AWS を Torte のサービス基盤として採⽤することで、 6 か⽉という短期間で完成度の⾼いインフラ構築を実現し、 8 か⽉でサービスインすることができました。
ログ管理については、AWS Lambda によって通常の Amazon EC2 を利⽤する場合と⽐べて、管理コストを含めると 10 分の 1 以下に削減することができました。
高橋 優介 氏 株式会社トルテ エンジニア

株式会社サイバーエージェント(以下、CA)のグループ企業として 2016 年 11 ⽉に設⽴された株式会社トルテは、“女性からはじまる恋アプリ”という独⾃のコンセプトを掲げる恋愛・婚活マッチングサービス『Torte(トルテ)』を運営しています。コミュニケーションは女性からはじまることに限定されるほか、女性が男性を評価するクチコミ機能を設けるなど、ユニークなコンセプトで利用者は拡大しています。

CA グループでは近年、恋活・婚活マッチングサービス市場の成⻑を踏まえ、これらを新たな注力市場として位置付けています。2016 年 12 月には、グループ内で運営する 4 つのマッチングサービスを横断した運営組織『カップリングユニオン』を発足させ、テクノロジーや運用ノウハウを共有する取り組みも開始しています。

Torte のサービスは、運営会社の設⽴から約 10 か⽉後となる 2017 年 8 ⽉にスタートしました。「スピードが求められる現在の市場環境を考えても、早期のサービスインに向けて、短期間でのインフラ構築、それと並⾏したサーバーサイドやクライアントサイドの開発作業など、課題は⼭積みでした。」と話すのは、株式会社トルテ エンジニアの⾼橋 優介⽒です。

サービスの提供基盤となるインフラの選定において、CA グループはさまざまな事業要件を踏まえた最適解を選定することを基本⽅針としています。Torte の⽴ち上げで優先課題となったのは、やはり「スピード」です。そのためインフラ選定の具体的な議論は、当初から調達スピードの⾯でアドバンテージのあるクラウドを前提に進められました。

CA グループで Torte に先⾏して提供されているマッチングサービスの関係者から意⾒を集約したところ、図らずもカップリングユニオンの 3 つのサービスは、すべて AWS 上で運営されていました。クラウドのスピード感に加えて、先⾏サービスで蓄積されたグループ内のノウハウを共有できるメリットは、AWS の選択を後押ししました。「こうした状況からも、サービスの提供基盤として AWS を選択することに異論は出ませんでしたが、後発でサービスをスタートする私たちにとって、それまでノウハウに新たな付加価値をもたらす技術的なチャレンジは不可⽋でした。」と株式会社サイバーエージェント 技術本部 Service Reliability Group Infrastructure Engineer の柘植 翔太⽒は当時を振り返ります。そこで着⽬したのが、リレーショナルデータベースエンジンである Amazon Aurora でした。「インフラをスムーズに⽴ち上げ、その後もアプリ側中心で運用していくことができたのも、フルマネージド型の Amazon Aurora があったからこそです。特にインスタンスタイプ変更が早く、データを保って行えるので、負荷試験にかかる時間を短縮できました。」(柘植⽒)

また同社のチャレンジで特徴的なのが、Amazon EC2 Container Service(ECS) を活⽤したクラスタ構成と、Amazon Kinesis Streams、AWS Lambda を使ったログ管理の構成です。マネージド型でクラスタ管理を AWS に任せられる Amazon ECS によって、コンテナのスケーリングが容易になり、急なアクセスの増加にも柔軟に対応することができます。「Amazon EC2 インスタンスと Amazon ECS コンテナという 2 つのレイヤーで、段階的にスケーリングするように設計し、突発的なアクセスに対しても対応できるように考えました。」と話すのは、株式会社サイバーエージェント 技術本部 Service Reliability Group Infrastructure Engineer のトルガエフ タメルラン⽒です。

ログ管理については、⼤量のデータをリアルタイムで処理する為に、AWS Lambda とAmazon Kinesis Streams を活⽤しています。マッチングサービスでは、アクセスログ、アプリケーションログ、⾏動ログ、監視ログといった重要なログが⼤量にあり、それらをすべて欠損なく保管して転送する仕組みが必要である。その要件にマッチしていたのが、Amazon Kinesis Streams でした。「⼀定期間は確実にデータが保持される Amazon Kinesis Streams であれば、データを受け渡す AWS Lambda 側でエラーがあったとしても、Lambdaのコードを修正し、再度デプロイすることで容易にリカバリーできます。また、運⽤の効率化やコストの軽減においてもメリットが得られると判断しました。」(トルガエフ⽒)

Torte のサービスにおいて、Amazon Kinesis Streams で保持される各種ログは、サーバーレスでコードを実⾏する AWS Lambda を介して、ログ分析の Amazon Elasticsearch Service 等に送り、⽤途に合わせた解析を⾏っています。 

「トルテ様 システム構成図」

約 6 か⽉間という短期間でのインフラの構築によって、Torte は当初の予定どおりにサービスインを迎えることができました。この成功要因の 1 つとして、AWS のエンタープライズサポートの効果的な活⽤が挙げられます。同社では、インフラの構想段階から AWS のソリューションアーキテクトと共に、週 1 回の頻度でディスカッションを重ねながら、ベストプラクティスを模索しました。「例えば、ログデータの転送ロジックに関しては、最終的に 9 パターンに及ぶ設計を共に作成し、作成過程において、豊富な経験と最新の知⾒に基づくアドバイスがあり、このことが完成度及び信頼性の⾼いインフラ構成につながりました。」(柘植⽒)

具体的な成果としては、オートスケールが可能な Amazon ECS でクラスタを構成したことで管理コストを抑制できたほか、サーバーレスの AWS Lambda の活⽤により、 従来どおりの⼿法でサーバーを構築した場合と⽐べて⼤幅なコスト削減が実現しています。「今回の構成でログ管理に対して AWS Lambda を適⽤した結果、 Amazon EC2 を利⽤する場合と⽐べて、管理コストを含めると 10 分の 1 以下に削減できました。」(⾼橋⽒)

Torte のサービスイン後も、同社はエンタープライズサポートを通じてインフラの改善に取り組みながら、さまざまなチャレンジを継続しています。「今後は AWS X-Ray、BI サービスの Amazon QuickSight などの導入も検討しています。Torte のサービス向上が期待出来る AWS のサービスは、これからも積極的に採⽤していきたいと思います。」(柘植⽒)

こうしたインフラの強化が、Torte の品質向上につながることは言うまでもありません。同社では、今後もさまざまな施策を推進しながら、多くのお客様に新しい出会いの機会と体験を提供していきます。「女性主体の世界観をより多くの方に体験していていただけるよう、安心してご利用いただける機能をより強化していきます。」(⾼橋⽒)

- 株式会社サイバーエージェント
  技術本部 Service Reliability Group Infrastructure Engineer
  柘植 翔太 氏

- 株式会社トルテ エンジニア 
  高橋 優介 氏

- 株式会社サイバーエージェント
  技術本部 Service Reliability Group Infrastructure Engineer
  トルガエフ タメルラン 氏

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