お客様事例/金融サービス

2024 年
農林中央金庫

農林中央金庫、JA バンクの
大規模基幹システムを AWS に移行
Amazon Aurora への更改などで
TCO を 13 年間で 100 億円以上
削減見込み

100 億円以上

13 年間の TCO 削減見込み

3 割

DB のライセンス費用の削減

25TB

AWS に移行したデータ量

4,000 人月

工数

概要

農林水産業を支える金融機関として、金融業務をはじめとした事業を展開する農林中央金庫。同金庫は、全国 6,000 店舗を超える『JA バンク』の大規模基幹系システムのクラウド移行に際し、アマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用し、基盤を更改しました。データベースの Amazon Aurora への移行によるコスト削減や、ハードウェア費用の削減により、13 年間で 100 億円以上の TCO 削減が実現すると試算しています。

農林中央金庫

ビジネスの課題 | インフラコストの抑制に向けてクラウド化を検討

JA バンクは、JA ・信農連(信用農業協同組合連合会)・農林中央金庫で構成され、貯金量 100 兆円超、店舗数 6,000 超、ATM10,000 台超を誇る巨大金融グループです。「農林中央金庫では、全国 600 弱の JA や信農連から預かった資金を運用し、毎年度 5,000 億円規模の利益を還元しています」と語るのは、理事 兼 常務執行役員 IT 統括責任者の半場雄二氏です。

JA バンクの基幹システムは、都道府県単位で運用していたシステムを統合する形で 2002 年に構築し、『JASTEM システム』と名付けられました。JASTEM システムは、勘定系と情報系の 2 つで構成され、情報系は勘定系で処理した取引情報や顧客情報を蓄積し、JA 職員が渉外活動やデータ分析等で利用することをメインの役割としています。

当初はメインフレームの COBOL 環境で運用していた JASTEM 情報系は、2010 年にオープン化され、2014 年には仮想化、2018 年には IA サーバーへの基盤更改と、オープン系アーキテクチャを採用しながら技術負債を解消してきました。その後、クラウドサービスが金融にも浸透してきたことから、JASTEM 情報系のクラウド移行を決断しました。事務・ IT ユニット IT統括部 部長代理の柴崎光郎氏は「経営環境の変化に伴うコスト削減要求の高まりや、ビジネスの加速に対応する拡張性・柔軟性の向上、他システムとの接続容易性などを考慮して、情報系のクラウド化を決定しました」と語ります。

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大規模システムのクラウド移行を成功させたことは、IT 部門全体にとってエポックメイキングな出来事で、カルチャーを大きく変えるきっかけになりました"

半場 雄二 氏
農林中央金庫 理事 兼 常務執行役員 IT 統括責任者

ソリューション | コスト競争力と可用性を両立する Amazon Aurora を採用

2018 年 6 月から検討を開始した同金庫は、主要クラウドを比較した中から AWS の採用を決めました。柴崎氏は「コスト競争力、クラウド市場での実績、金融機関に求められる機密性を評価しました」と振り返ります。JASTEM システムと農林中央金庫のシステムの開発・運営を手がける農中情報システム株式会社(以下、NIC)JASTEM 事業本部 JASTEM 開発二部 副部長の石田和宏氏は「AWS は農林中央金庫向けのシステムで利用実績があり、その際に締結した Enterprise Agreement にてセキュリティに対する責任範囲が明確になっていたことが、関係者に了承を得やすいと判断しました」と語ります。

コスト削減の観点で、大きなポイントになっているのがデータベース(DB)の Amazon Aurora です。これまで JASTEM 情報系では、商用 DB を利用していましたが、実機検証やコスト試算の結果から、Amazon Aurora への切替を決断。NIC JASTEM 事業本部 JASTEM 開発二部 部長代理の辻内景郷氏は次のように語ります。

「Amazon Aurora はライセンス料が不要で、圧倒的に安価であることが決め手となりました。加えて、3 つのアベイラビリティーゾーンで 6 つのデータコピーが保持できる可用性の高さや、OSS の PostgreSQL と互換性があり移行がしやすいことも評価して決断しました」

AWS 採用決定後、2019 年 3 月より要件定義を開始し、基盤構築と DB マイグレーションを経て、2022 年 9 月に移行を完了しました。大規模プロジェクトを推進するうえで、同金庫の課題は、初期段階のノウハウ不足でした。そこで、要件定義工程から AWS プロフェッショナルサービスを活用し、要件定義書、設計書等の成果物のレビューやワークショップを通じてクラウドに関する知見を蓄積していきました。

もう 1 つの課題は、セキュリティリスクへの対策です。こちらも AWS プロフェッショナルサービスを活用し FISC セキュリティ基準や AWS 提供のセキュリティ設計ベストプラクティスをベースとした「セキュリティアーキテクチャ実装ガイドライン」を策定し、権限設定、データ暗号化、不正アクセス・変更監視等を実装しました。

DB のマイグレーション対策としては、既存の商用 DB と PostgreSQL の非互換に関する情報を収集したうえで、机上確認・実機検証を通して実現性を見極めました。結合テスト工程では本番データを利用し、変更箇所では全条件を網羅した試験を実施したほか、移行テストやリハーサルも綿密に実施して移行時間を見積もりました。

「JASTEM 情報系は、大きく 2 つのシステムグループに分かれており、それぞれ 12TB と 13TB 、合計 25TB のデータを 2 段階に分けて移行しました。結合テスト、移行リハーサルそれぞれで本番データを使って実施したため作業時間の見積精度が高まり、本番の移行作業は概ね計画どおりに進めることができました」(辻内氏)

導入効果 | AWS のノウハウが蓄積され、クラウド活用の範囲が拡大

AWS への移行により、JASTEM 情報系の DB のライセンス費用は従来比で 3 割程度の削減が実現する見込みで、TCO はハードウェア費用の削減も含めて 3 サイクル(13 年間)で 100 億円以上の削減効果があると試算しています。

「クラウドのメリットは、システムの利用状況や人数にあわせて自由にリソースの拡張や縮退ができることにあり、オンプレミスのように必要以上にハイスペックのサーバーを用意する必要がありません。そのため、投資計画についても説得力のある説明をすることができるようになりました」(石田氏)

ハードウェアの調達が不要になるためリードタイムも短くなり、開発案件にあわせてリソースを提供することが可能です。「準備期間はオンプレミスの半分以下で、スモールスタートで始めて拡張できる点もクラウドのメリットです」と辻内氏は語ります。

工数 4,000 人月、PoC 期間を含めて約 4年半をかけて AWS に移行した今回のプロジェクトは、同金庫の IT 部門に対しても大きな刺激を与えました。

「大規模システムのクラウド移行を成功させたことは、IT 部門全体にとってエポックメイキングな出来事で、部門のカルチャーを大きく変えるきっかけになりました」(半場氏)

IT 部門には AWS のノウハウが蓄積され、クラウド活用のハードルも下がりました。柴崎氏は「JASTEM システムだけでなく、系統向けの周辺システムについても、自発的にクラウドを使おうという話ができるようになり、クラウドが身近な存在になりました」と語ります。

今後の JA バンクのシステム構想としては、データ利活用を積極的に推進する計画で、すでにシステム間のデータを中継・蓄積する基盤を AWS 上に新たに構築しました。

「データ基盤と分析ツールを使用して、JAバンクのお客様への適切なアプローチの分析や、JA バンクの戦略立案など、データドリブンで行動できる将来を目指しています。また、定期的な勉強会などを通して知見を深めているところで、AWS とは今後も密に連携を取りながら、一段上のステージであるクラウドネイティブ化を進めていきます」(半場氏)

企業概要 : 農林中央金庫

農業協同組合(JA)、漁業協同組合(JF)、森林組合(JForest)を基盤とする全国金融機関。会員、農林水産業者、農林水産業に関連する企業等への貸出を行うとともに、国内外で多様な投融資を行い、会員への安定的な収益還元に貢献する。近年は第一次産業の生産者・産業界・消費者をつなぐ食農バリューチェーンの架け橋となるべく、金融サービスを超えた総合的なソリューションを提供する食農ビジネスにも注力している。

半場 雄二 氏

半場 雄二 氏

柴崎 光郎 氏

柴崎 光郎 氏

石田 和宏 氏

石田 和宏 氏

辻内 景郷 氏

辻内 景郷 氏

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