EC サイトをオープンした当日は、想定を超える通常の数倍のアクセスがありましたが、 AWS の拡張性のおかげで通常のメンテナンス時間内にスケールアップすることができ、翌日には十分なスループットを確保することができました。オンプレミス環境であれば、その対応のためにシステムを長時間止める必要があったでしょう。
システムの更新や導入は、ハードウェアのリプレイスタイミングなどに囚われることなく事業計画にのみ沿って実施したいと考えています。それが実現できるのが、AWS のクラウドだと思います。
富樫 真一 氏 コープデリ生活協同組合連合会 情報システム EC システム部 部長・インターネット事業部 担当部長

消費者が出資金を出し合って組合員となり、組合員同士で助け合い分かち合うことを目的にさまざまな活動を行う生活協同組合。関東信越の 1 都 7 県の生活協同組合で構成される『コープデリ生活協同組合連合会』(以下、コープデリ連合会)は、『co・op ともに はぐくむ くらしと未来』を理念に、消費者、組合員のくらしへの最大貢献を目指しています。さらにグループの目指す長期的な姿として『ビジョン 2025』を定め、『食卓を笑顔に、地域を豊かに、誰からも頼られる生協へ。』との目標で食の安全と安心を第一に考え、食卓に笑顔を届けることにも注力しています。

コープデリ連合会の主な事業は、宅配と店舗の 2 つです。コープデリ連合会の会員生協総事業高は、2016 年度に 5,346 億円に達しています。実店舗は 155店、コープデリ宅配センターも 121 拠点あり、組合員数も年々順調に増え、2016 年度には 464 万人を超えています。

現在コープデリ連合会の事業割合は、宅配が店舗事業の 3 倍ほどとなっています。コープデリ連合会 情報システム EC システム部 部長・インターネット事業部 担当部長の富樫 真一氏は「宅配と店舗の 2 つの事業を、両輪として回していくことがこれからは大事だと考えています。」と言います。

宅配事業は従来週 1 回配送の『ウイークリー』が中心でした。これに加えて現在はお弁当や夕食食材などを月曜日から金曜日の間に 3 日以上配達する『デイリーコープ』、配達日と時間帯を選べる『指定日お届けコープ』、さらには各地の特産品やギフト、頒布会商品などを宅配便で届ける『産地・工場 直送便』も提供しています。コープデリ連合会では、少子高齢化や人々のライフスタイルの変化に合わせて消費者である組合員の欲しいものを、好きな時に届けることができるようサービスを拡充してきました。

宅配サービスの注文は、既に定着している紙の注文用紙に加え、最近では EC サイトからの注文も増えています。そこでコープデリ連合会では EC サイトの利用と店舗利用をうまく組み合わせて利便性の向上を図り、さらに EC サイトと店舗を融合するオムニチャネルのサービスにもチャレンジしたいと考えていました。

これらの EC サイトはこれまで『日本生活協同組合連合会』が提供する『CWS(Coop-Web-Standard)』の基盤を共同利用していました。しかし、この CWS はウイークリーの宅配しか対応していないという課題がありました。そこでコープデリ連合会では、この CWS の共同利用から新たに独自の EC サイトを構築することを決定しましたが、日々増加していく大量のデータやサーバー処理をオンプレミス環境のサーバーで適切に扱うのが難しくなっていることが課題の 1 つとなっていました。

情報システム システムサービス部 インフラ課 課長である高橋 延之氏は、「オンプレミスで導入するハードウェアは、5 年ほどでリプレイスするのが一般的ですが、変化が激しい中、5 年後のデータ量やサーバー処理を想定するのは難しいものがあります。さらに 5 年後の容量を最初から確保すれば初期投資もかなり大きくなり、無駄がでてしまいます。」と言います。

コープデリ連合会では、新たなファイルサーバー環境の提案をパートナー企業から受けることにしました。その提案の 1 つが、AWS 環境を活用するものでした。クラウドであればストレージ容量の追加も容易な上、5 年ごとにハードウェアをリプレイスする必要もありません。そういった点でメリットが大きいと判断され、Amazon EC2 とブロックレベルのストレージボリューム Amazon EBS を組み合わせたファイルサーバー環境へと移行し、古いデータのアーカイブ保存には Amazon S3 が導入されました。「クラウドサービスの活用は当初実験的な面もありましたが、利用して何ら問題がないことが分かりました。」(高橋氏)

その後は拡張性が求められるものなどクラウドで動かすほうが良いと判断したシステムは順次 AWS に移行され、結果的にスマートフォン・アプリケーションの管理サーバーやコーポレートサイトの Web サーバーなども Amazon EC2 を中心としたシステムに移行されました。

そしてファイルサーバーの移行と同じタイミングで検討されていたのが、新しい EC サイトの構築でした。「先のファイルサーバー移行で既に実績もあったので、インフラには AWS を利用したいと要望をあげました。ちょうどこの頃、専用線で接続できる AWS Direct Connect が提供されたのも選択のポイントとなりました。」(高橋氏)

オンプレミスと比較し初期投資が少なくてすむことや、拡張性、柔軟性はもちろん、AWS Direct Connect と仮想プライベートクラウドを構築できる Amazon VPC を組み合わせることで、セキュアなシステム稼働空間を確保できること、AWS がクレジットカード業界の機密情報のセキュリティ標準であり『PCI DSS』の認証を受けていることもあり、安心して EC サイト利用者の個人情報を管理できることなどが導入の決め手となりました。

さらにコープデリ連合会の情報システム部門としてクラウド活用の方針が出されていたことも、AWS 導入をスムースに進めることにつながりました。「以前、東急ハンズさんが EC サイトや POS システム、さらには基幹系システムも含め AWS に移行し成果を上げている話を、コープデリ連合会の役員が直接聞く機会がありました。その際 AWS を活用するポイントなどを包み隠さず聞くことができ、それが情報システム担当執行役員のクラウドへの不安を払拭したようです。オンプレミスからクラウドへの大規模な移行においては、経営層の理解も重要だと感じています。」(富樫氏)

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実際の EC サイトの移行は 2013 年頃から課題の検討が始まりました。第 1 フェーズの『指定日お届けコープ』の構築は 2014 年 1 月から行われ、同年 8 月から利用が開始されました。そして 10 月にはチケット販売や『くらしのサービス』などを提供する『ライフなび』機能が追加されました。これらと並行して、2014 年 3 月からは残りの EC サイトの統合作業が始まり、最終的には 2016 年 6 月にすべての EC サイトの構築が完了しました。

新たな EC サイトは Amazon EC2 を中心に、データベースは Amazon RDS for Oracle と Amazon RDS for PostgreSQL を組み合わせ、アプリケーショントラフィックを複数の Amazon EC2 インスタンス間で自動分散する Elastic Load Balancing、DNS サービスの Amazon Route 53、フルマネージドの通知サービスである Amazon SNSも活用されています。管理部分では、モニタリングに Amazon CloudWatch が利用されています。

CWS を共有で利用していた当時は、コープデリ連合会がシステム基盤部分に直接触ることはありませんでした。そのため、以前の EC サイトのページビュー数などのデータはあったものの、新しい EC サイトで実際にどれくらいのアクセスが発生するかを予測しきれないところがありました。「実際、統合した EC サイトをオープンした当日は、想定を超える通常の数倍のアクセスがありましたが、 AWS の拡張性のおかげで通常のメンテナンス時間内にスケールアップすることができ、翌日には十分なスループットを確保することができました。」(富樫氏)

その後もコープデリ連合会では、タイムセール時の負荷上昇などに対処するため適宜スケールアップを実施しており、いずれも通常のメンテナンスの間で対応することができています。これは運用の手間の面で大きなメリットとなりました。「自前のオンプレミス環境であれば、別途メンテナンスの日時を設定しシステムを長時間止める必要があったでしょう。(富樫氏)

コープデリ連合会では、AWS の高い可用性についても評価しています。「AWS では Multi−AZ 配置で容易に災害対策構成を取ることができるため、手間なく可用性が確保できています。オンプレミスで Multi-AZ の仕組みと同じものを構築するのは、技術的にもコスト的にも不可能だったでしょう。」(高橋氏)

開発環境についても本番と同様な構成をすぐに用意でき、使用しない時間インスタンスを落としておけば費用も発生しないこと、さらにハードウェアのリプレイスを気にしなくて済むことも、結果的なコスト削減につながっています。

コープデリ連合会では、今回構築した ECサイト において、ユーザーインターフェイス改良など、よりユーザーに使いやすい環境にする取り組みが続けられています。さらに EC サイトで注文し店舗で受け取るといった機能を実装することで、オムニチャネル的に EC サイトと店舗のサービスを組み合わせた利用拡大を目指しています。そのためには電子レシートやスマートフォンでのクーポン発行など、クラウドを活用しながら新たな機能も積極的に追加していく予定となっています。

「システムの更新や導入は、ハードウェアのリプレイスタイミングなどに囚われることなく事業計画にのみ沿って実施したいと考えています。システムへ の影響は、なるべく事業計画以外の理由を排除したいのです。それが実現できるのが、AWS のクラウドだと思います。今後は新しいシステムを中心に、さらにクラウドの利用が増えるでしょう。」(富樫氏)

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- コープデリ生活協同組合連合会 情報システム EC システム部 部長・インターネット事業部 担当部長 富樫 真一 氏
- コープデリ生活協同組合連合会 情報システム システムサービス部 インフラ課 課長 高橋 延之 氏
 

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