アメリカで働くエンジニアに話を聞いてみた。

2023-04-03
How to be a Developer

Author : 西村 航, 森田 友幸

こんにちは、トレーニングデリバリーマネージャーの西村 (@kuwablo) です。AWS トレーニングや認定資格に関する業務を担当しています。

これまでにお客様の AWS 学習を支援する記事やインタビュー記事などを公式ブログや builders.flash に投稿してきました。


突然ですが皆さんは海外で働くことに興味や関心をもったことはありませんか ? 私は時々あります。例えば「海外で働くにはどれぐらいの英語力が必要なのか ?」「海外での就労経験も留学経験も無いから不安だな・・・」「そもそも海外で働くとよいことって何だろう ?」などグルグルと考えたりします。しかし、考えるよりも実際に海外で働いている人に生の声を聞いた方がよさそうだ、そして他にも同じようなことを考えている人もいるのではないか、と思い立ち今回のインタビュー記事を書くことにしました。

題して「アメリカで働くエンジニアに話を聞いてみた。」です。本記事は日本で何年か働いてからアメリカに移ったエンジニアの方に、アメリカで働くことに関して伺った記事です。Amazon Web Services の Training and Certification - Learning Service Development に所属して シニアソフトウェアディベロップメントエンジニア としてシアトルで働いている森田さんを招いてインタビュー形式で進めていきます。これまでのキャリアの話から、アメリカで働いてみて感じる日本との違いなど伺いしました。

<お願い> 今回の記事は森田さんに伺った内容を私がまとめたものです。あくまでも様々なケースのうちの一例 ( n=1 ) という認識で記事を読んでいただけるとありがたいです。所属する団体・地域・ロールを代表する意見を書いた記事ではありません。よろしくお願いします。

記事の合間にちょくちょく森田さんのアメリカ生活での写真も差し込んでいきながら進めていきたいと思います。それではお楽しみください 。


これまでのキャリアの話

西村「はじめまして、トレーニングデリバリーマネージャーの西村航です。よろしくお願いします。」

森田「はじめまして、シニアソフトウェアディベロップメントエンジニアの森田です。よろしくお願いします。」

(写真左) 西村 航 トレーニングデリバリーマネージャー
(写真右) 森田 友幸 シニアソフトウェアディベロップメントエンジニア

西村「まず最初にこれまでの経歴を教えていただけますか ?」

森田「学部では情報工学を専攻していて、新卒で通信事業会社に就職しました。開発部署に配属されたわけではなくて、情報システム部門で要件定義などを行っていました。また、サービスのシステム要求を作って開発会社をマネジメントするような業務もしていました。」

西村「情報工学科に進学したのは昔からパソコンが好きだったとかでしょうか ?」

森田「高校生の時に実家にインターネット回線が繋がりまして。古いパソコンを親がくれたので、Linux を入れたりしてました。OS の設定やネットワークの設定などパソコンの内部構造に興味を持って、プログラミングを独学でやってました。その流れで情報工学科に進学しました。」

西村「キャリアのスタートが開発業務では無いのは少し意外ですね。」

森田「はい、当時は開発業務はしてなかったです。コードを書くことは好きだったので、趣味としてアプリ開発をしていました。途中から社内の内製化プロジェクトに関わって業務時間の何割かは開発業務をやったりもしていましたが、開発業務に専念したい気持ちが常にありました。そこで自社開発しているところを探して転職活動を行って、ソフトウェアエンジニアのポジションを募集していたアマゾンジャパン合同会社のチームに入りました。」

西村「アマゾンジャパン合同会社を選んだ理由とかはありますか ?」

森田「転職を考え始めた最初から選択肢としてあったわけではないのですが、エージェントにポジションを紹介されて、最終的にアメリカで働きたいと考えていたのでアマゾンジャパン合同会社に入りました。アマゾンジャパン合同会社で数年ソフトウェアエンジニアとして勤務した後に、社内異動でアマゾンウェブサービスの Training and Certification チームに転籍してシアトル勤務になって今に至ります。」

森田さんが所属するチームの BBQ イベントの様子。ワンちゃんが可愛い。

西村「なぜアメリカで働きたいと思ったのでしょうか ?」

森田「ソフトウェアエンジニアとしてコードを書く仕事を本業にしたいと思った時に、アメリカは会社が多いし選択肢が広がるなと考えていました。あと漠然となんですが夢もあるなと思っていて。いくつかあるキャリアゴールのひとつとして “ソフトウェアエンジニアとしてアメリカで働く” ことを自然に考え始めて、英会話教室に通ったり行動し始めましたね。」

西村「ちなみに学生のときに留学していたり、小さい頃に海外で暮らしていた経験とかあった感じでしょうか ?」

森田「いいえ、ありません。新卒で入社した会社で社内ビジネス留学プログラムがあったので、そのプログラムに当選して 3 ヶ月間アメリカに行ったことはあります。現地でプロジェクトマネジメントのコースを受けてました。その際に周囲と話していてよく話題にあがったのが、アメリカで働くのはビザがブロッカーになるケースが多いということですね。」

西村「確かに、よく目にするトピックですよね。」

森田「はい、どうやってビザを手に入れるかを考えることがアメリカで働く上で非常に重要です。例えば、アメリカの大学を卒業して OPT (Optional Practical Training) ビザを取得するパターンがあります。また、米国に本社がある企業の日本支社で一定年数働いてから企業内転勤ビザ (L ビザ) で米国本社に異動するというパターンもあります。私はこの L ビザのパターンですね。あとは、移民多様化ビザ抽選プログラムで年に 1 回抽選で選ばれた申請者にアメリカ永住権 (グリーンカード) の発給を行ってたりもしますね。」(西村コメント:ビザに関する正式な最新情報などは必ず大使館のウェブサイトなど然るべき公共機関にてご自身で確認をお願いします。)

西村「なるほど、色んなパターンがあるんですね。今のチームに移るにあたって、ビザの手続きは大変でしたか ?」

森田「私の場合は社内異動ということもあって、エージェントが付いてくれて親身にサポートしてもらって非常に助かりました。自分の上司も韓国から社内異動でシアトルに移った人だったのでケアしてくれました。」

西村「もともとアメリカに知り合いがいたのでしょうか ?」

森田「日本にいたときのスキップマネージャー (上司の上司) が今のチームにいまして、その人に今のポジションを紹介してもらったのがキッカケですね。日本で会話していたときから将来的にアメリカで働きたいと話していたので、話しておいてよかったなと感じました。」

西村「引き寄せの法則ですね ! 日本で働いていたときから英語でバリバリ仕事してましたか ?」

森田「いいえ、アマゾンジャパン合同会社で働き始めたときは、今考えると本当に全然英語ができなかったです。というのもチームメンバーと日本語でコミュニケーションしていて、最初の 1 年は日本語メインで仕事していましたので。アメリカで仕事したいと考えていたので英会話教室にはその時も通っていました。ただ途中からチームに海外からどんどんメンバーが入ってきて、英語メインで仕事するようになって、仕事しながら生きた英語を勉強するという感じでしたので英会話教室には通わなくなりましたね。」

ベルビュー (シアトルの横) のオフィスから見える景色。自然が多い。

西村「回答が難しいとは思うのですが、アメリカのソフトウェアエンジニアとして働くには、基準となる英語力とかありますか ?」

森田「うーん、回答が難しいですね。というのも、ロールや所属するチームによって必要なコミュニケーションのレベルが変わるので。例えば他の人のメンター業務であったり何かをリードする場面や他のチームと交渉する場合など、密なコミュニケーションが求められる場合は相応の英語力が求められると経験として感じます。逆に特定のトピックにフォーカスする業務の場合は、会話の文脈や前後関係などが理解できれば何とか対応できる場合もあるかもしれません。面接やカジュアル面談などで、そのポジションで求められる英語力のレベル感とかは探れるかなと。私は知り合いがいるチームだったので、英語力も含めて必要なスキルなど事前に確認できたのはよかったと思います。」

西村「なるほど、確かにそうですね。アメリカで働いていて日本との違いは感じますか ?」

森田「社内異動なのでカルチャー的な部分での大きな差はあまり感じません。環境を改善したいときにその改善を受け入れる度量が広いとは思います。あと自分の周りだけかもしれませんし語弊があるかもしれませんが、想像していたより真面目にガッツリ働く人が多いですね。マネージャーは燃え尽き症候群にならないように働きすぎないでねと言ってくれて配慮してくれたりしますが。ビザに関して言うと私のビザは L ビザなので、会社を辞める決断をするということは日本に帰国する、すなわち住んでいる環境をガラッと変える決断をすることになります。そこは日本で働いていたときとは違いますね。」

西村「森田さんの経験を伺うと日本に帰ってきてもバリバリ働けそうだと感じますが。」

森田「家族もいるので子供の学校のことなど色々と仕事以外に考慮することが多いかなと感じますね。アメリカへの引っ越しが思ったよりも大変だったので。日常生活のいろいろな手続きが大変で、様々なサービスを利用していてもトラブルが日常茶飯事ですし。基本うまくいかないものだと悟って生活するようになりました。普通に荷物が届くだけで色々な人に感謝します。」

Seattle Seafair の写真。空がきれい。

西村「日本で働いていた経験で、アメリカで活きているなと感じることはありますか ?」

森田「新卒で所属していた会社でいわゆる上流工程を経験したことで、システム全体をハイレベルから俯瞰して考える癖がついたことですね。ソフトウェアエンジニアとしてビジネスサイドとのコミュニケーションで変更が入りそうな勘所が分かったり、揉めそうだから最初に決めておくべきポイントなどに鼻が利くようになったというのはあると思います。そこは、これまでのマネージャーにも評価される部分ですね。ただ、ソフトウェアエンジニアとしてのキャリアを考えている人に、私のスタート地点がオススメできるスタート地点だったかと考えると必ずしもそうとも言えないかもしれないです。」

西村「アメリカで働いていてよかったと感じる瞬間はありますか ?」

森田「所属しているチームがプロダクトを持っているので、ロングタームで色々考えられるし実践できるのがよいですね。結果が自分に跳ね返ってくるのも感じられますし。あとはプロダクトがアメリカだけでなく世界中の国で使われているのも嬉しいです。」

西村「ソフトウェアエンジニアというロールはアメリカで働きやすいですか ?」

森田「はい、個人的にはそう思います。今のチームでもソフトウェアエンジニアというロールとしてケアしてくれていると感じますし。魅力的な会社が多くあって、グローバルを向いたプロダクトも多くあって、ソフトウェアエンジニアとしての求人数の絶対値もアメリカは多いです。選択肢が多いから必ずしもハッピーじゃないという考えもあるとは思うのですが、選択肢を持っているのと実際に選択肢を使うのは別の問題で、選べる選択肢が多い方が心の平安につながるかなと思います。」

西村「なるほど、確かにそうですね。最後に一つだけ。日本で働いている時にどういうことを意識して働くと、海外で働きやすくなりますか ?」

森田「周りの人に将来的に海外で働きたいことを話しておくのは重要だと思いますね。思わぬ縁に繋がりますし、口に出して話すことで自分で自分の行動を意識するようになるので。ポジションが空いているかどうかなどタイミングに左右されるのが大きいのも事実としてありますし、自分ではどうしようもできないところは祈るしかないのですが、自分自身のスキルや経験値を上げることは自分でコントロールできます。そっちにフォーカスするのが建設的かなと。日々の自分の仕事っぷりを見ていて一緒に働けそうだと声をかけてくれる人もいますし、目標から逆算してデータポイントを毎日コツコツ積み上げていくことが大事だと思います。」

西村「本日はどうもありがとうございました。アメリカで働くための方法だけでなく、キャリアのとらえかたなど幅広くお話しいただき非常に面白かったです。」

森田「ありがとうございました。」


まとめ

インタビューを通じて、海外で働くことは大変そうだけど、得られる経験は本当に素晴らしいものだと改めて知ることができました。そして、日々の業務の中でコツコツ信頼貯金とスキルを積み上げていくべきだと気が引き締まりました。

非常に多忙なスケジュールの中で、インタビュー参加を快諾いただいた森田さん、本当にありがとうございました。

この記事が少しでも “How to be a Developer” な皆様のお役に立てれば幸いです。
また別の記事でお会いしましょう ! それでは !


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筆者プロフィール

西村 航 (@kuwablo)
アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
トレーニングサービス本部 トレーニングデリバリーマネージャー

多くの人に AWS を学ぶ楽しさを伝えたいと思い、テクニカルトレーナーになりました。現在はロールチェンジして、マネージャーとしてチームメンバーのマネジメント業務を行っています。

最近は愛車 SR 400 に乗って風になっています。

話者について

森田 友幸
Amazon Web Services, Inc.
Training and Certification - Learning Service Development
シニアソフトウェアディベロップメントエンジニア

新卒で通信事業会社に就職し、アマゾンジャパン合同会社に転職。社内異動で Amazon Web Services, Inc. に転籍してシアトルにて勤務。ベルビュー (シアトルの横) 在住。

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