Ray  さん ~ シニア ソリューションアーキテクト

前職は外資系大手ベンダーでお客様企業の業務アプリケーションの設計・開発をしていました。キャリア初期の時代はメインフレー / COBOL、その後のオープン化時代には UNIX  / C 言語や Java、さらに 2010 年以降はクラウド / OSS スクリプト言語へ、開発手法もウォーターフォールからイタラティブ、その後アジャイルへ、とアプリケーション開発技術のトレンドに合わせて自分の軸足を常に移して来ました。新人の頃からコーディングよりはモデリングが好きで、データモデリングからコンポーネントモデリング、UML( 統一モデル言語 )、SOA 時代のサービスモデリングを経て、マイクロサービスのドメインモデリングへと経験を積んできました。1,000 人を超える規模のプロジェクトでリードアーキテクトを担当するようになっても、自分でモデリングを行って設計し、コードを書く習慣は欠かさないようにして来ました。最近はトレンドの遷移が早すぎて勉強した頃には陳腐化しているというのが悩みです… 主に中央官庁や金融機関のお客様のいわゆる基幹業務を支える大規模システムのプロジェクトに参加することが多く、コードを書いて動けばいいというものではなく、お客様のビジネスモデルやシステムの果たす役割をモデルなどで表現されるアーキテクチャという概念に転換し、それを多くのメンバーに理解してコードに反映してもらうというのがアーキテクトにとっての最大のミッションですが、規模が多くなるに従って難しく、かつやりがいのある仕事になっていきました。大きなプロジェクトでは一つの業務を支えるためにそれぞれの専門家が集まり、時間をかけて作り上げて動かし、何年も運用していきます。その工程をたくさん体験できたことは私の経験の財産の一つです。

2016 年頃から AI や Blockchain などを活用した案件に関わるようになり、これまで知識だけだったクラウドを実際に使うことになりました。残念ながら初めて利用したクラウドは AWS ではなかったのですが、マネージドの Kubernetes サービスにアプリケーションをデプロイし、マネージドのドキュメント DB を利用するクラウドネイティブなアーキテクチャで構成したので、プロジェクトに「インフラ担当」が存在しないチーム構成となりました。これまでアプリの稼働するインフラの面倒は誰かが見てくれていたのですが、そうはいかなくなり、開発メンバーとともに手探りでマネージドサービスのドキュメントを読み、可用性や運用、セキュリティの対応などを組み込んで行きました。しっかり理解して使いこなさないと非機能要件の考慮もれのあるシステムになってしまいかねませんが、インフラの専門家がいなくても動かせてしまうというのは驚きの体験で、クラウドの世界ではアプリとインフラが分けられない、という個人的な「目からウロコ体験」をすることになりました。アジャイル開発でビジネス - IT の協業が進んでも、IT の中でアプリとインフラの役割分担が阻害要因になることがあり、この壁を大きく下げてくれるクラウドの将来性に大きな魅力を感じました。ちょうどキャリア 20 年の節目のころで次のキャリアを考えている時期でもあり「これからの 20 年も技術者として活躍したい」という思いが強く、そのためにはクラウド技術は欠かせないスキルセットだと考えました。前職ではクラウドに関わる案件がまだ非常に稀で、このままではクラウド技術に関する経験を積むのに時間がかかってしまうことがわかっていました。前職でも技術者としてのキャリアパスはしっかりと用意されていたのですが、やはり技術領域を選ぶことも必要だと判断して、クラウド業界をけん引する AWS に飛び込もうと転職に踏み切りました。

一つには、業務アプリケーションを開発するロールから見てもクラウドが確実にゲームチェンジの要素であると感じた自分の実体験をもとに、お客様にクラウドの利点をお伝えできることです。お客様のリーダーシップ層はまだまだ私同様、デジタルネイティブ世代ではない方が多いので、セールストークではなく自分の言葉で伝えられることは一つの強みです。
もう一つは、SA がアプリケーション軸、業界軸などのご相談を受けることが増えている中で、ビジネスモデル、バリューチェーンを理解してアーキテクティングを行うというアプリケーションアーキテクトとしてのスキル、経験はそのまま現職でも自身の強みとなっています。ですので、「違う技術領域ににキャリアチェンジをした」ではなく、「技術領域の幅と深さを広げる挑戦をした」という感覚です。

案件の立ち上がりなど活動が集中することがなければ、60 - 70 %くらいをお客様対応とその準備に充てています。その他の活動としては、アカウントチームで次のアクションなどを検討するプランニング、技術コミュニティ活動、自身のスキルアップのための時間に充てます。担当しているお客様がほぼまだリモート中心のため、お客様対応( オンサイト )はめったにありません。移動時間などがないため余裕を持ってスケジュールを組み立てられるのはとても助かります。これから徐々にオンサイトが増えていくと思っており、移動時間で削られる部分をどうリカバリーしていくか考えているところです。
メリハリが明確な方で、仕事をしないと決めた日には PC を開くこともしない一方、ハンズオンをやりきりたい!と思えば深夜でも週末もずっと作業していることもあります。

これまでも何か明確なゴールや確信を持ってキャリアを積んできたわけではなく、上司や先輩が私の成長のために用意してくれる機会の中で試行錯誤しつつも、自分の栄養になるものを摘み取って来た結果が今の自分です。アプリケーションからインフラへと畑を変えてはみましたが、この先も同じように興味を持ち学び続けられるロールでキャリアを伸ばしたいと考えています。ちなみに今一番興味があるのは食品飲料の分野へのデジタルの取り込みです。VR、メタバースといった仮想空間技術が進んでいますが、味覚や嗅覚はデジタル空間でどのような進化を見せるのでしょうか。ここ数年、主に食品飲料業界のお客様を担当しているのでトレンドを追いかけています。好きなことを続けるための努力や挑戦であれば継続できるものなので、これからのキャリアアップも楽しんで行きたいです。