PureTech Global が AI を活用して請求収益を最適化

業界の規制緩和と 5G などのテクノロジーの出現により、通信会社は収益源を多様化する方法をますます模索するようになっています。モバイル付加価値アプリとエンターテインメントオーバーザトップ (OTT) サービスは、通信会社が契約者からのロイヤルティと追加の支出を促す方法の 1 つです。

PureTech Global は、13 か国の通信会社の契約者向けに、モバイル広告ソリューションに加えてゲーム、壁紙、ビデオストリーミングなどのコンテンツを開発しています。2008 年にマレーシアで設立された同社は、2014 年から IT インフラストラクチャに Amazon Web Services (AWS) を使用してきました。

通信業界やモバイル業界で起きている混乱と、この混乱がもたらすチャンスを踏まえて、PureTech は人工知能 (AI) や機械学習 (ML) などのより現代的なテクノロジーアプリケーションをクラウドで活用することにしました。同社は 2020 年に最初の AI プロジェクトを開始しました。AI をネイティブのワークフローに組み込み、消費者データを活用してよりパーソナライズされたインパクトの強いアプリを提供することで、自社と通信会社クライアントの収益を増やしました。

専任のデータチームや AI に関する経験がなかったため、PureTech は AWS プレミアコンサルティングパートナーである eCloudvalley に依頼し、マレーシアの通信会社クライアント向けに AI イニシアチブの第 1 フェーズを計画、実施しました。このフェーズの目的は、AI を活用して毎月の請求更新通知の取引成功率を予測することでした。

これまで、PureTech ではアプリの登録者全員に毎日同じ時間に自動支払い更新リクエストを送信していました。しかし同社は、AI が生成した過去のサブスクリプションデータに関するインサイトに基づいて、目標とするタイミングで送信するようにアプリごとに更新通知をカスタマイズすれば、収益を増やすことができると推測しました。例えば、ゲームを遊んでいる顧客は夕方にメッセージを見たり購読を更新したりする傾向が強く、ニュースアプリを利用している顧客は午前中に更新する傾向が見られます。

eCloudvalley は、 Amazon Forecast を利用して時系列予測モデルを実装し、PureTech の各アプリに更新通知を送信する最適な時期を予測しました。エンジニアは、通信会社 4 社のアプリ10～20 個の契約者 30 万人の 2 年間の履歴データを活用しました。6 週間にわたる計画とモデルトレーニングを経て、2020 年 9 月にモデルの運用が開始されました。

PureTech は現在、Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) にデータレイクを構築しています。このデータレイクには、AI モデルに供給される未加工の履歴データと、予測後に生成されたインサイトが格納されています。PureTech は AWS Lambda をサーバーレスコンピューティングエンジンとして利用することで、分析と予測のためのコンピューティングリソースをプロビジョニングします。その後、データは AWS Glue に送信されて統合されます。さらに、PureTech は予測データを保存する低レイテンシーのデータベースとして Amazon DynamoDB を使用しており、AWS AppSync では更新通知を顧客に自動的に送信するためのアプリケーションプログラムインターフェイス (API) を開発しています。

開発された AI モデルでは、メンテナンスのオーバーヘッドはほとんど発生しません。「AI を活用した請求更新システムを管理するために、エンジニアは 1 人しか必要ありません。また、彼には AI の経歴はありません。AWS と eCloudvalley の支援がなければ、このプロジェクトを処理するには、広範な調査やトレーニングに加えて、1 つのチームが必要だったでしょう」と、PureTech Global の Chief Technology Officer である John Lim 氏は語ります。

Lim 氏は次のように付け加えます。「このプロジェクトには最低でも 6 か月はかかる可能性がありました。その期間があったとしても、期待した結果にはならなかったかもしれません。eCloudvalley は当社にとってまったく新しいプロジェクトをスムーズに実装できるようにしてくれました。eCloudvalley の対応は非常に迅速で、質問があるたびに詳細に説明してくれました。そのおかげで、当社は AI の知識を継続的に向上させることができています」。

AWS に AI モデルを実装して以来、PureTech は請求更新の成功率が 20% 向上しました。同社はこの追加収益を、次に AI テクノロジーを応用できる新しいコンテンツのデザインや、より多くのモバイルマーケティングキャンペーンの提供に充てています。eCloudvalley との AI プロジェクトの第 2 フェーズは、過去のキャンペーンデータを分析し、マーケティングチームが将来、より効果的でターゲットを絞ったキャンペーンを計画するのに役立つインサイトを導き出すことです。

「実装後の最初の数か月間でも、AI プロジェクトは当社により多くの収益を生み出しました。この収益のおかげ、より付加価値の高いサービスや質の高いコンテンツを契約者に提供できています」と Lim 氏は語ります。AI モデルは、ビジネスや市場の状況の変動に応じて継続的に更新できるように設計されています。使用しているモデルは現在、パイプラインに毎日追加されるデータが増えるにつれて調整されています。こうしたタイプのプロジェクトでは、データが多いほどより細かく調整された結果が得られます。

PureTech は、新しく作成されたデータレイクを活用してレポートを改善する方法も検討しています。売上と収益のレポートは毎日確認され、業績がモニタリングされています。Amazon S3 の構造化データレイクにより、PureTech はよりきめ細かなデータアクセスとインサイトを得られるという利点を得ています。「未加工データはたくさんあり、以前はほんの一部の可能性しか活かせていませんでした。Amazon S3 のデータレイクに移行することで、より深く情報を分析し、新しいビジネスモデルを特定できるようになります」と Lim 氏は説明します。

PureTech は国際的な存在感を高めるための計画があり、AI 請求システムを他の国にも拡張する方法を検討しています。この計画は、市場や事業分野を超えて PureTech の業務を変革する可能性を秘めた AI への取り組みの始まりに過ぎません。

「AI は、既存のワークフローを改善しながら新しいチャンスを模索する方法だと考えています」と Lim 氏は語ります。「AWS を長年利用してきた結果、AWS が強力で使いやすいことを証明できました。当社は AWS と AWS パートナーから多くのサポートを受けており、プラットフォームの AI ツールの恩恵を受け続けています」。

以下の図は、PureTech Global の AWS インフラストラクチャを示したものです。

詳細については、「AWS での機械学習」をご覧ください。