ラスベガスで開催されているアマゾン ウェブ サービスのグローバルカンファレンス「AWS re: Invent」。Andy Jassy(Sr. Vice President, Amazon Web Services), Werener Vogels(CTO, Amazon)をはじめ、エンタープライズ企業である AWSのお客様による講演も行われるカンファレンス、そして日本からのre:Inventツアーの模様を現地からレポートいたします。
「AWS re:Invent 出張報告会におけるセッション資料公開中! | |||
「AWS re:Invent 出張報告会におけるセッション資料公開中!「AWS re:Invent」に参加したアマゾンの中のアーキテクトによる「re:Invent出張報告会」でのセッション資料をご覧いただけます。 |
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re:Invent 最初の基調講演は、Andy Jassy が登壇。昨年に続き2回目となる「re:Invent」では、通常のカンファレンスと異なり「Learning Conference」(AWS をより深く学ぶためのカンファレンス)であり、AWS が提供するテクノロジーや最新の事例をお伝えする場であるというイベントの位置づけがまず伝えられました。今回は昨年を上回る175以上のセッションの提 供を行い、参加者は 9,000人にのぼるとのこと。
AWS のビジネスの話に移ると、Andy は現在 AWS がコンピューティング、ネットワーキング、ストレージ、データベース、アプリケーション、マネジメントといった疎結合ができる複数のクラウドサービスを簡単に、使い勝手良く提供するだけでなく、AWS サポート、プロフェッショナルサービス、トレーニングなどのサービス・サポートも提供していると紹介。2013 年には既にこれらのサービスに対して 235 の新機能・拡張のリリースが行われ、現在は Amazon.com が年商約 7,000 億円($7B)企業であった際と同等のサーバー数を毎日追加するスピードで成長していると説明。また、9 つのリージョン、25 のアベイラビリティゾーン、46 のエッジロケーションでサービスを提供し、グローバルで展開されているといった話を紹介しました。
AWS のユーザーについても Dropbox、Instagram といったスタートアップ企業のみならず、SAMSUNG、ダウジョーンズといったエンタープライズ企業での利用も増えており、現在では数十万のユーザー、 600 の政府機関、2,400 もの教育機関で既にご利用いただいているといった現状に加え、Gartner 社の IaaS Magic Quadrant 2013 では、AWS が圧倒的なリーダーとして第 3 者からの評価を得ているといった話題を挙げ、AWS のビジネスが順調に拡大していることが強調されました。
AWS が選ばれるのはなぜか、というトピックへ話が移ると、Andy からは次の4つのポイントから実例の紹介や新製品リリースの発表が行われました。
- セキュリティ
- 可用性
- コスト
- 俊敏性
まず最初に AWS が最も重要視するセキュリティに関する説明では、データセンター、ネットワークのセキュリティ、権限管理などを厳重に行っていることに加え、SOC、 FISMA、HIPAA、ISO、FedRAMP など多くの第3者認証を取得し、お客様が求める高いセキュリティ基準をクリアしていると話し、結果的にお客様はインフラが利用している間に、追加料金なし でよりセキュアになっていくという利点もあるとのこと。
ここで早速1つ目の新しい製品発表として、API コールのログ情報を Amazon S3 や Amazon Glacier に格納し、Splunk、Loggly といったツールから分析も可能になる「AWS CloudTrail」が発表されました。
AWS が選ばれる理由の 2 つ目である可用性について、 Andyは AWS に移行することにより、ダウンタイムが 32% 減少するという NUCLEUS RESEARCH 社のレポートが取り上げ、さらに 3 つ目のコスト削減の話では、AWS がお客様におけるコスト削減を実現するために次の4つを実施していることを紹介しました。
- イニシャルコストから低価格な変動コストへの移行によるコスト削減
- AWS による規模の経済を活かした利用料金の値下げ
- オンデマンド、リザーブドインスタンス、スポットインスタンスといった複数の価格モデルによる低減
- ボリュームディスカウントによる価格低減
また、AWS では 2006 年以来 38 回の価格低減を実現しているだけでなく、AWS Trusted Advisor により、これまでに70 万のコスト削減のレコメンドを出し、約140 億円($140M)ものコスト削減に貢献している実績についても触れられました。
4つ目の俊敏性については、AWS では数分でインフラを用意することができるため、お客様は様々なアイディアに時間を割くことが出来ると紹介。また、2013年1月に開始した Amazon Redshift が既に26のリリースを行うなど、AWS は迅速な機能拡張、複数のサービス、グローバルなプラットフォームなどで俊敏性をサポートしているといった説明がなされました。
ここでオーストラリア大手金融機関(銀行、保険業務)のSuncorp社が登場。CEO 自らがテクノロジーへの理解をしており、18ヶ月ほどで 2,000 ものアプリケーションをAWS 化した事例が紹介されました。
その後、Andy はいわゆる「プライベートクラウド」に言及。全システムの AWS 化か、「プライベートクラウド」を作るべきか悩んでいるお客様が多くいらっしゃる中、AWS ではそのような二者択一ではなく、オンプレミス環境と AWS の共存という方法を示し、AWS が提供する機能やパートナーが提供するツールにより、一つのコンソールでオンプレミス、AWS の両方を運用監視できるため、様々なインフラとの共存が可能であることが伝えられました。
Andy は AWS における今後のシステム投資に関する見解を提示し、様々なワークロードが AWS 上で稼働することでクラウドの利用がオンプレミスを上回るとコメント。 ここで、新たな領域へのサービス提供となる二つ目の新製品、「Amazon WorkSpaces」 が発表されました。これまで非常に多くの要望があったという仮想デスクトップサービスは、まずプレビュー版として提供されます。
続いて、AWS は様々なお客様に、開発・テスト環境への適用をはじめ、新しいクラウドアプリケーションの開発、既存のオンプレミスシステムの強化・改善、既存のオンプレ ミスシステムと新しいクラウドアプリケーションの統合や、既存のアプリケーションのクラウドへの移行、そして全システムのクラウド化といった、様々な用途 で利用されていることが Andy から紹介されました。
そして、ゲストスピーカーとして登壇したダウジョーンズの CTO へバトンタッチ。ウオールストリートジャーナルなど世界トップクラスのメディアを持つ同社が AWS を採用したことにより 40 のデータセンターを 6 に減らし、2015 年までに 3,000の アプリケーションを移行、100億円($100M) のインフラコスト削減に AWS が貢献する見込みであるといった話が紹介されました。
Andy はその後、AWS 上でも Pinterest、Shazam など著名なモバイルアプリケーションが AWS 上で稼働している中、A/B テストや分析のサービスが加わったことを紹介。
一方、モバイルアプリケーションの世界では、Game、3D、メディアなど様々なニーズがありながら、専用ゲーム機、タブ レット、スマートフォンなど複数の端末が存在し、マルチデバイスでのアプリケーション配信を容易に行うことができる必要があると指摘し、ここで Andy から 3 つ目の新製品発表となる「Amazon AppStream」が発表されました。この新製品によって、専用ゲーム機、タブレット、スマートフォンなど複数の端末へ向けてモバイルアプリケーション を AWS 上からストリーミング配信することが可能となります。
総括では、クラウドを活用することで様々な新しいビジネスを展開でき、安価に今まで出来なかったことが出来るようになったことを挙げつつ、「The world is a different place」(世界は本当に変わってきている)と述べ、この日の Andy の基調講演は締めくくられました。
午後からの re:Invent では、各セッションルームでのブレイクアウトセッションが多数行われましたが、今回日本からご参加いただいたツアーのお客様のためだけにジャパンブレイクアウトセッションも開催されました。
最初のキックオフセッションでは、アマゾン データ サービス ジャパン株式会社代表取締役の長崎 忠雄から、日本からご参加いただいたお客様へのお礼から、今回の re:Invent では日本からもスポンサーとして、トレンドマイクロ様、cloudpack 様、ワークスアプリケーションズ様に参画していただいている他、ブレイクアウトセッションでも、NTT Docomo 様、cloudpack 様が登壇されるなど、日本のお客様もグローバルへ向けた発表の場としていることが紹介されました。その後、今回の re:Invent で、以下の3つを感じていただきたいという願いが伝えられました。
- re:Invent はマーケティング的なイベントではなく、お客様に成り代わってイノベーションを起こし続けている現在の AWS を深く知っていただくことを目的としたカンファレンスであるという点
- スタートアップから大企業様まであらゆる多くのお客様が、AWS をご利用いただくことでイノベーションを起こしている点
- この会場に来ないと感じられないこととして、エコシステムであるパートナー様が非常に熱く成長している点
そして、技術統括本部 本部長の玉川 憲に話をバトンタッチすると、Andy による基調講演が振り返られキックオフセッションは終了し、その後、以下のようなセッションが AWS の各製品、ソリューションのエキスパートにより同時通訳付きで開催されました。
- Scaling on AWS for the First 10 Million Users
- Data Replication Options
- High Availability Application Architectures
「Scaling on AWS for the First 10 Million Users」では、AWS オーストラリアのプリンシパルソリューションアーキテクト Simon Elisha が、「どのようにAWS環境をスケーリングさせていくべきか」、をテーマに登壇。AWS が提供する機能である Auto Scaling だけでなく、ユーザー数の増加に合わせて、数ある AWS のサービス、リージョン、アベイラビリティゾーン等を効果的に使いこなしていくことが大切である、という前提から、ユーザー数が1人から、1万人、100 万人、1,000万人と増加していく各ステージにおいて、どのような点に留意するべきかという観点でAWS環境のスケーリングノウハウが語られました。
続いての「Data Replication Options」では、AWS ソリューションアーキテクトの Thomas Park が「データ複製」をテーマに登壇し、“Data Replication(データ複製)”を検討する際、AWS でどのような対応施策を講じることが出来るかデモを交えたセッションを実施。データ複製を考える場合は、以下のような6つの要素に分解して検討する必要が あるという話がなされました。
- Hyrbrid IT:
自社のDCにあるデータをS3上にバックアップ取る方法 - Database Migration:
非RDSのデータを Amazon RDS にMigrationする方策 - High Availability Databases:
Amazon RDSで、AWSのマネジメントコンソールを活用し、非常に簡単にデータ複製する方法 - Increase Throughput:
パフォーマンスを上げる方策 - Cross Regions:
リージョンを跨いだデータ複製方法 - Data Warehousing(DWH):
AWS Data Pipelineを活用したデモ
また、パフォーマンスとコストはトレードオフの関係にあるので最適化が必要であるという点、パフォーマンスをあげるにはパラレル処理も検討すべきである点、そして正しいツールと正しいジョブ管理をすべきであるといった内容が紹介されました。
続いての「High Availability Application Architectures in Amazon VPC」では、ソリューションアーキテクトマネージャーである Brett Hollman が登壇し、仮想プライベートクラウドで高い可用性のアプリケーション構成を実現するためのノウハウを紹介。 AWS クラウドに論理的に隔離したネットワークを構築することが出来る Amazon VPC のユースケース、より具体的な Amazon VPC の活用例、特徴、メリットを示した上で、Amazon VPC でお客様データセンターと AWS を接続する方法として、VPN 接続と AWS Direct Connect の選択肢があることを解説し、それぞれのサンプル構成が紹介されました。
さらにはこの Amazon VPCを活用してどのように高可用性かつセキュアなアプリケーションを AWS 上に構築していくのか、クラウドデザインパターンに見立てたベストプラクティスも示され、最後に、Chaos Monkeyを使って、Amazon VPC で構成したウェブアプリケーションの高可用性テストのデモを行い、可用性の実際と有用性が分かり易く紹介されたセッションとなりました。
Andy Jassy による基調講演動画(英語)
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