IoT 環境を必要な機能を選択するだけで構築。AWS IoT をグラレコで解説
Author : 米倉 裕基 (監修 : 三平 悠磨)
builders.flash 読者のみなさん、こんにちは! テクニカルライターの米倉裕基と申します。
みなさんは IoT (Internet of Things – モノのインターネット) を使ったビジネスにご興味ありますでしょうか ? IoT をビジネスに組み込むことの重要性は認識しつつも、「難しそう」という気持ちが先だって、IoT について具体的に検討することを躊躇う方もいらっしゃるかもしれませんね。
本グラレコは、そんな IoT プラットフォームを、迅速かつ最適化されたコストで構築するための広範なソリューションを備える AWS IoT の概要を知っていただくための記事になります。こちらを読むことで、AWS IoT を使った IoT プラットフォームの実装を身近に感じていただければ幸いです。
もし AWS IoT の各種サービスや、具体的なソリューションについて詳しくお知りになりたい場合は、builders.flash の過去ナンバーや「AWS ソリューション」がお役に立ちますのでそちらも合わせてご参照ください。
そもそも「IoT」って何 ?
IoT (モノのインターネット) とは、家電や自動車、産業機器など、あらゆるモノをネットワークに繋ぎ、それらのモノから取得した膨大なデータを解析した結果を、ビジネス上の課題解決や新たな付加価値の創出に役立てる仕組みを指します。
今や IoT が利用される分野は業界の垣根を越え多岐にわたります。既存のビジネスの枠組みを刷新し、また新たなビジネス価値の創出にも必要不可欠なものとなってきました。
IoT の需要が高まる一方で、数百万台もの エッジデバイス (インターネット通信が可能な IoT 家電やマイコンなど) を制御し、膨大な情報を取得・分析する IoT プラットフォームを構築するのは困難を極めます。デバイスの管理、通信のリアルタイム性・安全性の確保、高度なアルゴリズムによるデータ分析や、データやデバイス構成の可視化など、IoT プラットフォームを構築するための課題は山のようにあります。
AWS IoT が提供する広範なサービス群には、IoT プラットフォームを構築するうえで直面するこのような課題群を解決するためのソリューションがすでに用意されています。そのサービス群の中から、ご自身の抱える課題に直結するソリューションを選択するだけで良いのですから、AWS IoT を利用することで IoT 導入のハードルが格段に下がることは容易にご想像いただけると思います。
それでは、AWS IoT が提供するサービスについて詳しく見ていきましょう。
AWS IoT のサービス群
広範な AWS IoT のサービス群をカテゴライズした場合、主に以下の 3 種類のカテゴリーに大別できます。
カテゴリー |
用途 |
デバイスソフトウェア |
エッジデバイスを構築し、クラウドに接続するためのサービスです。 |
接続とコントロールサービス |
エッジデバイスを制御・管理・保護するためのサービスです。 |
分析サービス |
IoTデータを分析し、活用するためのサービスです。 |
各カテゴリーが提供するサービスの一覧は以下のとおりです。
補足 :
上記のサービス一覧は、AWS IoT が提供するサービスの一部になります。
また、AWS IoT が提供するサービスの数は年々増え続けています。たとえば、2021 年 12 月に開催された AWS re:Invent では、「AWS IoT RoboRunner」を含む、複数の新サービスが発表されました。「AWS IoT RoboRunner」は、異なる複数のロボットを一元管理するアプリケーションの開発を支援します。
詳しくは、「AWS IoT RoboRunner」を参照してください。
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AWS IoT の 3 種類のカテゴリー
上記の AWS IoT サービスはもちろんのこと、AWS IoT 以外の AWS サービスや外部サービスも柔軟に組み合わせて IoT プラットフォームを構成することができます。ここでは、各カテゴリーの主な機能と役割について見ていきます。
デバイスソフトウェアサービス
AWS はクラウドサービスではありますが、AWS IoT のカバレッジはクラウドに限りません。エッジデバイスからクラウドまで、IoT プラットフォームが要求する全領域をサポートしています。
エッジデバイス向けの代表的なサービスと用途は以下のとおりです。
サービス名 |
用途 |
FreeRTOS |
低電力小型エッジデバイス向けのオープンソースのリアルタイムオペレーティングシステムです。 |
AWS IoT Greengrass |
デバイスソフトウェアの構築、デプロイ、管理を簡単にするソフトウェアおよびクラウドサービスです。 |
AWS IoT Device SDKs |
各種 AWS IoT Device SDK と Mobile SDK からなるパッケージの総称です。さまざまなプログラム言語でデバイスを制御でき、AWS IoT へ接続するアプリケーションを効率的に開発できます。 |
デバイスソフトウェアを利用すれば、エアコンやテレビのような家電からロボットや産業機器のような複雑なデバイスまで、さまざまなエッジデバイスの制御が可能です。また、エッジデバイスの通信に適した MQTT のような軽量、省電力の通信プロトコルで、AWS クラウドとセキュアに連携できます。
補足 : AWS サービスとの適格な連携が確認済みのエッジデバイスを確認したい場合は、「AWS Partner Device Catalog」(英語) をご参照ください。
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接続とコントロールサービス
エッジデバイスや各種サービス、アプリケーションと相互にメッセージを送受信することで連携を行うサービスです。また、エッジデバイスの保護や監視なども行います。
接続とコントロールの代表的なサービスと用途は以下のとおりです。
サービス名 |
用途 |
AWS IoT Core |
多くのデバイスをサポートし、相互にメッセージのやり取りができるようにするマネージド型クラウドサービスです。AWS IoT の中心的な役割を担います。 |
AWS IoT Device Management |
膨大な数の エッジデバイスの登録、編成、モニタリング、リモート管理を簡単かつ安全に行えます。 |
AWS IoT Device Defender |
フルマネージドなIoTセキュリティサービスで、接続されたデバイス群を継続的に保護します。 |
接続とコントロールサービスの中でも、AWS IoT Core は AWS IoT の中心となるサービスです。1 台から数百万台にのぼるエッジデバイスを登録でき、デバイスとクラウド間はもちろん、他の AWS サービスや外部サービスとも簡単に連携し相互にメッセージングができるため、ユースケースに応じたアプリケーションを容易に開発できます。
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AWS IoT は、MQTT と MQTT over WebSocket、HTTPS の 3 つのプロトコルをサポートしており、デバイスやアプリケーション間でセキュアかつ柔軟なメッセージングを可能にします。
アナリティクスサービス
接続されたデバイスから送られてくる膨大なデータを簡単に活用する仕組みを提供するサービスです。
代表的な分析サービスと用途は以下のとおりです。
サービス名 |
用途 |
AWS IoT SiteWise |
産業機器からの大規模なデータの収集、保存、整理、モニタリングを容易にします。 |
AWS IoT Analytics |
膨大な量の IoT データの保存、加工、高度な分析を簡単に実行および操作できる完全マネージド型サービスです。 |
AWS IoT Events |
IoT センサーやアプリケーションで発生したイベントを容易に検出し迅速に次のアクションにつなげることができます。 |
AWS IoT Things Graph |
GUI を使って AWS IoT Greengrass 上やクラウド上で動作するアプリケーションを構築できるサービスです。 |
分析サービスを利用することで、こちらの図のように、視覚的に接続されたデバイスを管理したり、異常発生時など特定の状況に応じてデータを分析したりするなどの構成を組むことができます。分析結果は、エッジデバイス側の設定変更や制御を行うなどに役立てることができます。
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インテリジェンスを産む好循環
ここまで AWS IoT の各種サービスを 3 つのカテゴリーに別けて説明してきました。ただし、AWS IoT の真価は、これらデバイスソフトウェア、接続とコントロールサービス、分析サービスの 3 つのカテゴリーを連携し、サイクルを回すことで発揮されます。
IoT が産み出すインテリジェンスを最大化させるサイクルとして、例えばデバイスソフトウェアでデータをクラウドへ送信するアプリケーションを作り、接続とコントロールサービスでそれらのデバイスやデータを管理・監視し、分析サービスで得た結果を元にデバイスソフトウェアを改善するといった流れが考えられます。
それでは最後に、このようなサイクルの全体図を見てみましょう。
もちろん IoT プラットフォームを構築するうえで、上図のすべてのサービスを利用する必要はありません。小規模な構成から大規模な構成まで、ユースケースに合わせて柔軟に組み立てることができることが AWS IoT を利用するメリットの一つです。
まとめ
以上、AWS IoT の概要はいかがでしたでしょうか? IoT プラットフォームの構築の際に直面する課題に対し、すでに多くのソリューションが提供されていることがおわかりいただけたら幸いです。
AWS IoT の各種サービスは従量課金で利用できます。デバイス 1 台から安価かつスピーディーに IoT プラットフォームを構築することができ、事業規模の拡張に合わせてサーバー管理無しで数百万台規模にまでスケールさせることができます。
もし本記事を読んで AWS IoT にご興味を持っていただけましたら、ぜひ小規模な IoT プラットフォームの構築からでも始めてみてください。
AWS IoT の各サービスの詳細や実装方法などは、こちら をご覧ください。
また、具体的なソリューションを知りたい場合は、AWS IoT 開発者ポータル から事例やハンズオンなどをご参照ください。
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筆者プロフィール
米倉 裕基
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
テクニカルライター・イラストレーター
日英テクニカルライター・イラストレーター・ドキュメントエンジニアとして、各種エンジニア向け技術文書の制作を行ってきました。
趣味は娘に隠れてホラーゲームをプレイすることと、暗号通貨自動取引ボットの開発です。
現在、AWS や機械学習、ブロックチェーン関連の資格取得に向け勉強中です。
監修者プロフィール
三平 悠磨 (みひら ゆうま)
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
IoT スペシャリスト ソリューションアーキテクト
ソフトウェアエンジニアとして会話 AI やロボット開発を経験しました。AWS では IoT スペシャリストソリューションアーキテクトとして、お客様の IoT 関連案件を支援しています。趣味はバンドと作曲で、プログラミングやテクノロジーを駆使して音楽をもっと楽しくしたいと思っています。
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