Amazon Web Services ブログ
北海道文化放送様の AWS 生成 AI 事例「Amazon Bedrock を活用しニュース原稿 / 動画の作成フローを低コストで効率化。ニュース配信数の大幅増を実現」のご紹介
本ブログは北海道文化放送様と Amazon Web Services Japan が共同で執筆いたしました。
みなさん、こんにちは。AWS ソリューションアーキテクトの村木です。
2024 年の AWS Summit では多くの生成 AI 事例が公開されており、生成 AI が世間に広がっていることを実感しております。製造業や金融業などの業界に特化したユースケースが数多く公開されていることが印象的でした。
そんな中、今回紹介するのは、北海道文化放送様で取り組んでいただいた Amazon Bedrock をはじめとしたマネージドサービスを活用し、ニュース原稿 / 動画の作成フローを効率化することで、ニュース動画配信数を増加した事例です。
「とりあえずやってみる」、「ダメだったらやめる」を意識して挑戦いただいていることが、良い結果につながったと考えています。スモールスタートが可能であり、運用費用も低コストなので予算がなくて業務改善に着手できないお客様にとってもぴったりな内容であると思います。また、各業務課題に対して適切なサービスを活用し業務効率化を行った良い例となりますので、生成 AI のみでなく業務改善の観点でもご参考になれば幸いです。
なお、本取り組みは AWS 事例 や AWS メディアセミナーでも紹介されているため、あわせて御覧ください。
事例概要
- FAX で送付されたリリース情報を紙で保管しており管理コストの増加につながっている。また、ニュース原稿 / 動画作成に時間を要しており、数多くのニュースを視聴者に提供することができない。
- Amazon Bedrock をはじめとしたマネージドサービスを活用することで紙媒体のデータ化、ニュース原稿 / 動画の作成フローの自動化を実施した。
- 資料管理コストの削減やニュース動画配信数の増加の効果が出ている。
お客様の状況と検証に至る経緯
北海道文化放送様は各市町村などから月に約 1,500 件ほど FAX で送付されるリリース情報を紙媒体で保存しています。それを元に原稿を作成し、文字とイメージ画像、地上波放送の切り抜き動画を Web 記事として投稿していました。しかし、以下の課題が挙がっておりニュース動画の配信数に限界を感じていました。
- 紙媒体のアーカイブの手間と検索性の悪さ
- 記事作成担当の報道部員、動画作成担当の編集部員のリソース不足
- 動画作成負荷の重さ
そこで、 Amazon Bedrock をはじめとしたマネージドサービスを活用し、ニュース原稿 / 動画の作成フローを効率化をするための検証をすることになりました。
ソリューション / 構成内容
本ソリューションはインフラストラクチャの管理、運用が少ないサーバーレスサービスで構成されており、低コストで運用可能です。主な機能は以下の 4 つであり、 Web アプリケーションを利用して一気通貫で管理することができます。
- Amazon Polly を利用して記事の読み上げ音声生成
- OCR した情報と追加の取材情報を元に Amazon Bedrock で要約し原稿を作成
- AWS Lambda を利用した YouTube ショートや TikTok 用のタテ型動画の簡易生成
※「タテ型動画の簡易生成」画像参照 - 送付された FAX を複合機で受信し OCR でテキスト化後、 Bedrcock で要約したテキスト情報を DB に格納
「ただ原稿生成するだけ」であれば Claude などの基盤モデルを直接利用することも一つの手段ですが 、AWS を利用することで生成 AI の回答精度を安定させたり、動画作成などの他機能との連携が容易になります。
(出展: 北海道文化放送株式会社)
(出展: 北海道文化放送株式会社)
導入効果
システムをリリースした結果、手動で行っていた作業の大部分をシステム化することに成功しました。それに伴い、以下の効果を得ることができました。
- 検索性向上によるリリース情報の見逃防止、検索工数の削減
- Amazon Bedrock による初稿作成、取材情報を取り入れた本稿作成の工数を削減
- 報道部員のみで原稿作成から動画含めたニュース投稿まで実施可能
- 地上波放送されていないニュースを動画配信可能となったことで、月間追加配信数が複数プラットフォーム( YouTube 、 TikTok )累計で 100~120 本に増加
低コストで大きな効果を得ていることが特徴です。サーバーレスサービスで構築されており従量課金であるため運用コストはおよそ $23 / 月 に抑えられています。構築も IT 担当者ではなく編成担当者がたった一人で構築しており、一つずつ業務改善に取り組み、結果的に一連のフローをすべてシステム化しました。予算が限られているがクラウドや生成 AI を利用して業務効率化に挑戦してみたいお客様にとってもハードルが低い事例となっています。
まとめ
今回は、北海道文化放送様で取り組んでいただいた Amazon Bedrock をはじめとしたマネージドサービスを活用し、YouTube や TikTok へ配信するニュース原稿 / 動画の作成フローを効率化することで、ニュース動画配信数を増加した事例を紹介しました。
冒頭でも触れたとおり「とりあえずやってみる」、「ダメだったらやめる」を意識して挑戦いただいており、従量課金である AWS ととても相性が良い進め方です。最終的な運用費用も安いので予算がなくて業務改善に着手できないお客様にとってもぴったりな内容であると思います。
また、本ソリューションは現在も改善を続けており、 OCR に Claude3 Haiku、文章生成に Claude3.5 Sonnet と基盤モデルを最新に切り替えしています。また、利用者からの要望を受けてリリース情報を受信したら、要約、タイトル、原稿、ジャンルをSlackに送信する機能を追加実装しており、好評を得ているそうです。利用者からの声を元に小さく構築と改善を続けていくことが最も早く効果を得られる方法の一つであるため参考にしていただければと思います。
本ブログから業務改善に取り組む方々が増えていただけるととても嬉しいので、ご興味をお持ちのお客様は、お気軽に AWS の担当者までご相談いただければと思います。
なお、作成された動画は北海道文化放送様の YouTube や TikTok で配信されておりますのでこちらも是非確認いただけると幸いです。
ソリューションアーキテクト 村木 雄一