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中堅中小企業はいかにしてモダンなデータ戦略を策定すべきか?
(この記事は、 How Small and Medium Businesses Can Develop a Modern Data Strategy を翻訳したものです。)
企業はビッグデータの時代において、増え続けるさまざまなソースから生まれる大量のデータに悩まされることがよくあります。 Gartner によると、60% の企業は質の悪いデータに起因するコストを測定していません。測定を行わないとデータ品質の問題に事後対応したり、ビジネスの成長機会を逃したり、リスクを増大させたりすることになります。データを効果的に活用する能力は企業の成功を左右する重要な要因になりつつあります。しかし生データを価値ある洞察に変えるには、健全なデータ戦略、効率的な管理、最新のデータアーキテクチャが必要です。このブログでは Amazon Web Services がどのように強力なソリューションを提供できるかに焦点を当てて、これらの側面を探ります。
中堅中小企業における最新のデータ課題を探る
データ量が増え、ソースが多様化するにつれて、企業はデータ関連のさまざまな課題に直面します。これらの課題には次のようなものがあります。
どこから始めるか
ビジョンを持ち、将来のアーキテクチャがどのようなものかを明確に理解することがデータアーキテクチャの旅の始まりであり、データ戦略のエグゼクティブスポンサーの責任です。すべてを一度に行う必要はありません。代わりに、重点分野に優先順位を付けることが成功には不可欠です。たとえば AWS のお客様である Qure4u は医療機関に向けたリアルタイムのデータ可視化ダッシュボードを作成するため、 Amazon QuickSight から着手しました。このビジネスデータ戦略への注力は、時が経つにつれ 5 倍の成長につながりました。「中堅中小企業は AWS を使用することですぐに事業を開始できます。自分のチームに特定の能力がない場合でも、AWS には専門家とつなぐためのリソースがあり、低コストで専門的なセットアップを受けることができます」と Qure4u の CEO 兼創設者である Monica Bolbjerg 博士は述べています。
効果的な戦略の欠如
多くの企業はデータ戦略をビジネスビジョンに合わせることに苦労しています。この課題はビジネス目標を測定可能なデータポイントに変換し、データを効果的に管理することの難しさに起因しています。データ戦略を実行するには、最新のデータアーキテクチャへの道筋を描く際、人材、プロセス、そしてソリューションを備えたターゲットテクノロジーの選択が必要です。
人員不足と IT スキルギャップ
資金や人的リソースが限られている中堅中小企業は、高度なデータ管理ツールに対する投資が制限されることがあります。これらの制限により、データの保存と管理が最適とは言えない状況が生まれます。 AWS は多くの中堅中小企業で社内の IT 人材が不足し、データ管理が困難になる可能性があることを認識しています。それに伴うボトルネックにより、重要なビジネス情報へのアクセスと分析が困難になる可能性があります。
データ品質
データ品質の低下も企業にとって一般的な課題です。手作業によるデータ入力、不完全なデータセット、データサイロはデータの品質を低下させ、洞察と意思決定を歪める可能性があります。連携されていないさまざまなスプレッドシートや旧来のソフトウェアで苦労しているのであれば、これはよく知られた話に聞こえるはずです。同様に強固なデータセキュリティ対策には多大なリソースが必要なため、企業はデータセキュリティとコンプライアンスの維持に苦慮します。
データ統合
最後に、ソーシャルメディア、顧客管理 (CRM) システム、 EC プラットフォーム など、さまざまなソースからのデータ統合が大きなハードルになることが判明しています。こうした統合の課題は企業がデータを全体的に理解することを妨げ、データに基づいた意思決定をさらに妨げます。
成果を定義し、データに関する課題に優先順位を付けることの重要性
ソリューションを掘り下げる前に、ビジネスで達成しようとしていることに基づいて明確な目標を設定することが重要です。このプロセスには、重要業績評価指標 (KPI) を特定し、 KPI を追跡するために必要なデータを決定することが含まれます。 KPI のもっとも一般的な例は、収益、利益率、顧客維持率、コンバージョン率などです。また現在のデータ状況、つまり企業が収集するデータ、保存場所、分類方法を理解することで、企業が目標を達成する態勢がどの程度整っているかについての重要な洞察が得られます。
ただし、データ戦略は目標の設定とデータ状況の理解にとどまりません。データに関する課題に優先順位を付けることも同じく重要です。このプロセスには、以下の評価を含める必要があります。
- 現在のデータ管理状況
- データ品質に関する問題の特定
- データ収集のギャップ
- ストレージの問題
さらに、意思決定に不可欠なデータソースを特定しデータのパターンと傾向を特定することは、このプロセスにおける重要なステップです。
最新のデータアーキテクチャによるデータ課題への取り組み
これらのデータ課題に取り組むため、AWS が提供する最新のデータアーキテクチャパターンを活用できます。このアプローチは、分析に対する画一的な取り組みが妥協につながるという考えに基づいています。これらのパターンの中核となる要素には、多様なデータに対応できるスケーラブルなデータレイク、さまざまなデータニーズに対応するための専用データベース、シームレスなデータ移動のためのサーバーレスデータ統合サービス、統合されたデータガバナンス、さまざまなパフォーマンスとコストの最適化ツールが含まれます。これらのソリューションはデータをより効果的に管理し、そこから有意義な洞察を引き出すのに役立ちます。
人材、プロセス、テクノロジーの連携
強固なデータ戦略を策定するには、テクノロジーだけでなく人とプロセスを連携させることも重要です。組織内でデータ中心の文化を育み、チームに必要なスキルを備え、必要に応じて新しい人材を採用することは、データの使用を最適化するのに役立ちます。最高データ責任者(エグゼクティブスポンサー)、データスチュワード、データサイエンティスト/エンジニアなど、実行において重要な役割がいくつかあります。企業規模によっては個人が複数の役割を担う場合があることに注意してください。
プロセスの観点から見ると、自動化はデータ取り込みの最適化、データ品質の向上、変換、分析、コストの最適化、ガバナンスにおいて重要な役割を果たします。 また、テクノロジーの選択はビジネスニーズと一致している必要があります。
AWS はデータ管理のさまざまな側面に対応する幅広いテクノロジーを提供しています。Amazon Simple Storage Service (S3) のようなスケーラブルなデータレイクから、Amazon Athena 、 Amazon EMR 、 Amazon OpenSearch Service 、 Amazon Kinesis 、 Amazon Redshift などの専用分析サービスまで、さまざまなニーズを満たすように設計されたツールが存在します。データ品質の測定とモニタリングを伴うシームレスなデータ移動は AWS Glue で実現でき、 AWS Lake Formation は統合ガバナンスを提供します。 図 1 を参照して、これらすべてのサービスがどのように連携してテクノロジーの目標を達成するかを確認してください。
最後に、コスト削減については S3 intelligent tiering でデータレイクのストレージコストを最大 70% 節約可能なことに加え、 Amazon Elastic Computing Cloud では業界をリードする 500 を超えるインスタンスタイプをさまざまな savings plans でご提供します。
進捗状況の測定とコースの調整
データ戦略を立て、人材、プロセス、テクノロジーを調整した後、設定された目標に向けた進捗状況を測定することが不可欠です。KPI を継続的に監視することは、データ戦略の有効性を評価し、改善すべき領域を特定するのに役立ちます。現在の戦略が期待した結果をもたらしていないとわかったとしても、進路の調整をためらうべきではありません。多くの場合、アジャイルで柔軟なデータ戦略がもっとも成功します。チームの成果や改善の余地が関係者に伝わるように、定期的なミーティングを設定することをお勧めします。
まとめ
資源が限られた企業にとって、データに関する課題に取り組むことは非常に困難な作業です。ただし、ビジネスビジョンを綿密に練られたデータ戦略と整合させ、データを理解し、明確な成果を定義し、データの課題に優先順位を付けることで、より良いデータの管理と利用への道を開くことができます。
最新のデータアーキテクチャパターンを採用することで、これらの課題の多くを克服できます。さらに、人材、プロセス、テクノロジーを連携させることで、データ戦略の効果を最大限に高めることができます。AWS が提供するサービスを活用することで、データ管理を変革し、データを効果的に実用的な洞察に変えることができます。
結論として、データの課題を克服し、データの真の可能性を引き出すまでの道のりは複雑かもしれませんが、適切な戦略とツールがあれば、この道のりを成功させるための準備が整います。データに関する課題への対処方法の詳細については、AWS の専門家にお問い合わせください。
翻訳はソリューションアーキテクトの酒井 賢が担当しました。原文はこちら です。