Benchling の導入事例

2016 年

Benchling は、総合研究開発ソフトウェアプラットフォームを提供する、サンフランシスコ拠点のライフサイエンスソフトウェア企業です。このシステムにより、科学者は実験を最初から最後まで簡単に設計、整理、共有できます。また一連のワークフロー管理サービスだけでなく、分子生物学の設計解析ツールも提供し、その目的をサポートしています。現在 Benchling には、バイオテクノロジー企業や製薬企業をはじめ、学術機関や政府機関の研究所など数多くの顧客がいます。

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AWS Lambda を使用することで、CRISPR オフターゲット検索時間を 90% 短縮し、数百のゲノムにスケールアップしました。検索がより高速になることで、当社のプラットフォームを利用する科学者は、より多くの時間を研究に充てられます」

Vineet Gopal 氏
Benchling エンジニアリングマネージャー

課題

CRISPR は、研究者がゲノムの一部を極めて高い精度で改変するために使用する、画期的な手法です。世界中の科学者が CRISPR を使用し、疾患モデルを作出して創薬ターゲットをスクリーニングするため、Benchling はプラットフォームを高速化する必要があります。「数百のゲノムを可能な限り速く検索できるようにすることで、研究者が少ない労力でより良い実験をデザインできます」と語るのは、Benchling のエンジニアリングマネージャー、Vineet Gopal 氏です。科学者は Benchling のプラットフォームを使用することで、起こり得る偶発的なマッチを素早く識別し、CRISPR 実験に最良な候補配列を選択できます。Benchling は現在、100 を超える生物についての CRISPR ワークフローをサポートしており、継続的に追加しています。

しかし、複数のサーバーを使用して CRISPR 検索タスクを処理し、各サーバーがゲノムをディスクに保存していた以前の IT 環境では、さらに多くのユーザーやゲノムをサポートすることは難しいことが分かりました。1 つの CRISPR 検索を複数のサブタスクに分割し、サーバー間で並列化していたのです。各サブタスクは、対応するゲノム領域をディスクから読み取り、検索し、結果をユーザーに返していました。「検索にかかっていた時間は約 30 秒でしたが、それを数秒に短縮したいと思っていました」と Gopal 氏は言います。「これらの検索はあまり頻繁ではありませんが、素早く実行する必要があり、誰かが検索するたびにインスタンスをスピンアップする余裕はありません」

Benchling は、ソリューションを迅速かつ簡単にスケールする方法を求めていました。「既に毎月数十万件の CRISPR 検索をサポートしていますが、需要が高いときには新しいサーバーをあまり素早くスピンアップできませんでした」と Gopal 氏は言います。「プラットフォームを成長させて、数百のゲノム、毎月数百万検索にまで、スケールしたいと考えています」

さらに、コストを削減する必要もありました。「営業時間外、プラットフォームを使用する人数が少ないときに、メンテナンスに数千ドルも費やしていました」と Gopal 氏は言います。「利用されていないサーバーに費用を支払いたくありませんでした」

アマゾン ウェブ サービスが選ばれた理由

Benchling は既にアマゾン ウェブ サービス (AWS) クラウドを使用し、Amazon Elastic Cloud Compute (Amazon EC2) と Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) を活用してプラットフォームをサポートしていました。また、AWS CloudFormationAmazon Virtual Private Cloud (Amazon VPC) を組み合わせて使うことで、顧客にデータベースクローンを簡単にスピンアップできるようにしていました。

スケーラビリティを向上させながらコストを削減するため、Benchling はサーバーレスアーキテクチャを使用するアプリケーションを構築しました。AWS Lambda を使用することで、サーバーのプロビジョニングと管理を必要とせずにコードを実行できます。複数の AWS Lambda タスク間で CRISPR 検索を分割することで、コストを削減し、スケーラビリティを向上させることが目標でした。

プロセスを開始するにあたり、Benchling の 1 つのウェブサーバーが、特定のゲノムについて CRISPR 検索を行う研究者のリクエストを受信します。その後ウェブサーバーはゲノムを小さなタスクに分割し、各タスクの AWS Lambda 関数を呼び出します。Lambda は、Amazon S3 に保存されているゲノムデータをダウンロードし、クエリを実行し、結果を結合してユーザーに返します。「AWS Lambda を使用すると、カスタムゲノム検索アルゴリズムでゲノムを小さなタスクに分割することで、CRISPR 検索を簡単に並列化できます」と Gopal 氏は言います。「検索を実行するために複数のサーバーを管理する必要がなくなるため、このアプローチで動的スケーリングの課題が解決します」

利点

CRISPR 検索に Benchling プラットフォームを使用している研究者は、これまで以上に速く結果を得られます。「AWS Lambda を使用することで、CRISPR の検索時間を 90% 短縮し、何百ものゲノムに拡大しました」と Gopal 氏は言います。「この解析を高速化することで、当社のプラットフォームを利用する科学者は、より多くの時間を科学に充てられます。これが当社のやりたいことです。高速検索が可能となるので、パフォーマンスの限界によって研究が妨げられることはありません。この類の検索の業界標準は数分から数時間ですが、当社はそれを大幅に改善できました」

現在 Benchling では、追加のサーバーインスタンスをプロビジョニングすることなく、すぐにソリューションを拡張できるようになっています。「当社のプラットフォームは現在 100 以上のゲノムをサポートしており、毎週新しいリクエストを受けています」と Gopal 氏は言います。「AWS を使用して得られるスケーラビリティで、こういったリクエストを簡単にサポートできます。また、さらにゲノムを追加する上で、各インスタンスの保存をディスクに依存する必要がありません。AWS Lambda のアプローチは、動的スケーリングの問題を完全に解決しました」

さらに、同社は CRISPR 検索のサポートに AWS クラウドを使用することで費用を抑えています。「自前でコンピューティングリソースをプロビジョニングする必要がなく、また使用していないインスタンスには費用がかからないため、AWS Lambda とその他の AWS のサービスを利用することで毎月何千ドルも節約できています」と Gopal 氏は言います。「スタートアップ企業として、これは大きな利点です」

同社のエンジニアは、サーバーのメンテナンスやプロビジョニングに時間を費やさずに済むため、新しいソフトウェア機能の開発に専念できます。「当社のような小さな会社では、時間は最も重要なリソースです」と Gopal 氏は言います。「AWS を使用することで、エンジニアはより多くの時間を確保できます。ソリューションアーキテクチャーとサーバー管理について心配せず、企業を成長させる新しいプロジェクトや取り組みに集中できます」

AWS Lambda と他の AWS のサービスを使用して、Benchling は科学研究者が病気の治療法を発見するのを支援し続けます。「大学であっても製薬企業であっても、ユーザーにとって素晴らしい研究エクスペリエンスを提供することに重点を置いています」と Gopal 氏は言います。「AWS を使用することで、CRISPR の検索エクスペリエンスを最適化し、できるだけ早く結果を得る手助けができると信じています」


Benchling について

Benchling は、総合研究開発ソフトウェアプラットフォームを提供する、サンフランシスコ拠点のライフサイエンスソフトウェア企業です。


使用されている AWS のサービス

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Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) は、業界をリードするスケーラビリティ、データ可用性、セキュリティ、およびパフォーマンスを提供するオブジェクトストレージサービスです。 

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開始方法

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