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星野リゾート : インフラコストの最適化と IT 内製化を進め AWS 活用で新しい宿泊体験を支えるサービスを創出

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AWS を活用することでメンバーが自信を持って新しい技術にチャレンジできるというシステム内製化に挑戦しています。この取り組みから、星野リゾートのお客様と現場スタッフが求める新しい価値を実現する迅速なサービス開発が実現できています

久本 英司 氏
株式会社星野リゾート
情報システムグループグループディレクター

旅を楽しくするという視点で宿泊サービスを提供する星野リゾートは、ラグジュアリーブランド『星のや』、高級温泉旅館ブランド『界』、ファミリーリゾートホテルブランド『リゾナーレ』、都市ホテル『OMO』など、さまざまなニーズに応え全国に約 60 施設を展開しています。観光・宿泊業が新型コロナウイルスの流行で大打撃を受けたことをきっかけに、星野リゾートは全社を挙げてさまざまな施策に取り組みました。 IT 面からはインフラコストを 29% 削減するほか、システム内製化を進め、顧客体験の向上や接客に役立つ新サービスを次々に生み出しています。

AWS を活用した施設検索・予約サイトで顧客体験を向上

星野リゾートの情報システムグループは、『旅に魔法をかける IT チームになる』をミッションとして、宿泊施設の運営におけるシステム支援に加え、Wi-Fi やネットワークなどの環境整備、IT ヘルプデスクなどの業務も担っています。以前はシステム開発の多くを外部に依頼していましたが、2018 年ごろから内製化に大きく方針転換しました。その取り組みの一例として、星野リゾートの複数施設横断検索・宿泊予約システムがあります。このシステムではグループ全施設を横断してさまざまな条件での検索、検索結果のフィルタリングが可能です。国内の施設を地図上で金額とともに表示し、お客様が目的に応じて行きたい施設を簡単に予約することができます。

情報システムグループ グループディレクターの久本英司氏は、次のように説明します。「これらの予約システムは AWS のマネージドサービスを活用して構築されています。横断検索機能では、PC 版では地図と施設を一体表示するなど、閲覧するデバイスごとにユーザーインターフェイスを最適化しています。そのために豊富な画像を表示する Amazon CloudFrontAmazon ElastiCache による検索キャッシュ、Amazon RDS のスケールアウトなどで表示スピードを高速化しています。また検索から推移する施設予約サイトでは、TV 放映時などの高負荷状況にも耐えられるよう Amazon Aurora を採用しています」そして現在、これらの予約システムは星野リゾートの高い自社チャネル比率(6~7 割)を支える最も重要なシステムになっています。

多くのサービスを迅速に開発し コロナ禍対応のブランディングに貢献

2020 年 4 月、新型コロナウイルス感染症対策のため最初の緊急事態宣言が施行され、観光・宿泊業は大きな困難に直面。星野リゾートも多大な影響を受ける中、情報システムグループはエンジニアの知見を活かして事業に貢献できる施策を模索しました。まず、温泉浴場の三密回避に取り組み、IoT 技術を使って入退出をセンサーで計測して混雑状況を知らせる仕組みを考案。「AWS のマネージドサービスを使ったシステム内製化の体制により、社内のエンジニアが中心となってセンサーの部材コストだけでほぼ実現できると経営陣に提案しました」(久本氏)

こうして、施設の宿泊客がスマートフォンで浴場の混雑状況を確認できるサービス『温泉 IoT 湯守』が 6 週間という短期間で開発され、15 施設に展開されました。この取り組みは多くのメディアからの注目を集め、新型コロナ対応の宿泊施設としてのブランディングにもつながりました。

情報システムグループはそのほかにも、『Go To トラベル』キャンペーン対応サイトを 1 か月、宿泊ギフト券の『ふるさと納税』対応サービスを 1 か月、結婚式向け新サービスを 3 か月と、短期間で次々とリリースしました。

「AWS を使うメリットは、すぐにサービスを立ち上げられる点と、スケールアウトやスケールアップしやすいことです。需要ボリュームがまだ見えないときでも、すぐに始められます」(情報システムグループ エンジニアチーム リーダー 藤井崇介氏)

迅速なサービス開発によって、星野リゾート社内でも情報システムグループへの信頼が高まりました。

「以前は外部のインフラエンジニアにシステム構築を依頼していたため、依頼が集中するとなかなか完成できないというジレンマがありました。藤井を中心とする内製化チームができてからは、アジャイル開発を徹底し、圧倒的なスピードでリリースができています」(久本氏)

パートナーからも内製化支援を受け AWS 活用の知見を高めていく

社内でも IT・デジタル投資が重視されるようになり、情報システムグループには多くの要望が集まっています。その対応としてさらに AWS の豊富なサービスを利用していくために、「開発のスピードを担保するため、世の中でよく使われている技術について、AWS やパートナー企業からアドバイスを受けてチャレンジしていきたい」と藤井氏は語ります。

情報システムグループが今後目指すのは、各種施設で活用する業務システムのモダナイゼーションです。従来は外部システムに依存している部分が多く、宿泊施設の立ち上げの際にシステム準備に時間がかかるという課題がありました。これを内製化によって自社で AWS を活用しながらシステムを刷新していく方針です。さらに、施設の現場スタッフが本来の業務である接客に専念し、顧客体験の向上につなげるための支援というミッションもあります。情報システムグループ ソリューションアーキテクトの杉山陽輝氏は「機械学習や、BI ツールによる分析などデータを活用して、混雑状況や清掃時間の最適化などにもつなげていきたいです。お客様が意識しないところで施設の仕組みをアップデートしていければ」と意欲的に語ります。

“新しい日常”への対応にも評価が高まっている星野リゾート。その事業を支える情報システムグループの今後について、久本氏は次のように語ります。
「お客様やスタッフに、今後もスピード感を持って新たな価値を提供していきます。AWS とパートナー企業の協力を得て、技術的に時間がかかっていたところを短期に実施できるようになりました。私たち自身もよい挑戦ができており、目指したい方向に向かえていると実感しています」

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