Delivery Hero – msg services ag との連携により SAP を AWS へ移行

「当社の現在の注文数は現在、平均して前年比で 48% 増加しています。AWS を使用したアーキテクチャのすばらしいところは、スケーリングによりこの受注増に対応できることです」

Delivery Hero のファイナンスシステム部門シニアディレクター、Johannes Langguth 氏

地域フードデリバリーを世界的規模で提供

オンラインフードデリバリーサービスは、手元のモバイルアプリケーションやウェブサイトで注文すれば、その食品を玄関先で受け取ることができるサービスです。Delivery Hero では、最先端の技術によりフードデリバリーの仕組みに大きな変革をもたらしています。

Delivery Hero では、ユーザーエクスペリエンスを地域ごとにパーソナライズして、洗練された使いやすい注文用インターフェイスを提供することにより、市場において自社を差別化しています。「当社の目標は、あっと驚くテイクアウト体験を生み出すことです。驚きとなる要素は国によって異なり、個性が非常によく表れるものだと考えています」と、Delivery Hero のファイナンスシステム部門シニアディレクターの Johannes Langguth 氏は語ります。

Delivery Hero では、地域に焦点を合わせた食品注文およびデリバリーサービスを構築するため、41 か国でフードデリバリー事業の買収や市場の構築を行ってきました。また、展開する地域全体に多くの専門家を配属してきました。Delivery Hero の始まりは小規模なものでしたが、首脳陣は当初から大規模な世界的拡大のビジョンを持っており、適切なテクノロジーソリューションに投資することの重要性を認識していました。 

「地域ごとに、プラットフォーム、アプリケーション、インフラストラクチャはすべて異なります。当社では、個々の地域に合ったカスタマーエクスペリエンスを提供するため、世界中でさまざまな種類のテクノロジーを組み合わせて使用しています。当社のビジネスモデルを機能させるには、世界中の異なるテクノロジースタックに存在するさまざまな注文用プラットフォームと連携できることが必要でした。Delivery Hero のミッションは、世界の中でユーザーが位置する場所に基づいて、高いレベルで個々に合わせたユーザーエクスペリエンスおよび注文エクスペリエンスを提供し、同時に企業全体にわたって事務処理の標準化と自動化を進めることです」と、Langguth 氏は語ります。 

SAP の活用

Delivery Hero は当初から、ユーザーに的を絞ってパーソナライズされたエクスペリエンスを提供し、同時にバックエンド処理の標準化、同期、自動化を確保することを目指していました。物流プロバイダーとして継続的に成長していくにつれて、食品市場およびデリバリーサービスの両方を提供し、バックエンドの標準化と一貫性を推し進めることはさらに重要になりました。Delivery Hero ではこの必要を満たすため、また将来の成長を予測して、投資先として SAP を選択しました。具体的には、SAP S/4HANA、SAP Business Information Warehouse (SAP BW) on SAP HANA、SAP Process Orchestration (SAP PO)、Adobe Document Server (ADS) です。

「当社ではまず、拡張性の高い SAP 環境をオンプレミスで構築することから開始しました」と Langguth 氏は語ります。「当初はこれが適切な選択だと考えていましたが、年を追うごとに大規模な拡張が行われてきました。例えば、データベースは過去 2 年間で 40 倍に膨れ上がりました。継続的な成長に伴い、オンプレミスにホスティングしたままの SAP システムを拡張して適応させるだけではもはやニーズを満たせないということがわかりました」

Langguth 氏とそのチームは、Delivery Hero における SAP 環境の拡大を見越した、将来への備えとなる選択肢を検討し始めました。 

ビジネスクリティカルな SAP ワークロードおよびシステムを AWS に移行する

Delivery Hero では、創業の約 1 か月後に AWS での構築を開始していました。「Delivery Hero のプラットフォームの多くは AWS 上で実行されています。それで当社の観点からすると、社内には既に AWS に関する多くの知識と経験がありました。チームにとって重要だったのは、AWS、Google Cloud、Microsoft Azure について深く学び、実践的な比較を行い、当社の SAP システムを移行および実行するのに最適な選択肢を客観的に特定することでした」と Langguth 氏は語ります。

チームは、意思決定プロセスの期間中、各プロバイダーを試すためのサンドボックス環境を構築し、その間他のプロバイダーとのコンサルティングも進めました。「最終的に、当社にとっての唯一の現実的な選択肢が SAP システムを AWS 上で実行することであるということは明らかでした」と Langguth 氏は語ります。その大規模な移行のためにコンサルティングパートナーと連携することを決めた後、チームは複数の情報源から msg services ag に関する良い評判を聞きました。msg services ag は、企業が SAP ワークロードを AWS へ移行および管理するのをサポートする面で専門的な知識を持つ AWS パートナーネットワーク (APN) コンサルティングパートナーです。

「msg services と連携して AWS に移行した他社からのすばらしいフィードバックを聞いたため、当社も SAP の移行に関するサポートを msg services に依頼することを決めました。当社では、社内の AWS リソースと専門知識の構築が継続的に行われていたため、移行のあらゆる段階で信頼できるアドバイザーを持つことには大きな価値がありました。msg services から、AWS 上に構築する必要のあったアーキテクチャを最適化するためのガイダンスが得られました。これにより、SAP アプリケーションを効率的に実行することができるようになりました」と Langguth 氏は語ります。

4 か月にわたり、チームは msg サービスを利用して自社の SAP システムをオンプレミスから AWS に移行しました。「当社では、Delivery Hero の移行フェーズのために SAP の専属チームと AWS エキスパートを割り当てました。また、きわめて実践的なアプローチを採用し、プロジェクト全体で単一の窓口を設けました。これにより、Delivery Hero の技術チームと常時連携し、効率的な業務スケジュールを保つことが可能になりました」と msg services ag の SAP コンピテンスセンター、セールスマネージャーの Leonard Bölingen 氏は語ります。

Delivery Hero におけるフードデリバリーの注文はすべて SAP システムを通して処理されるため、ダウンタイムは収益の損失を意味することになります。それで、移行に伴うシステムのダウンタイムを最小限にすることが重要課題でした。Delivery Hero では、全体的なダウンタイムをわずか 4 時間に抑えることに成功しました。

Delivery Hero では、Amazon VPC 内の 3 層 SAP S/4HANA システムと 3 層 BW/4HANA システムを含む 18 の SAP システムを AWS で実行しています。また、3 層 PO システムと ADS サーバーを、複数の Windows および SQL マシンを使用して実行しています。「当社では使用中のデータベースのサイズを考慮して、SAP システムを Amazon X1E インスタンスタイプで実行しています」と Langguth 氏は語ります。Amazon X1E インスタンスは SAP HANA のような高パフォーマンスデータベースやインメモリワークロードを実行するために設計されています。X1e インスタンスには 4 個の Intel Xeon E7 8880 v3 プロセッサが搭載され、最大 128 個の vCPU および 3,904 GiB の DRAM ベースのメモリを提供しています。

Delivery Hero のチームはまた、SAP Cloud Foundry on AWS をデプロイすることにより、付加的な SAP サービスも活用しています。「Cloud Foundry on AWS の使用は、業務プロセスの自動化とイノベーションを進めるうえで役立っています」と Langguth 氏は語ります。 

SAP システムの大規模なスケーリングおよび迅速な処理速度

SAP デプロイを AWS に移行した後、Delivery Hero におけるバッチ処理速度は飛躍的に向上しました。そのため、新しいシステムに関するユーザーからのフィードバックは全般的に肯定的でした。「システムは以前と比べはるかに高速になりました。以前には 4 時間かかっていたバッチ処理が、今では 30 分以内で済みます」と Langguth 氏は語ります。 チームにとって速度が重要な分野の 1 つは、毎月の請求作業です。「毎月、数千のレストランに世界中の数百万件の注文を対象とする請求書を送ります。以前は 1 か月分すべてを処理するのに 20 時間かかっていました。それが AWS では 90 分で処理できます。すばらしいシステム速度です」と Langguth 氏は語ります。

グローバル展開するスタートアップ企業である Delivery Hero では、収益が前年比で 60% 増加しており、AWS での SAP デプロイを簡単にスケーリングできることが重要です。「当社の現在の注文数は現在、平均して前年比で 48% 増加しています。AWS を使用したアーキテクチャのすばらしいところは、スケーリングによりこの成長に対応できることです。インフラストラクチャがさらに必要なときは、AWS で新しいインスタンスとリソースをプロビジョニングするだけでいいんです。大きなハードウェア経費の承認サインを得るために、インフラストラクチャチームと一緒に何週間もかけてあちこちを駆け回る必要はありません」と Langguth 氏は語ります。

チームでは、現在自社の AWS リソースを管理している msg services のサポートから継続的なメリットを得ています。「当社には、msg services との緊密な共同関係があります。パートナーには高い柔軟性が必要ですが、msg services には、すぐに対応し、高い適応能力のあるパートナーが揃っています」と Langguth 氏は語ります。 Langguth 氏は、AWS への大規模な移行を開始しようとしている企業に対し、信頼できる AWS パートナーと連携することを勧めています。「大規模な移行を開始する場合、一定数のタスクを管理し担うことのできるパートナー、また自社のチームがより優れた専門知識を構築できるよう長期間連携し、望むペースで管理を引き継げるようサポートするパートナーと連携することは役立ちます。

当社では AWS を使用することにより、現在の成長に対応するうえで必要な柔軟性を社内に備えるための方法を見つけることができました。AWS により強力な能力を得ることができます」と Langguth 氏は語ります。 

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Delivery Hero について

Delivery Hero は、食品のオンライン注文およびデリバリーを行う世界的なマーケットプレイスです。Delivery Hero では、欧州、中東と北アフリカ (MENA)、ラテンアメリカ、アジアパシフィックの 41 か国、および世界中の 4,000 以上の都市で利用可能な食品のオンラインおよびモバイル注文プラットフォームを提供しています。また Delivery Hero は、世界中の 200 の都市で独自のデリバリーサービスを運営しています。 

課題

Delivery Hero では、前年比の収益増加率が 60% を超えていたため、自社の大規模な SAP デプロイを需要に応じて確実にスケーリングできるようにする必要がありました。 

ソリューション

Delivery Hero は、自社の SAP 環境をオンプレミスから AWS に移行することにしました。また、移行のサポートおよび継続的なサポートを得るため、AWS パートナーネットワーク (APN) パートナーである msg services ag と連携することを決定しました。 

利点

Delivery Hero での処理速度は AWS への移行により大幅に向上しました。以前は毎月の請求の実行に 20 時間かかっていましたが、AWS によりその時間を 90 分にまで短縮することができました。 

msg services ag について

msg services ag は、お客様の IT サービスパートナーおよびコンサルティングパートナーとして、お客様のビジネスにおいて長期的な価値を引き出す革新的で優れたソリューションを開発します。msg services ag は、IT コンサルティングおよびシステム統合の分野で業界をリードする企業である msg group に所属しています。msg services ag のコアコンピテンシーは、プロセスコンサルティングおよびインフラストラクチャソリューションから運用およびアプリケーションサービスに至るまで、多岐にわたります。msg services ag は、お客様の SAP ワークロードを AWS に移行するためのサポートを専門としています。また、AWS for SAP の活用を考慮中のお客様にさまざまな継続的サービスを提供しています。