全社横断のデータ連携基盤の構築
内製開発組織の組成と育成
インフラコストの最適化
ソフトウェアプロダクトの開発スピード向上
概要
関東地方の 1 都 6 県でスーパーマーケットを展開し、顧客からの厚い支持を集める株式会社ヤオコー。同社はさらなる成長を目指して積極的に IT 投資を進める中、アマゾン ウェブ サービス(AWS)にデータ連携基盤を構築して IT インフラの再編を進めています。また、以前は外部ベンダーに依存していたシステム開発を、内製でスピーディに展開できるよう組織を整備。データ連携基盤の情報を、業務の効率化などのさまざまな施策に活用しています。
ビジネスの課題 | IT 環境の効率向上とシステム構築の外部依存からの脱却
埼玉県で創業した青果店をルーツとするスーパーマーケットチェーンのヤオコーは「生活者の日常の消費生活をより豊かにすることによって地域文化の向上・発展に寄与する」を企業理念に、多くの店舗やネットスーパーを運営しています。特に自社製造の惣菜の味と価格には定評があり、2023 年 3 月期には 34 期連続で増収増益を更新しています。
ヤオコーは、店舗の生産性向上や顧客サービスの向上に向けて 2021 年ごろからデジタル変革に取り組み、IT システムの高度化やシステム部門の再編成を進めています。その根底にあるのは、外部依存からの脱却と内製化領域の拡大という方針です。「POS システムやマスタシステム、基幹システムなど業務毎に別システムで構築されたサイロ化した環境であるため、データ連携が複雑になりがちで、改修にもコストと時間がかかっていました」と語るのは、デジタル統括部 部長の小笠原暁史氏です。
また同社は、AWS を以前から利用していたものの、構築から運用までベンダーに依頼していたことで、クラウドのメリットを十分に享受できていないと考えていたため、自社でハンドリングできる AWS 環境を準備し、データ連携基盤の構築から内製化を始めました。
これらの課題を解決するため協力を求めたのが、AWS パートナーの株式会社オープンストリームです。「以前からオープンストリームの AWS に関するナレッジと技術力を聞いていたため、新しいシステム環境と内製化組織のベース作りの支援を要請することにしました」と、小笠原氏は振り返ります。
データ連携基盤を内製化したことにより、業務アプリのマイクロサービス化、デジタル実験店舗での検証、他店舗への展開といったサイクルがスピーディに回るようになりました"
小笠原 暁史 氏
株式会社ヤオコー デジタル統括部 部長
ソリューション | 4 名からスモールスタートし、20 名を超える内製開発組織へ
ヤオコーの課題解消に向け、オープンストリームはメンバー 4 名の小規模なチームを編成し、データ連携基盤の構築と、AWS インフラの最適化に加え、社内へのスキルトランスファーを行っていきました。
まずは各種システムと接続し、Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)や Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)、AWS Lambda、Amazon Relational Database Service(Amazon RDS)などを活用して、他システムへ連携できるプラットフォームを構築。そして、この基盤を AI 型自動発注システムとのインターフェースに活用しました。商品マスタや棚割データといったマスタデータに加え、過去の売上データや天候データなどの情報を AI に受け渡し、精度の高い需要予測、発注データの計算に活かせるようにしました。データ連携基盤は、EC サイトや基幹システムなど、他のシステムでも活用の幅を広げています。
インフラの運用コストについても、オンプレミス環境から AWS への移行を行うほか、AWS アカウント重複やスペック過多のリソースの見直しなども行い、最適化を進めました。
ヤオコーはシステムの高度化を進める一方、人材の採用にも注力しました。「以前は、ベンダーへの依存度が高く、社内に技術力のある人材が不足していましたので、各システムカテゴリでリードできる人材、プロジェクトマネージャーや Web エンジニアを積極的に採用しました。オープンストリームのメンバーと構築した下地に、中途採用のメンバーが加わることで、内製化の体制を構築できました」(小笠原氏)
2 年間で新しいメンバーが、20 名ほど加わるという急ピッチのチーム作りのなかで、重視したのがコミュニケーションです。メンバーの共通認識を形成するためにドキュメント整備や各種ツールを活用し、日々のミーティングでタスクや課題を共有するといった PDCA サイクルを回す体制を作り上げました。オープンストリームはその支援として、ドキュメントの整備やハンズオントレーニングを実施。AWS 環境の運用については日々のオペレーション内容や事例をナレッジとして残し、ヤオコー社内のメンバーが支障なく扱えるよう支援しました。
導入効果 | 業務改善のための自社プロダクトを次々と展開
中途メンバーの技術力とプロパーメンバーの業務ナレッジの相乗効果、そしてオープンストリームの支援によって、現在は複数の内製化チームが組織化され、さまざまなシステムを自社で開発できるようになりました。店舗の業務効率化のためのアイデアも、外部ベンダーに頼らず自分たちで実現できるようになっています。その一例が、各店舗で紙や PC ・ハンディターミナルで行っていた業務を、スマートフォンやタブレットといったモバイル端末を中心としたものに代えるプロジェクトです。「データ基盤チームが連携基盤にデータを整備し、アプリ開発チームが業務アプリの開発を行い、特定の店舗でトライアルを実施し、現場の方の意見を聞きながら改良を重ねて、ほかの店舗にも展開していくというサイクルを構築しました。店舗で働く人は使い慣れたスマートフォンを使用して業務を行えますし、ハンディターミナルよりもより多くの情報を扱える上、後からの機能追加も容易にできるメリットがあります」(小笠原氏)
データ連携基盤は店舗の効率化だけでなく、顧客が利用するスマートフォンの『ヤオコーアプリ』や『ネットスーパー』などにも活用されています。このように、自社のソフトウェアプロダクトを次々と生み出せる体制は、開発メンバーのモチベーションや自発性の向上、そして部門間の連携強化にも役立っているといいます。「生産性向上のための取り組みが従来よりもスピーディに進行している点は、関係部署の方や経営層からも評価されています。オープンストリームのメンバーには、データ連携基盤や内製開発組織のベース作りに大きく貢献いただきました」(小笠原氏)
今後は、さらにデータドリブンな経営に寄与するべく、店舗データのリアルタイム連携、BI/DWH の高度化、IaC や CI/CD の取り組みを進めています。小笠原氏は今後の展望について次のように語っています。
「ヤオコーはリアル店舗だけでなく EC サイト(ネットスーパー)も運営していますので、オムニチャネルなどの展開も考えています。また、店舗への来店頻度を高めていくには、よりパーソナライズ化したマーケティングが重要となりますが、来店されるお客様の約 8 割が会員カードをお持ちですので、すでに個人別の購買データは収集できています。あとはそのデータをいかに早く収集し、どう活用しやすい状態にしていくかだけだと思いますので、データ基盤を高度化し、販売力・データマーケティングの強化に寄与していきたいと考えています」
企業概要 株式会社ヤオコー
埼玉県を中心に関東圏に 200 店舗近く展開するスーパーマーケットチェーン。「豊かで楽しく健康的な食生活を提案する」の経営方針を掲げ、生鮮品やデリカテッセンなど、各商品の美味しさ、鮮度、出来立て、作り立てに加え、フレンドリーな接客に力を入れている。2023 年 3 月期には 34 期連続増収増益を記録、食品スーパーマーケット事業者の営業利益率では2 位となるなど、絶えず堅調な業績を上げている。
小笠原 暁史 氏
AWS アドバンストティア サービスパートナー
株式会社オープンストリーム
クラウド、ビッグデータ、AI、IoT、セキュリティなどの最先端技術を駆使したシステムインテグレーションを提供。事業創造力と高い技術力を持つプロフェッショナルな社員がビジネス課題を意識した提案・構築をし、運用・保守まで一気通貫でお客様のイノベーションに貢献。近年では、企業や大学と連携し、新たな価値を創造する実践的なオープンイノベーション活動を展開している。
ご利用中の主なサービス
Amazon EC2
Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、極めて幅広く、奥深いコンピューティングプラットフォームを提供します。
AWS Lambda
AWS Lambda は、サーバーレスでイベント駆動型のコンピューティングサービスであり、サーバーのプロビジョニングや管理をすることなく、事実上あらゆるタイプのアプリケーションやバックエンドサービスのコードを実行することができます。
Amazon Relational Database Service
Amazon Relational Database Service (Amazon RDS) は、クラウド内でデータベースを簡単に設定、運用、スケールできるようにするマネージドサービスを集めたものです。
Amazon S3
Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) は、業界随一のスケーラビリティ、データ可用性、セキュリティ、パフォーマンスを提供するオブジェクトストレージサービスです。
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あらゆる業界のさまざまな規模の組織が AWS を活用してビジネスを変革し、日々ミッションを遂行しています。当社のエキスパートにお問い合わせいただき、今すぐ AWS ジャーニーを開始しましょう。