基調講演のメッセージや新発表のサービスに関する情報等を日本の皆様にお届けします。
今年で第 6 回目を迎える AWS のグローバルカンファレンス「AWS re:invent 2017」。11/29(水) のキーノートでは Andy Jassy(CEO, Amazon Web Services)が登壇し、ハウスバンドのライブパフォーマンスと共に AWS の現在とこの先のプランについて語りました。Andy は、約 2 時間半のセッションの中で過去に例を見ないほど多くの新サービスを発表し、満員の会場に AWS の凄まじいイノベーションペースを伝えました。
ここ数年で非常に多くのお客様が利用を始めているコンテナへの対応の強化として、Kubernetes をサポートする Amazon Elastic Container Service for Kubernetes(Amazon EKS)と ECS/EKS でのクラスタ管理を不要にする AWS Fargate がアナウンスされた際には会場に大きな歓声が沸き起こりました。続いて、”Freedom” というキーワードと共に、Amazon Aurora Multi-Master, Amazon Aurora Serverless, Amazon DynamoDB Global Table, Amazon DynamoDB Backup and Restore, そしてマネージドグラフ DB サービスの Amazon Neptune といったデータベースオファリングサービスの拡張プランが紹介されました。機械学習関連では Amazon SageMaker、Amazon Rekognition Video など、特に数多くのサービスがアナウンスされ、AWS がお客様の機械学習ワークロードをサポートすることに非常に力を入れていることが強調されました。また、”NEXT PHASE OF IoT” をサポートする機能として、AWS IoT Device Management、AWS Device Defender などのサービスが発表されました。その他、データレイクの分析を容易にする Amazon S3 Select, Amazon Glacier Select もアナウンスされました。
ゲストスピーカーには Expedia 社の会長兼 CEO の Mark Okerstrom 氏、ゴールドマン・サックス社の Managing Director である Roy Joseph 氏、National Football League(NFL) の SVP 兼 CIO である Michelle McKennna-Doyle 氏が招かれ、各社が AWS を利用することでイノベーションを加速している事例が紹介されました。
今年で第 6 回目となる「AWS re:Invent」は、43,000 人以上の参加者に加え、60,000 人以上のライブストリーミング視聴者、3,000 以上のセッション数という規模で開催され、11/29(水)の KEYNOTE(基調講演)は Amazon Web Services の CEO である Andy Jassy の登壇で幕を開けました。
はじめに Andy は AWS のビジネスアップデートとして、2017 年 Q3 の実績ベースで年間 180 億ドル以上の売上、YoY で 42% の成長となっていることを紹介しました。また、アクティブユーザーは数百万に達しており、Airbnb、Pinterest、Slack といったスタートアップから、エンタープライズ領域では Capital One、Intuit、FINRA などの金融企業、Johnson & Johnson、ブリストル・マイヤーズ スクイブなどのヘルスケア企業、Shell、ブリティッシュ・ガスをはじめとした石油ガス企業、フィリップスとシーメンスなどの製造業、Netflix、Disney、FOX などのメディア、ケロッグ、コカコーラのような小売業、サムスン、LG、日立などの家電業といった多様な業種の企業に加え、公共領域でも世界中で約 3000 の政府機関、約 8,000 の学術機関と 22,000 以上の非営利団体に AWS が利用されていることを強調しました。
また、Andy はパートナーのエコシステムの重要さにも触れ、アクセンチュアやデロイトなどのグローバル SI パートナーをはじめ、2nd Watch、cloudpack といったクラウド専門 SI パートナーや地域ごとの SI らがクラウド化を強く迅速に推し進めてくれる存在となっていること、加えて、Adobe、C3 IoT、Heroku、Salesforce、Infomatica、Pega 等といった 数千の ISV パートナーが AWS 上で提供している各技術セグメントの代表的なプロダクトを見つけ出し、エコシステムとして実行することができていると述べました。
続いてガートナー社のレポートから、AWS がクラウドマーケットセグメントで 44.1% のシェアを持ち、続く 9 社をすべて合計した数の倍以上のシェアを誇ること、セグメントシェアは YoY で 39% から 44.1% に伸びていることを紹介し、AWS がクラウドマーケットにおいてリーダーポジションを確立していることを強調しました。
Andy は "New Normal"、” SUPER POWERS” といった過去に行った自身の基調講演のテーマについて触れた後、「Builders(開発者)」がアプリケーションを構築する過程は「Musicians(ミュージシャン)」が音楽を制作する過程に似ていることに言及し、今年の基調講演はハウスバンドが生演奏する 5 つの曲とともに皆様へお届けする、と述べました。
一つ目の曲として、Lauren Hill の ”Everything Is Everything” が演奏されました。Andy は、Lauren Hill がこの歌で伝えようとした「人々は平等であり、市民権を得るために苦しむべきではない」というメッセージは、テクノロジー業界を含め様々なシチュエーションにも同じことが言えると述べ、AWS の堅牢な 100 を超えるサービス、16 のリージョン、44 のアベイラビリティゾーンを利用することで、開発者はサービスを構築するための全ての機能を自分で一から開発する必要はなく、求められるペースでイノベーションを起こしながら他企業と競争することが可能になると述べました。
AWS にはオブジェクトストレージ、ブロックストレージ、アーカイブストレージといったストレージサービス、多くのリレーショナルデータベースオファリング、Redis、memcached といった非構造型データベースサービス、幅広い分析サービス、機械学習サービス、モバイルサービスやアプリケーションサービス、すでに re:Invent にて発表された 5 つのメディアサービスがあり、これまでオンプレミスのハードウェアや VMware 上で動いていた同じワークロードをシームレスに移行できることを強調しました。また、Andy は AWS には多くのアカウントマネージャー、プロフェッショナルサービス、ソリューションアーキテクト、テクニカルアカウントマネージャーが在籍し、お客様をサポートすることが可能である点にも言及しました。
また、AWS は今年 1 年で 1,300 を超える機能をリリースし、このイノベーションのペースとサービスオファリングの数は他者の追随を許さないという点、すべてがあることに意味があり、幅広く、深い機能を提供することが重要であると強調しました。
Andy は AWS への全面移行という重要な決定を行った企業のストーリーを共有すべく、旅行のオンライン予約を扱う会社である Expedia の会長兼 CEO である Mark Okerstrom 氏を壇上へ迎えました。Okerstrom 氏は、Expedia が毎月世界で 6 億人のユーザー、160 万人以上の企業社員に利用されており、毎年 5,500 万もの電話、40 の異なる言語をサポートする必要があるグローバルな旅行情報のプラットフォームであるという背景を述べ、そこで処理される検索数、価格や在庫の計算数は驚異的なものになると語りました。
Okerstrom 氏は、Expedia は 1996 年に Microsoft の小さな 1 部門として発足し、2009 年に 1000 万行の C++ コードを廃止して全てのコードを書き直したという過去のストーリーを共有しました。また、自社の次の旅として約 45,000 台のサーバー、約 35 ペタバイトのデータ、600 万ドル以上の物理資産のクラウドへの移行を行っていることについて言及し、Expedia が 2012 年に AWS のテストを開始して以来、5 年間で AWS への移行が確かな方向性であることを確信したこと、次の 2~3 年でミッションクリティカルシステムのうち 80% を AWS に移行し、2017 年には 1 億ドル、2018 年には 1.5 億ドルという巨額の投資を行うと発表しました。
続いて Okerstrom 氏は、なぜ Expedia がこのような決定を行ったのかという理由について、レジリエンシー、最適化、パフォーマンスという 3 つのキーワードをもとに説明しました。まずレジリエンシーについて、Expedia では軍事レベルの災害対策が求められており、AWS ではそのレベルの DR 対策が常に有功になっていることが語られました。最適化については、AWS を利用してからエンジニアが最適化のフィードバックループを回すことが可能になり、現在では 4,000 以上のクライドネイティブアプリケーションに対して毎日 2000 回のデプロイを実行していることが述べられました。最後のパフォーマンスというキーワードでは、あるサイトで 4 倍以上のパフォーマンス改善がなされ、顧客体験の向上ができたという事例が紹介されました。
また、Okerstrom 氏は AWS のエコシステムに非常に感謝していると述べ、Expedia が AWS の多くのサービスのうちほとんどのものを利用している点、そしてパーソナライズされたレコメンデーションのために 1,800 万以上の画像と 35 テラバイトのデータを AWS 上にホストしている点についても言及しました。Okerstrom 氏は、Expedia のミッションが異なる文化のある世界中の国を繋げ、世界をよりよい場所にすることであると述べ、そのミッションを AWS と共に達成していくことに興奮していると語り、プレゼンテーションを締めくくりました。
再び Andy が登壇し、AWS のコンピュートサービスの構成について紹介しました。コンピュートの中にはインスタンス、コンテナ、サーバーレスの 3 つがあり、インスタンスについては、Amazon EC2 プラットフォームには昨日発表した H1 インスタンスをはじめとした数多くのインスタンスファミリーがあり、お客様の必要な機能に合わせて CPU、MEMORY、ストレージ、I/O などを選択でき、さらにベアメタル、FPGA、GPUなど、特定用途に特化したインスタンスも利用することができると説明しました。また、スポットインスタンスを活用することで最大 90% 引きの価格で使用することができる点にも言及しました。
次にコンテナについては、小さい単位でデプロイできマイクロサービスを構築する際にカプセル化できる部分の相性が良いという理由から、利用者が増え続けていることについて言及し、2014 年にリリースした Amazon Elastic Container Service(ECS)は AWS との連携の簡単さやそのスケーラブルな性能でコンテナを使う人に愛されており、世界で 10 万クラスタが動いていることを説明しました。
一方で、この 18〜24 ヶ月では、kubenetes をクラスタ管理に使うユーザも増えてきており、CNCF のサーベイ結果では 63% の kubenetes が AWS 上で動いていることに触れ、AWS 上で簡単に kubenetes を動かせることができる Amazon Elastic Container Service for Kubenetes(EKS)のプレビューを発表しました。
さらに続けて AWS Fargete が発表されました。 Fargate はコンテナを動かすための EC2 クラスターを管理する必要がなく、CPU 量、メモリ量、ネットワーク等を指定し、コンテナをアップロードするだけでコンテナを実行することができるサービスです。Fargate を使用する事により、マルチ AZ 構成でオートスケールが可能なコンテナ環境を非常に簡単に使用することができます。Andy は、より AWS にインテグレートされた用途には ECS を、オープンソースに近いものを使いたいなら EKS を、もっと簡単に使いたい場合には Fargate を使用してほしいと述べました。
サーバーレスに関しては 沢山の企業が AWS Lambda を利用しており、300% の成長をしているということ、AWS 上の様々な場所で Lambda が動いているということが紹介されました。
次に George Michael の ”Freedom! '90” がハウスバンドによって演奏されました。Andy は、”Freedom” をテーマとする データベースについて、はじめに Amazon Aurora は MySQL と PostgreSQL に対応し、AWS で一番速く成長しているサービスであると紹介しました。Aurora は堅牢なデータベースですが、Single Master だったために Write のスケールや冗長化が難しく、30 秒程度の停止が発生することありました、そこで Aurora Multi-Master のプレビューが発表されました。Aurora Multi-Master を使用することでアプリケーションを書き換えることなく Read も Write も複数データセンターに冗長、スケールすることができると述べました。
また、スパイクアクセスがある場合を例にとり、アプリケーションはオートスケールできても Aurora は負荷が高い時分の料金を払う必要があると述べました。そして、その解決として、オンデマンド、オートスケール(スケールアップ、スケールダウン)、サーバーレス、起動停止、秒課金を実現する Aurora Serverless のプレビューが発表されました。
次に NoSQL についてです。 Andy は、Amazon DynamoDB が 30 時間で 合計 3.34 兆リクエスト、ピークでは 12.4 億 リクエスト/ 秒を処理するなど、Amazon の Prime Day を支えていると紹介しました。また、MongoDB や Casssandra なども AWS では多く動いていますが、本当に高いスケールかつマネージドなデータベースを求める場合、DynamoDB が使われていることが説明されました。DynamoDB は AZ で冗長化をしていますが、Expedia のようなグローバル企業であればマルチリージョンでレプリケーションをしている場合もあります。そこでマルチリージョンで使える Amazon DynamoDB Global Table をリリースしました。Global Table は複数のリージョンにテーブルを展開することで各リージョンでは 低レイテンシで、かつマルチリージョンのデータベース展開をシンプルかつ大きくスケールすることができると述べました。
続いて Amazon DynamoDB Backup and Restore が発表されました。DynamoDB Backup and Restore を使うことで、DynamoDB テーブルの継続的なバックアップを実現し、ポイントタイムリストアも 35 日前まで行うことができ、100TB のデータを数ミリ秒のレイテンシーで割り込み無くバックアップの処理が可能となることが紹介されました。
次に Andy は、レストランのレコメンドアプリのような多数のユーザ同士のつながりを表すためにはグラフデータベースが有功であることに触れ、マネージドグラフデータベースのサービスである Amazon Neptune のプレビューを発表しました。Neptune は簡単に利用できるだけでなく、高速かつスケーラブルで 10 億のリレーションシップを処理でき、6 つのデータレプリカを 3 つの AZ に持つ堅牢なデータベースであると述べました。
「AWS で分析を実施しているお客様の一社がゴールドマン・サックスです。驚くことの一つとして、人々は同社がどれほど成熟して巨大な金融業界をリードする企業であること、そしてそれがゴールドマン・サックスの真の姿であることを知らないことです。」という Andy の紹介とともに、2 人目のゲストスピーカーとして、ゴールドマン・サックス社の Roy Joseph 氏(Managing Director)が壇上へ迎えられました。 Joseph 氏は「ゴールドマン・サックスと聞いて、あなた方の多くはイノベーションとは結びつかないでしょう。」と述べました。ゴールドマン・サックス社は 1869 年からビジネスを行っており、世界中で 33,000 人の従業員、その 1/4 がエンジニアリングに携わっています。そしてエンジニアたちは 15 億行のコードを書き、7,000 のアプリケーション、20 万のサーバーがクラウドで動いており、150 万コアのコンピュートを使用しています。Joseph 氏は、この数値がゴールドマン・サックスのテクノロジーのカルチャーであり、これほど多くのエンジニアリングが私たちのビジネスを動かしているか感じてほしいと語りました。今日の金融業界においてテクノロジーは急激に変化しており、同社はその中でリーダーであるためにリスク管理のシステムを必要としています。お客様に正しい情報を伝えること、それがお客様の投資判断に役立つと考えていると語り、このリスク管理の技術を生かして MURCS、MARQUEE、SYMPHONY という 3 つのイノベーティブなアプリケーションが新しいビジネスを創造していることが紹介されました。
ゴールドマン・サックス社はなぜクラウドを選んだのか?Joseph 氏は、ビジネスが継続的に成長するとそれに応じてリスク管理も増大し、もっと多くのコンピュートを必要とすることになると述べました。ゴールドマン・サックス社では、数年前に新たな環境をデータセンターへ追加することになり、クラウドが提供する柔軟な拡張性、イノベーションのペースを求め、クラウド管理基盤と共通の運用モデルを構築し、世界中のシステムに対して適用していきました。それは管理のフレームワークをコントロールする API を構築し、クラウドに適用していく作業でした。しかしクラウドへ移行するための本当の壁は顧客データだったと Joseph 氏は語りました。万が一顧客データが漏洩した場合、金融規制の違反だけではなく 148 年間積み上げてきたブランドや評判を失う可能性があるからです。ゴールドマン・サックス社はこの壁を乗り越えるため、業界のリーダーで、新しいビジネスを構築し、膨大なイノベーションを起こしていて、そして実行力があるパートナーを探しました。それが、AWS であったと Joseph 氏は述べました。
Joseph 氏は、クラウドへ移行する前に我々の機微な顧客データが第三者の場所にあったとしても、それがセキュアである必要があると述べ、どんなにパートナーを信頼していたとしてもデータに対する統制権を失うことは考えられなかったと語りました。 Joseph 氏は「例えるなら銀行の貸金庫に自分の資産を保管するようなものです。銀行が金庫やドアを厳重に守ると信頼していたとしても、最終的に重要なのは、自分が金庫の鍵を持つことです。そのことを AWS に話すと、彼らはすぐさま BYOK(Bring Your Own Key)アーキテクチャーの要件を定義しました。」ゴールドマン・サックス社が AWS BYOK アーキテクチャーから得た素晴らしいところは、不審な挙動に対してすぐさま対応できることだと Joseph 氏は述べ、AWS のオペレーションモデルは高い透明性が確立されており、AWS の BYOK は低いレイテンシーで、トラブルシューティングを簡単にしたと語りました。また、AWS のチームはたとえそれが最終的に無駄なコストになると分かっていても喜んで仕事をし、まるで東海岸の自分たちと同じ部屋で仕事をしているようだったと評価しました。この AWS の BOYK のソリューションはゴールドマン・サックス社だけではなく、すべての業界に適用できるだろうと Joseph 氏は説明しました。AWS の BOYK は 2017 年 8 月に KMS に機能拡張され、その機能は AWS の多くのサービスで利用できます。これが、ゴールドマン・サックス社が多くの機能を利用するためのドアを開けました。
“What’s Next for Goldman” 。ミッションクリティカルなワークロードを AWS で動かした成功体験は、コア・コンピュートを超えて、様々なアプリケーションをクラウドに移行すること、そしてイノベーションの力を得たこと、クラウドへの道を開いたことに感謝を示し、Joseph 氏はプレゼンテーションを締めくくりました。
3 曲目に Foo Fighters の ”Congregation” がハウスバンドによって演奏された後、再び Andy が登壇し、アナリティクスとデータレイクについて語り始めました。アナリティクス分野で AWS を使用する場合、Amazon S3 がデータレイクとして使われていることに触れ、その中でデータレイクに貯められた膨大なデータやオブジェクトに対して、分析はオブジェクト内の一部のデータしか使用しない場合があることを具体的な例を挙げて説明しました。20 店舗を持つ小売業で、日々の売り上げデータを S3 に格納していた場合、例えばその中の 1 店舗の直近 30 日分の売り上げが欲しいというケースです。
そのような課題を解決するために Amazon S3 Select が発表されました。これまでだとすべてのデータを取り出して対象店舗のデータを抜き出し分析する必要がありましたが、S3 Select を使用すると分析に必要なデータのみを S3 から取り出すことが可能になると Andy は説明しました。また、S3 Select は劇的にパフォーマンスを向上させ、S3 にクエリーを投げるアプリケーションの負荷を減らすことができます。これは標準的な SQL の表現で、つまり FROM 句や WHERE 句を使用してデータをフィルタし、必要なデータのみを取り出すことができ、コストは多くのケースにおいて、最大 400% 改善されると説明されました。Andy は、TCP-DS ベンチマークで具体的なケースを示し、そのケースにおいて 4.5 倍検索速度が改善することも示しました。
次に Amazon Glacier Select が発表されました。Glacier Select は利用者が Glacier に保存したデータに直接クエリーを投げることができるサービスで、「アーカイブに対して直接的に検索を行うのは一般的ではないかもしれませんが」と Andy は前置きしながら、S3 Select と同じように Glacier に一部のデータだけ取り出すことができるようになると説明しました。これによりデータレイクは、S3 だけから構築されるのではなく、S3 と Glacier の使い分けが可能となりました。
ハウスバンドによる 4 曲目の楽曲、Eric Clapton ”Let It RainAndy" の演奏に続き、Andy は「Machine Learning(機械学習)は、今日最大のバズワードだ」としながらも、アマゾンが 20 年間に渡り真剣に取り組んできた分野であると紹介しました。そしてコンシューマービジネスである Amazon の多くのサービスが Machine Learning から力を得ていることについて、ショッピングにおける商品のリコメンデーションやロボットによる出荷センターの効率化をはじめ、automatic speech recognition や Alexa といった自然言語処理、そして Amazon Go など具体例をあげて説明し、これらがすべて Machine Learning や Deep Learning(深層学習)を利用していると強調しました。さらに Pinterest や Expedia、NFL、NASA など多くの企業が Machine Learning を AWS で動かしていることについても言及し、しかしながら多くのお客様、とりわけ大企業にとって Machine Learning はまだ始まったばかりだとと語りました。
次に Andy は AWS の Machine Learning のレイヤーについて紹介し、最も下のレイヤーがモデルを自分で作るエキスパート向け、そしてこれらの人はモデルを自分で作って、そのモデルを本番環境にデプロイできる人たちのものだと説明しました。AWS で Machine Learning をしている多くの人がこのレイヤーでは P2 や P3 といった強力な GPU インスタンスを利用し、主要なフレームワークを組み込んで使用していると述べ、最も下のレイヤーにおいて AWS は他のプロバイダーと違ったアプローチを取ると Andy は語りました。それは、1 つのフレームワークで全てを解決できないという立場です。今日では TenserFlow が人気であり、AWS は他のクラウドと比較して TenserFlow が最も稼働しているクラウドと紹介しつつ、もし Computer Vison モデルを作る場合、Caffe 2 が多くの場合で最も良い選択肢になるなど、実現したいことに対して最適なフレームワークがあることを紹介しました。 インターフェイスレベルでも同様で、マイクロソフトと進める Gluon、mxnet や CNTK などを紹介し、AWS ではすべてのフレームワークを提供し、利用者がやりたいことに合わせて選択できるようにする、と強調しました。
このように多くの選択肢を紹介しながら、エンタープライズ企業において Machine Learning を使うのが高価な場合、AWS はそれを解決しなければならない、と Andy は語りました。 現状開発者にとっては Machine Learning の全てが複雑で、Machine Learning のモデルを作ろうとすると、具体的に構築、学習、デプロイの各ステップで様々な作業が発生します。このような開発者にとっての課題に対し、構築、学習、デプロイを簡単に行うことができるようにする Amazon SageMaker が発表されました。SageMaker では、構築においては組み込み済みのハイパフォーマンスなアルゴリズムを使用することができ、TenserFlow やmxnet など主要なフレームワークをセットアップすることなく使うことができます。その他のフレームワークを使いたい場合も ECR のコンテナの場所を指定するだけで簡単に取り込むことができます。これはアルゴリズムの選択やフレームワークのセットアップを大きく変えることができると Andy は説明しました。
さらに SageMaker は、学習データが保存されている S3 を指定し、P3 を含めた使いたい EC2 のインスタンスを選択するだけで、SageMaker はオートスケールするクラスタを構築し、EBS ボリュームやネットワークを構築し、指定したアルゴリズムで学習すると紹介されました。「これにより学習のステップを劇的に効率化することができます、学習を管理することはもう必要ありません」と Andy は強調しました。また、もちろんハイパーパラメータのチューニングも SageMaker の中で行うことができます。通常チューニングは膨大なトライ・アンド・エラーが伴いますが、SageMaker のハイパーパラメーター オプション オプティマイゼーションを使えば、モデルを複製しパラメーターの組み合わせを適用して並行して学習させることができます。これによって Machine Learning の開発者はチューニングを心配する必要はなくなり、そして最後に EC2 インスタンスを選択し 1-click で本番環境にモデルをデプロイすることができると述べました。SageMaker はマルチ AZ、Auto Scaling のセットアップ、そしてアプリケーションのために HTTPS のエンドポイントを作ることにも対応し、また、デプロイはA/Bテストにも対応していると Andy は説明しました。
続いて Andy は、開発者のための世界初ワイヤーレスかつ Deep Learning 組み込みビデオカメラである AWS DeepLens の発表を行いました。DeepLens は、Deep Learning にオプティマイズされ、SageMaker で作った Computer Vison モデルを無線で取り込み、数回のクリックで使用できます。さらに、デバイスには AWS Greengrass が組み込まれており、Deep Learning を動かす時 Greengrass が様々な種類の Lambda 関数を呼び出すことができるとも説明されました。この DeepLens を使えば、Computer Vison モデルの学習スピードを上げることが容易に可能であると Andy は述べました。
ここで Dr. Matt Wood(GM, Artificial Intelligence, AWS)が登壇し、SageMaker から DeepLens までを音楽のリコメンデーションを例に具体的に説明しました。まず SageMakerの中で Jupiter を動かし、フルマネージドで定義済みの Notebook をスピンアップします。これはすでにデータが格納されている S3 につながっており、Notebook はデータを使用して Machine Learning の準備をします。データセットを指定すると SageMaker は学習を開始し、その後のデプロイまでを見せ、最後に音楽アルバムのジャケットを使った DeepLens のデモを披露しました。
ここで再び Andy が登壇し、Machine Learning のトップレイヤーについて説明しました。そして、昨年の re:Invent で発表した Amazon Rekognition でイメージ分析ができることを振り返った後、イメージではなく動画に対してリアルタイムもしくはバッチの分析ができるサービスである Amazon Rekognition Video が発表されました。Rekognition Video は、動画を Rekognition Video の API に渡すことで、これまで Rekognition がイメージに対してできた処理を動画に対して実行できるだけでなく、人物追跡などのユニークな分析を行うことができると説明されました。
次に、分析する動画データをクラウドに上げるソリューションとして、Amazon Kinesis Video Streams が発表されました。Kinesis Video Streams は、動画、オーディオ、その他のタイムエンコードされたデータをセキュアにクラウドに上げて保存するサービスで、これまでの Kinesis for data のようにビデオストリームに対して同じことができ、SDK がデバイスメーカーに提供されると説明されました。
Computer Vison モデルの話題に続いて Amazon Transcribe が発表されました。これは自動音声認識(Automatic Speech Recognition; ASR)のサービスで、WAV か MP3 形式のオーディオファイルをテキストに変換することができます。Transcribe では、まず英語とスペイン語がサポートされ、そのほかの主要な言語が今後数週間もしくは数ヶ月でサポートされます。また、これまでの Speech-to-Text とは異なり、タイムスタンプの付与やタグ付けができることも説明されました。
さらに Andy は、自動翻訳サービスである Amazon Translate を発表しました。これにより、Transcribe で Speech-to-Text、Translate でマルチ言語の翻訳が可能になりました。次に、大きなテキストファイルや複数のテキストファイルから重要なワードを特定したり、中身を把握したり、感情を分析したりすることが必要となりますが、それを解決するために発表されたのが Amazon Comprehend です。これはフルマネージドの自然言語分析サービスで、このサービスを使うことで Expedia のコメントからホテルの好き・嫌いを判断したり、書かれている文章の内容から文章をトピック別に分類したり、言語別に分類することができると Andy は述べました。
ここで Andy は、本日 3 人目のゲストスピーカーとして National Football League の Michelle McKennna-Doyle 氏(SVP 兼 CIO)を壇上へ迎えました。McKennna-Doyle 氏は、NFL のテクノロジー戦略に責任を持ち、最新のテクノロジーを分析やファンとの深い交流に使っています。McKennna-Doyle 氏は、AWS の技術で作られた Next Gen Stats を紹介し、中核のプログラムは AWS で動作しており、柔軟性、伸縮自在性、適切なレベルのセキュリティ、そして幅広いサービスを理由に AWS を選択したと語りました。そして集めたデータと分析は、ゲームの組み立てやプレイヤーの動き方などコーチをサポートするための情報になっていると述べました。さらに McKennna-Doyle 氏は、実際に Next Gen Stats を見せながら、AWS 公式な NFL のパートナーとなっており、AWS との未来にとても興奮していると語り、プレゼンテーションを締めくくりました。
ハウスバンドによる最後の楽曲、Tom Petty & The Heartbreakers "The Waiting" の演奏に続いてAndy が再び登壇し、“NEXT PHASE OF IoT” というテーマで、オフィス、家庭、飛行機、自動車、船舶の工場農業分野と油田など、世界中のあらゆるデバイスがインターネットにつながれている世界について語りました。
Andy は、接続されるデバイス数が指数関数的に増え続ける今日ではデバイスの管理が非常に困難なものになっている点に言及し、それらの課題を解決し、お客様の IoT ワークロードをサポートする新たなサービスについてアナウンスしました。まず、シンプルな IoT サービスの実現をサポートする AWS IoT 1-Click が発表されました。IoT 1-Click を利用することで、デバイスと連携してトリガーされる Lambda 関数を簡単に作成し、複数のデバイスを簡単に接続することができ、Andy はこのサービスにより、より多くの企業が IoT を利用したサービスを実現できると語りました。
続いて、膨大な数の IoT デバイスの管理をサポートする、AWS IoT Device Management が発表されました。IoT Device Management は、ワンクリックで大量のフリートを展開でき、デバイスの在庫状況管理、監視、リモート管理機能を提供します。次に、IoT デバイスを脅威から保護するためのサービスとして、AWS IoT Device Defender を 2018 年初頭にリリースすることがアナウンスされました。IoT Device Defender はフリートのセキュリティポリシーを定義することができ、証明書の失効、悪意のある IP アドレスからのアクセスや DDoS 攻撃を検知することが可能になります。
4 つ目の新しい IoT サービスとして、IoT デバイスの分析をサポートするフルマネージドサービス、AWS IoT Analytics が発表されました。IoT Analitics は AWS IoT Core と完全に統合され、デバイスデータのクレンジング、プロセッシング、フィルタリングを実行します。続いて Andy は、マイクロコントローラーのためのIoT オペレーティングシステムである Amazon FreeRTOS を発表しました。FreeRTOS は OSS のマイクロコントローラーのためのリアルタイム OS である FreeRTOS カーネルを拡張したもので、マイクロコントローラーを簡単にクラウドに接続し、データの収集を開始することができます。
Andy は最後に、AWS Greengrass の機能拡張として、エッジデバイスでの機械学習モデルの推論を実現する AWS Greengrass Machine Learning (ML)Inference のプレビューを発表しました。この機能を利用することで、クラウド上で学習されチューニングされた機械学習モデルをエッジデバイスに転送し、デバイスがクラウドに接続されていない状態でもデバイス上で素早く機械学習の推論を実行することが可能になると説明されました。
Andy は、AWS が過去 10 年にわたってトランスフォーメーションと技術革新を遂行し続けており、今年は 1,300 のサービスと機能をリリースしていることを再度強調しました。しかし、お客様のためにできることはまだまだたくさんあり、次の 10 年が過去の 10 年に比べてイノベーションのスピードが落ちるとは考えていないと述べました。そして、お客様の競合はクラウドを利用しており、もしお客様がクラウドを使わないとすれば、それは競合に対する大きなペナルティになると語りました。
最後に Andy は、今日はコンピューティングの黄金時代であり、コンピューティングが顧客体験を変えてくれる時代であるとし、AWS がお客様のイノベーションを手伝うことができることを非常に嬉しく思と語り、キーノートを締めくくりました。