Sportradar が AWS でデータと動画を高速化し、11 日間で Simulated Reality をリリース

2020 年

スポーツに関する分析とコンテンツを提供する世界的リーダーである Sportradar は、スケーリングに関する課題に直面しています。Sportradar は成長が加速するにつれて、、オンプレミスアーキテクチャでは、メディア企業、スポーツ連盟、ベッティング業界からの需要に対応しきれないことに気づきました。Amazon Web Services (AWS) に移行することで、Sportradar はサービスのスケール、その内容の継続的な刷新、ファンのためのエクスペリエンスの向上、リスクの軽減を実現することができました。Amazon Kinesis Data StreamsAmazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) などの AWS サービスを利用することで、Sportradar はスポーツのライブイベントが中止され始めた時期に、データの信頼性を 10 倍高め、復旧時間を短縮し、新製品である「Simulated Reality」を迅速にリリースできました。

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AWS は、お客様に信頼していただけるハイパフォーマンスデータおよび動画サービスを提供するための、回復力と柔軟性に優れた基盤を当社に提供してくれます”

Ben Burdsall 氏
Sportradar、Chief Technology Officer

インフラストラクチャの改善点を特定してビジネスクリティカルな要件に対応する

Sportradar のライブデータインテリジェンスサービスは、試合の統計情報や実況のほか、スポーツイベントからのデータストリームのリアルタイム分析を提供します。同社はまた、膨大な数の権利保有者から提供されるライブ動画を、世界中のベッティング事業者に配信しています。データの深さと質、さらに 1,000 を超えるスポーツリーグとの提携を通じて、1 か月間に 20,000 ものライブスポーツイベントと試合をカバーする幅広さから、顧客は Sportradar を選択しています。

同社はリアルタイムデータのストリームを処理し、80 か国の顧客に配信しています。一般的な試合では、Sportradar の担当者が現場で業務を遂行し、すべての入力内容を直ちに企業にアップロードする特別に設計されたアプリケーションを通じてアクションを継続的に文書化します。Sportradar は、自動化されたデータ処理ワークフローを通じて、即時のデータ分析を実行し、その情報を数秒で顧客に送信します。顧客は、アプリケーションやベッティングシステムに統合するデータフィードとして、またはインターネットプロトコル (IP) ネットワーク上で配信されるライブ動画ストリームとして、このインテリジェンスを受け取ります。ピーク時には、Sportradar は 1,500 ものライブイベントからのデータを同時に処理します。

AWS でソリューションを構築する前に、Sportradar はコンピューティングとデータベースのワークロード用に、データセンターで重複したフェイルオーバーサーバーを維持していました。本番サーバーがダウンした場合、これらのホットスタンバイサーバーがオンラインになるまでに 30 分超かかり、その間、顧客は貴重なデータを利用できなくなる可能性がありました。

高いパフォーマンスと柔軟性を実現する

アプリケーションに必要なデータ処理パフォーマンスのレベルを達成し、オンプレミスデータベースのメンテナンスと更新の負担を軽減するために、Sportradar はデータ処理と分析のワークロードを、AWS が提供するマネージドデータベースおよび分析ソリューションに移行しました。同社は、従来のエンタープライズデータベースのパフォーマンスおよび可用性と、オープンソースソリューションのシンプルさおよびコスト効率を兼ね備えた、MySQL/PostgreSQL 互換のリレーショナルデータベースである Amazon Aurora に目を向けました。また、Sportradar は Amazon DocumentDB (MongoDB 互換) も利用しました。これは、ストレージとコンピューティングを分離し、独立してスケールできるようにするフルマネージドドキュメントデータベースサービスです。同社は、Amazon Elasticsearch Service (Amazon ES) で適切な Elasticsearch ソリューションを見つけました。Amazon ES は、Elasticsearch を大規模かつコスト効率良く簡単にデプロイ、保護、実行できるようにするフルマネージドサービスです。同じく、Amazon ElastiCache を利用することで、Sportradar は、クラウドにおいて、人気のあるオープンソース互換のインメモリデータストアをシームレスに設定、実行、スケールできるようになりました。 

データベースの移行と並行して、Sportradar はコンピューティングインフラストラクチャを Amazon EC2 に移行しました。Amazon EC2 は、安全かつサイズ変更可能なコンピューティングキャパシティをクラウドで提供するウェブサービスです。同社は、コンテナ化されたアプリケーション環境を実現するため、極めてスケーラブルかつ耐久性のあるリアルタイムデータストリーミングサービスの Amazon Kinesis Data Streams や、Amazon Elastic Kubernetes Service (Amazon EKS) などの一連のサービスを統合しました。また、Sportradar は AWS Lambda をデプロイして、ネットワークエッジに近いサーバーレスコンピューティングを実現するとともに、顧客へのパフォーマンスを改善し、レイテンシーを低減しました。 

同社は、AWS リージョンを利用して、世界中でサービスのパフォーマンスを最適化しました。現在、Sportradar のデータベースは AWS グローバルネットワーク全体に分散されており、顧客アプリケーションはユーザーに最も近い Amazon EC2 コンピューティングポッドを使用してローカルで実行されています。アプリケーションは同じリージョン内のデータにアクセスし、障害の可能性の影響を抑制しながらレイテンシーを低減します。Sportradar は、AWS Global Accelerator を利用してサービスパフォーマンスをさらに強化しました。AWS Global Accelerator は、会社のデータ処理アプリケーションエンドポイントに対する固定エントリポイントとして機能する静的 IP アドレスを提供します。 

遠隔地から受信するコンテンツの安定性とパフォーマンスを強化するため、Sportradar は質の高いライブ動画送信サービスである AWS Elemental MediaConnect を採用し、信号を送信しました。同社は、基本的な AWS サービスと AWS Elemental MediaConnect を利用して、エラーへの高い回復力を備えた信号配信を実現し、これまで依拠していた専用ファイバー接続を使用する必要がなくなりました。今日、Sportradar は AWS を通じてスポーツリーグや他のコンテンツ所有者からのライブ動画フィードをキャプチャし、自社の動画オペレーションセンターに統合できるようになりました。ここから、動画フィードを顧客に中継したり、動画フィードをさらに処理して配信前にリアルタイムの統計や分析を組み込んだりすることができます。AWS Elemental MediaConnect を利用すると、Sportradar は組み込みのエラー修正を使用して、20~30 Mbps のビットレートで AWS ネットワーク経由でライブストリームを確実に送信できます。 

1,000 を超える企業が Sportradar のデータと動画を利用しています。同社は現在、1 分あたり最大 50,000 件のベッティング取引を実行できるほか、1 秒あたり最大 10,000 件の試合シミュレーションを実行して、オッズの変化によって試合展開がどうなっていくかを判断できます。インフラストラクチャはアクティブ/アクティブフレームワークで実行され、重複したワークフローは複数の AWS リージョンとアベイラビリティーゾーンに分散されます。これにより、回復力とフェイルオーバーが 10 倍向上し、復旧時間は最大で 15 秒にまで短縮されます。その結果、Sportradar は、重複したオンプレミスのスタンバイサーバーや、30 分間かかる復旧時間を必要としなくなりました。

イノベーションの文化を支える

技術革新は、Sportradar の顧客およびステークホルダーに向けた取り組みにおいて最重要事項です。データと動画のインフラストラクチャをアップグレードした後、同社は、自社のビジネスに戦略的価値をもたらす一連のイノベーションの取り組みを促進するために再び AWS に目を向け、リアルタイム分析インフラストラクチャから始めることにしました。Sportradar は AWS データラボを利用して、この重要なテクノロジーを再開発するプロジェクトを立ち上げ、同社のデベロッパーと AWS のテクニカルエキスパートで構成されるチームが 4 日間集中的に取り組みました。 

「Sportradar から AWS データラボに、機械学習とリアルタイムダッシュボードを使用したリアルタイム統計モデル、特徴量の抽出、推論を強化するため、モダナイズされた低レイテンシーデータ分析パイプラインとワークフローの開発に関するガイダンスが欲しいという依頼がありました」と AWS データラボの Manager 兼 Solutions Architect である Vassili Patrikis は述べています。「チーム全体の強力な技術スキルを活用して、Sportradar はリアルタイムストリーミング分析プラットフォームをわずか 4 日間で構築しました。Sportradar のチームは、AWS データラボの取り組みを通じてすべての目標を達成できただけでなく、プロトタイプから短期間で本番に至ることができました。Sportradar は、『大きく考え、小さく始め、迅速にスケールする』という AWS データラボのモデルを真に体現しています」。 

同社は、AWS 欧州、中東、アフリカの Prototyping Lab チームとも協力して、新しいモノのインターネット (IoT) ベースの音声認識システムの構築に取り組みました。これにより、同社の情報収集担当者は、騒がしいスタジアムのような環境でも、音声認識を利用して、サッカーのゴール、コーナーキック、オフサイドの違反などのイベントを自動的に処理できるようになります。このソリューションは、組み込み IoT ハードウェア、マイク、機械学習アルゴリズムを実行する携帯電話を使用して、スポーツ報道に関連する特定の語句を検出し、これらのイベントをリアルタイムで AWS バックエンドに自動的に中継します。

重大な課題に対応する

AWS でワークフローをデプロイすることで、Sportradar は新たな運用上の俊敏性を実現し、顧客やメディアパートナーのオンボーディングを容易にするとともに、新しいサービスのデプロイを加速することができました。2020 年、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) のパンデミックにより世界中でライブスポーツが中止される中、Sportradar は顧客に新製品を提供するために迅速に対応しました。「Simulated Reality」と呼ばれる Sportradar の画期的なライブスポーツサービスは、人工知能と、プロのクリケット、テニス、サッカーの実際の選手名簿、チーム、リーグに関する情報を利用して、試合をシミュレートします。試合のアクションはライブイベントと同じタイムラインで展開され、ベッティングオペレーターは、ライブスポーツの場合と同じように、結果や試合内の各瞬間での賭けをファシリテーションします。Sportradar は、AWS のインフラストラクチャを利用することで、コンセプトの段階にあった Simulated Reality から、わずか 11 日後には収益化できるようになりました。 

「スポーツ業界の世界的リーダーは、自社製品の完全性と価値に Sportradar に信頼を寄せています」と Sportradar の Chief Technology Officer である Ben Burdsall 氏は述べています。「その信頼に応え続けるためにも、当社のサービスは、いつでもどこでも、お客様が必要とするときに、迅速かつ信頼性の高いものである必要があります。AWS は、お客様に信頼していただけるハイパフォーマンスデータおよび動画サービスを提供するための、回復力と柔軟性に優れた基盤を当社に提供してくれます”


Sportradar について

Sportradar は、毎年 410,000 を超える試合から得られるインサイトをモニタリングし、世界中の 1,000 を超えるリーグ、報道機関、消費者システム、スポーツベッティング運営者にそれらのインサイトを提供するスポーツデータおよびコンテンツ企業です。

AWS のメリット

  • 専用ファイバー接続を、高速でコスト効率の高いソリューションに置き換え
  • データの信頼性を 10 倍向上
  • 新製品である Simulated Reality を 11 日間でリリース
  • 1 分あたり最大 50,000 件のベッティング取引を可能に
  • ベッティングオッズの変化に応じて、1 秒あたり最大 10,000 件の試合シミュレーションを可能に

利用されている AWS のサービス

Amazon Kinesis Data Streams

Amazon Kinesis Data Streams (KDS) は、大規模にスケーラブルで持続的なリアルタイムのデータストリーミングサービスです。 

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AWS Elemental MediaConnect

AWS Elemental MediaConnect は、質の高いライブ動画伝送サービスです。現在、放送局やコンテンツ所有者は、価値の高いコンテンツをクラウドに送信したり、配信様にパートナーに送信したりするため、衛星ネットワークやファイバー接続を利用しています。

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Amazon EC2

Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能をクラウド内で提供するウェブサービスです。デベロッパーがウェブスケールのクラウドコンピューティングを簡単に利用できるように設計されています。 

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Amazon Elastic Kubernetes Service

Amazon Elastic Kubernetes Service (Amazon EKS) はフルマネージド型の Kubernetes サービスです。

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