職場を離れ、AWS の学習とサービス開発に専念して見えたこと【第 1 回 ANGEL Dojo 参加者座談会】

2020-05-11
How to be a Developer

「ANGEL (APN Next Generation Engineer Leaders) Dojo」は、クラウドネイティブな開発環境やモダンなアプリケーション手法、さらに AWS のイノベーティブな開発スタイルを多くの皆さんに体感していただくため、 AWS のパートナー企業に在籍する若手エンジニアの皆さんを対象に企画した体験型プログラムです。今回は、2020 年 1 月 10 日から 3 月 6 日にかけて開催された、第 1 回 ANGEL Dojo に参加された全 17 社 15 チームの 74 名の中から 4 人の皆さんにご協力いただき、参加の経緯や ANGEL Dojo 魅力などについてお話しいただきました。

司会 : 金森政雄
(ANGEL Dojo 主催者 / アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 パートナーソリューションアーキテクト)

第 1 回 ANGEL Dojo 募集概要
第 1 回 ANGEL Dojo 総括 (ダイジェスト)

ANGEL Dojo の存在を知ったきっかけ、参加の動機

金森 : 
皆さんご無沙汰しています ! 本日はテレワーク期間中にもかかわらず、お時間を割いていただき、ありがとうございました。今回は第 1 回 ANGEL Dojo に参加された率直なご感想を聞かせていただければと思います。ざっくばらんにお話しいただければうれしいです。それではよろしくお願いいたします !

一同 :
よろしくお願いいたします !

金森 : 
まずは参加者の幹事を務めてくださった小久保さん。小久保さんはどのような経緯で ANGEL Dojo を知り、参加されたのでしょうか。振り返っていただけますか?

小久保氏 :
はい。私の場合は部署の先輩に教えてもらい ANGEL Dojo の存在を知りました。それまで AWS に触れる機会はなかったのですが、たまたま先輩からお声がけをいただく 10 日ほど前に、クラウドに関する社内勉強会に参加しており、学習意欲が高まっていたタイミングだったこともあり、思い切って手を挙げました。

金森 : 
複数の部署からメンバーを集められたそうですね?

小久保氏 : 
ええ。私と同じ金融部門からもう 1 人と、普段から AWS やその他のクラウドサービスを使いこなしているインフラエンジニアの 3 人と一緒に参加しました。部署や職種、担当業務が異なるため、 AWS やモダン開発に関する知見レベルもバラバラな状態からのスタートでした。

金森 :
ありがとうございます。森さんはいかがですか?

森氏 :
はい。社内で AWS さんとの窓口を務めていらっしゃる方に紹介していただき参加を決めました。当時、新卒 1 年目のインフラエンジニアだったので、かかわれる開発範囲はごく一部に過ぎません。常々エンドユーザー向けサービスの開発がどのように行われているのかを知りたいと感じていたこともあって、申し込みました。

金森 :
森さんが参加されたチームは、 ANGEL Dojo 唯一の企業混成チームでしたね。ご苦労された点はありましたか?

森氏 :
実はそうでもなかったです。メンバー構成もインフラエンジニアは私を含めて 2 名、 Web 系の開発エンジニアが 3 人という構成でバランスが良かったですし、ワーク Day で顔を合わせた後、ミーティングがてら一緒に飲みにいくほど仲良くなれたので、混成チームならではの苦労はとくに感じませんでしたね。お互いを気遣い、助け合おうという意識がいい方向に働いたんだと思います。

金森 :
それは良かったです (笑)。次に今井さんお願いします。今井さんは、お仕事柄、アジャイル開発などモダンな開発手法や技術に精通されていらっしゃいます。どういった経緯で ANGEL Dojo に参加されることになったのですか?

今井氏 :
以前から技術開発事業部という部署で、新技術を社内に展開したり、開発プロセスの標準化に携わったりしていたのですが、昨年 10 月に「新サービスの創出」が所属部門の新たなミッションに加わりました。ANGEL Dojo に参加しようと思ったのは、疑似プロジェクト体験を通じて、顧客視点を養うためのヒントになると思ったからです。

金森 :
なるほど。では、新藤さんはいかがでしょうか ? 以前から AWS を使ったプロジェクト経験があったと聞きましたが、なぜ ANGEL Dojo に参加しようと思われたのですか?

新藤氏 : 
AWS に触れた経験があるといっても、すでにシステムが組まれた状態からかかわることがほとんどで、一部機能の実装にかかわるだけでした。これを機に、AWS の全体像を知るにはいいチャンスだと思い参加を希望しました。

金森 :
ほかのチームメンバーはどのように決められたのでしょうか ?

新藤氏 :
参加にあたっては、他のメンバーも声をかけられて希望したとのことで、複数のプロジェクトから 1 人ずつ選ばれチームを作ることになりました。メンバーに選ばれた人は私を含め、全員アプリケーション開発に携わるエンジニアです。同じプロジェクトには、ほかにも参加資格がある人がいたのですが、一番経験が浅い私が参加させていただけることになりました。せっかくのチャンスを無駄にはできないので、しっかり学ぼうと心に決めました。


講義や疑似プロジェクトに参加して大変だったことは ?

金森 :
今回は日常の開発業務と並行しての参加でしたね。どんなところに大変さを感じましたか ?

小久保氏 :
一番は、平日の講義やハンズオン、ワーク Day に参加するための時間のやりくりするのが大変でしたね。急遽業務上の都合で外出できず不参加になってしまうこともあったので、そんなときは残念でしたし心苦しかったですね。

金森 :
お客様ありきのお仕事だと、スケジュールが思い通りにならないことは多いですよね。

新藤氏 :
スケジュールに余裕があれば融通が利きやすいのですが、少人数のプロジェクトだと、若手も含め急に降ってくる仕事に対応しなければなりません。できる人ができることをやる。そんな形で何とか乗り切りました。

金森 :
森さんたちはいかがでしたか ?

森氏 :
私たちのチームの場合、事前に平日の講義やワーク Day には参加できるよう会社が配慮してもらえたので、スケジュールの面では恵まれていたと思います。企業混成チームだったので早めに事前調整していたこともあり、のびのびと参加させていただくことができました。

金森 :
なるほど。今井さんたちのチームはどうでしたか ?

今井 :
スケジュールもさることながら、開発テーマを決めるまでが大変でした。ANGEL Dojo に参加する前、会社からは「せっかく参加するなら成果を持ち帰ってソリューションとして提供することも視野に入れてほしい」といわれ、送り出していただいた手前、いつの間にか「どんなサービスなら売れるか」「横展開しやすいか」といった、ビジネス目線での会話に終始しがちでした。そんな会話を耳にされた金森さんに「それって、利用者の幸福度を上げるのに関係がありますか ?」といわれ、顧客目線を失っていることに気づかされたこともありました。

金森 :
そんなこともありましたね。

今井氏 :
Working Backwards (※) の講義を受けましたが、実際にやってみると顧客目線を維持するのは思っていた以上に難しかったですね。

小久保氏 :

私たちも、メンターとして各チームについてくれた AWS パートナーソリューションアーキテクトの方に指摘されてはじめて、自分たちがいかにエンジニア目線でシステムを考えがちか、ということに気づかされたことがありました。最初は自覚症状がなかっただけに、頭を切り替えるまでに少し時間がかかりましたね。

新藤氏 :
私たちのチームでも Working Backwards の講義を受けた後、決めかねていた複数の開発テーマ案をすべて白紙に戻しました。講義を聞いて、ユーザーへの意識が薄いまま開発しても良いサービスは作れないことがわかったからです。そこで自分たちの意識とユーザーの意識が重なりそうな「買い物」をテーマにしたんです。

金森 :
顧客ありきですべてを考える Working Backwards は、 ANGEL Dojo を通じて体感していただきたかったことの 1 つでもありました。皆さんの気づきや発見につながったのであれば、主催者としてとてもうれしく思います。


ANGEL Dojo に参加して得たこと、学んだこととは ?

金森 :
ANGEL Dojoを通じて学んだことや、いまの仕事に活かせそうだと感じたことがあれば、ぜひ聞かせてください。

小久保氏 :
まだ具体的な話になっているわけではないのですが、いま携わっている証券関連のシステムにおいても、クラウド対応したいという話が急に浮上するかもしれません。もし、そうなったときに真っ先に動けるよう、いまも関連する技術の習得や事例の収集しています。

金森 :
それは素晴らしいですね。疑似プロジェクトを通じて学ばれたことはありますか ?

小久保氏 :
メンバーとの協働作業を通じて、考えていることを口にすることとの大切さを実感しました。

新藤氏 :
私も同感です。以前は気後れして思っていることをいわなかったり、自信が持てずアウトプットできなかったりしたことが何度もありました。でも、それではなかなか物事がいい方向に進まないことがわかった気がします。

金森氏 :
どうしてそう思われたのでしょう ?

新藤氏 :
おそらく設計や開発には、何か「絶対的な正解」があると無意識のうちに感じていたせいだと思います。 ANGEL Dojo での経験を通じて、前提条件が変われば正解が変わることがわかりましたし、多少アラがあってもアウトプットしてみたほうが、より速く正解に近づけることがよくわかりました。それに同じチームのメンバーでも感じ方、考え方は人それぞれ。話してみなければわかりません。与えられた仕様をまっとうすることにばかり気を取られていた私にとって、大きな転換になりました。

金森氏 :
森さんはいかがですか ?

森氏 :
まず、15 チームが参加しているのに 1 つもテーマが被らなかったことに驚きでした。 1  つの研修プログラムで 15 個分のサービス開発の内側を見られたので、皆さんの発想や工夫の 1 つひとつが自分にとっては大きな学びでしたし、刺激になりました。もちろん、いまお 2 人がおっしゃったように、自ら進んでアウトプットしよう、もっと積極的に発言しようと思えたのも、 ANGEL Dojo に参加して良かったことの 1 つです。

金森 :
今井さんはどのような学びを得たと感じていますか ?

今井氏 :
サービス作りに集中する中でチームの重要性を改めて認識したこと、そして、社内でモダンな開発スタイルを啓蒙、普及するにあたって、心の拠り所ができ、自分の取り組みに自信が持てるようになったことだと思っています。

金森 :
どういうことでしょうか?

今井氏 :
新しい試みがいつも思い通りにいくわけではありません。でも AWS で根付いて成果を出している手法を学んだわけですから、多少うまくいかないことがあっても、以前のように不安になることはなくなるでしょう。正しい方向に進んでいるという自信がつきました。


ANGEL Dojo の経験を踏まえ、目指すエンジニア像

金森 :
皆さんのご協力のおかげで、 ANGEL Dojo は今後も年に数回のペースで開催することになりそうです。経験者として、どんな方に ANGEL Dojo をお勧めしたいと思われますか ? 小久保さんからお願いします。

小久保 :
はい。実は私自身もそうなのですが、とくに文系出身で社会人になってはじめて本格的に IT に触れた若手エンジニアにとって、学びの多い機会になるのは確かです。 1 人でゼロからイチを生み出すことは難しくても、 ANGEL Dojo なら手厚いサポートを受けながら体験できますし、メンターの皆さんの言動や振る舞いは、ここで得た知見を社内に展開する際のお手本にもなります。そういう意味では、どなたにとってもお勧めできるプログラムではないでしょうか。

新藤氏 :
当初感じていた不安感がなくなり、挑戦することへの心理的なハードルが下がったのも、メンターの皆さんから具体的なアドバイスや前向きな言葉をいただけたおかげだと感謝しています。開発スキルや AWS に関する知識がほしい人はもちろん、一定レベルのスキルがある方にとっても、得るものが多いはずです。

森氏 :
AWS やモダンな開発スタイルを体系的に学んだことで、いま仕事で携わっている業務の意義を改めて知る機会にもなりました。 1 つひとつの業務は何のために存在するのか、自分の経験と照らしあわせながら把握できるので、仕事の振り返りにも役立つと思います。答えが見えないからといって動きを止めるより、試行錯誤を繰り返しながら動き続けるほうが得るものが多いことを理解できたのも、自分にとっては大きな収穫でした。

今井氏 : 
ANGEL Dojo は、仲間と協力し合いモノ作りの楽しさを共有できる場です。とくに日々の業務に忙殺されてしまっているエンジニアにお勧めしたいですね。 AWS の開発風土を間近に感じることで、自分で考えてサービスを作る喜びを取り戻すことができるのではないでしょうか。

金森 :
皆さんありがとうございます。では最後に、 ANGEL Dojo での経験を踏まえ、これからどんなエンジニアになりたいか聞かせていただき、本日の締めくくりとしたいと思います。

小久保氏 :
さまざまな障害や事情によって、刷新が進まないシステムを少しでも良い方向に持って行けるエンジニアになりたいです。滞っている状況を変えられるようになるためにも、もっと経験を積みたいですね。

森氏 :
ANGEL Dojo での経験を通じて、楽しさと仕事の質は両立できることがよくわかりました。常に新しい技術を吸収しながら、チームで楽しく仕事ができるエンジニアになりたいと思っています。

今井氏 :
部署のミッションが変わったタイミングで ANGEL Dojo に参加できて本当にラッキーでした。この経験を活かして自信をもって正しいといえる成果物を提供できるエンジニアになりたいですね。本質的なモノをちゃんと生み出していけるようなエンジニアになるのが私の目標です。

新藤氏 :
Working Backwards の意義を体感して、良いシステムや良いサービスの根底には、シンプルな原理原則があることがわかりました。今後はこの経験を活かし、システムにかかわる人すべてが気持ちよく働けるようなエンジニアになりたいと思っています。

金森 :
今日は皆さんの率直な言葉が聞くことができ、とても参考になりました。 今後もさまざまな機会を捉えてご一緒できたらと思います。今日は長時間にわたりお話しいただき、ありがとうございました !

一同 :
ありがとうございました !
 

※ Working Backwards : 最終的に達成したいことから現在に向かって遡って、やるべきことを明らかにする思考法。 Amazon が実践する開発プロセスの 1 つ。以下の 5 つの問いからなる。

<5つの質問>

  1. お客様は誰ですか ?
  2. お客様が抱える課題や改善点は明確ですか ?
  3. お客様が受けるメリットは明確ですか ?
  4. お客様のニーズやウォンツをどのように知りましたか ?
  5. お客様の体験が描けていますか ?

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参加者プロフィール

小久保 沙耶 氏
SCSK株式会社
金融システム第五事業本部 証券システム第一部第二課
アプリケーションスペシャリスト (2018 年入社)

普段は証券会社向けバックシステムの開発・保守に従事。ANGEL Dojo には、アプリケーションスペシャリスト 1 名、クラウド利用経験があるインフラエンジニアの 2 名とともに参加。今回の疑似プロジェクトで開発した Alexa とカメラを使った室内物体検出サービス「monono (モノノ)」は、全参加者の投票で選ばれる ANGEL 賞を受賞。参加者の幹事役も務めた。

森 祐磨 氏
NECソリューションイノベータ株式会社
プラットフォーム事業ライン プラットフォームサービス事業部
インフラエンジニア (2019 年入社)

インフラエンジニアとして IaaS サービスの開発に携わる。今回、唯一の企業混成チームとして、同僚のウェブ開発エンジニア 1 名、キャラウェブ、フォーカスシステムズの Web エンジニア各 1 名と参加。機械学習を活用した対話型の書籍レコメンドサービス「レコ君」の開発では、パーソナライズ定期実行機能の実装を担当した。「レコ君」はベストアーキテクチャー賞受賞。 

今井 貴明 氏
NECネクサソリューションズ株式会社
技術開発事業部 SE (2015 年入社)

普段の業務は、新サービスの創出、技術検証、開発プロセスの標準化、アジャイルのコーチングなど。顧客目線に立った開発を体感するため、同世代の同僚 SE と参加。疑似プロジェクトにおいては、メンバーとともにラーメンの味を数値化し、ユーザーの主観に合わせて予測する「Rajitamo (ラジタモ)」の開発ファシリテート、アーキテクト、設計、実装を担当した。

新藤 友美子 氏
コガソフトウェア株式会社
システム事業部 SE (2018 年入社)

現在、 AWS を活用した在庫管理システムの開発プロジェクトに参加しているが、業務上は部分的な関与に留まることから、 AWS の理解度を高めようと、他のプロジェクトでアプリケーション開発に携わっている若手メンバーとともに参加。疑似プロジェクトでは、買い手側が購入機会を創出する EC サービス「リバースショッピング」のバックエンドの実装を担当した。

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