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Oracle Database を Amazon Aurora に移行する方法

この投稿では、商用データベースから Amazon Aurora への移行を容易にするために AWS Schema Conversion Tool (AWS SCT) と AWS Database Migration Service (AWS DMS) をどのように使えるかの概要をお伝えします。今回は、Oracleから Amazon Aurora with MySQL Compatibility への移行にフォーカスします。

データベースエンジンの変更は不安を伴うかもしれません。しかし、Amazon Aurora のようなスケーラビリティやコスト効果の高いフルマネージドサービスのバリュープロポジションは、それに挑戦する価値を生み出します。その手順を簡単にするツールがある場合は特にです。データベースをあるエンジンからほかのものに移行するとき、主に2つのことを考慮する必要があります。スキーマとコードオブジェクトの変換と、データ自身の移行と変換です。幸いにも、データベースの変換と移行の両方を容易にするツールをAWSは用意しています。

AWS Schema Conversion Tool は移行元データベースのスキーマとカスタムコードの大部分を新しい移行先データベースと互換性のあるフォーマットに自動的に変換することで、異なるプラットフォーム間でのデータベース移行をシンプルにします。このツールが変換するカスタムコードには、ビューやストアドプロシージャ、ファンクションを含みます。このツールで自動変換できない一部のコードは明確に示されるので、ユーザー自身でそれを変換することができます。AWS Database Migration Service は最小限のダウンタイムでデータを簡単かつ安全に移行することを手助けします。

すばらしい! では、どこから始まれば良いのでしょう?

AWS SCT での移行手順

通常、移行の最初のステップは実現可能性と作業量のアセスメントです。現行のOracleからAuroraにデータベースを移行するために要する作業量の大枠な概要を AWS SCT は生成することができます。SCTはいくつかのOS上で動作しますが、このブログではWindows上で動かします。SCTをダウンロードするためには、マニュアルの AWS Schema Conversion Tool のインストールと更新 をご覧ください。SCTのマニュアル全体を見たい場合は AWS Schema Conversion Tool とは からご覧ください。

この投稿ではSCTのイストールや構成については触れませんが、注意点は移行元と移行先のデータベースにSCTを接続するために、OracleとMySQLのドライバーをインストールする必要があることです。移行元のOracleに接続した後、スキーマのいずれかを右クリックしてアセスメントレポートを作成できます。アセスメントレポートはこのスキーマがどれくらいOracleからAuroraに自動変換されるのかと、自動変換後に残された作業量がどれくらいなのかの概要を教えてくれます。以下がレポートの例です。

Database Objects with Conversion Actions for Amazon Aurora

アセスメントレポートに加えて、SCTは各オブジェクトがどれくらい正確に変換されるかも教えてくれます。もしあるオブジェクトが変換できない場合、SCTはその理由と、状況を改善するためのヒントを教えてくれます。

Database Objects with Conversion Actions for Amazon Aurora

スキーマの100%がOracleからAuroraに変換されない場合、いくつかの方法で状況を改善できます。

  • 移行元のOracleのデータベース上のオブジェクトを変更して、SCTでAuroraに変換できるようにする
  • スキーマをひとまず変換し、SCTによって生成されたスクリプトを変更してからAuroraデータベースに適用する
  • 変換できないオブジェクトを無視し、移行先でそれらを置き換えるか無視する。たとえば、Oracleのsys.dbms_randomパッケージを呼び出すファンクションがあるとします。このパッケージはAuroraには存在しません。この問題を解決するには以下のことができます。
    • ランダム値の生成をアプリケーションコードに移し、それをパラメーターとしてファンクションに渡します。この変更は、変換前の移行元データベースまたは変換後の移行先データベースで行うことができます。
    • SCTで生成されたコードを、MySQLに存在するRAND()ファンクションを使うように変更し、新しいコードをAuroraデータベースに適用します。

その他の例として、一意の識別子を生成するためにOracleのシーケンスを使っているとします。Auroraはシーケンスをサポートしていないので、修正するために以下を実行してください。

  • 自動的に一意の識別子を生成するAuroraのauto-increment機能を使う。この方法で行く場合は、Auroraデータベースにスキーマを作成した後で、移行先のテーブルを変更するためのスクリプトを作成することをお勧めします。
  • 一意の識別を生成する何か別の方法(ファンクションや類似のもの)を作成し、シーケンスを参照している部分を新しいファンクションで置き換える。これは変換前に移行元のOracle上で実施することも、移行先のAuroraで実施することもできます。
  • 両方の手法を使う必要があるかもしれません。

一般的に、移行の一環としてSCTを使うための良い取り組み方には以下を含みます。

  • SCTアセスメントレポートを作成し、移行のギャップを埋める計画を立てる。もし移行候補となる複数のシステムがある場合は、どのシステムから最初に取り組むべきかの決定に役立ちます。
  • Action Items を確認し、変換に失敗した各項目の適切な処理を決定する。
  • 新しいAuroraデータベースに対してアプリケーションをテストしながら、AWS Database Migration Service と連携して新しいスキーマにデータをロードし、この処理を繰り返す

AWS DMS での移行手順

AWS DMS は移行元のOracleデータベースから移行先の新しいAuroraデータベースにデータをロードするときに使えます。DMSの素晴らしい点は、データを丸ごとロードすることに加えて、実行中のトランザクションをキャプチャして適用することです。カットオーバーの準備が整うまで、Oracleの移行元データベースとAuroraの移行先データベースを同期させつづけます。このアプローチによって、移行を完了させるために必要な停止時間を大幅に短縮することができます。DMSマイグレーションには、移行元エンドポイントであるOracle、移行先エンドポイントであるAurora、レプリケーションサーバー、タスクを含みます。

OracleからAuroraに移行するとき、既存データを移行し、進行中の更新をレプリケーションするタスクを構成したいでしょう。これにより、データ全体の移行中に実行されたトランザクションをキャプチャするようにDMSに指示します。データ全体がロードされると、DMSはキャプチャされたトランザクションの適用を開始し、OracleとAuroraのデーベースの同期を開始します。Auroraをカットオーバーする準備ができたら、アプリケーションを停止し、残ったトランザクションをDMSに適用させ、新しいAuroraデータベースに接続するアプリケーションを開始するだけです。

DMSを使用してOracleからAuroraに移行する場合、考慮すべき点がいくつかあります。

サプリメンタルロギング。 DMSが移行元のOracleから更新をキャプチャするにはサプリメンタルロギングを有効にする必要があります。詳細な手順については、DMSのマニュアルを参照してください。

DMSの3つのフェーズ。 データを移行し、進行中の更新をキャプチャするとき、DMSは3つのフェーズを経ています。

  • バルクロード: バルクロードフェーズで、DMSはn個のテーブルを一度にまとめてロードします。デフォルトでは n = 8 です。この値はDMSマネジメントコンソールまたは AWS CLI を利用して変更できます。
  • キャッシュされたトランザクションの適用: バルクロードフェーズにDMSは移行元データベースへの更新をキャプチャします。あるテーブルのバルクロードが完了すると、DMSはバルクロードの一部であるかのようにキャッシュされた更新をできるだけ速くそのテーブルに適用します。
  • トランザクションとしての適用: すべてのテーブルのバルクロードが完了すると、DMSはキャプチャされた更新を単一のテーブルの更新ではなく、トランザクションとして適用し始めます。

セカンダリインデックス。 状況によっては、性能上の理由からDMSのバルクロードフェーズにセカンダリインデックスを削除したくなるかもしれません。バルクフェーズ中にセカンダリインデックスの一部またはすべてを削除することを選ぶ場合は、移行を一時停止して、トランザクションとしての適用フェーズでそれらを追加しなおす必要があります。すべてのテーブルのフルロードが完了した後であれば、移行を安全に一時停止することができます。

外部キー、トリガーなど。 バルクロードはテーブル単位で行われるため、バルクロードやキャッシュされたトランザクションの適用フェーズでは移行先のAurora内の外部キーに違反する可能性があります。initstmt=SET FOREIGN_KEY_CHECKS=0 をAuroraエンドポイントの追加接続属性として加えることで、外部キー検査を無効にすることができます。一般的に、データのバルクロードを中断したり悪影響を与える可能性のあるものにどう対処するかの戦略を策定する必要があります。たとえば、問題を回避するために、移行のカットオーバーフェーズになるまでトリガーの実装を延期することができます。

データ型。 新しいデータベースエンジンに移行するときには、どのようなデータ型がサポートされているかと、移行元のデータ型を移行先の新しいデータ型にどう変更するかを理解することが重要です。これについては、移行元のOracleのデータ型移行先のAuroraのデータ型をマニュアルで確認すべきです。

性能。 移行の全体的な性能は、移行元のOracle内のデータ量、種類、分散に依存しています。 AWS Database Migration Service Best Practices ホワイトペーパーに移行性能を最適化するためのいくつかの推奨事項が載っています。

手順をおさらいすると、

  1. SCTアセスメントレポートを使用して課題の概要を知ることができます。Auroraへの移行候補が複数ある場合は、どれから最初に取り組むべきかの決定に役立ちます。
  2. 処理の前後に必要となるかもしれない移行手順を洗い出すために、DMSを使用して移行先スキーマの作成とロードを実践します。
  3. 移行先のシステムでアプリケーションをテストして、新しい環境で期待通りに動作することを確認します。負荷やネットワーク環境を含む本番環境と同等の構成でテストしてみてください。
  4. スキーマの生成、データのロード、後処理の手順の適用、移行元と移行先システムの同期、カットオーバーに必要な手順などの実際の移行を実践します。
  5. SCTもDMSをシステム全体を一度に移行することを求めません。システムを短期間で効率的に移行するため、また必要であれば再構築するために、これらのツールを使用することができます。

実際の移行を開始する前に、SCTとDMSの両方のドキュメントを通して読むことをお勧めします。また、Step-by-Step ウォークスルーAWS Database Migration Service Best Practices ホワイトペーパー を読むこともお勧めします。

ツールの使い方を知るためにサンプルデータベースを使用したいのであれば、AWS GitHub リポジトリ で見つけることができます。

この投稿は特定の状況に必要な可能性のあるすべての手順や考慮事項を解説するものではありませんが、SCTとDMSを使用してプロプライエタリなOracleデータベースの足かせをどう緩められるかについての良いアイデアを提供しました。それでは幸せな移行を!


翻訳はソリューションアーキテクト柴田(シバタツ)が担当しました。原文は How to Migrate Your Oracle Database to Amazon Aurora です。