公益財団法人日本ラグビーフットボール協会

『JAPAN RUGBY LEAGUE ONE』の発足に合わせて
映像管理システムを AWS Media Services で構築
全 184 試合の映像をチーム、放送局、競技関係者等に提供

2022

1926 年の設立以来、日本におけるラグビー競技を総括している公益財団法人日本ラグビーフットボール協会(JRFU)。2021 年より従来のトップリーグに代わり、JAPANRUGBYLEAGUEONE(ジャパンラグビーリーグワン)を発足させました。2022 年 1 月のリーグ戦開始に合わせて、試合映像を蓄積してチーム、放送局、競技関係者等と共有する映像管理システムを、アマゾン ウェブサービス(AWS)を活用して 3 か月間で構築。リーグ戦期間中、全 184 試合の映像提供をわずか 2 名の要員で支援し、合計 3 万 2,600 ダウンロードを記録しました。

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今回のプロジェクトで、さまざまな映像サービスを提供するための基盤が整備できました。これからは、新たなファンエンゲージメント創出の支援や試合映像制作を効率化する仕組みを提供していきます 

室口 裕 氏 
公益財団法人日本ラグビーフットボール協会 メディア事業部門 部門長 

映像アセットの重要性の高まりを受け 誰でも映像にアクセスできる環境を構築

日本全国を熱狂の渦に巻き込み、ラグビーの価値を飛躍的に高めたラグビーワールドカップ 2019 日本大会。その余韻が残る中、JRFU は 2021 年 3 月、日本ラグビーのさらなる発展に向けて、ワールドカップを再び日本に招致し、世界一になるなどの目標を定めた長期ビジョン『JAPANRUGBY2050』を策定しました。

その中のリーグ改革では、ラグビーファンが熱狂する舞台を作るべく、これまで 18 年間続いたトップリーグに代わる『JAPANRUGBYLEAGUEONE(以下、リーグワン)』を 2021 年 6 月に発足させました。リーグワンは初年度、2022 年 1 月から 5 月にかけてリーグ戦とプレーオフトーナメントを実施することになりました。そこで課題となっていたのが試合映像の管理でした。

「トップリーグ時代は、試合映像の体系的な管理はしてきませんでした。しかし近年、スポーツにとって映像アセットの重要性は高まっており、映像は視聴者に届けるだけでなく、チームプロモーションや戦術の分析などに活用が広がっています。そこで、リーグワン開始を機会にリーグ、チーム、競技関係者、マスコミなど誰もが安全に、かつすぐに映像にアクセスできる環境を作ることにしました」と語るのは、メディア事業部門 部門長の室口裕氏です。

AWS Media Services で開発工数を削減し マネージドサービスによって運用負荷を軽減

そこで JRFU は、日本各地で開催されるリーグワンの試合映像を一元的に管理する「映像管理システム」の構築を決断。プラットフォームには AWS の各種サービスを採用しました。

メディア事業部門の澤健生氏は「クラウドの俊敏性、経済合理性、エコシステムの充実を評価して AWS に決めました。End to End のシステムを AWS のサービスで実現することで、互換性テスト等の開発工数を省くことができ、マネージドサービスによって管理負荷が軽減できることが決め手となりました」と語ります。

映像管理システムは、2021 年 11 月から 2022 年 1 月までの 3 か月間で構築しました。短期構築が実現したポイントは、AWS アカウントチームの担当メンバーが、プロジェクトの企画段階から実行まで対応したことと、複数のパートナーソリューションを組み合わせたことにありました。今回構築した映像管理システムでは、試合会場から送られてくる中継映像をオンプレミスの AWS Elemental Live でエンコーディングしてクラウド環境にアップロードし、現在は主に 3 つの目的で利用しています。

1 つめは、マッチデータプロバイダーに映像データを送信し、トライ時間、ファウル時間などのプレー情報をデータ化して活用すること。2 つめは、AWS Elemental MediaLive でストリーミング映像にエンコーディングして、ライブ配信環境を構築すること。3 つめは、試合中に 30 秒~ 1 分程度のクリッピング映像を編集したり、フルマッチ映像を AWS Elemental MediaConvert でアーカイブしたりして、試合終了直後にリーグ関係者、参加チーム、放送局等に提供することです。

これらを実現するためのパートナーソリューションとして、スケジュールに合わせた映像処理の自動化やシステム監視に、イギリスの M2AMedia 社の各種ソリューションと試合当日の運用サービスを活用。クリッピング映像の SNS への動画切り出しやハイライト編集には、アメリカの GrassValley 社製の編集ソフト『Edius』を活用し、Amazon S3 に保存した動画コンテンツのプレビューや検索用のインデックス化には、国内ベンダーのネクフル社の CMS 機能を活用しています。

2 名の管理者で 1 日に最大 6 試合に対応 オンプレミスと比べて大幅にコストを抑制

新たに構築した映像管理システムは、2022 年 1 月 7 日から 5 月 29 日まで行われたリーグワンの全 184 試合で利用しました。その間、映像管理システムからダウンロードされた映像本数は、2022年1月から8月までの約8か月間で、1 試合平均 160 件、合計 3 万 2,600 件(2022/8/24 現在)と、放送局、チーム関係者、競技関係者がそれぞれの目的に応じて試合映像を活用しています。

「権限を持つ関係者なら、いつでも好きなタイミングで映像をダウンロードすることができるので、利用者からは好評です。入手が難しかった従来と比べて、映像の活用の自由度は格段に上がりました」(澤氏)

試合当日のライブ映像の管理・運用は、JRFU のマーケティング部門の 2 名が担当し、1 日に最大同時で 6 試合に対応するなど、負荷もかかっていません。コスト面でもオンプレミスと比べて、大幅に抑制することができました。リーグの期間は、1 月から 5 月までであり、試合が行われるのは主に週末です。使った分だけ利用料を支払う AWS は、コストの抑制に貢献し、新型コロナウイルス感染症の影響で急きょ試合が中止となった際にもコストは発生しませんでした。

今回、JRFU が AWS で環境を構築した映像管理システムに感じている最大のメリットは、変化に追従できる柔軟性の高い基盤を手に入れたことにあります。

「AWS のサービスを組み合わせて構築したことで、パッケージ型の映像管理システムと比べて、自由度の高いシステムを安価なコストで手に入れることができました。ブラックボックス化されているパッケージ製品と比べて、自分たちでその仕組みを理解することができるため、問題発生箇所の切り分けも容易です。システム改修にもクイックに対応することができ、ユーザーのニーズに応じて進化させることが可能です」(室口氏)

海外へのリアルタイム伝送を検討 日本代表や学生ラグビーにも拡大へ

JRFU では今後も映像管理システムの機能を拡張しながら、さまざまな用途で利用していく計画です。その 1 つが海外への配信です。現在、海外の放送局や配信事業者への映像伝送は、映像制作・配信の高額なコストがボトルネックとなっています。これらの課題に対して、クラウドを活用してコストを下げ、より多くの国やラグビーファンに日本ラグビーを視聴する機会を提供することを目指しています。

さらに、ライブ制作をクラウド上で行うことで、リモートからのオペレーションを可能にし、スタジアム中継車の専門機器の削減や、制作コストの最適化を進めることも検討しています。

「今回のプロジェクトで、さまざまな映像サービスを提供するための基盤が整備できました。これからは、新たなファンエンゲージメント創出の支援や試合映像制作を効率化する仕組みを提供していきます。システムの利用範囲も日本代表や学生ラグビーなどに広げていきますので、AWS には引き続きさまざまな支援を期待しています」(室口氏)

公益財団法人日本ラグビーフットボール協会メディア事業部門 部門長
室口 裕 氏

公益財団法人日本ラグビーフットボール協会メディア事業部門
澤 健生氏


カスタマープロフィール:公益財団法人日本ラグビーフットボール協会

  • 設立: 1926 年 11 月 30 日
  • 事業内容:ラグビーフットボールの普及振興に関する事業

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • 管理者 2 名で 1 日に最大同時で 6 試合、5 か月間で全 184 試合の動画を管理
  • 合計3万2,600ダウンロードを記録
  • コストを抑制した動画活用の実現
  • システム開発や改修の柔軟性と、ビジネス変化に追従するアジリティを獲得
  • 海外の放送局や配信事業者への映像提供を検討
  • クラウド上でのライブ制作を検討

ご利用中の主なサービス

AWS Elemental Live

ベースバンド SDI 動画ソースの処理など、ライブ動画をオンプレミスでエンコーディングするとき、AWS Elemental Live は動画をテレビ放送での配信やインターネット接続されたデバイスへのストリーミング用に効率的にフォーマットします。

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AWS Elemental MediaLive

AWS Elemental MediaLive は、TV 放送やインターネット接続機器に配信するための高品質なストリームを作成する放送局レベルのライブビデオ処理サービスです。

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AWS Elemental MediaConnect

AWS Elemental MediaConnect は、高品質なライブ動画伝送サービスです。衛星および光ファイバーの信頼性とセキュリティを、IPベースのネットワークの柔軟性、俊敏性、経済性と組み合わせて提供します。

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AWS Elemental MediaConvert

AWS Elemental MediaConvert は、ブロードキャストグレードの機能を備えたファイルベースの動画変換サービスです。ブロードキャストおよびマルチスクリーン配信用のライブストリームコンテンツを大規模に作成します。

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