導入事例 / 保険業

2024
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SBI 生命保険、Amazon Kendra と生成 AI で文書検索システムを構築。「セルフボット」機能を開発し、コールセンター業務の効率化を実現

4 か月

文書検索システムの構築期間

3 割削減

オペレーターの教育期間

「 セルフボット」により高いユーザビリティを実現

概要

SBI グループの保険事業を担う SBI インシュアランスグループの一員として事業を展開する SBI 生命保険株式会社。時代のニーズに応える新しい保険のあり方を考え、保険商品・サービスの開発・提供を行っています。同社はアマゾン ウェブ サービス(AWS)の Amazon Kendra と、生成 AI を用いて、保険商品や契約関連の手続き書類を検索可能にする文書検索システムを構築し、社内のコールセンター業務に導入。「セルフボット」機能も実装しました。これにより、スムーズな顧客対応やオペレーターの教育期間の短縮化を実現しました。

ビジネスの課題 | コールセンターのオペレーターの業務負荷軽減

SBI 生命保険は、SBI インシュアランスグループに属する保険会社です。個人のお客様向けには、お手頃な保険料でライフステージの変化に合わせ保険金額を見直すことができる「死亡保険」や保障するリスクの選択が可能な「就業不能保険」、入院治療から在宅医療まで幅広く保障する「医療保険」などを提供しています。また、金融機関向けには「団体信用生命保険」や「団体信用就業不能保障保険」を提供しています。

同社の情報システム部は、システム開発とその保守・運用に加えて、セキュリティ対応なども担い、内製開発の比率が高いことが大きな特徴です。自社内でシステムの要件定義から運用までを行い、社内システムの構築やそれを通じた業務改善を実現してきました。

「当社では、新商品開発や法令対応等についてはその都度、システムを改修して既存のシステムを利用してきました。その結果、技術的負債が蓄積していました。そこで、各種システムを AWS を活用した新しい技術基盤へとリプレースすることを決断しました」(池山氏)

SBI 生命保険におけるコールセンター業務ではスムーズな顧客対応とオペレーターの教育期間の短縮化の両立に課題を抱えていました。例えば、生命保険会社としては、すでに販売を停止した商品の問い合わせ対応も必要になります。SBI 生命保険の場合、販売停止から十数年が経過しているケースもあり、参照すべきドキュメントの種類と量も膨大であるため、回答まで時間がかかってしまうことも多くありました。そのため、オペレーターの教育にも長い期間を要していました。

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「AWS による丁寧なサポートにより、作りたいシステムをスピーディーに構築できています。AWS のサービスや生成 AI を活用し、“インテリジェントオペレーション”を推進していきます」

池山 徹 氏
SBI 生命保険株式会社 取締役 兼 執行役員 情報システム部担当

ソリューション | Amazon Kendra と 生成 AIを用いて使い勝手に優れた文書検索を実現

こうしたコールセンター業務の課題を解決するため、情報システム部は、保険商品や契約関連のドキュメントをコールセンターのスタッフが簡単に検索できるシステムを構築するプロジェクトを開始しました。当初、情報システム部は全文検索・分析エンジンである Amazon OpenSearch Service の活用を検討していました。

「私たちは単純なキーワードの一致検索だけではなく、ユーザーの意図を理解した FAQ の検索結果を機械学習により表示する機能を実現したいと思っていました。しかし、Amazon OpenSearch Service にそれらの機能を搭載した場合、開発負荷が大きくなり、プロジェクトのスピード感に合わなくなると感じていました」(池山氏)

そんな折、Amazon Kendra が 2023 年 2 月にアジアパシフィック(東京)リージョンで利用可能になりました。Amazon Kendra は、機械学習を活用したインテリジェント検索サービスです。複数の場所に点在している構造化および非構造化コンテンツの情報を、柔軟に検索できる機能を提供します。たとえ利用者に機械学習の専門的な知識がなくても、利便性の高いセマンティック検索を簡単に実現することができます。情報システム部は、Amazon Kendraを中核に据えて文書検索システムを構築する方針を決めました。

このプロジェクトでは、システム構築に加えて過去の保険商品のパンフレットや契約関連の手続き書類の PDF 化も実施しました。Amazon Kendra は自然言語処理の技術を用いることで、PDF のような非構造化コンテンツであっても情報源として読み込むことができます。Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)上に読み込み対象のデータを配置し、Amazon Kendra にてクローリングを実施して、検索インデックスを作成しました。

2023 年 4 月からシステムの構築を開始し、同年の 7 月には本番環境へリリースを実現しました。「Amazon Kendra を用いたからこそ、これだけスピーディーに開発を進められました」と、池山氏は評価します。

また、同年の 9 月には生成 AI を用い、「セルフボット」上で Amazon Kendra の検索結果を要約し表示する機能をリリースしました。オペレーターは表示された要約を読み上げることで、顧客からの問い合わせにスムーズに回答できます。この要約機能を実現するために、同社は複数種類の大規模言語モデルを用いており、その 1 つとしてAmazon Bedrock 上で動作する Claude があります。

アーキテクチャ

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導入効果 | 顧客対応スピードの向上とともにオペレーターの教育期間を 3 割短縮

2023 年 7 月時点では、2~3 名ほどのオペレーターを対象として実証実験を行いました。そして現在は、ほぼ全員のオペレーターが文書検索システムを利用しています。従来は、顧客からの問い合わせを受けてから各種のドキュメントを調査して返答していたため、回答までに時間がかかるケースがありましたが、文書検索システムによってすぐにドキュメントを調べられるようになり、スムーズな顧客対応を実現できました。

また、システムの導入に伴い、コールセンターのオペレーションが大幅に改善され、さらに、オペレーターの精神的なストレスの軽減にもつながったほか、オペレーターの教育期間も 3 割程度短縮できました。

「私たちが将来的に実施したいのは、“インテリジェントオペレーション”です。コールセンターのありとあらゆる業務を、自動化・効率化していくという世界観を目指しています。今回の施策はその一部分であり、今後はさらなる DX 化を推進します」(池山氏)

次のビジョンとして、情報システム部はコールセンターの応対の音声を自動的にテキスト変換し、要約するシステムを構想しています。これにより、オペレーターが会話の内容を手作業で記録する手間が省け、顧客対応に集中することでさらなる顧客満足度向上につながると考えています。

こうしたコールセンターの DX 事例は、SBI ホールディングス傘下のグループ企業だけではなく他企業や行政機関からも注目されています。この事例を参考にしたいという問い合わせが、全国各地から寄せられているといいます。「“インテリジェントオペレーション”推進のプロジェクトに携わりたいという想いを持ったメンバーが当社に応募してくるため、採用にもポジティブな影響が見られました」(池山氏)

こうしたコールセンター業務の DX 化は日本の社会課題を解決するうえでも意義があると、池山氏は述べます。

「今後の日本では労働人口が減少していき、労働力の確保が大きな課題になります。これを解決するためには、システムに置き換えられる業務をなるべくシステム化し、人間は人間だからこそできる仕事にフォーカスすべきです。そのためにも、AWS の数多くの便利なサービスを積極的に活用し、各種システムのモダナイゼーションを推進していきたいと考えています」

企業概要 SBI 生命保険株式会社

SBI 生命保険は SBI インシュアランスグループに属する保険会社。時代のニーズに応える新しい保険のあり方を考え、保険商品・サービスの開発に取り組んでいる。個人のお客様向けには「死亡保険」「就業不能保険」「医療保険」などを、金融機関向けには「団体信用生命保険」「団体信用就業不能保障保険」などを提供している。

池山 徹 氏

ご利用中の主なサービス

Amazon Kendra

Amazon Kendra を大規模言語モデル (LLM) と組み合わせて使用することで、エンタープライズコンテンツに加えて、ユーザー向けに安全な生成系 AI を活用した会話体験を迅速に作成できるようになりました。

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Amazon Bedrock

Amazon Bedrock は、AI21 Labs、Anthropic、Cohere、Meta、Stability AI、Amazon などの大手 AI 企業が提供する高性能な基盤モデル (FM) を単一の API で選択できるフルマネージド型サービスです。

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AWS Lambda

AWS Lambda を使用することで、サーバーのプロビジョニングや管理をすることなく、コードを実行できます。料金は、コンピューティングに使用した時間に対してのみ発生します。

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Amazon API Gateway

フルマネージド型サービスの Amazon API Gateway を利用すれば、開発者は規模にかかわらず簡単に API の作成、公開、保守、モニタリング、保護を行えます。API は、アプリケーションがバックエンドサービスからのデータ、ビジネスロジック、機能にアクセスするための「フロントドア」として機能します。

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