Volkswagen Financial Services ロゴ

Volkswagen Group、VR 用 3D データ作成とリモートレンダリングを AWS 上で高速化

2021 年

世界的な自動車メーカー Volkswagen Group (Volkswagen) は、デザインレビューやトレーニングシミュレーションから工場でのリモートガイダンスに至る製品ライフサイクルの全体で、ユースケースの時間節約、コスト削減、パフォーマンス向上を実現する仮想現実 (VR) および拡張現実 (AR) のアプリケーションを構築しています。AR/VR 拡大に向けた取り組みで Volkswagen が必要としていたのは、より高速、よりシンプル、より効率的に 3D コンテンツを作成し、組織全体に配信する方法でした。同社は次の 2 つを達成するためにクラウドアーキテクチャを開発しました。ひとつは、3D データ作成のパイプラインを自動化して、より迅速かつシンプルな 3D モデルに最適化すること。そしてもうひとつは、3D グラフィックをリモートでレンダリングして AR/VR ヘッドセットにストリーミング配信する能力をテストし、高価なワークステーションとケーブルで接続された、制約のあるヘッドセットから脱却することです。

この実現に向け Volkswagen は、アマゾン ウェブ サービス (AWS) を使って、特定の VR のレンダリングおよび 3D データ最適化のワークロードをクラウドに移行しています。また、同社は VR ソフトウェア企業 Innoactive と共同開発した Innoactive Portal と呼ばれるカスタムアプリケーションを使って、VR アプリケーションのデプロイおよび管理を行っています。Volkswagen は、Amazon Elastic Container Service (Amazon ECS) を含む複数の AWS サービスを使用しています。Amazon ECS は、フルマネージドのコンテナオーケストレーションサービスで、コンテナ化されたアプリケーションを簡単に導入、管理、スケーリングできます。同社は、こうした AWS サービスを活用しながら、クラウドでの 3D データ作成のパイプラインを効率化するとともに、レンダリングの能力向上および高速化を図っています。

Volkswagen Digital Realities Hub、プロダクトオーナー、Jan-Paul Brückmann 氏
kr_quotemark

「AWS には、当社の目標やアーキテクチャドラフトをサポートする多くのネイティブサービスがあるため、私たちにとって AWS の使用はシンプルかつ効果的です」

Jan-Paul Brückmann 氏
Volkswagen Digital Realities Hub、プロダクトオーナー

クラウド上で最適化することにより VR の課題を克服

ドイツを拠点に、世界各地で事業を展開する Volkswagen は、120 近い生産工場で 10 の主要車種を製造しています。同社は、品質保証、従業員トレーニング、生産ラインの事前計画といった複数のユースケースで、VR 技術を利用したいと考えていました。VR 技術の恩恵は 60 万人超の従業員に及ぶとみられ、Volkswagen はワークステーション、ケーブル、外部トラッキング装置といった従来の VR システムにつきものの制約を取り払ってくれる、効率的で柔軟なアーキテクチャを必要としていました。ワイヤレス AR/VR ヘッドセットにすることによって、より多くの対象従業員にヘッドセットを提供するという目標には近づくものの、デバイスの処理能力が制限されてしまうという、さらなる課題が生じました。Volkswagen Digital Realities Hub のビジネスパートナーマネージャーである Adrian Staude 氏は「処理すべき 3D データ量があまりに多く、現在販売されているワイヤレス VR ヘッドセットでは対応できませんでした」と言います。

この課題の克服に向け、同社は 2021 年に次の 2 点にフォーカスしてアーキテクチャの再設計を開始しました。ひとつはデータ作成のパイプラインを最適化して、デバイスがレンダリングする必要のある 3D データの密度を下げること。そしてもうひとつは、準リアルタイムのレンダリングのワークロードをクラウドにオフロードすることで、より高い処理能力、可用性、柔軟性をユーザーに提供することでした。それまでも AWS のサービスを利用していた Volkswagen は、AWS が同社のハードウェアニーズに対応できることを知っていました。例えば、 Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) 上の VR ワークロードに特化した GPU がそのひとつです。このツールは、事実上あらゆるワークロードに対して、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能を提供します。Staude 氏は次のように述べています。「AWS は Amazon EC2 インスタンス上で多様な GPU を提供しています。当社は常に、発生するワークロードに適したハードウェアを選ぶことができます」

Volkswagen は、Innoactive と共同で作成した VR ソフトウェア管理システム Volkswagen Digital Realities Hub を導入しました。同社では、この VR コンテンツ管理システムを使って、さまざまなユースケースに対応するアプリケーションのカタログをユーザーに提供し、ストレージからアプリケーションに至るデータパイプラインを、より適切に管理できています。

AWS 上での 3D データ作成と VR レンダリングを高速化

VR 技術をよりアクセスしやすく、効率的で、手頃なものにする鍵は、レンダリングして VR デバイスにストリーミング配信する必要のある 3D データ量を減らすことにあります。Staude 氏はこのように述べています。「以前は 3D データ作成の多くを手作業で行っていました。1 件の 3D アセットにつき、およそ 5 時間かかっていました」 現在、同社は Amazon ECS を使って 3D データ最適化アプリケーションの速度を高めることで、クラウドでのデータ処理を加速しています。3D データ作成をクラウドにアウトソーシングすることによって、1 日に何時間もデータ準備に費やされていたコンピュータを解放できます。また、それによってパイプライン全体も高速化され、アクセスしやすくなります。Volkswagen にとって最も重要な 3D データ作成ツールのひとつが、複雑な 3D データを最適化された 3D アセットに自動変換し、Unity ですぐ使えるようにする Pixyz Scenario Processor です。このツールは AWS Marketplace で購入できます。企業はここで、AWS で実行されるソフトウェアを検索、テスト、購入、デプロイできます。このツールは、Amazon ECS 上のサーバーレスコンテナで動作するため、Volkswagen は AWS のよりダイナミックかつ接続されたパイプラインの一部として使用できます。また、同社は、サーバーの管理を行わずにコードを実行できるサーバーレスコンピューティングサービス AWS Lambda を使って、コンピューティングプロビジョニングとストレージ内の新しいデータに対するシステムの応答を自動化しています。

それと同時に、大型で高価なオンプレミスのワークステーションを俊敏なクラウドコンピューティングに置き換えて、VR の導入を妨げる主要な障害を取り除いています。Volkswagen は、NVIDIA T4 GPU を搭載した Amazon EC2 G4 インスタンスを使って、クラウドでレンダリングを実行する能力をテストしています。Amazon EC2 G4 インスタンスは、機械学習およびグラフィックを多用するアプリケーション向けの、費用対効果の高い GPU インスタンスで、クラウドでスケーラブルな GPU パフォーマンスを提供します。同社の概念実証システムは、AR/VR のストリーミングプロトコル NVIDIA CloudXR を使って、ほぼリアルタイムでピクセルを直接 VR デバイスにストリーミングできます。Staude 氏は次のように述べています。「このソリューションを使えば、オンプレミスではもう何の処理をする必要もなくなります。AWS 上の強力なコンピューティングクラスターから、アプリケーションをストリーミングするだけですむようになるでしょう」

AWS のサービスは高いスケーラビリティを有しているため、Volkswagen は必要に応じて、シームレスにスケールダウンすることが可能です。これは Volkswagen のバックエンドストレージや 3D アセット管理にも当てはまります。同社は、 Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) を使って、すべての拠点で自社の 3D データをデバイスで利用できるようにしています。Amazon S3 は、業界随一のスケーラビリティ、データ可用性、セキュリティ、パフォーマンスを提供するオブジェクトストレージサービスです。強力な Amazon EC2 インスタンス、柔軟なコンテナパフォーマンス、スケーラブルなクラウドストレージ、高性能ストリーミング、Innoactive のソフトウェアを組み合わせて使用することで、Volkswagen は VR 技術を従業員にとってより利用しやすくするとともに、3D レンダリングにかかる時間およびコストの削減に取り組んでいます。Volkswagen Digital Realities Hub のプロダクトオーナーである Jan-Paul Brückmann 氏は次のように述べています。「AWS には、当社の目標やアーキテクチャドラフトをサポートする多くのネイティブサービスがあるため、私たちにとって AWS の使用はシンプルかつ効果的です。AWS 上でのサービスの使用およびアプリケーションの構築は、すべてが明確です」

クラウドでのクロスリアリティイノベーションの計画

Volkswagen は、VR エクスペリエンスの簡略化と改善に取り組むと同時に、同社のインフラストラクチャをクラウド上でより効率的、強力、柔軟にしようとしています。「今後 5 年間で、当社は Volkswagen Digital Realities Hub にさらなるサービスを導入し、ユーザージャーニーを継続的に改善していきたいと考えています」と Brückmann 氏は語っています。

Volkswagen が描く未来は、従業員が歴史的に複雑な AR/VR 技術に容易にアクセスでき、生産性とコラボレーションを向上させる VR 環境を、いつでも、どこでも、どんなデバイスからでも利用できるようにすることです。その未来に向かって、Volkswagen は AWS 上で準備を進めています。

Volkswagen Group について

世界的な自動車メーカーである Volkswagen Group は、フォルクスワーゲン、アウディ、ベントレーを含む 10 の自動車ブランドを製造しています。同社はまた、小型商用車の製造や金融サービスも行っています。

AWS の利点

  • 3D レンダリングの高速化
  • 3D データ作成の高速化
  • コンピューティングおよびストレージのコスト削減
  • 従業員の生産性向上
  • インフラストラクチャのスケーラビリティ向上

使用されている AWS のサービス

Amazon EC2

Amazon EC2 は、クラウド内で安全かつ自在に規模を変更できるコンピューティング性能を提供します。

詳細 »

Amazon S3

Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) は、業界随一のスケーラビリティ、データ可用性、セキュリティ、パフォーマンスを提供するオブジェクトストレージサービスです。

詳細 »

AWS Lambda

AWS Lambda はサーバーレスコンピューティングサービスで、サーバーのプロビジョニングや管理、ワークロード対応のクラスタースケーリングロジックの作成、イベント統合の維持、ランタイムの管理を行わずにコードを実行できます。 

詳細 »

Amazon ECS

Amazon ECS は、フルマネージド型のコンテナオーケストレーションサービスです。

詳細 »


開始方法

あらゆる業界のさまざまな規模のお客様が、AWS を活用してビジネスを日々変革しています。AWS のエキスパートにお問い合わせのうえ、今すぐ AWS クラウドジャーニーを開始しましょう。