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【開催報告】中国新聞社/ AWS 共催 データコラボレーションワークショップ in 広島

はじめに

2024 年 9 月に広島で地域経済の活性化に向けたデータコラボレーションワークショップを開催しました。本記事では、本ワークショップの開催背景と当日の内容をご紹介いたします。

近年、データは新たな価値創造の源泉として注目されています。しかし、単一企業のデータだけでは、その潜在的な可能性を最大限に引き出すことは困難です。そこで重要となるのが、企業間のデータコラボレーションです。多様な産業が集積する広島では、各企業が保有するデータの連携により、新たなビジネスチャンスや地域課題の解決が期待されています。この潮流の中、中国新聞社は「たるポ」という地域IDプラットフォームを構築し、地域に根ざした新たな価値提供を目指しています。しかし、データコラボレーションの実現には、セキュリティ懸念や異業種間でのデータ活用ノウハウの不足という課題がありました。

これらの課題に対応するため、中国新聞社と AWS は共同でワークショップを企画しました。ワークショップでは、「小売」「放送」「金融」といった業界から 4 社の代表者様にお集まりいただき、AWS Clean Rooms を活用し、セキュリティとプライバシーを確保したデータコラボレーションのユースケースを議論しました。さらに、異業種間でのデータ活用案と、参加企業が具体的なアクションプランを策定できる場を提供することを目指しました。

開催概要

参加企業: 5 社 / 26 名

アジェンダは以下の通りです。

  • 開会のご挨拶 / 参加企業ご紹介
  • たるポのご紹介
  • AWS コラボレーションテクノロジーのご紹介
  • テーブル別ディスカッション
  • Next Step のご案内 / 閉会のご挨拶

前半をセミナー、後半をディスカッションと分けて開催いたしました。後半のディスカッションでは、3つのグループに参加者が分かれ、実際にデータコラボレーションする際のユースケースについて議論を行いました。

データコラボレーションの基本

データコラボレーションとは

続いて、本ワークショップのメインテーマであるデータコラボレーションと、それを支える AWS のサービスについてご説明します。まず、データコラボレーションとは、複数の組織が保有するデータを安全かつ効果的に共有・統合・分析し、単独では得られない洞察や価値を生み出す取り組みです。例えば、小売業とメディア企業が匿名化された顧客データをコラボレーションすることで、より精緻なマーケティング戦略の立案や新サービスの開発が可能になります。重要なのは、各組織のデータプライバシーとセキュリティを維持しながら、必要な情報のみを共有することです。これにより、安全性を確保しつつデータの価値を最大化することができます。

なぜ今データコラボレーションが注目されているのか

データコラボレーションの注目が高まっている背景には、デジタル化の加速、消費者行動の複雑化、データ保護に関する規制環境の整備があります。さらに 1st party data (自社で直接収集したデータ) の重要性が増していることも大きな要因です。サードパーティ Cookie の廃止や個人情報保護の厳格化に伴い、企業は自社の顧客データをより効果的に活用し、同時に他社のデータと安全に連携する必要性が高まっています。このデータ活用と連携が、企業の競争優位性を生み出す鍵となっています。実際、多くのグローバル企業がデータコラボレーション強化を推進しており、日本においても今後のビジネス戦略において重要な役割を果たすことが予想されます。

AWS Clean Rooms とは

データコラボレーションを支える AWS サービスが AWS Clean Rooms です。これは、組織間で生データを直接共有せずに安全にデータを分析するマネージドサービスです。主な特徴として、暗号化技術によるセキュアなデータ共有、SQL を用いた柔軟な分析環境、実行する SQL の制御機能、緻密なアクセス制御、大規模データセットに対するスケーラビリティがあります。このサービスにより、企業は自社データを保護しつつ、連携先企業とのデータコラボレーションを実現し、新たなビジネス機会を創出できます。

各セッションのハイライト

たるポのご紹介

株式会社中国新聞社 メディア開発局 メディア開発部長 石井将文氏

中国新聞社 石井氏より、地域 ID プラットフォーム「たるポ」についてご紹介いただきました。たるポは、中国新聞社が長年培われてきたブランド力と信頼性を基盤とした、新たな地域 ID プラットフォームです。たるポは、地域で広く使われることを意識して構築され、顧客情報の質と地域の企業との柔軟な連携を重視しています。一般ユーザー向けには、1 つの ID で複数サービスへのログイン機能やポイントの一元化、e ギフトへの交換などを提供します。法人向けには、PR ソリューションや会員基盤の新規導入、ID 連携などを実現します。たるポは拡張性のある仕組みで、現在複数のサービスと ID 連携しています。今後は「会員増」と「連携サービス増」を同時に達成し、地域のエコシステムとして、広島エリアでの事業拡大を考えている企業との連携や、B2B での利活用を視野に入れていると語られました。

AWS のコラボレーションテクノロジー

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 合同会社 ソリューションアーキテクト 本多和幸

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 本多より、データコラボレーションを AWS 上で実現する方法についてご説明を行いました。上記でご紹介した AWS Clean Rooms の詳しいご説明と、AWS Clean Rooms の新機能で企業間で類似セグメントの作成を支援する AWS Clean Rooms ML、名寄せのサービスである AWS Entity Resolution を中心にご説明しました。

テーブル別ディスカッション

ワークショップのメインとなったテーブル別ディスカッションでは、具体的なデータコラボレーションのユースケースについて活発な議論が交わされました。参加企業の皆様に事前に各社のデータ資産をヒアリングし、実践的なユースケースを準備したことで、より深い議論が可能となりました。小売業界のテーブルでは、ポイントカードの活用や新規顧客獲得の戦略が話し合われ、非会員の購買行動分析や他業種とのデータ連携の可能性が探られました。放送業界のテーブルでは、会員データの活用やイベント集客データの取得に関する課題が共有され、特にスポーツチームのファンクラブアプリを通じたデータ活用に注目が集まりました。金融業界のテーブルでは、データのセキュリティを保ちつつ顧客理解を深める方法が議論されました。

お客様の声

本ワークショップは、広島地域におけるデータコラボレーションの可能性を探る貴重な機会となりました。参加企業の皆様からは、「他社とのデータ連携でできることや目指すことの具体的な議論ができたことは良かった」「セキュリティを担保しながらのデータ共有方法が理解できた」といった前向きな声を多数いただきました。ワークショップ後のアンケートでは、参加者の90%以上が本ワークショップに対してポジティブなフィードバックを頂き、データコラボレーションに対する高い期待が伺えます。

おわりに

本ワークショップを通じて、データコラボレーションの大きな可能性と、参加企業の皆様の熱意を肌で感じることができました。ここに改めて、ご参加いただいた企業の皆様、そして共催である中国新聞社の皆様に心より感謝申し上げます。AWS は、今後もこの様なデータコラボレーションを推進する取り組みのご支援や、皆様に役立つ情報をセミナーやブログで発信していきます。どうぞよろしくお願い致します。

本ブログは、ソリューションアーキテクト本多が担当しました。