お客様事例/製造業

2023 年
カシオ計算機株式会社

カシオ、AWS プロフェッショナルサービスの伴走により、オンライン学習ツールのモダンアプリを 4 か月で開発。アジャイル開発へシフト

4 か月

Web アプリの開発期間

600 校

Web アプリの導入校数

16 回

15 か月間でのリリース回数

104 個

15 か月間でのバージョンアップ数

概要

『G-SHOCK』に代表される腕時計を始め、電子辞書や電子楽器など、独自性の高い製品を世に送り出しているカシオ計算機株式会社。同社は、教育事業においてオンライン学習ツール『ClassPad.net』をリリースするにあたり、プラットフォームにアマゾン ウェブ サービス( AWS)を採用。AWS でのモダンアプリの経験ゼロのエンジニアが、4 か月の短期間でサービスを開発しリリースしました。アジャイル開発へのシフトにより、エンジニアリングのスタイルも変化し、開発スピードが加速しています。

カシオ計算機株式会社

ビジネスの課題 | パンデミックにより学習アプリのリリースが 3 年前倒しに

2030 年度に企業価値最大化を目指す『New CASIO C30 プロジェクト』を進行中のカシオ計算機。主力の時計、教育、楽器の 3 事業では、リカーリング(循環型)ビジネスへの転換を目指しています。「従来の製品売り切り型でなく、売った後もお客様とつながりながら、新たな価値や体験を提供する“コト売りのビジネス”を強化し、事業規模と領域を拡大することが目的です」と語るのは、技術本部 第二開発統轄部 統轄部長の柳和典氏です。リカーリングビジネスによる顧客体験価値の創造に向け、同社が 2021 年にリリースしたのが、オンライン学習ツールの『ClassPad.net』です。

『ClassPad.net』は、“生徒の机の上のデジタル化”をコンセプトに開発したクラウド型アプリで、同社の代表製品である電子辞書と関数電卓のノウハウが活かされています。

『ClassPad.net』は当初、文部科学省が 2024 年 4 月の完全実現を目指した GIGA スクール構想に合わせてリリースする計画でした。しかし、コロナ禍で GIGA スクール構想が前倒しされると、『ClassPad.net』の開発も 3 年前倒しとなりました。ところが、Web アプリの開発部門では、開発体制のサイロ化、プラットフォームやアーキテクチャ、開発言語の乱立、ウォーターフォール型開発によるビジネススピードに課題を抱えていました。技術本部 第二開発統轄部第二開発部 部長の目木正治氏は次のように語ります。「2020 年当時、開発部門はサービス(BU)ごとに組織が分かれていたために BU 間の連携が難しく、それぞれが乱立する状態でした。そこで複数サービスを担当するマトリックス型の組織に改め、アプリをモダン化してアジャイル開発を進める方針としました」

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循環型ビジネスへの転換を進めるうえで、エンジニアが自らスキルを身に付け、より良いサービスを持続的に開発できる体制を構築できたことが、今回のプロジェクトで得られた最大の成果です”

柳 和典 氏
カシオ計算機株式会社 技術本部 第二開発統轄部 統轄部長

ソリューション | サーバーレス、CI/CD などを活用したモダンアーキテクチャを構築

『ClassPad.net』の開発に着手した開発部は、プラットフォームに AWS の採用を決定し、マネージドサービスを最大限活用する方針としました。

「Web アプリの開発部隊全体で AWS を標準のプラットフォームとし、技術やノウハウを集約することにしました。業界シェアと実績、公開技術情報の豊富さ、社内における開発経験者の多さ、カシオ全社でのクラウド化方針などを総合的に判断して AWS の採用を決めました」(目木氏)

プロジェクトに際しては、アーキテクチャには妥協することなく最善を目指し、公開後の開発効率の向上を図ることにしました。しかし、着手した 2020 年 11 月の段階では、同社に AWS でのモダンアプリの開発経験はありません。そこで AWS プロフェッショナルサービスを採用し、技術的な支援を受けることにしました。

「私たちが理想とするアーキテクチャを短期間で実現するためには、専門家の力が必要でした。加えて、ビジネススピード向上に貢献する組織に移行するためにも、外部に任せず自社にナレッジが残る AWS プロフェッショナルサービスを採用しました」(目木氏)

AWS プロフェッショナルサービスのサポートのもと、約 1 か月で設計を終えた同社は、フロントエンド、バックエンド、インフラを並行して開発。本番環境での検証を経て、2021 年 4 月に一部機能を搭載したベータ版をリリースしました。BFF(Backends For Frontends)に AWS LambdaAmazon API Gateway、バックエンドのマイクロサービスにコンテナを採用して Amazon Elastic Container Service(Amazon ECS)AWS Fargate で構築。さらに、AWS の Code シリーズを用いて DevOps 環境を構築しています。技術本部 第二開発統轄部 第二開発部 23 開発室 室長の益田亮彦氏は次のように語ります。

「開発と並行してガイドラインも作成し、チーム内にナレッジを集積していきました。AWS プロフェッショナルサービスの担当者にはマンツーマンに近い形で相談に乗っていただき、妥協のないアーキテクチャを構築することができました」

アーキテクチャ

アーキテクチャ

導入効果 | 開発効率の向上により 15 か月間で 16 回のリリースを実現

2021 年 4 月にベータ版の提供を開始して以降、『ClassPad.net』はすでに 600 校以上の高校に導入されています。リリース後も継続的に機能を追加し、2022 年 9 月までの 15 か月間で、リリース回数は 16 回、バージョンアップした機能数は 104 個、処理チケット数は 4,672 個に達しています。これらが実現できた背景には、Infrastructure as Code(IaC)によるインフラ構築の自動化と、CI/CD によるデプロイの自動化にあります。

「IaC により環境構築の負荷が大幅に軽減され、インフラの流用や再現が簡単になりました。CI/CD によりこれまで 1 日がかりだったデプロイ時間が 1 時間程度に短縮され、デプロイのミスもなくなりました」(益田氏)

さらにサーバーレス / マネージドサービスの採用でリソース管理の負荷が軽減され、コンテナ化によってサービス利用者の増加に対するスケーラビリティも配慮する必要がなくなっています。また、モダンアプリの開発を通して、エンジニアのモチベーションも高まり、開発部全体に意識変革がもたらされました。

「リカーリングビジネスへの転換を進めるうえで、エンジニアが自らスキルを身に付け、より良いサービスを持続的に開発できる体制を構築できたことが、今回のプロジェクトで得られた最大の成果です」(柳氏)

機能単位のスクラム開発にシフトした開発部では、『ClassPad.net』の開発で取得したノウハウや既存の資産を流用して 2022 年  6 月に人財マネジメントシステム『Hito-Compass』をリリースしたほか、現在も数個の業務用 Web アプリの開発を進めています。

『ClassPad.net』は、今後も継続的に機能を追加してサービスを強化していくほか、2022 年 11 月から海外展開を開始し、海外向けの機能も提供していく計画です。

開発部門だけに留まらず、カシオ計算機全体としても、全社統合 DX 基盤として AWS を中心にクラウド化を推進していく構想を立て、2022 年より本格的にプロジェクトを開始しました。デジタル統轄部統合プラットフォーム部長の虻川勝彦氏は次のように語ります。

「経営方針で掲げる顧客中心のバリューチェーンを実現し、新たな価値を提供し続けるためには、事業部門が顧客に向き合うことに注力できる環境が必要です。そのためには、迅速な開発と運用負荷の軽減を実現するために、インフラ領域を AWS で共通基盤化し、開発のアーキテクトやオブザーバリティなどの各種機能をデジタル統轄部が一括して提供することを目指していきたいと考えています。各部署の協力を得ながら、2023 年度を目処に CCoE のようなクラウド活用推進組織を設立し、新規事業やサービスのモダナイズに貢献するプラットフォームへと進化させていきたいと思います」

カスタマープロフィール: カシオ計算機株式会社

1957 年、世界初の小型純電気式計算機『カシオ 14-A』の開発に成功し、カシオ計算機を設立。以来、「創造 貢献」を経営理念に今までにない価値を持つ製品の提供を通して、社会への貢献を果たしている。事業領域は、『G-SHOCK』ブランドで知られ、売上高構成比の 60% を占める時計を筆頭に、教育、楽器、システム、その他の 5 つ。海外にも事業を展開し、売上比率の約 75 % を海外で占めている。

柳 和典 氏

柳 和典 氏

目木 正治 氏

目木 正治 氏

益田 亮彦 氏

益田 亮彦 氏

虻川 勝彦 氏

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