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官公庁・教育・医療といった公共機関の大規模なクラウド移行を包括的に支援する、AWSのクラウド移行支援プログラム登場 – AWS ITトランスフォーメーションパッケージ 公共版(ITX for PS)

みなさん、こんにちは。パブリックセクターでビジネス開発、マイグレーションプログラム推進をしている今井です。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWS)では、AWSへの大規模なシステムの移行を実現し、ひいてはお客様のデジタルトランスフォーメーションをサポートする 「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ(ITX)」を2021年に、2022年には内容を強化・拡大した「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ2.0(ITX2.0)」をリリースしました。2023年にはITXパッケージ2.0をより包括的に進化させた「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ 2023 ファミリー(ITX 2023)」をリリースし、2021年以来多くのお客様にご活用頂き、企業のITトランスフォーメーションを支援してきました。

今回のブログでは、2024年6月にリリースした最新版の「AWS ITトランスフォーメーションパッケージファミリー(ITX)」の中で新たに取り入れられた、公共のお客様に向けて開発されたAWS ITトランスフォーメーションパッケージ 公共版(以下、ITX for PS)についてご紹介します。(最新版のITX資料ダウンロードはこちらから

公共領域におけるITXに対するお客様からのご要望

日本の社会において労働人口の減少や高齢化などが進行する中、デジタル技術の活用による省力化・効率化が不可欠となっています。政府はこうした課題に対応すべく、行政は勿論の事、医療・教育も含め、国民一人ひとりの暮らしを豊かにするデジタル社会の実現を目指すための政策を推進しており、クラウドの活用もそうした目的を達成するための一つの手段として検討が進められています。例えば中央省庁や地方自治体におけるクラウドの検討状況に目を向けると、クラウド・バイ・デフォルト原則のもとに、今後中央省庁において約1100の政府情報システムのクラウド移行の検討が行われ、また地方においても約1700団体が20の標準業務のクラウド移行を2025年度末までに行う方針です。

こうした状況の中、国においてはデジタル庁が「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」(以下基本方針)の中でクラウド利用のメリットを十分に享受するため、システム刷新に伴いマネージドサービスを活用したシステムのモダン化について言及するなど、スマートにクラウドを利用することを勧めています。

今後さらに公共の領域でもシステムのクラウドへの移行が行われていくことが考えられますが、クラウドのメリットを享受するために単純なクラウド移行ではなくシステムのモダン化の検討を効果的に行うことや、公共特有のNW構成といった基盤設計、各種ガイドラインへの準拠の必要性など、公共分野特有の要素に頭を悩ませるお客様の声も聞こえてきます。

今回、AWSへの大規模な移行を考える官公庁や医療、教育、NPOといった公共の分野のお客様向けに従来のITXの内容を拡張し、ITX for PSとしてリリースいたします。

ITX for PSとは?

ITX for PSでは公共領域においても求められるシステムのモダン化や公共分野特有の要素への対応を中心に、従来のITXを拡張する形で、1.システムのモダン化支援、2.公共専門分野支援、3.システムをモダン化する際に鍵となるデータ・生成AIの活用支援を提供すると共に、公共分野で見られる調達のプロセスを考慮したパッケージ構成にしています。

1.システムのモダン化を進めるための支援

AWSへの移行に伴いシステムのモダン化を進めるための支援としては大きく3つのカテゴリを用意しています。移行における初期の企画・検討フェーズにおけるアセスメント支援、アセスメント後に要件の定義や仕様を検討する際に机上調査にとどまらないプロトタイプの支援やモダン化の体験をしてもらうモダン化開発支援、そして運用に入ったシステムのクラウド利用を最適化することによるコスト最適化の支援です。

システムのモダン化を進めるためには、次期システム検討の早い段階でモダン化による費用対効果の検証や、実現性の検証を行うことが重要になると考えられます。そうした検証を支援するために、次期システムの企画・移行検討のフェーズでシステムのモダン化を検討するための各種アセスメントを提供します。

運用生産性の向上など単純な利用コスト比較にとどまらないクラウド移行によるTCO分析を行う「クラウドエコノミクス」、特定業務システムのTo Beアーキテクチャーを検討してモダン計画のインプットとする「モダナイゼーションアセスメント」、移行対象システムを俯瞰的に分析しシステム特性に応じたクラウド移行パターンを推奨する「アプリケーションポートフォリオアセスメント」、マネージドなデーターベース移行を行うために必要な検証を支援する「データベースフリーダム」、システム環境を第3者機関により評価し、サードパーティーライセンスを最適化する「ライセンス評価・最適化プログラム」といったモダン化アセスメントを用意しています。

また、こうしたアセスメントを行ったうえで要件定義や仕様検討のフェーズでは、前フェーズで検討されたアーキテクチャーをもとにしたプロトタイプをAWSが開発する「プロトタイピング支援」や、実際にシステムをモダン化するパイロットプロジェクトを体験し開発チームにノウハウと成功体験を得て頂くための「体験型ワークショップ」といった、モダン化開発支援も提供いたします。

そしてAWSに移行したシステムに関し、運用・保守のフェーズでは、よりスマートにクラウドを活用することでコストの最適化を図るためのコスト最適化支援を提供します。

2.公共専門の分野に関するクラウド活用支援

公共特有の要素に関するクラウド活用支援では、中央政府、自治体、教育機関、医療機関、研究機関など、公共のお客様の特有の専門知識、技術知識を持った技術チームがお客様の課題を解決支援します。また、公共のお客様の状況を踏まえたクラウド人材育成やクラウド推進組織の立ち上げに関する支援、公共調達のプロセスの中でAWSの提供するクレジット提供プログラムの活用支援といったものを提供します。

ITX for PSではシステムをクラウドに移行する際、公共分野での特有な要素に対する支援も用意しています。公共のお客様で見られる閉域網におけるネットワーク設計支援や、IaCが活用されるガバメントクラウドにおけるテンプレートの利用に対する支援、監督省庁等から出される各種ガイドラインに対応したクラウドの利用方法を検討するための支援など、公共専門分野支援を用意しています。

また、クラウドの活用において技術以外の要素で重要となる人材育成・組織の面に関しては、クラウドへの大規模移行に際し、組織的な準備ができているかを評価する「移行準備評価」、AWSに携わる要因のスキルギャップの特定とギャップ解消を支援する「スキルギャップ分析」、そうしたアセスメントの結果をもとに公共のお客様のクラウド推進組織(CCoE)の立ち上げ検討や人材育成の支援を行う公共クラウド人材・組織育成支援も提供いたします。

さらにAWSでは、移行時の経済的負担を軽減するMigration Acceleration Program(MAP)と呼ばれるAWSの利用料に対するクレジット提供プログラムを用意していますが、公共の調達プロセスの中でMAPを活用するタイミングを検討したり、分離調達の際にどのようなスキームにするとよいかといったご提案等、公共調達におけるMAPの活用支援も提供しております。

3.データ・生成AIの活用支援

モダン化を含むシステムの刷新に際しては、業務改革(ビジネスプロセスリエンジニアリング、BPR)も併せて行うことがデジタル庁の基本方針の中でも推奨されています。業務改革を検討する際、システムの観点からはデータドリブンの意思決定に寄与するデータ基盤や、そのデータを用いた生成AIの活用が求められることも考えられます。

そうした状況にお応えするためにAWSの専門チームがお客様の現行データ基盤を分析し、モダナイゼーションのポイントや、To-Beアーキテクチャ案を提示する「データ基盤モダン化支援」、公共分野における生成AIの代表的なユースケースの実装支援テンプレートによる「生成AI活用検討支援」といったデータ・生成AIの活用支援を用意いたします。

ここに挙げたような支援プログラムを公共調達のサイクルの中で活用頂く事で、官公庁や医療、教育、NPOといった公共の分野のお客様は、クラウド移行を検討するための最適なプロセスを効果的に進めることができるようになります。

ITX for PSのリリースに際したお客様やパートナー様の声

デジタル庁 Chief Cloud Officer 山本教仁様
デジタル庁では、「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」の中でスマートなクラウドの利用を掲げており、マネージドサービスやIaC (Infrastructure as Code)を活用した自動化によるコスト削減等を説明しています。これら施策はガバメントクラウドの技術要件にも含まれ、採用したクラウドサービスプロバイダーにもその推進をご協力いただいています。
その中で、AWSからは、スマートなクラウド利用を支援する内容をわかりやすく1つのパッケージメニュー「ITX for PS」としてまとめていただき、提供いただきます。これを活用することで、スマートなクラウドの利用が促進され、クラウドに関するスキル育成、システム開発の短期間化や継続的な開発・改善の実現、そして、コスト削減とセキュリティの向上につながると考えてます。
日本政府のクラウド・バイ・デフォルト原則に基づいた、中央官庁および地方公共団体におけるクラウド移行の取り組みに対して、このような支援パッケージが用意されることを歓迎します。

PwCコンサルティング合同会社 執行役員 パートナー デジタルガバメント統括 林泰弘様
AWSは、デジタル庁が発足した2021年から、ガバメントクラウドやガバメントソリューションサービスの導入、自治体基盤システムの標準化および共通化を進めてこられました。これらを通じて蓄積されてきた知見、ノウハウが集約された「ITX for PS」は、中央省庁や自治体のデジタルシフトを加速するものと期待しています。PwCコンサルティングは「AWSコンサルティングパートナー」に認定されており、多くのクライアントに「ITトランスフォーメーションパッケージ」の導入を支援してきました。引き続き、AWSとともに、日本全体のデジタルシフトの推進に取り組んでいきたいと考えております。

ITX for PSの始め方

ITX for PSのご利用に向けて、入り口は2つあります。
1)Webフォームからお問い合わせ頂く。あるいは 2)担当営業までご連絡ください。

AWSクラウドへの移行やモダナイゼーションにご関心をお持ちのお客様は、AWSで移行とモダナイズのページをご確認ください。AWSへの移行やモダナイゼーションに必要な情報が網羅されています。

ITX for PSにご興味をお持ちのお客様は、是非上記2つのいずれかよりAWSへお問合せください。

パブリックセクター統括本部 マイグレーション アドバイザー 今井 宏樹

パブリックセクター技術統括本部 CSM・パートナーソリューション本部 本部長 高田 智己

執行役員 パブリックセクター技術統括本部長 瀧澤 与一