Amazon Web Services ブログ
持続可能な目標に基づくワークロードのためのリージョンの選び方
Amazon Web Services (AWS) クラウドは、常にリージョンとPoint of Presence (PoP) を拡大しており、それらをグローバルなネットワークインフラが繋いでいます。ワークロードのリージョン選択は、パフォーマンス、コスト、そしてカーボンフットプリントを含む KPI に大きく影響します。
AWS Well-Architected フレームワーク – 持続可能性の柱は、AWS ワークロードの持続可能な目標を達成するために、設計原則とベストプラクティスを提供します。ここでは、ビジネス要件と持続可能な目標の両方に基づき、リージョンを選択することを推奨しています。本ブログでは、どのように適切な AWS リージョンを選択すべきかを説明します。そのプロセスには、主に2つのステップがあります。
- ビジネス要件に基づき、候補となるリージョンを審査・選考(リスト化)します。
- リージョンは、Amazon の再生可能エネルギー・プロジェクト付近か、グリッドの炭素集約度(炭素強度)の低い場所を選択します。
例えば、英国とスウェーデンのエンドユーザーをサポートするため、AWS クラウドにデプロイする必要のあるアプリケーションがあるとしましょう。また、データレジデンシーを特定の場所に縛るような地域規制はないものと仮定します。上記のガイダンスに基づいて、ワークロードのリージョンを選択してみましょう。
候補となるリージョンをリスト化する
AWS Well-Architected フレームワーク – 持続可能性の柱にあるリージョンの選択に就き、ベストプラクティスに沿って選択してみましょう。最初のステップは、ビジネス要件に基づいて、ワークロードの候補となるリージョンの審査・選考です。
What to Consider when Selecting a Region for your Workloads より、リージョンの審査及び選考をする過程で考慮すべき4つの項目は以下の通りです。
- レイテンシー
- コスト
- サービスおよび機能
- コンプライアンス
候補となるリージョンをリスト化するために:
- 地域の規制に基づき、候補となるリージョンがコンプライアンスに準拠していることを確認します。
- AWS Regional Services Lists を使用し、ワークロード実行に必要なサービスと機能があるかを確認する。
- AWS Pricing Calculator を使用して、各リージョンのコストを試算する。
- エンドユーザーの拠点と、各リージョン間のネットワーク・レイテンシーをテストします。
この時点で、お手元に AWS リージョンのリストがあるはずです。仮定として、欧州(ロンドン)と欧州(ストックホルム)のリージョンが候補に挙がっているとしましょう。ユースケースとして、これらはレイテンシー、コスト、機能の要件に適応しているとします。
ワークロードのためのリージョンを選択する
候補をリスト化した後、次はワークロードに合ったリージョンの選択になります。Amazon の再生可能エネルギー・プロジェクト付近か、グリッドの炭素集約度(炭素強度)の低い場所を選択します。これには、温室効果ガスの排出量の算定方法に伴うGreenhouse Gas (GHG) Protocol の理解が必要となります。
GHG Protocol に基づき、電力消費に伴う温室効果ガスの排出量を算出する際には、マーケット基準手法とロケーション基準手法の 2 種類の開示方法があります。企業は、サステナビリティ・ガイドラインに基づき、いずれかの方法を選択し、年間の排出量を比較することができます。Amazon は、マーケット基準手法を用いて排出量を報告しています。
マーケット基準手法に基づく AWS リージョン(複数可)の選択
マーケット基準手法において、排出量は事業者の電力購入の契約に基づいて計算されます。例えば、事業者は太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる電力購入や契約を行うことができます。
Amazon の目標は、2030年という当初の目標よりも5年早く、2025年までに 100% 再生可能エネルギーで事業を展開することです。Amazon は、クリーンエネルギーを調達するために、実用規模の風力や太陽光プロジェクトを含む再生可能エネルギーによる電力契約を結んでいます。これらの新しい再生可能エネルギー・プロジェクトは、数百の雇用と数億ドルの投資を地域社会にもたらしています。
世界各地での取り組みについては、こちらをご覧ください。Amazon の Renewable Energy Methodology に沿い、環境属性に合わせてグリーン電力証書 (Renewable Energy Certificates, RECs)、発電源証書(Guarantees of Origin, GoO) 等を取得しています。その結果、Amazon Sustainability Websiteでは、95% 以上の再生可能エネルギーで電力供給されているリージョンが多数掲載されています。
これらのリージョンを選択することによって、より多くの再生可能エネルギーでワークロードを駆動し、温室効果ガスの排出を削減することができます。今回例に挙げた欧州(ロンドン)と欧州(ストックホルム)の場合、両リージョンが、マーケット基準手法に基づく、95% 以上の再生可能エネルギーで駆動しています。
ロケーション基準手法に基づく AWS リージョンの選択
ロケーション基準手法は、消費が行われる特定の場所において、エネルギー生産平均排出係数を用いて排出量を算出します。その結果、企業がどこでビジネスを行っていても、特定された場所の電力を基準に排出量の評価が行われます。信頼できるデータソースと排出係数を用いて、リージョンの評価を行うことができます。
それでは、サンプルワークロードのリージョンを選定するために Electricity Maps のデータを活用する方法を見てみましょう。
- Electricity Maps にアクセスする(図1参照)。
- 欧州(ストックホルム)リージョンで、電力消費に対する炭素集約度(炭素強度)を得るために、スウェーデン南中部地域を検索します(年単位表示)。
- 欧州(ロンドン)リージョンのデータを得るには、英国で同様に検索します(年単位表示)。
図2 より、欧州(ストックホルム)リージョンは、欧州(ロンドン)リージョンと比較して、電力消費に対する炭素集約度(炭素強度)が低いことが分かります。
今回のサンプルワークロードでは、レイテンシー、コスト、機能及びコンプライアンスの観点からを欧州(ストックホルム)を選択しました。また、このリージョンでは、マーケット基準手法で 95% の再生可能エネルギーの提供がみられ、ロケーション基準手法でも炭素集約度は低いことが分かります。
まとめ
この記事では、ビジネス要件と持続可能な目標に基づいて、ワークロードに適切な AWS リージョンを選択するプロセスについて説明しました。
参考資料:
- 詳細については、AWS Well-Architected フレームワークの持続可能性の柱 や、持続可能性のためのアーキテクチャに関するその他のブログ記事をご覧ください。
- アーキテクチャに関するその他のコンテンツについては、AWS Architecture Center を参照して、リファレンスアーキテクチャ図、精査されたアーキテクチャソリューション、Well-Architected に基づくベストプラクティス、パターン、アイコンなどを参照してください。
この記事は 2022 年 11 月 23 日に投稿された「How to select a Region for your workload based on sustainability goals」をサステナビリティ シニア事業開発マネージャー伏木とソリューションアーキテクト佐藤が翻訳したものです。
※本稿は英語版ブログの翻訳となります。翻訳版にご不明な点がある場合は英語版ブログの内容を正としてください。