予測の改善を支援してくれるモデルを構築およびトレーニングできれば、その結果もたらされた改善によって迅速にコスト節約を実現できます。
Remco Wilting 氏 Royal FloraHolland、データおよびデータサイエンス、部長
  • 課題

    世界最大の花卉オークション企業である Royal FloraHolland は、デジタルに移行し、IT インフラストラクチャを構築し、よりデータ駆動型になって、世界中の栽培業者およびバイヤーに向けて、購入および販売の選択肢を拡張する必要がありました。

  • ソリューション

    同社は AWS Machine Learning コンピテンシーパートナーである Xebia と連携し、社内でデータサイエンスプログラムを構築するための支援を受け、機械学習 (ML) ツールおよびアプリケーションの開発を開始しました。Royal FloraHolland は ML を使用して、花卉を運搬する台車に関する台車予測を改善し、運用効率を向上させています。また、同社は深層学習モデルを使用して、花卉の写真を介してバイヤーに情報を発信する栽培業者に対して画像品質の確認およびフィードバックを行ったり、同社のアプリケーションを使用してバイヤー向けの推薦エンジンを作成したりします。

  • メリット

    Royal FloraHolland にとって、データを使用することでビジネス成果を改善して花卉業界のトップに立ち続けるという念願は、Xebia の支援を受けながら AWS 上で実施するプロジェクトを介して実現しつつあります。Xebia は、Royal FloraHolland 向けに複数のソリューションを構築しました。花卉台車の効率を高めたほか、機械学習を使用してオークションに使用される写真の品質も向上させました。

Royal FloraHolland は、世界最大の花卉オークション企業です。同社は 100 年以上にわたって国際的な花卉栽培業者およびバイヤーのために需要と供給を取り仕切り、最適価格の提供や取引コストの低減を支援してきました。 

言葉を発しなくても多くを語る花は世界中で愛され、いたるところで販売されています。巨大な花卉業界において、1 日に 145,000 もの取引が交わされ、400,000 種類もの花卉が取り扱われているうえ、受け継がれてきた遺産、規模、面積において際立っている 1 社が、オランダに拠点を置く Royal FloraHolland です。同社は協同組合方式の企業で、栽培業者が協力し合って同じ場所でそれぞれの製品を販売しています。

Royal FloraHolland は、オンライン取引プラットフォームである Floriday および世界的に有名な生の花卉オークションを介して、世界中のバイヤーと販売者をつなげています。巨大なアールスメールのオークション会場は、アムステルダム近郊に 128 エーカーにわたって存在しています。観光名所でもあるこの市場では、旅行客が国際的な花卉取引の現場に没入することができます。

Royal FloraHolland の所在地であるアールスメールの花卉オークションは、世界最大の花卉取引センターです。

「私たちは、1 度に可能な限り多くの需要と供給を結びつけるビジネスに従事しているのです」と、Royal FloraHolland のデータおよびデータサイエンス部門で部長を務める Remco Wilting 氏は言います。「当社は規模が大きく 100 年を超える歴史を持つため、非常に伝統的な面も持っています。しかし、デジタル化を果たすことで栽培業者およびバイヤーにより多くの機会を提供することの重要性を認識していました」 Royal FloraHolland は、栽培業者が物理的なオークション会場の外で他の取引手法を使用して花卉を販売したいと考えていることを認識していたため、現在のプロセスに対する改善策や、バイヤーにつながる新しい機会を栽培業者および販売者に提供する方法の検証を開始しました。

「世界はますます小さくなっていっています。デジタル化は、業界内で競争力と差別化を維持したい当社にとって避けては通れない道です」と Wilting 氏は言います。「当社がやらなければ、他社がやることになります」

同社は、デジタル化およびデータ駆動性の推進に向けた再編成の必要性を悟りました。「よりデジタルに焦点を合わせた方針を採る決定をした後、IT 部門がビジネステクノロジー組織、別名 BTO に変わり、IT およびビジネスのデジタル化の両方を担うことになりました」と Wilting 氏は言います。「その変革の間に、通称『デジタル温室』を立ち上げ、そこで栽培業者および顧客に向けた新しいアプリケーションを構築しています」

Royal FloraHolland の再編成プロセスにおけるもう 1 つのステップは、IT ニーズおよびインフラストラクチャの支援をしてくれるパートナーの特定でした。「グローバルなサービス展開、技術的イノベーションを実現するペース、柔軟性が決め手となり、アマゾン ウェブ サービスに移行して、デジタル温室で構築する今後のアプリケーションすべてを同社のサービスを利用してデプロイすることに決めました」と Wilting 氏は言います。

Wilting 氏は、同社のデジタルトランスフォーメーションを支援するチームを組織しました。「Floriday の構築を始めたとき、バイヤーおよび販売者向けのグローバルな取引プラットフォームをデジタル化して気づいたことは、Royal FloraHolland の将来においてデータがいかに大きな役割を担うのかということでした」と Wilting 氏は言います。同氏はデータサイエンスと AWS の専門知識を持つパートナーである Xebia を迎え入れてその支援を受けながら、発展途上のデータサイエンスチームの教育と、十分にトレーニングされた深層学習モデルがビジネス上の決定を改善できるユースケースの特定を行いました。

Xebia は、AWS パートナーネットワーク (APN) アドバンスドコンサルティングパートナー兼 AWS Machine Learning コンピテンシーパートナー で、専門性のあるエキスパートを派遣することで、顧客と連携してその変革を誠実に支援できるという確信を持っています。

「Xebia が情熱を燃やすのは、さまざまな分野のエキスパートをまとめて、顧客がテクノロジーを介して変革と新しいビジネス成果を実現できるよう支援することです」と、Xebia で AWS テクノロジーのチーフを務める Martijn van Dongen 氏は言います。「Xebia の各従業員は単独で仕事を遂行できますが、気持ち良く共同作業をすることも得意としています。私たちはそれぞれに、データサイエンス、クラウド、デジタル戦略といった各分野の権威になることを目指して努力を重ねています」

「Xebia がオランダのデータサイエンスおよびクラウド分野における有力企業であることは知っていました。独自にデータサイエンスの実践の確立を開始したときに、同社と提携することに決めました」と Wilting 氏は言います。提携の最初の 1 年間、Xebia は Royal FloraHolland のチームの一員となり、毎日協力しながら AWS 上でパイロット版の評価および開発を行いました。「当初、私たちは Royal FloraHolland のデータサイエンスチームとして機能し、同社の実践の確立と新しい人員の雇用を支援しました」と、Xebia のデータサイエンティスト、Vincent Warmerdam 氏は言います。「AWS での新しい方法でデータを活用しながら対処したいユースケースの特定および優先順位付けを支援しました」

データ駆動型アプリケーションをデプロイするために、Xebia は AWS 上で洗練されたコンテナアーキテクチャを構築する Royal FloraHolland を支援しました。「Royal FloraHolland が Docker マイクロサービスを使用して Amazon Elastic Container Service (Amazon ECS) プラットフォームを構築するのを支援しました。このプラットフォームで、デジタル温室アプリケーションと Docker 機械学習テクノロジーが実行されます」と van Dongen 氏は言います。「AWS 上のワークロードはすべて、自動化されたデプロイパイプラインおよび AWS CloudFormation を使用してデプロイされます。デプロイチームには継続的に本番デプロイを行う自律性があります

Royal FloraHolland の AWS 上のデータアーキテクチャ

「当社の API はすべて Amazon API Gateway の背後に置かれます」と、Royal FloraHolland のデータサイエンティスト、Dirk Guijt 氏は言います。「私たちは Amazon Kinesis を使用してストリーミングデータを収集および処理しています。Amazon Kinesis Data Firehose を使用してこのデータを Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) 上のデータレイクおよび AWS Glue に読み込み、データレイク内のデータをカタログに登録します。データはその後アルゴリズムが Amazon SageMaker で ML モデルをトレーニングするのに使用します。複雑な計算ワークロードおよびデータ処理パイプラインのオーケストレーションを行うオープンソースツールである Apache Airflow を使用し、SageMaker ジョブをトリガーしてモデルをトレーニングした後、Amazon S3 にモデルを書き戻します。そこからモデルを本番サービスに取り込みます

チームは効率とカスタマーエクスペリエンスを高めるため、3 つの領域を迅速に特定し、深層学習アプリケーションを使用して優先順位付けしました。その領域とは、台車物流、花卉写真認識、バイヤー向け推薦エンジンです。

毎日数千もの台車が統制されたプロセスでアールスメール市場を駆け巡っています。トラックから花卉を搬入し、仕分けが済むと、今度は出発する配送車両に届けます。各台車は、Royal FloraHolland サプライチェーンの複雑かつ不可欠な要素です。

「高精度の台車予測は、とても古くからある課題です」と Wilting 氏は言います。「市場に入ってくる台車の数によって花卉すべての対応に要する人員の数が決まるため、物流チームのワークロードは毎日何台の台車が入ってくるかに大いに依存しています。その情報は短期的および長期的に計画を立てるのに必要で、従来、改善に成功してきたものは実質的には予測ではありません」

高精度の台車予測が可能になれば、効率化、ビジネス成果の改善、コスト節約が実現できます。

Royal FloraHolland と Xebia は、台車予測の問題に、データサイエンスで対処できる古典的なユースケースを見出しました。「台車予測の精度の低さが原因で配置される人員が多すぎても少なすぎても、ビジネスにはよくありません。労働力にコストがかかりすぎても、人員が負担するワークロードが多すぎても、顧客に商品を届ける期限を守れません」と Wilting 氏は言います。「予測の改善を支援してくれるモデルを構築およびトレーニングできれば、その結果もたらされた改善によって迅速にコスト節約を実現できます」

花卉バイヤーは購入する商品について知っておきたいものですが、写真だけを見て購入するという場合も往々にしてあります。「写真に製品の特徴がきちんと表れていないと、バイヤーは大いに不満を抱きます。昔から写真というのは品質がまちまちなものです。写真は各栽培業者が撮影しており、栽培業者によって大きく異なる場合があります」と Wilting 氏は言います。「画像品質の確認およびフィードバックを行って、オークションで公開される画像の品質向上を支援できるよう、深層学習モデルを開発中です」

そのビジネス価値は明白です。画像の品質が上がれば、栽培業者がより高額で花卉を販売できる可能性が高まります。「その価値はプラットフォームを介して全体的な収入につながります」と Wilting 氏は言います。同社は引き続きモデルをトレーニングし、社内チームからフィードバックを集め、アプリケーションのさらなる改善を推し進めています。

NAALDWIJK - ROYAL FLORAHOLLAND - SEASONAL TRADE FAIR

高品質な花卉の写真が、デジタル時代の販売者にとって差別化要因になりつつあります。

最初に選んだ商品を購入できなかったバイヤーに魅力的な代替品を提示すれば、ビジネス収入が増加し、顧客満足度を改善できます。Royal FloraHolland は現在、AWS での深層学習を使用して、在庫状況やバイヤーの好みに合わせた代替品を自動的に提示する方法を検証しています。

「地理的に市場から離れた場所にいるバイヤーが現在の供給状況と購入可能な商品を確認できるようにしたいと考えています」と Guijt 氏は言います。「このデータを利用して推薦エンジン用のモデルを構築およびトレーニングすることで、購入したい商品の発見や代替となる商品の提示といった面での支援をバイヤーに提供できると確信しています。たとえば、特定の栽培業者からいつも購入している花卉を購入できなかったバイヤーに対して、関心を持てる別の商品を知的に特定する手助けができれば嬉しいです」

データ駆動型化を果たすと、その企業全体に影響が現れます。Royal FloraHolland のデータサイエンスチームは、内部の利害関係者を早くからプロジェクトに関与させることを学びました。

「これらのアプリケーションの構築中、私たちに対する支援の意志とフィードバックをたくさん受け取りました」と Guijt 氏は言います。「こうした技術的変革を推進する中、ビジネス目標のデモンストレーションと説明を通じて気づくことは、内部の利害関係者が生活がいかに楽になるかということを理解し始めていることです。メリットを理解し、さらにそれ以上を望んでいるのです。チームがモデルを開発およびトレーニングする間、内部の利害関係者はフィードバックを提供することによって、チームの取り組みにおける権限を発揮し、モデルの構築を支援しているのです。

Royal FloraHolland にとって、データを使用してビジネス成果を改善し、花卉業界における高い競争力を維持するという目標は、Xebia の支援を受けながら AWS 上で取り組む各プロジェクトを介して実現しつつあります。

「データ駆動型プロジェクトを通じてビジネスを変革させられると知ったことで、私たちは活気づいています」と Wilting 氏は言います。「そして取り組みはまだ始まったばかりです。今後の発展が楽しみです」

Xebia は、最先端のツール、トレーニング、コンサルティングサービスを提供し、より良く、よりスマートに、そしてより高速にビジネスが成果を上げられるようにします。同社のサービスやプロダクトソリューションを使用すると、デジタル戦略、アジャイルトランスフォーメーション、DevOps と継続的デリバリー、ビッグデータとデータサイエンス、クラウドインフラストラクチャ、アジャイルソフトウェア開発、品質とテストのオートメーション、アジャイルソフトウェアセキュリティに対応できます。

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