西洋フード・コンパスグループ株式会社はイギリスに本部を置き、世界約 50 ヶ国でフード&サポートサービスを提供するコンパス グループの一員です。日本では現在 10 社からなるフードサービスグループです。日本全国の企業や学校、病院施設など約 1,900 か所で食堂運営や給食サービスを提供する一方で、外食店舗の展開を進めるなど、一貫して「食」に関わるサービスを提供しています。
西洋フード・コンパスグループでは、当初はシステム監視を含むマネージドホスティングサービス上で SAP ERP や自社開発システムとその周辺システムといった基幹システムを運用していました。しかし、新規システムの構築やテスト環境準備の際のインフラ的な課題から、毎月のリストアテストや年次の災害対策機への切替テストの環境準備等に時間が掛かり、計画通り実現出来ないという課題があり、オンプレミスのサーバー更新が近づくに伴い次世代の基盤について検討を始めていました。
そのような中で、グローバル方針によって災害対策(DR)の実装も推進することとなり、同社のグループ経営管理 部門 情報システム部 担当部長である椙田 秀樹 氏は「オンプレミスのサーバー更新に合わせて、DR の実装についても大きな課題となりました。」と振り返ります。DR 対策と基幹システムの更新が重なったこともあり、基幹システムの方向性として、システムの柔軟性の高いクラウドを検討することとなりました。
クラウドへの移行検討は、グループの IT 戦略との整合性が取れるかどうか、という点に加え、DR の実装可否、SAP との親和性、オンプレミスとの費用比較といった点がポイントになりました。同グループ経営管理 部門 情報システム部 アシスタントマネジャーである工藤 卓也 氏は「クラウドを検討する段階で、当初からクラウドの場合は AWS と決めていました。その上で、既存オンプレとの費用比較や各社ベンダーからの提案によるベンダー所有クラウドとの比較評価を行いました。」と振り返ります。
検討中は社内で会計データをクラウドに載せて良いのか?という議論もありましたが、その際、AWS や AWS のパートナー企業等から提供された情報が役に立ちました。また、英国グループ本社や APAC リージョンでAWS を利用していたこと、国内リーダーシップチームが後押ししてくれたことにより、スムーズにクラウド化の検討を行うことが出来ました。
検討の結果、西洋フード・コンパスグループは AWS であれば移行の目的を満たすことが出来ると判断し、AWS への移行を決定しました。移行プロジェクトは 2016 年 4 月から開始され、同社とビジネスコンサルティングパートナーのクニエと APN パートナー2 社、外部ベンダーを含めた 4 社合同のプロジェクトとなりました。
移行プロジェクトではクラウド上に実際に基幹システムを移行、構築し、システム移行作業に問題が無いか、稼働に問題が無いかを検証の上、アプリケーションの動きや業務への影響が無いかを検証しました。「DR 設計/実装と移行計画/テスト/構築から本稼働を短期間で行う必要があったため、ほぼ並行で実施しました。AWS クラウド上で目的別に複数のテストシステムを立てることが迅速かつ容易に実現出来たため、プロジェクトを円滑に進めることが出来ました。」(工藤氏)
本稼働サイトは AWS の東京リージョンで、Amazon EC2、Amazon EBS、Amazon S3、Amazon Glacier、Amazon VPC、AWS Direct Connect、Amazon AMI を利用し稼働しています。DR 環境は AWS シンガポールリージョンを利用しており、AWS CloudFormation と AMI を利用した DR 環境設計を採用しています。「アプリケーション検証、グローバルガイドライン対応やリハーサルを経て、4 ヶ月程度で本番切替を行うことが出来ました。」(工藤氏)
西洋フード・コンパスグループでは、現在 AWS を主に SAP ERP(財務会計、管理会計)と 本部システムの基盤として利用しています。
グローバルグループ内において、日本先行で始まったクラウド移行計画でありながら、短期間でスムーズに移行出来たため、グループ内では成功事例として高く評価される結果となりました。そのため、グローバルの IT 部門から成功の秘訣について問い合わせを受けていると椙田氏は語ります。移行にあたっては VPC や VNET の設計を行い、それぞれに合わせたセキュリティグループ等も作成、利用しているため、セキュリティ面の対策も AWS 上で実現出来ています。
AWS クラウドであればインフラをグローバルで迅速に立ち上げることが出来るため、「今までは、事前に綿密な計画を策定した上で本番稼働への影響を考慮しないと実施出来なかったリストアテストや災害対策テストが実施し易くなり、非常時への対策が高いレベルで実現出来ていると思います。」(前井氏)
費用面においても、AWS 利用料がオンプレミスよりも安価に利用出来ているためコスト削減が実現出来ているだけで無く、AWS によって OS より下のレイヤーは、監視や今後の拡張計画含め検討していく必要が無くなったため、これらの業務に掛かる負荷も軽減されています。
西洋フード・コンパスグループでは今後、メニューシステムなどの周辺システムにも AWS の使用範囲を拡張していく予定です。既に一部のシステムでは追加導入を開始しています。
「今後システムを拡張していく際、今回作成したガイドラインに沿って実装していくことが出来るため、非機能要件が保たれた上で作業負荷の軽減に寄与すると考えています。」(椙田氏)
AWS クラウドが基幹システムやビジネスアプリケーションでどのように役立つかに関する詳細は、ビジネスアプリケーションの詳細ページをご参照ください。