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Amazon QuickSight の生成 AI アシスタンスを使用して小売データを分析する
Amazon QuickSight は AWS が提供するクラウドネイティブの統合型 Business Intelligence(BI) サービスです。サーバーレスのため、運用管理の負担が少ないだけでなく、ビジネスユーザーがデータから多くのインサイトを得られる機能を提供しています。Amazon QuickSight は継続的に機能強化を続けており、2024年4月には、生成 BI 機能である Amazon Q in QuickSight が一般提供が開始されました。Amazon Q in QuickSight により、ビジネスアナリストやビジネスユーザーは自然言語を使用して簡単にビジュアルを作成したり、データから洞察を得ることができます。
このたび、小売向けの生成 BI 機能を利用できるサンプルダッシュボードを DemoCentral 上のこちらで公開しました。本記事ではサンプルダッシュボードの使い方を解説します。
BI ダッシュボードにおける生成 BI 機能のニーズ
AWS では、小売り業界で頻繁に使われる可視化パターンを盛り込んだ Amazon QuickSight のダッシュボードとして、以前よりDemoCentral のこちらで公開しています。経営層、商品企画者、店長、マーケターなどの活用シーンで、売上が目標に達しているかを、時系列、商品、販売チャネルといった観点で分析してインサイトを得ることができ、こちらの記事で解説しています。
実際にダッシュボードが利用される状況を考えてみると、ダッシュボードにはない分析をしたい場合があります(ダッシュボードからの気付きにより新たな仮説や疑問が生じるので、悪いことではありません)。ダッシュボードを作成するビジネスアナリストではなく、参照がメインの経営層や店長などのビジネスユーザーにとっては、都度ビジネスアナリストにダッシュボードの作成を依頼せずにすぐに知りたいというニーズは大いにあり得ます。また、ふわっとした仮説や疑問に対してダッシュボードを作成することも現実的ではありません。
整理すると、以下のニーズとなります。
- ダッシュボードにない分析をしたい
- ダッシュボード開発に時間をかけたくない
- ダッシュボード操作(フィルターなど)の教育に時間をかけたくない(または、操作を覚えるのが面倒)
このような、完成度の高いダッシュボードをはじめから用意せずにスモールスタートでデータ活用を始めたい、というニーズに対して、Amazon Q in QuickSight の生成 BI を使用したマルチビジュアル質疑応答エクスペリエンスが有効です。ダッシュボードで表現されていないデータに対して自然言語で質問をすると、ビジュアルと文章による回答が返されます。
サンプルダッシュボードの概要
サンプルダッシュボードは 4つのタブから構成されており、メインとなるのが一番左の 売上分析 タブです。
図1 : 売上分析 タブ
こちらは、売上全体の状況を商品カテゴリと販売チャネルの観点から分析することを狙いとして、表1 に示す 3 つのパートに分かれています。
パート | 説明 | 関心のあるユーザー(例) |
---|---|---|
全体 | 達成率、上位の店舗や部門、年間遷移を把握するための可視化 | 経営層 |
部門、店舗:概要 | 部門→商品や、地域→店舗、についての売上を分析するための可視化 | 店長、商品企画者 |
部門、店舗:明細 | 部門(商品)や店舗についての明細を分析するためのピボットテーブル | 同上 |
表1 : 売上分析 タブの構成説明
前述した以前からあるダッシュボードと比較するとシンプルな作りになっていますが、スモールスタートでデータ活用を始めているという想定です。例えば、レビューデータはあるものの、マーケターから分析のニーズが出てきていないためビジュアル化されていません(一旦どういったデータがあるかだけ レビューデータ タブに表示しています)。
Amazon Q in QuickSight によるダッシュボードにはない分析の実施
サンプルダッシュボードには、Amazon Q in QuickSight の質疑応答機能が実装されています(※1)。DemoCentral では、埋め込みのエクスペリエンスとして実装されており、ページ上部に質問バーを表示する形式と、全画面でフル表示する 2 つのオプションがあります。
質疑応答の利用については、Qサンプル質問①② タブにて、質問していただけるサンプル質問を用意しています(※2)。ダッシュボードにある店舗と商品に対しての掘り下げや比較といった詳細分析に加えて、レビューの分析を、自然言語で問い合わせて洞察を得ることができます。
以下は、店舗同士の売上達成率を比較したい場合の問い合わせと回答です。売上達成率の全体、各店舗、月毎の遷移が右側でビジュアル化されているのと、左側でそれらを要約した文章が生成されています。
図2 : Amazon Q in QuickSight の質疑応答機能の例 – 店舗同士の売上達成率を比較
期待するビジュアルが得られない場合は、より直感的なビジュアル形式を選択することもできます。以下の例は、売上高トップ 3 部門の売上高(前月比)についての問い合わせと回答です。増減を直感的に把握するため、表形式から水平棒グラフに変更しています。
図3 : Amazon Q in QuickSight の質疑応答機能の例 – 売上高トップ3部門の売上遷移
ビジュアルの表示形式だけでなく、推奨インサイトを確認することもできます。サンプル質問を参考に、色々と試してみてください。
(※1)機能の詳細については、こちらのブログにて紹介されています。
(※2)生成 BI 機能は 2024 年 12月時点でまだ日本語を正式サポートしていませんが、今回のように日本語データを含む場合も、英語で質問をすることでできるだけ正確な回答を受け取ることができるようになります。
実際の問い合わせやフィードバックに基づくダッシュボードの充実化
Amazon Q in QuickSight の質疑応答機能を利用するには、トピックというデータセットのコレクション定義を設定する必要があります。トピックには、ユーザーが実際にした質問や、フィードバックの状況を参照することができます。回答の精度を高めるためにレビューして、設定をアップデートして精度を高めることができます。
質疑応答機能を充実化する以外にも、頻繁に問い合わせされているものについてはダッシュボードに追加することもできます。問い合わせをしなくても欲しい情報を素早く入手できるようになるので、新たな仮説や疑問が生じて、Amazon Q in QuickSight で問い合わせる、というデータ分析のサイクルができるかもしれません。
図 4 : トピックの管理者は Suggested Questions タブより多く問い合わせられている質問を確認できる
今回紹介しているサンプルダッシュボードは、スモールスタートでデータを活用を始めているという想定で以前よりあるサンプルダッシュボードと比較するとシンプルな作りであることを説明しました。例えば以下のような問い合わせから、以前よりあるサンプルダッシュボードのシート作成のきっかけとすることで、シンプルなダッシュボードをビジネスユーザーの実際のニーズに合わせて充実化することができます。
- 店舗同士の比較に関する問い合わせ → 自店vs類似店 シート作成へ
- 返品に関する問い合わせ → 返品調査 シート作成へ
- レビューに関する問い合わせ → 商品レビュー シート作成へ
まとめ
本記事では、BI ダッシュボードにおける生成 BI 機能のニーズと、先日公開された小売向けの生成 BI 機能を利用できる Amazon QuickSight によるサンプルダッシュボードの紹介と問い合わせ例、そしてダッシュボードの充実化方法について紹介しました。
本記事では紹介しませんでしたが、Amazon Q in QuickSight は、自然言語でダッシュボードを作成やビジュアルの変更、関数などの計算フィールドの作成機能も提供しています。ビジネスユーザーだけでなく、ビジネスアナリストも含めたデータ分析をAmazon QuickSight は包括的に支援しています。
図 5 : Amazon Q in QuickSight によるデータ分析の促進イメージ
是非、サンプルダッシュボードを触れていただき、生成 BI によるデータ分析の可能性について体験してみてください!
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本ブログは、ソリューションアーキテクトの平井が作成しました。