アクション RPG『ELDEN RING』のオンラインサービスを AWS のマネージドサービスで構築
ワールドワイドで最大 150 万同時接続のスケールに対応

2022

ゲーム機向けアクションゲームの企画・開発を手がける株式会社フロム・ソフトウェア。同社は 2012 年からゲームソフトのインフラ基盤としてアマゾン ウェブ サービス(AWS)を利用しています。2022 年 2 月にリリースした『ELDEN RING(エルデンリング)』では、バックエンドにマネージドサービスの Amazon Elastic Kubernetes Service(Amazon EKS)や Amazon Kinesis Data Firehose を採用。スピーディな構築を実現し、ゲーム発売直後の最大 150 万同時接続に対しても迅速なスケールアウトで乗り切りました。リリース後はわずか 4 名の自社要員で安定した運用を継続しています。

AWS 導入事例  |  株式会社フロム・ソフトウェア
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世界中のたくさんのユーザーに遊んでいただき、全世界累計出荷本数が 1,340 万本を突破したゲームのオンラインサービスを、少数精鋭の体制で破綻なく運用できているのは AWS があるからであり、運用の効率化を意識したアーキテクチャにモダナイゼーションした開発メンバーの努力があったからです

西田 新一郎 氏
株式会社フロム・ソフトウェア
設計セクション リーダー

アクションゲームのオンラインサービスに柔軟性が高い AWS を採用

『ARMORED CORE(アーマード・コア)』や『DARK SOULS(ダークソウル)』など、人気のアクションゲームシリーズを手がけるフロム・ソフトウェア。これまでの家庭用ゲーム機向けのゲーム制作に加え、近年はWindows PC 対応のゲームタイトルも増えています。

同社はプレーヤー同士が一緒に楽しめるオンラインサービスを、2006 年に発売したゲームタイトルから提供しています。当時はオンプレミス環境で運用していたために、サーバー構築や運用に負荷がかかっていました。パッケージタイトルの場合、発売直後に急激に売れ行きが伸びて同時接続数が増え、徐々にユーザーが減っていく特性があります。そのため、サーバー環境は余裕をもって準備しておく必要があるものの販売数の予測は難しく、想定以上に売れると急遽サーバーを増強しなければなりません。そこで同社は、2012 年にリリースした『ARMORED CORE V』のオンラインサービスから AWS を採用しました。
「ゲームのオンラインサービスは、サーバーコストが高額になります。少ない運用メンバーでメンテナンスを続けていくのも困難です。そこで、需要に合わせてサーバーのスケールアップ / スケールアウト、スケールイン / スケールダウンができる AWS の採用を決めました。AWS は公開されている技術情報が豊富で、自社でノウハウを得やすい点が決め手となりました」と語るのは、設計セクション リーダーの西田新一郎氏です。

新タイトル『ELDEN RING』の開発で Amazon EKS を採用してモダナイゼーション

以来、ゲームタイトルのオンラインサービスを Amazon EC2 上で運用してきた同社は、2016 年頃からアーキテクチャのモダナイゼーションを決め、アクション RPG の新タイトル『ELDEN RING(エルデンリング)』の開発に着手しました。『ELDEN RING』 のオンラインサービスは、アプリケーションの稼働環境をコンテナに移行し、デプロイやコンテナ管理のツールとして Kubernetes を AWS 上で利用するサービスとして Amazon EKS を採用しました。設計セクション サブリーダーの岡村信幸氏は次のように語ります。
「コンテナに移行したのは、従来環境で発生していたデプロイ周りのミドルウェアやライブラリインストールに関する環境の差異を解消するためです。コンテナに移行後、デプロイツールのメンテナンスコストや、コンテナ周りの独自管理ツールが増えてきたことから、デファクトツールの Kubernetes で一元化しました。同時に Kubernetes の運用負荷を軽減するために、マネージドサービスの Amazon EKS を採用しました」

サーバーのログ収集用途にはストリーミングデータをリアルタイムに収集する Amazon Kinesis Data Firehose を採用。ログの出力先を Amazon OpenSearch Service とし、標準出力のログ、各種サーバーのログ、接続人数、リクエスト数などの各種メトリクスを可視化しています。設計セクション チーフの藤井浩之氏は次のように語ります。
「開発中に負荷試験を実施するとログが大量に出力されます。オープンソースのデータ収集ツール(fluentd)では集約サーバーがスケールせずに負荷が高くなり、ログ落ちが発生することがありました。そこでログ落ちが防げるソリューションとして Amazon Kinesis Data Firehose を採用しました。可視化ツールの Amazon OpenSearch Service も、インスタンスサイズを自由に変えられるマネージドサービスならではの使い勝手の良さで、今ではなくてはならないツールになっています」

20 万同時接続想定が直前で 100 万超に

サーバーの迅速なスケールアウトで対応

2018 年から本格的に開発に着手した『ELDEN RING』は、2022 年 2 月に全世界でリリースされました。『ELDEN RING』は、広大なファンタジーの世界を舞台に、剣や魔法を駆使した自由な冒険が楽しめるアクション RPG です。プラットフォームは、PlayStation ® 5、PlayStation ® 4、XboxSeries X|S、Xbox One、Steam に対応しています。『ELDEN RING』は発売直後に全世界から 100 万同時接続を記録し、2 週間後には 150 万同時接続以上に達しました。
「当初はリリース直後で 20 万同時接続を想定していたものの、2 か月前の予約段階で約 40 万、1 か月前になると 100 万という数字が見えてきました。想定外の数に焦りを感じたものの、AWS のおかげでサーバーリソースを増やして対応することができました。AWS の担当者には、発売直前のリクエストにスピーディに対応いただくなど、迅速なサポートに助けられました」(岡村氏)

現在、『ELDEN RING』 のサーバーチームは、約 4 名体制で運用しています。エンジニアは複数のゲームタイトルの運用を兼ねているため、1 つのゲームに十分なリソースを割くことはできません。そのため、マネージドサービスによって得られる恩恵は大きく、スピーディな開発と安定的な運用を実現しています。
「特に大きいのは、ログ周りの運用です。従来、ログ関連の障害は月に 2 ~ 3 回は起きていましたが、Amazon Kinesis Data Firehose を採用したことでログ関連の障害はゼロとなり、ゲーム開発の業務に集中できるようになりました」(岡村氏)

今後のゲームタイトルでもマネージドサービスを積極的に活用

『ELDEN RING』 の開発を契機に始まったオンラインサービスのアーキテクチャのモダナイゼーションですが、今後も継続してアーキテクチャの見直しを進めていく方針です。
「データベースは Amazon DynamoDB や Amazon Aurora を検討し、スケーラビリティを強化していきたいと思います。静的コンテンツの領域は、Amazon CloudFront と Amazon S3 を用いたコンテンツ配信へ、Amazon EKS へのデプロイもオープンソースによる既存環境から AWS CloudFormation による CI/CD へと、さまざまな改善を検討していきます」(岡村氏)

今後のタイトルでも AWS のマネージドサービスを積極的に活用する予定で、運用負荷を軽減しながら、魅力的なゲームタイトルをリリースしていきます。
「世界中のたくさんのユーザーに遊んでいただき、全世界累計出荷本数が 1,340 万本を突破したゲームのオンラインサービスを、少数精鋭の体制で破綻なく運用できているのは AWS があるからであり、運用の効率化を意識したアーキテクチャにモダナイゼーションを図った開発メンバーの努力があったからです。今後も開発チームの体制を整えながらゲームの開発環境のクラウド化も検討し、サービスと開発の両面から AWS の最適な活用方法を模索していきます。AWS には引き続き私たちの相談に乗っていただくと同時に、役立つマネージドサービスの提供を期待しています」(西田氏)

西田 新一郎 氏

岡村 信幸 氏

藤井 浩之 氏


カスタマープロフィール:株式会社フロム・ソフトウェア

  • 設立: 1986 年 11 月 1 日
  • 資本金: 2 億 6,850 万円
  • 従業員数: 349 名(2022 年 5 月)
  • 事業内容:ゲームソフトの企画・開発・販売、インターネット上のコンテンツの企画・開発

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • 『 ELDEN RING』の発売直後の 150 万同時接続にサーバーの増強で対応
  • Amazon EKS を採用し、Kubernetes周辺の技術スタックを社内で一本化
  • Amazon Kinesis Data Firehose を採用してログ収集を安定化させ、管理負荷を軽減
  • ログやメトリクスの可視化ツールとして、Amazon OpenSearch Service を活用

ご利用中の主なサービス

Amazon Elastic Kubernetes Service

Amazon Elastic Kubernetes Service (Amazon EKS) は、フルマネージド型の Kubernetes サービスです。

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Amazon Kinesis Data Firehose

Amazon Kinesis Data Firehose は、ストリーミングデータをデータレイクやデータストア、分析サービスに確実にロードする最も簡単な方法を提供するサービスです。

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Amazon OpenSearch Service (Amazon Elasticsearch Service の後継サービス)

Amazon OpenSearch Service を使用すると、インタラクティブなログ分析、リアルタイムのアプリケーションモニタリング、ウェブサイト検索などを簡単に実行できます。OpenSearch は、Elasticsearch から派生したオープンソースの分散検索および分析スイートです。

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Amazon RDS

Amazon Relational Database Service (Amazon RDS) を使用すると、クラウド上のリレーショナルデータベースのセットアップ、オペレーション、スケールが簡単になります。

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