジニ アチームだけで課題を解決できると考えました。ストレージリソースやコンピュータリソースを必要な時だけ使い、使った分だけ支払い、リソースの拡張や削減 も任意に行える -- 当時、こうしたニーズを全て満たし得るクラウドサービスはアマゾン ウェブ サービス(AWS)以外には見当たりませんでした」
AWSクラウドへの移行を決断してからわずか2カ月の準備・検証期間を経て、開発チームは2010年4月からAmazon Simple Storage Service (Amazon S3)へのログ情報のアップロードを開始、約半年後の同年10月から情報分析システムを本格稼働させました。アマゾンの米国東海岸リージョンに1年分 5TB(2011年4月時点)相当のデータをアップロードできたことで、それまで1カ月単位でしかできなかったログ分析が、年間単位で可能になりました。 また大規模解析の時間短縮にHadoopの利用も決めましたが、Hadoop環境の自社内での構築・運用はコストと要員の両面から困難なため、 Amazon Elastic MapReduce(Amazon EC2とAmazon S3上で稼働するHadoopフレームワーク)を導入しました。 さらに自社内ユーザのセキュリティを確保しつつ様々な分析ニーズにきめ細かく対応するために、Amazon Identity Access Management(Amazon IAM、権限管理機能)を追加しました。
お客様の広告ニーズに合わせたログ分析を行うために、So-netの開発チームはほぼ毎月のように新しいロジック(分析アルゴリズム)を開発し、分析精度 を上げています。安田崇浩氏は次のように述べています。「アマゾン ウェブ サービスの利用により、それまで当社でやりたくてもできなかったことが、わずかな準備期間と投資だけで実現できました。インフラ整備に余計な時間や手間を 割くことなく、自社のアプリケーション開発エンジニアチームだけで、膨大なログ情報を扱えるようになったのです。必要な時に十分な情報を取り出せるように なったおかげで、意志決定の迅速化と、お客様へのより適切な出稿プランの提示が可能になりました。これは変化の激しいインターネット広告業界において、非 常に大きな武器となります」
Amazon S3およびAmazon Elastic MapReduceの導入は、費用対効果の面でも大きなメリットをもたらしました。同様の分析システムをオンプレミスで構成した場合には専用ストレージや サーバ、データウェアハウスシステムなどで数千万円単位での支出が求められるところを、AWSのクラウドの利用により、初期投資は一切無く、月々50数万 円前後の運用費のみで実現できました。ほぼ20分の一以下の支出で収まった計算になります。
更にAmazon Elastic MapReduceに新たに導入されたスポットインスタンスを使う事で更なるコスト削減を実現しています。この効果について、シニアリサーチフェロー 工 学博士の竹内 彰一氏は次のように述べています。「Amazon Elastic MapReduceのスポットインスタンスを活用することにより、アドホックなデータ分析時のAWSの利用コストを約50%削減することができました。」
開発チームは、他の事業分野においてもAWSクラウドを使うことで「それまであきらめていた何か」を実現しクライアントに還元できるか、という次の段階に向かって検討を始めています。
ソネットエンタテインメント株式会社の情報は、http://www.so-net.ne.jpを、 ソネット・メディア・ネットワークス株式会社の情報は、http://www.so-netmedia.jp/をご覧ください 。