今後日本の大学は、社会とのギャップ、大学間のギャップを埋め、 ボーダレスな学びの環境を構築していく必要がある
〜沖縄科学技術大学院大学 真野智之先生が説く課題解決に向けた第一歩とは〜
クラウドを利用すれば、ハードルの高いチャレンジへの第一歩も踏み出しやすくなる
現在日本の大学は、社会に貢献できる人材を育成していくという観点から、解消しならない2つのギャップを抱えています。それが大学教育と社会ニーズとのギャップ、そして大学間の研究費などのギャップです。この問題解決のための方法について、沖縄科学技術大学院大学(OIST) 研究員の真野智之先生にお話を伺いました。
“脳”を研究対象とする真野先生は、東京大学在学時に“社会の需要と教育現場との間にはギャップがあるのではないか”という思いを抱くようになったといいます。
「私の研究では、膨大な脳の画像データを処理するために非常に多くのコンピューティングパワーを必要としますが、その1つの手段としてクラウドサービスのAWSを利用しています。ただしお金をかけられないため、自分でAWS環境の構築方法や使い方を勉強し、講義を通じて学生にも教えていました。その資料をネット上でも公開したところ、主に企業や研究機関のエンジニアの方がSNSを介して“今の大学ではこんなことが学べるんですね、凄い!”という反応を返してくれたのです」。
実は世の中が今の大学に求めているのは、社会に直接貢献するような、より実用的な教育ではないのか。そんなギャップ発見のきっかけになったのが、まさにAWSを利用していたことでした。
“脳”を研「大量のコンピューティングパワーを必要とする私がAWSに着目したのは、当然と思われるかもしれませんが、現在AWSからは学びのためのコンテンツも数多く提供されており、私が自分で環境構築や使い方を習得することができたのもそのおかげです。AWSを利用する際の敷居は大きく下がっています。AWSを利用することで、ハードルの高いチャレンジへの第一歩も非常に踏み出しやすくなると思います」。
現在研究や教育に多くの時間を投入されている教授や研究員の皆様も、漠然と“こんなことが解決できればいいな”と考えられているテーマがあるのではないでしょうか。まずはAWSの教材の中から解決するためのコンテンツを探して、AWSに触ってみるところからチャレンジされてみてはいかがでしょうか。
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社会とのギャップ解消は、人材交流が1つのきっかけとなる
それでは実際に、社会ニーズと大学教育とのギャップを埋めていくためには、どうすればいいのでしょうか。
「昔からある大学は、学問の追究が最優先のテーマで、教授の人たちが教えたい内容も経済学や数学の基礎理論など学術的なものといったイメージです。しかし今の世の中が大学に求めるものは、大きく変ってきていて、実は大学側もそれに気付き始めているのではないでしょうか。今年(令和4年)の東京大学の入学式では、総長式辞の中で“東大関連ベンチャーの支援に向けた取組みを積極的に進め、2030年までにその数を700社にするという目標を掲げて(※)”いるとの話がありました。大学と産業界とのより緊密な繋がりは、今後どんどん加速していくと考えています」。
※出典:令和4年度東京大学学部入学式 総長式辞
そのためには、大学と産業界との人を通じた交流が非常に重要となります。
「文科系、理科系を問わず、企業で活躍している人たちを教育の現場に招き、今ビジネスの最前線で何が求められているのか、あるいはどんな方法論やテクノロジーが使われているのかを講義してもらうのです。一方の教授陣や学生側も、今自分たちが教えたり、学んだりしている内容とビジネス現場の課題を照らし合わせて考えることで、より実践的な視点での研究テーマを見つけることができるのではないかと思います」。
大学教育の底上げを図るためには、大学間のギャップを埋める取り組みも必要
またもう1つ、真野先生は、日本の大学教育のレベルを全体的に底上げしていくためには、研究に投下できる予算の大学間のギャップを解消するための取り組みも必要だと強調します。
「通常膨大なコンピューティングパワーを必要とする場面では、HPC(High Performance Computing)と呼ばれる大規模かつ高性能なコンピュータシステムが利用されますが、HPCは非常に高価で、導入できる大学とできない大学が出てきてしまいます。その差が大学間の研究レベルの差を生んでしまうことにもなるのですが、この格差を解消する方法が、やはりクラウドを利用することです」。
クラウドのメリットは、初期投資がゼロで、使った分だけ料金を支払えばいいという点です。いきなり高価なHPCシステムを購入する必要は一切無く、必要な分だけ、フレキシブルに利用を始めることができるのです。
「研究費の格差、より端的に言えば効率的な研究を支えるコンピューティングパワーの格差を是正していく上で、日本の大学はクラウドの活用に真剣に取り組むべきだと考えています。教授や研究員の皆様にも、まずはご自身の研究室に割り当てられた研究費の中から少しでもクラウド利用のための予算を確保し、少しでも使ってみることでそのメリットを実感しながら、クラウドの利用範囲を広げていく、という姿勢が求められていると思います」。
クラウドを利用すれば、ボーダレスな学びや研究の場を作ることもできる
さらに真野先生は、クラウドを利用すれば、大学内で閉じてしまいがちな講義資料や研究成果をボーダレスに共有することも非常に容易になると続けます。
「例えば研究データは、各先生方が自分で作成して解析し、世の中に論文として発表するのが常ですが、研究データをクラウド上に置いておき、他学の研究者の人たちも日本全国どこからでも共有できる環境を構築しておけば、日本全体として研究成果を出すまでの時間や労力を大幅に減らすことができると思います。こうしたクラウドのフレキシビリティとスピード感が、私自身、AWSを使ってみた時の最大の発見でした」。
社会ニーズと大学教育のギャップを解消し、大学間のギャップを解消し、さらにボーダレスな学びや研究の場を作っていく主体となるのは、やはり教授や研究員の皆様です。そして皆様がそうしたハードルの高いチャレンジへ第一歩を踏み出すお手伝いをできるのがAWSです。AWSでは皆様のご参考になるウェビナーも数多くご提供しています。是非一度ご参照いただければと思います。
【AWSコンテンツはこちら】
沖縄科学技術大学院大学(OIST) 特別研究員
真野智之氏
無脊椎動物の全脳スキャンを通して、脳の構造解析に取り組む
2021年3月まで東京大学情報理工学系研究科博士課程、2022年4月より現職。JSPS(独立行政法人日本学術振興会)特別研究員としても活動中。“脳”を研究対象とし、多様な生物の脳の画像データを取得して解析を行い、解剖学的な構造を明らかにすることを目的とする。現在は、より高解像度で脳の三次元データをスキャンできる光シート顕微鏡を用い、頭足類 (イカ・タコ・コウイカ)の全脳をスキャンして、視覚回路を解剖学的に解析することに注力している。著書に『AWSではじめる クラウド開発入門』がある。
大学・研究機関における『最新のクラウド活用事例』
システム基盤のクラウド移行
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学校法人同志社 同志社大学
AWS のインフラとオンプレミスとのハイブリッド環境を構築し、教育・研究の多様性と質の向上、そして先端技術導入への挑戦を可能にする情報インフラの整備を進めています。
サーバーレス設計でサイト構築を迅速化
クラウド化で、コンテンツ制作に集中できます
学校法人 北海学園 北海学園大学
コロナ禍の行動制限下でも、多くの受験生に大学の魅力を伝えるための Web サイトのインフラに AWS が採用されました。
クラウド導入のファーストステップ
SaaS を導入してからクラウドのメリットが口コミで広まってきました
学校法人 近畿大学
SaaS を導入してから 1 年程経過すると、次第に「多機能」「ハードウェア管理が不要」「高可用性」「安価」といったクラウドのメリットが口コミで広まってきました。
クラウドお役立ちコラム
コラム
全ての研究者にクラウドを
~競争的研究費でクラウド利用料の支出が可能であることが明確化されました~
「競争的研究費における各種事務⼿続き等に係る統⼀ルールについて」の改正が行われ、競争的研究費の直接経費からクラウド利用料の支出が可能であることが明確化されました。
こちらの記事ではクラウドサービス利用料の見積もり時のポイントやコストを抑えた AWS の活用Tipsについてご紹介します。
グローバル
研究コミュニティにおけるスケーラブルなセキュリティの必要性
2023 年3 月20 日に AWS Public Sector Blog 内で投稿された『The top 3 innovation drivers in higher education in 2023』という記事の中で、AWSの高等教育機関のお客様が、イノベーションを推進するための鍵として、2023年に何を最優先事項としているかということを説明されています。
もっと知りたいクラウド
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2023 年 1 月 27 日 録画版
【大学・研究機関向け】AWSの簡単な手配・購入方法の最新情報アップデート
大学・研究機関の講義・演習や研究において、素早く使えるクラウドの利用が浸透していますが、一方で「クラウドは従量課金制のため予算調整や申請が難しい」、「予算超過が心配」、「ドル建て決済やクレジットカード決済以外の方法がないと申請できない」などの声が聞かれます。実は、Amazon Web Services (AWS) の手配・購入については、このような悩みや課題を解決するサービスが多数登場し、いま利用者が急速に広がっています。
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2022 年 10 月 27 日 録画版
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大学・研究機関における学術情報ネットワーク SINET 経由での Amazon Web Services (AWS) 利用について基本情報と2022年の最新情報をお届けします。AWS では2014年から高速・大容量・セキュアな SINET を経由して、AWS クラウドを利用できる環境を整備しており、多くのお客様に SINET 経由で AWS をご利用いただいています。
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