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データセンター人材育成を加速するAWSの教育プログラム

パブリックセクター 澤です。AWS の高等教育機関向けの教育プログラムである AWS Academy で、データセンターの技術職のキャリアにつながるコースの日本語版が新たにリリースされましたので詳細をご紹介します。

現在、日本で展開しているAWSの無料の教育プログラムには 、16 歳以上の方ならどなたでも無料で参加できるセルフラーニング型の AWS Educate と高等教育機関(大学、専門学校、高専、公的な職業訓練機関)でのクラウドスキル習得のための授業を支援するための AWS Academy のふたつがあります。

AWS Academy は 2018 年にスタートした高等教育機関でのクラウドスキル教育の授業を支援する無償の教育プログラムです。AWS Academy はクラウドスキル教育を担う教員をAWSが支援することで、より多くの学生がクラウドの授業の受講の機会を得ることができる教育の仕組みを構築していただくためのプログラムです。現在、世界で 7,500 以上、日本では 200 以上の高等教育機関が加盟し、授業で活用されています。AWS Academy に加盟した機関の教員は自身のスキル習得の他にメンバーポータルから授業を登録し、AWS Academy のコース教材を使った授業を行うことができます。メンバーの教員は以下のようなリソースが提供されます。

  • 教員向けのクラウドや指導方法に関するトレーニング(対面あるいはオンラインでAWSの講師が実施)
  • 授業の受講者向けのラボ環境であるLearnerLab という実際に AWS を利用する演習県境
  • 授業用のオンライン教材
  • 教員メンバー向けの情報交換のためのオンラインフォーラム
  • 教員メンバーの交流の機会

AWS Academy は以下のような流れで利用します。

  1. 機関代表者を決めて教育機関として加盟する。(機関代表者は加盟後に変更可能です。)
  2. 機関代表者が教員メンバーを募り希望者をノミネートする。(専用のLMS上で簡単な作業を行うだけの簡単な作業です。)
  3. ノミネートされた教員はメンバーになり、自身でクラウドを教えるためのリソース(教材、教員メンバーが参加するフォーラムへのアクセス、教員向けワークショップ)などが利用できるようになる。
  4. 教員メンバーLMS内でクラスを作り受講する学生を招待する。
  5. 招待された学生がクラスに参加し、教材や演習環境にアクセスする。
  6. 設定されたクラスの終了後一定期間で演習環境は削除される。(学生はクラス退出等特に何もする必要がなくリソースが残るといった心配はない。)

2024年11月1日現在、以下のコースが提供されていて、このたび新たにデータセンターの技術者を目指す学生の方に必要な知識を身に着けていただくことができる「AWS Academy Data Center Technician」と「AWS Academy Engineering Operations Technician」の日本語での提供がはじまりました。

AWS Academy JP list-1

AWS Academy JP list-2

AWS Academy JP list-3

図:AWS Academy で提供されているコースと日本語版のリリース状況
(図中の Foundation は初級 Associate は中級を意味します。時間は目安です。)

「AWS Academy Data Center Technician」提供の背景として、世界的な計算ニーズの増大化に伴うデータセンターの増設で、国内外でデータセンターを運営する人材のさらなる育成が急務になっていることがあります。

コースカリキュラムの学習内容は、AWS のデータセンターにだけ特化したものではなく、広く一般的にデータセンターで業務に初めて就こうとされている方々を想定したものです。そのため他の AWS Academy のクラウドスキル習得のためのカリキュラムと異なり、サーバの仕組み、ネットワークの仕組みなどといった、ハードウェアの基本事項を中心にその構造や仕組みを学習できるようになっています。もちろん、CPU や メモリといった内部の動作についても学習することができます。また、OS、ブラウザやコマンドといった実際に操作して作業をする対象となるソフトウェアやアプリケーション、ツールの一般的な役割や仕組みについてもトピックとして取り上げられています。その中には興味深いことに、Microsoft Office なども含まれています。

このような内容ですので、カリキュラムの目的はデータセンターエンジニアですが、コンピュータのハードウェアレベルの基本を学習したい方々にもご活用いただけます。

このコースの受講にあたり、前提のスキルや知識は特に設定されていません。日本でいえば、IT パスポートや基本情報レベルの知識があれば、より理解が深まったり、よりスピーディーに学習が進むかもしれませんが、コースの受講者には IT に関する前提知識がなくても学習を進められる内容になっています。そのため、情報系以外の学部学科やコースの方でも学習いただけます。

英語版での授業をすでに開始されている神田外語学院デジタル情報コース講師 山岸明倫様から次のようなコメントをいただきました。

“神田外語学院では、国籍や文化など多様な背景を持つ学生が集い、それぞれの個性を伸ばす環境が整っています。英語が苦手な学生も、入学後には飛躍的に成長し、多くが英語版Data Center Technicianコースを修了しました。他に類を見ないAWS Academyの高品質な教材でITスキルを磨き、ぜひDCエンジニアというキャリアに挑戦してほしいです。”

また新しい日本語コースでの教育を計画されている福岡デザイン&テクノロジー専門学校/神戸・甲陽デザイン&テクノロジー専門学校 教務部長 大西貫士様からは以下のようなご期待をお寄せいただきました。

クラウドの利活用が急増する中で、データセンターエンジニアは業界から求められる人材であると捉え、今後育成に注力する予定でした。AWS Academy Datacenter Technicianコースは、インフラスキルを学ぶ本校学生が、さらに高い専門性を身に付けることができる教育コンテンツとして、非常に期待しています。また本コースはベンダーに寄らず、汎用的にデータセンターエンジニアとしての知識・スキルが学べるので、学生にとっても新たなキャリアへチャレンジできる機会と考えています。”

AWSのデータセンターについて、少しご紹介します。AWSのデータセンターはリージョンがある東京一円のエリア、大阪一円のエリアに複数の場所にあり、東京リージョン、大阪リージョンの安定したサービスを提供するため様々な職種の多くの人が働いています。データセンター内のクラウドサービスが稼働するサーバやネットワーク機器の設置・管理・運用をするサーバーエンジニアの他にも、機械や電気設備の運用や保守を担うファシリティエンジニア、データセンターの設計を担うエンジニア、保守を担うエンジニア、建物を管理するエンジニア といった多様な職種の方がデータセンターの運営に携わっています。女性の技術者も多く活躍していて、ジェンダーダイバーシティを大切にするカルチャーも強く根付いています。英語を使う機会も多く、働きながらグローバル人材として必要なコミュニケーションスキルを身に着けたり、もちろんクラウドスキルそのものを学ぶ機会もありますので、ご自身で長期的なキャリアをデザインしていくことが可能です。

データセンターで働く若手技術者の声:
”データセンター内での業務では、サーバーやネットワーク機器などのハードウェアの設置やメンテナンスを行うほか、これらの機器にトラブルが発生した際には、問題の特定と解決を行うトラブルシューティングも担当しています。これらのトラブルはお客様の業務に大きな影響を与える可能性があるため、迅速かつ的確な問題解決が求められます。緊張感のある仕事ではありますが、多様なトラブルに対して試行錯誤を重ねながら自ら解決できたときには、大きなやりがいを感じます。現在、ネットワーク化は日本国内にとどまらず、世界中で進んでおり、データセンターは重要なインフラとして社会を支える存在となっています。私もこの流れに乗り続けるため、将来は海外のデータセンターで働き、常に学びを深めていきたいと考えています。”
データセンター オペレーションズ  サーバーエンジニア 小林 仁美 (入社2年目)

AWS の教育プログラムがクラウド人材だけではなく日本国内でのデータセンター人材育成を加速できるよう、高等教育機関と連携をはかりたいと考えています。また、データセンターの技術者という職業を知らないという学生も多いかと思いますので、クラウドに関わるキャリアの多様さについての理解促進にも努めたいと思います。

本投稿はインフラストラクチャーオペレーションズ プログラムマネージャー菊池、トレーニングサービス本部AWS Academy 担当平賀の協力を得てパブリックセクター高等教育・研究担当DXアドボケート澤が執筆しました。

問い合わせ aws-jpps-er@amazon.com  (AWS高等教育機関 相談窓口)