鶴見酒造株式会社

酒造りに欠かせない麹・酒母・もろみの温度データをクラウドに集約して PC やスマートフォンで遠隔監視

グラフによる可視化により酒質の向上と技術継承を実現

2022

愛知県津島市で上質な日本酒を製造する鶴見酒造株式会社。同社は、高品質の酒造りと、酒造現場の労働環境改善に向けて、AWS IoT などのアマゾン ウェブ サービス(AWS)のサービスを活用したラトックシステム株式会社の酒造品温モニタリングシステム『もろみ日誌クラウド』を導入しました。遠隔で麹・酒母・もろみの温度がリアルタイムに把握でき、温度変化をグラフ上で可視化する『もろみ日誌クラウド』により、酒質が大幅に向上。温度データを取得し、複数の PC やスマートフォンからのデータ閲覧を可能としています。

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品温を手元で確認し、温度変化をグラフで追えるようになったことで的確に判断ができ、美味しいお酒が造れるようになりました。その結果として、2 ~ 3 年の間に国内外の清酒品評会で金賞、優等賞などを立て続けに受賞し、ブランド力を高めることができました

和田 真輔 氏
鶴見酒造株式会社 代表取締役社長

酒質の向上と技術継承に向け 酒造品温管理システムの導入を検討

鶴見酒造は「信長の台所」として知られる尾張津島で 1873 年に創業した老舗の酒蔵です。兵庫県産特 A 地区の山田錦を 100% 使用した『我山』、山田錦を徹底した低温管理で醸した『山荘』などの高級酒を製造。南部杜氏の技術を活かした手造りによる醸造の良さを守りつつ、近代的な品質管理を調和させながら、より高品質の日本酒の開発に取り組んでいます。

酒造りの工程では、蒸米後の麹づくり、酒母づくり、もろみづくりの 3 つが重要とされ、厳しい温度管理が求められます。従来は酒蔵に足を運んでこれらの温度を確認し、酒造りの最高責任者である杜氏の技術と経験に頼って製造してきました。しかし、最近の酒造現場では杜氏の高齢化、人手不足、技術の継承が問題となっており、働き方改革が必要になっています。

鶴見酒造でも同様の課題を抱えており、杜氏や酒造職人(蔵人)の勘所だけに頼らない製造方法を模索していました。その中で、代表取締役社長の和田真輔氏は、先進的な酒蔵が採用している温度管理の自動化に着目し、麹・酒母・もろみの温度を可視化するシステムの導入を検討しました。「より美味しいお酒を安定して造り続けるためには、これまでの杜氏の技術と経験を活かしながらも誰もが品温を確認しながら品質管理ができ、酒造りの技術を次世代に継承するシステムを導入するべきと考えました」と和田氏は語ります。

ゲートウェイに集約した品温データをAWS IoT を介してクラウドにアップロード

2019 年から麹・酒母・もろみの温度の可視化に取り組み始めた鶴見酒造は、最初に他社のソリューションを利用し、有線ケーブルで温度センサーと PC をつなぐ形で温度を管理していました。しかし、データを取得する間隔が長い、遠隔監視ができないなどの問題で利用を断念。改めて検討した結果、2020 年 10 月にラトックシステムの『もろみ日誌(PC 版)』を導入して品温と室温の遠隔監視を実現し、翌年の 2021 年 10 月には PC 版を進化させた『もろみ日誌クラウド』にバージョンアップしました。

「もろみ日誌を採用した理由は、無線で品温や室温のデータを一元的に収集して、PC やスマートフォンから遠隔監視ができることです。加えて、温度の変化をグラフ上に可視化できることが決め手となりました。PC 版からクラウド版への進化により無線の安定度も増し、データの取得頻度も高まりました」(和田氏)

もろみ日誌クラウドは、品温センサーのデータをスマートメーター向けの無線規格 Wi-SUN を介してゲートウェイに接続し、携帯電話の回線を利用した LTE-M 通信を介して AWS のクラウド環境にデータをアップロードします。クラウドに蓄積されたデータには、PC やスマートフォンを使ってどこからでもアクセスができ、リアルタイムに温度を確認したり、温度変化のグラフを確認したり、帳票を作成して出力したりすることができます。

もろみ日誌クラウドの環境は、AWS IoT をはじめ、AWS LambdaAmazon DynamoDBAmazon S3 などで構築されています。ラトックシステムの営業部、進藤 勇二氏は「当社は 2015 年発売の家電を遠隔操作する製品を開発した際に AWS を採用して以来、AWS の技術支援を受けながらさまざまな IoT 製品を開発してきました。すでに AWS の知識・ノウハウが蓄積されていることから、もろみ日誌クラウドで AWS を採用するのは自然の流れでした」と語ります。

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データやグラフを技術継承に活用し若手社員中心のチーム醸造にシフト

現在、鶴見酒造ではもろみ日誌クラウドを 10 月~ 4 月の寒造りで利用しています。もろみタンクや麹室など数か所に設置した温度センサーでデータを 10 分単位で取得し、AWS 上にアップロード。データは同社の社員が必要に応じて見ながら酒造りに活用し、異常があれば即座に駆け付けて必要な作業を行っています。品温が設定温度を外れた時には、スマートフォンにアラート通知する機能も装備しています。

同社がもろみ日誌クラウドの導入によって得られた効果は主に 3 つあります。その中の最大の効果は、酒質が向上したことです。 2022年度全米日本酒歓評会にて、大吟醸 我山、純米大吟醸 我山が金賞を受賞しました。

「品温を手元で確認し、温度変化をグラフで追えるようになったことで的確に判断ができ、美味しいお酒が造れるようになりました。その結果として、『我山』などが 2 ~ 3 年の間に国内外の清酒品評会で金賞、優等賞などを立て続けに受賞し、ブランド力を高めることができました」(和田氏)

2 つめの効果は、労働環境が改善され、夜間作業の負荷が大幅に軽減されたことです。日本酒造りは泊まり込みで、夜間も 2、3 時間おきに品温を確認しています。導入後は自宅にいながら品温が確認でき、自動製麹機に作業を任せることができるため、泊まりの作業がなくなりました。結果として働き方改革が実現し、従業員のモチベーション向上にもつながっています。

3 つめは、これまで経験や技術に頼っていた作業をデータやグラフで可視化したことで、技術継承に活用できるようになったことです。その結果、2021 年からは外部の杜氏や蔵人に頼らず、南部杜氏の資格を持つ若手社員中心のチーム醸造にシフトしました。

「杜氏の頭の中にしかなかった酒造りのノウハウを社員全員で共有することができ、温度変化のタイミングで、どの作業をすればいいということが誰でもわかるようになりました。日々の研鑽が欠かせない酒造りにおいて、社員の醸造スキルは短期間で向上しており、将来の人材育成にも役立っています」(和田氏)

もろみ日誌クラウドを温調器と連携し 設定温度の変更をスマートフォンで操作へ

鶴見酒造では今後、もろみ日誌クラウドを温調器と連携し、温調器の設定温度を PC やスマートフォンを使って遠隔で変更できるようにする計画で、現在はラトックシステムとともに機能追加に向けた取り組みを進めています。

鶴見酒造としては、2022 年秋頃に敷地面積約 4,000㎡、地上 2 階の「新醸造蔵」が完成する予定です。先進の醸造設備と、温度・湿度を細かく管理できる設備を完備した新醸造蔵では、年間を通じて日本酒を醸造する四季醸造に移行する計画で、四季醸造でももろみ日誌クラウドの活躍が期待されています。

「ラトックシステムとはこれまでの 2 年間、二人三脚で試行錯誤しながらもろみ日誌クラウドの導入に取り組んできました。私たちの無理難題にもフットワークよく応えてくださり、とても感謝しています。今後も酒造りに欠かせないパートナーとして、さまざまな支援をお願いします」(和田氏)

衣畑 昌範 氏

和田 真輔 氏


カスタマープロフィール:鶴見酒造株式会社

  • 創業: 1873 年
  • 事業内容:『我山』『山荘』『神鶴』等、高級日本酒の製造・販売

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • 酒質の向上(国内外の清酒品評会で金賞、優等賞などを受賞)
  • 労働環境の改善(泊まり込み勤務の解消)
  • 技術継承による若手社員中心の醸造へのシフト
  • 将来の人材育成への貢献
  • 温調器との連携による設定温度の遠隔変更を検討

AWS セレクトティアサービスパートナー

ラトックシステム株式会社

大阪に本社を構える 1983 年創業のパソコン・スマホ周辺機器メーカー。IoTデバイスのハードからクラウド、アプリまでワンストップで開発する。

温度管理やリモートコントロール、環境可視化などをパッケージで提供。AWS セレクトティア サービスパートナーとして、お客様のニーズに合わせたソリューション提案もおこなっている。

NHN テコラス株式会社

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