継続的な進化を続ける AWS であれば、新しいインスタンスに乗り換えるだけで求められる処理性能を実現できます。
RECAIUS にとって、もはや欠かせない存在です。
上原 信悟 氏 東芝デジタルソリューションズ株式会社 RECAIUS 事業推進部 応用推進部 応用推進第一担当 グループ長

2015 年 10 月にリリースしたコミュニケーション AI『RECAIUS』のプラットフォームに AWS を採用。ホスティング環境から AWS への移行により、インフラ調達時間は数十時間から数分に短縮。スケーラビリティーと柔軟性も向上しハードウェアに依存することなく必要なリソースが確保できるようになりました。運用負荷が軽減したことで人的コストは約 20 %から 40 %の削減が実現しています。『RECAIUSTM』の Web サーバーと、実行基盤に Amazon EC2、各種ログ情報の管理に Amazon S3、セッション情報の管理に Amazon RDS を採用して基本構成を構築。現在、音声合成の実行基盤に AWS Lambda、セッション情報の管理に Amazon DynamoDB、コンテナ管理に Amazon ECS を採用した環境を構築して新アーキテクチャへの移行を図っています。


 

東芝デジタルソリューションズは、東芝の社内カンパニーの統合・組織再編により、2003 年 10 月に東芝から分社した東芝ソリューションを承継先として 2017 年 7 月に設立されました。さまざまな業種のシステムインテグレーションを手がけるとともに、同社独自の IoT アーキテクチャー『SPINEXTM(スパインエックス)』をベースに、IoT 技術を活用したデジタルトランスフォーメーションの実現を支援しています。SPINEX を形成する技術群の1つとして、モノに関わるアナリティクス AI『SATLYSTM(サトリス)』と、人に関わるコミュニケーション AI 『RECAIUSTM』の2つの AI があります。

RECAIUS は、音声や映像から人の発話や行動の意図・状況を理解し、人の行動を支援する人に寄り添う コミュニケーション AI です。「国内初のワープロから育んできた高度な日本語処理技術や、テレビや映像機器などの画像処理技術を持つ東芝が、半世紀にわたって研究開発してきたメディア知識処理技術を体系化したサービスです。」と語るのは、RECAIUS 事業推進部 応用推進部 応用推進第一担当 グループ長の上原 信悟氏です。

RECAIUS は現在、音声認識、音声合成、翻訳、対話、意図理解、画像認識という 6 つのサービス群があり、それらをお客様の用途に合わせて SaaS、PaaS(WebAPI)、組み込みソフトの形式で提供しています。その中で、SaaS と PaaS のプラットフォームに採用しているのが AWS のサービスです。

 

同社が RECAIUS のプラットフォームに AWS を採用するに至った理由は、東芝グループが AWS を活用し、実績を培ってきたことにありました。2006 年頃からクラウド活用の検討が始まり、2010 年頃から情報系システムのインフラコストを軽減する目的で、AWS への切り替えに着手し、その後、活用範囲を広げてきました。こうした実績を踏まえて、RECAIUSに も AWS が採用されました。RECAIUS 事業推進部 営業部 営業企画担当 グループ長 佐久間 敦氏は「選定の理由は、他のクラウドサービスを圧倒するコストパフォーマンスです。さらに AWS はさまざまな実績があり、安全性や信頼性の面においてもベストな選択だと判断しました。」と語ります。

2015 年 10 月にリリースした RECAIUS には、 Web サーバーと、音声認識・音声合成・翻訳・対話・意図理解・画像認識の実行基盤に Amazon EC2、各種ログ情報の管理に Amazon S3、セッション情報の管理に Amazon RDS を採用して基本となるアーキテクチャーを構築しました。その後、RECAIUS の機能を拡張しながらインフラのさらなる効率化を図る中で、音声合成の実行基盤にサーバーレスの AWS Lambda、セッション情報の管理にマネージド NoSQL データベースの Amazon DynamoDB、コンテナ管理に Amazon ECS を採用し、導入を進めています。

RECAIUS のプラットフォームを AWS の各種サービスで構築したことで、2つの大きな効果がありました。1つはインフラの調達時間の短縮です。東芝では、RECAIUS をリリースする以前から音声認識や音声合成の研究に取り組んでおり、当時はホスティング環境で運用していたため、インフラ調達には数十時間を要していました。RECAIUS を AWS に移行したことで、わずか数分でサーバーを調達できるようになりました。上原氏は「一度インフラ環境を立ち上げてみて要求仕様にマッチしなければ、サイジングやインスタンスを検討し直し、すぐに再構築できることは大きなメリットです。」と語ります。

もう 1つの効果はスケーラビリティーと柔軟性の向上です。ハードウェアに依存した処理量しか確保できなかったホスティング環境と異なり、AWS であれば必要な時に必要なリソースを即座に確保できます。RECAIUS の利用者の処理量が急激に増加しても、無停止でインスタンスを追加してスケールアップすることが可能です。

「インスタンスタイプを容易に変えられるので、処理するデータ量に合わせて最適化ができます。AI や機械学習においてはインフラの性能がパフォーマンスに大きく影響します。継続的な進化を続ける AWS であれば、新しいインスタンスに乗り換えるだけで求められる処理速度を達成できます。AI プラットフォームにとってもはや欠かせない存在です。」(上原氏)

2018 年 4 月から本稼働を予定している新しいアーキテクチャーでは、音声合成の実行基盤が Lambda に切り替わることで、大幅なパフォーマンスの向上が期待でき、テストでも想定どおりの性能値を確認済みです。

可用性に関しては複数のマシンを並行稼働して確保していますが、リージョン間のレベルでも可用性構成を構築できることにもメリットを感じているといいます。プラットフォームのセキュリティ面を全面的に AWS に任せられるため、東芝デジタルソリューションズ側はコア領域である PaaS や SaaS 部分のセキュリティに注力することができます。上原氏は「ハードウェアの調達からセットアップ、インフラ運用まで含めると、従来のホスティング環境と比べて人的コストの面でおおよそ 20 %から 40 %は削減できたと実感しています。調達時間の短縮や効率化で生まれた時間を企画などよりクリエィティブな業務に振り分けられるようになりました。」と語っています。

今後 RECAIUS の PaaS 系のサービスを提供する際にインターネットを経由することなくお客様の VPC 環境にダイレクトにつなぐ「AWS PrivateLink」の利用を検討しています。「これによりインターネットのセキュリティリスクを気にする必要がなくなります。お客様に RECAIUS の提案がしやすくなります。」と上原氏は期待を寄せます。

さらに将来的な展望として、 HPC (ハイパフォーマンス・コンピューティング)を利用している機械学習のプラットフォームを AWS の HPC 系のサービスの利用に移行することでコスト最適化を図ることも視野に入れています。

技術的な側面だけでなく、RECAIUS の営業推進に関しても今後は AWS との連携を強化しながらお客様に提案を続けていく方針です。RECAIUS 事業推進部 応用推進部 参事の岸本 麻須美氏は「AWS の担当者に問合せをすると的確な回答がすぐにいただけるのでとても満足しています。今後も信頼できるパートナーとして、Win-Win の関係でビジネスを推進していきたいですね。」と話します。

上原 信悟 氏

岸本 麻須美 氏

佐久間 敦 氏


AWS クラウドが AI および 機械学習用途にどのように役立つかに関する詳細は、AWS での機械学習 ページをご参照ください。