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AWS で DER アグリゲーター向けのスケーラブルな DERMS ソリューションを構築する

このブログは、2026 年 1 月 5 日に Fabio Bottoni、Dr. Bin Qiu、Dr. Song Zhang によって執筆された内容を日本語化したものです。原文は こちらを参照してください。

エネルギー環境が分散型モデルへと進化する中、分散型エネルギーリソース (DER) は、エネルギー市場のさまざまなプレーヤー (電力会社、立法機関、アグリゲーター、消費者、サービスプロバイダー) に課題と機会の両方をもたらしています。

さまざまな関係者が Amazon Web Services (AWS) を活用して DER を最大限に活用する方法について、ブログシリーズを通して説明していきます。最初のブログでは、アグリゲーターが事業の成長に合わせて拡張できる堅牢な分散型エネルギーリソース管理システム (DERMS) を構築するために、AWS サービスがどのように役立つかを探ります。

DER アグリゲーターの課題

DER アグリゲーターは、数千の分散型エネルギーの設備を効率的に管理する、複雑化する環境で事業を展開しています。これらの設備は、住宅用太陽光発電設備や産業用蓄電池システムから、広範囲に展開された電気自動車充電ネットワークまで多岐にわたります。課題は設備の管理だけにとどまりません。アグリゲーターは、規制への準拠を確保し、高いサービス信頼性を維持しながら、さまざまなエネルギー市場への参加を最適化する必要があります。

こうした要求に応えていくためには、リアルタイムの監視と制御を処理し、複数の通信プロトコルと統合できる高度なソリューションが必要です。また、高度な予測と最適化アルゴリズムを実行し、堅牢なサイバーセキュリティ対策を維持し、膨大な量のデータを効率的に管理する必要があります。これらの技術的課題は、DER の構成要素が多種多様であるため、さらに複雑になります。アグリゲーターは、応答時間、運用上の制約、通信機能が異なるさまざまな技術を調和させる必要があります。

このようなソリューションを実装するには、堅牢な通信インフラストラクチャと、グリッド(送配電網)を新たな脅威から保護するための高度なサイバーセキュリティ対策が必要であり、同時にコスト効率も維持する必要があります。また、システムレベルの制約と個々の DER の制限の両方を考慮した複雑な入札戦略を開発する必要があります。複雑な決済プロセスに対処し、複数の市場商品にわたる財務リスクを管理する必要があります。

規制環境も、グリッド運用者が課題の解決方法を意思決定するプロセスに影響を与えています。たとえば北米では、FERC Order 2222 の実施により、地域送電機関 (RTO) と独立系統運用者 (ISO) は、卸売市場への DER アグリゲーションの参加を可能にする必要があります。この規制命令は、最小サイズ要件 (具体的には、アグリゲーションは 100 kW まで小さくできる) を満たし、小売市場と卸売市場間の両方の参加ルールを確立し、配電事業者と調整して信頼性の高いグリッド運用を確保することを義務付けています。

別の例として、ドイツのエネルギー産業法第 14a 条があります。この機能により、配電系統運用者 (DSO) に、顧客所有の DER (ヒートポンプ、EV 充電器、蓄電池など) を積極的に管理することを要求しています。第 14a 条により、動的な DER 制御を通じてグリッドの安定性が向上しますが、アグリゲーターは DSO の要件と市場へのコミットメントを慎重にバランスさせる必要があります。

こうした規制フレームワークは、グリッド運用者、DER 所有者、アグリゲーター間の関係が進化していることを示すとともに、高度な管理および通信システムの必要性を強調しています。

ソリューション概要

AWS は、DSO とアグリゲーターが最新の DER 管理の複雑な課題に対処する方法を提供する包括的なサービス群を提供しています。以下のセクションでは、AWS 上でのクラウドネイティブな DERMS アーキテクチャの実装を順を追って説明し、これがどのように実現できるかを詳しく説明します。

このアーキテクチャは、次のような重要な業界の課題を解決することを目的としています。

  • 多種多様な DER 設備のニアリアルタイムの可視化と制御
  • 複数の通信プロトコルの統合
  • DER の制限を踏まえた動的最適化
  • 市場参加の調整
  • 数百から数百万の接続デバイスへのシームレスな拡張

このアーキテクチャは、エッジコンピューティング機能、堅牢なデータストリーミング、高度な分析、エンタープライズグレードのセキュリティを統合します。AWS は、電力会社が従来の配電系統運用者から高度な分散システムオーケストレーターへと変革することを支援します。

An AWS reference architecture diagram illustrating a comprehensive solution for distributed energy resources management system (known as DERMS). An architecture deep dive explanation follows next in the blog copy.

図 1 – ハイレベルのソリューションアーキテクチャ

それでは、アーキテクチャの各セクションを詳しく見ていきます。各セクションがなぜ重要なのか、AWS サービスがどのように課題解決に役立つのかを説明します。以下のセクションについて説明します。

1. エッジでの DER 統合
2. データ取り込み
3. データストリーミング
4. ストレージレイヤー
4.1 ホットストレージ – 時系列データベース
4.2 コールドストレージ – データレイク
5. リアルタイム分析
6. アプリケーション統合
7. DERMS アプリケーション
8. 人工知能と機械学習
9. セキュリティとコンプライアンス

1. エッジでの DER 統合

DER は多様な性質と従来の産業用プロトコルへの依存により、統合には独自の課題があります。多くの DER の設備は、ModbusDNP3 などのローカルプロトコルを使用して通信するため、クラウドへの直接統合ができません。ローカルプロトコルとクラウド間のギャップを埋めるため、AWS では AWS IoT Greengrass を提供しています。AWS IoT Greengrass は、デバイスソフトウェアを構築、デプロイ、管理するオープンソースのエッジランタイムおよびクラウドサービスです。エッジで実行されるサービスとして、AWS IoT Greengrass は、ローカルプロトコルをクラウド互換形式に変換するロジックを管理できます。標準化されたプロトコルで AWS への安全で信頼性の高いデータ送信を実現します。

AWS IoT Greengrass はモジュール設計を採用しています。一部のモジュールは AWS によって提供され、他のモジュールは顧客またはエンドユーザーが開発できます。また、多くの AWS パートナー が AWS IoT Greengrass を直接サポートまたは統合し、プロトコルアダプターやその他の機能を提供してデバイス統合を促進しています。

一般的な統合プロトコルは次のとおりです。

  • Standard IEEE 2030.5 (北米の電力会社で広く使用)
  • Modbus (産業環境で一般的)
  • DNP3 (電力会社の運用で普及)
  • IEC-61850 (変電所の自動化に不可欠)

2. データ取り込み

DER のポートフォリオが数百から数百万の設備に成長するにつれて、電力会社は、デバイス登録の管理、場所やタイプ別の設備の整理、運用ステータスの監視、協調制御アクションの実行において、ますます複雑さに直面しています。AWS IoT Core は、安全なデバイス接続の中心ハブとして機能し、DER 設備からの数百万の同時接続を処理します。

AWS IoT Device Management は、エッジデバイスを大規模に登録、グループ化、検索、監視、リモート管理するための包括的な機能を提供することで、スケーラビリティの課題に対処します。電力会社は DER フリートを効率的に統制および制御できます。たとえば、統合デマンドレスポンスイベントのために、特定の都市、郵便番号、または地理的場所のすべてのバッテリーをグループ化できます。

迅速に更新できないレガシーまたは既存の DER 設備の場合、AWS IoT Greengrass は中間管理デバイスとして機能できます。古いデバイスはネイティブプロトコルを引き続き使用でき、AWS IoT Greengrass がプロトコル変換、セキュリティ、クラウド接続を処理します。さらに、カスタムプロトコルアダプターにより、独自またはレガシープロトコルとの統合が可能になります。この機能により、非標準デバイスでもハードウェアのアップグレードを必要とせずに DERMS エコシステムに組み込むことができます。

DER 管理における最も重要な課題の 1 つは、断続的なネットワーク接続を持つ DER 設備に対する信頼性の高い制御を維持することです。グリッド運用者は、デバイスが一時的に接続を失った場合でも、コマンド配信と状態同期を保証する必要があります。AWS IoT Device Shadow サービスは、クラウド内に各デバイスの仮想的な状態 (シャドウ) を永続的に維持することで、これを解決します。

このシャドウサービスは 3 つの状態ビューを提供します。Desired State (ソリューションが望む状態)、Reported State (最後に確認されたデバイスの状態)、Delta State (Desired と Reported の差分) です。デバイスがオフラインになると、制御コマンドは Desired State に保存されます。再接続すると、デバイスは自動的にこれらの保留中のコマンドを受信して処理し、制御アクションが失われないことを確認します。デバイスとソリューションの更新間で競合が発生した場合、シャドウサービスはバージョン追跡を使用した Last-Writer-Wins (後勝ち) ルールで競合を解決して、データの一貫性を維持します。

AWS IoT Device Defender は、異常な動作を継続的に監視し、セキュリティの問題を検出し、IoT フリートが侵害される前に潜在的な脅威を警告することで、IoT デバイスを保護します。

AWS IoT Core を流れるすべてのデータは、AWS IoT Rules を使用して他の AWS サービスにルーティングされます。各 IoT Rule はデータを選択し、次の機能ブロックであるデータストリーミングサービスに送信します。

3. データストリーミング

最新の DERMS プラットフォームは、DER 運用の複雑さを反映する多様なデータ処理要件に対応する必要があります。グリッド運用者は、集約された DER を仮想発電所 (VPP:Virtual Power Plant) として扱い、従来の発電機と同様の監視および制御機能を必要とします。時間間隔に関する要件は多岐にわたります。周波数応答や電圧サポートなどの重要なグリッドサービスは、通常 100 ミリ秒から 1 秒の間隔で、サブ秒の監視と制御を要求します。運転予備力や容量サービスを実行する大規模な DER 設備 (> 1 MW) には 2 ~ 4 秒の監視が必要ですが、デマンドレスポンスまたはエネルギー裁定取引に参加するメーターの背後にある DER は通常 5 ~ 15 分間隔で報告します。さらに、長期計画および決済機能には、分析とコンプライアンスのために数か月または数年の履歴データが必要です。

AWS は、これらのニーズに対応するさまざまなストリーミングサービスを提供しています。

  • Amazon Kinesis Data Streams はサーバーレスサービスであり、容量を推測することなく DER デプロイメントを迅速にスケールアップおよびスケールダウンするのに最適です。Kinesis Data Streams は他の AWS サービスとネイティブに統合されています。DERMS ソリューションと接続および切断する DER の数が動的であり、完全な AWS ネイティブアーキテクチャのケースで使用することが推奨されます。
  • Amazon Managed Streaming for Apache Kafka (Amazon MSK) は、メッセージ量が予想できるようなより安定した DERMS デプロイメントに適しています。Amazon MSK は、処理されたデータをより長い時間保持し、ストレージとして機能できます。この機能を使用して、外部ストレージを使用せずに Kinesis Data Streams から直接再処理を実行できます。Amazon MSK は、DER の数が予測可能であり、非 AWS ネイティブアーキテクチャのケースで使用することをお勧めします。

規制コンプライアンスや長期計画のためのテレメトリデータのアーカイブなど、時間的制約の少ないデータフローの場合、Amazon Kinesis Firehose はコード不要のソリューションを提供します。AWS IoT Core から直接データを受信し、Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) に書き込むことができ、データに対するバッチ処理とパーティション分割のための組み込みオプションがあります。

4. ストレージレイヤー

前述のように、DER 運用のタイムスケールは、グリッド安定化に関するミリ秒レベルの応答から市場参加に関する時間単位の応答まで、幅広く多様です。

こうした幅広い要件に対しては、2 種類のストレージを用いるアプローチが効果的です。

  • 低レイテンシーのリアルタイム運用のための時系列データベース (4.1)
  • 高レイテンシーの履歴分析と計画のためのデータレイク (4.2)

このソリューションアーキテクチャは、最新の DER 管理のさまざまな時間間隔の要件を満たしながら、パフォーマンスとコストを最適化します。

時系列データベース (4.1 ホットストレージ) とデータレイク (4.2 コールドストレージ)

低レイテンシーアクセス用に最適化されたホットストレージレイヤーは、応答時間がグリッドの安定性に直接影響するリアルタイムの DER 運用に不可欠です。周波数調整などの時間的に重要な機能には、ミリ秒単位のデータアクセスが必要であったり、デマンドレスポンスプログラムには通常、数秒以内の応答時間が必要です。

Amazon Timestream for InfluxDB はこれらのニーズに対応しているため、電力会社はデータベース管理ではなく運用に集中できます。時系列データとリレーショナルデータの両方を含む、より複雑なクエリの場合、Amazon OpenSearch Service は柔軟なインデックス作成と検索機能を提供します。DER の動作をグリッドのイベントと相関させる必要がある障害分析やパフォーマンス監視に特に有用です。

Amazon S3AWS Lake Formation を使用して実装されたコールドストレージレイヤーは、履歴データ分析と規制コンプライアンスのニーズに対処します。このレイヤーは、個々のデバイステレメトリから集約パフォーマンスメトリクスまで、包括的な運用データを保存し、通常は秒ではなく分単位でアクセスされます。応答時間は遅くなりますが、テラバイトあたりのコストは大幅に低くなります。この機能は、規制報告と長期計画のために何年もの DER 運用データを管理する電力会社にとって重要です。AWS Lake Formation は、権限管理を一元化し、組織の境界を越えた安全なデータ共有を合理化します。この機能は、規制機関や市場運用者との調整に不可欠です。

AWS Glue Data Catalog は、中央メタデータリポジトリとして機能し、組織全体でデータ資産を迅速に検出および管理できます。このカタログは、データの属性、スキーマ、場所の包括的なインベントリを維持するため、チームは分析に関連する履歴データを迅速に見つけてアクセスできます。AWS Glue は、データの準備と変換タスクを自動化することでこれを補完し、履歴トレンドとパフォーマンスパターンをより迅速に分析できます。

ホットストレージからコールドストレージへのデータの移動は、データアクセス要件とコスト削減のバランスによって決定されます。ミッションクリティカルなリアルタイムの DER 運用に使用されなくなったホットストレージデータ (たとえば、数時間または 1 日後) は、コールドストレージへの移動を検討できます。古いデータは、コスト削減とパフォーマンスの観点でコールドストレージに移動するための時間しきい値によって事前定義できます。

5. リアルタイム分析

DER 運用の真の価値には 3 つの重要な側面があります。第一に、グリッド運用者は、最大消費電力を管理し、グリッドの安定性を維持するための強力なツールとして DER を捉えています。第二に、消費者は戦略的な市場参加を通じて財務的利益を最大化することにますます焦点を当てています。第三に、電力会社は、コストのかかるインフラストラクチャのアップグレードを延期するために DER を使用することに大きな価値を見出しています。

これらの目標をサポートするために、DERMS プラットフォームは、さまざまなリアルタイムデータストリームを処理および分析する必要があります。これには、基本的な電圧と電流の測定から、高度な市場シグナルと気象予測まで、すべてが含まれます。各データポイントは、グリッドの安定性と市場機会のバランスを取りながら、情報に基づいたディスパッチの決定を行う上で重要な役割を果たします。

ほぼリアルタイムの分析機能を実装するため、AWS は、さまざまなユースケースに対応する 2 つの異なるサービスを提供しています。

  • Amazon Managed Service for Apache Flink は、ステートフル操作と Exactly Once での処理が重要な、周波数応答のために数千の DER を調整するなどのシナリオで優れています。Flink のイベント時間処理機能により、イベントの正確なタイミングと順序が重要なリアルタイム市場入札などのアプリケーションに最適です。
  • AWS Lambda は、個別のイベント駆動型処理ニーズを処理することで、このアーキテクチャを補完します。個々のデバイステレメトリ検証、アラーム処理、または特定のイベントに応答したデバイスステータスの更新などのタスクに適しています。

これらのサービスは通常、包括的な DERMS ソリューションで連携して機能します。Flink は継続的で複雑なストリーム処理要件を処理し、Lambda は個別のイベント駆動型タスクを管理します。

6. アプリケーション統合

DERMS が効果的に機能するには、電力会社の既存のエンタープライズシステムとシームレスに統合する必要があります。

主なエンタープライズシステムとの統合は次のとおりです。

  • 顧客関係管理 (CRM:Customer Relationship Management) システムは、DER プログラムの登録、請求、サービス管理に不可欠なデータを提供します。
  • 高度計量インフラストラクチャ (AMI:Advanced Metering Infrastructure) は、スマートメーターからのリアルタイムのエネルギー消費と生産データを提供します。
  • 地理情報システム (GIS:Geographic Information System) マッピングにより、グリッドの設備に対する DER の場所の空間認識が可能になります。
  • 監視制御とデータ収集 (SCADA:Supervisory Control And Data Acquisition) システムは、リアルタイムのグリッド状態情報と制御機能を提供します。
  • 気象予測システムは、再生可能エネルギーの発電量と消費電力のパターンの予測に役立ちます。
  • 設備管理システムは、DER のメンテナンススケジュールと運用ステータスを追跡します。
  • 配電管理システム (DMS) は、基幹系統運用との調整を確保します。

これらの統合は包括的な意思決定に不可欠です。たとえば、CRM データと AMI 読み取り値を組み合わせることで、パーソナライズされたデマンドレスポンスプログラムが可能になります。GIS と SCADA を統合すると、電圧サポートのための場所を認識した DER へのディスパッチが可能になります。多くの電力会社は、これらのシステムをオンプレミスでホストしているため、アプリケーションがクラウドに移行するにつれて適応できる柔軟な統合アプローチが必要です。

AWS は、さまざまな統合シナリオに合わせたソリューションを提供しています。Amazon AppFlow は、SaaS (Software as a Service) から AWS への統合に優れています。Salesforce などの最新の CRM システムやクラウドベースの気象サービスに特に役立ちます。たとえば、SaaS CRM から顧客 DER のプログラム登録データを自動的に同期して分析できます。

GraphQL を活用する AWS AppSync は、複数のソースからの情報を集約するリアルタイムデータ API を構築するのに最適です。DERMS のコンテキストでは、実際の SCADA データ、AMI 読み取り値、気象予測を組み合わせた統合 API を作成し、ほぼリアルタイムの DER 最適化アルゴリズムを可能にします。

レガシーオンプレミスシステムの場合、AWS Direct Connect は安全で高帯域の接続を提供し、AWS Storage Gateway はオンプレミスデータとクラウドストレージ間のブリッジを構成できます。Amazon API Gateway と AWS Lambda を組み合わせることで、レガシーアプリケーションと疎結合で接続するためのサーバーレス API レイヤーを作成できます。

7. DERMS アプリケーション

DERMS アプリケーションレイヤーは、アグリゲーターが DER フリートを効果的に管理する方法を提供するコアビジネスロジックを表します。

サードパーティソリューションを使用する場合でも、カスタムアプリケーションを開発する場合でも、このレイヤーは通常、3 つの基本的な機能をサポートする必要があります。

  • 設備の管理と制御は、DER 設備の登録、構成、運用のロジックを調整します。各設備のデジタルツインと対話し、グリッドのシグナルに従って運用パラメータを変更します。このコンポーネントは、AWS IoT Device Shadow サービスと連携して、断続的な接続でも信頼性の高いコマンドと制御操作を促進します。
  • 市場運用は、市場のシグナルを処理し、入札とオファーを管理し、設備へのディスパッチを調整することで、さまざまなエネルギー市場への参加を処理します。このコンポーネントは、ストリーミングおよび分析レイヤーと対話して、リソース割り当てと市場参加戦略について情報に基づいた決定を行います。
  • グリッドサービス管理は、周波数調整、電圧サポート、デマンドレスポンスなどの契約されたグリッドサービスの提供を検証します。グリッド運用者のシグナルを処理し、DER フリート全体で協調制御アクションに変換し、サービス要件とグリッド制約の遵守状況を監視します。

これらのコア機能は、Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) で実行するか、Amazon Elastic Container Service (Amazon ECS) および Amazon Elastic Kubernetes Service (Amazon EKS) でコンテナ化されたワークロードを使用して実行できます。コンテナの場合、AWS Fargate を使用して、サーバーの管理を AWS に委任することもできます。コアロジックのほとんどは長時間実行されますが、イベント駆動型機能の一部は、より迅速なスケーリングと管理のために AWS Lambda でホストできます。最後に、メタデータと構成は、Amazon Relational Database Service (Amazon RDS) を通じてマネージドデータベースに保存する必要があります。

このアプリケーションレイヤーは、データ管理、リアルタイム処理、外部システムとの統合のために、アーキテクチャの残りのコンポーネントを活用するように設計する必要があります。

8. 人工知能と機械学習

人工知能と機械学習 (AI/ML) 機能は、最新の DERMS ソリューションに不可欠であり、より優れた予測、最適化、異常検出を可能にします。AWS は、複雑な ML インフラストラクチャを構築することなく、これらの重要な機能を実装するために活用できるいくつかのサービスを提供しています。Amazon SageMaker は、ML モデルを大規模に開発、トレーニング、デプロイするための基盤として機能します。Amazon Bedrock は、生成 AI アプリケーションを構築するための単一の API を通じて、主要な基盤モデルへの簡単なアクセスを提供します。

DER アグリゲーターの主要な ML アプリケーションは次のとおりです。

  • 消費電力と発電量の予測は、履歴パフォーマンスデータと、気象予測、季節性、地域イベントなどの外部要因を組み合わせることで、DER の動作を予測します。これらの予測は、市場への参加とグリッドサービスの提供に不可欠です。Amazon SageMaker の組み込み予測アルゴリズムまたはカスタムモデルを使用して、アグリゲーターは、リアルタイムから翌日の予測まで、さまざまな時間スケールで正確な予測を生成できます。
  • 機器の健全性監視は、ML モデルを利用して DER パフォーマンスの異常を検出し、発生前に潜在的な障害を予測します。Amazon SageMaker のニアリアルタイムの推論エンドポイントを通じてリアルタイムテレメトリデータを処理することで、ソリューションは異常なパターンを特定し、予防保守のアクションをトリガーし、設備の信頼性を向上させ、運用コストを削減できます。
  • 価格と市場動向の分析は、市場参加戦略の最適化に役立ちます。ML モデルは、履歴市場データ、気象パターン、グリッドの状況を分析して、価格変動を予測し、最適な入札戦略を特定できます。この価格分析機能は、時系列分析と強化学習のための Amazon SageMaker の組み込みアルゴリズムを使用して実装できます。

9. セキュリティとコンプライアンス

セキュリティは、重要なエネルギーインフラストラクチャの管理を支援する DERMS ソリューションにとって最も重要です。DERMS プラットフォームはグリッドに不可欠な DER 設備を管理し、機密性の高い運用データを処理するため、NERC CIPIEC 62351 などの厳格な業界規制を満たしながら、アーキテクチャのすべてのレイヤーにセキュリティを組み込む必要があります。

DERMS セキュリティアーキテクチャは 3 つの重要な保護ドメインに対応しています。

  • デバイスと通信のセキュリティは、DER 設備とその制御システムが不正アクセスと改ざんから保護されていることを確認します。AWS Certificate Manager は、デバイス認証のためのデジタル証明書のライフサイクルを管理し、AWS Key Management (AWS KMS) は暗号化キーを作成および制御します。AWS IoT Core のデバイス認証および承認メカニズムは、登録された検証済みデバイスのみが DERMS プラットフォームに接続できることを検証します。すべての通信チャネルは、業界標準の TLS プロトコルを使用して暗号化され、制御シグナルとテレメトリデータを傍受または操作から保護します。アカウント内の AWS リソースの監視は、Amazon GuardDuty によって処理されます。
  • 運用セキュリティは、DERMS のコアとなる判定や制御の機能を保護します。AWS Identity and Access Management (IAM) は、ロールベースのアクセス制御と最小権限の原則を実装します。オペレーターが承認された範囲内でのみコマンドを実行できることを検証します。すべての操作とアクティビティは、トラブルシューティングとレポートのために Amazon CloudWatch にも記録され、AWS Security Hub は、複数の AWS アカウントにわたるセキュリティアラートとコンプライアンスステータスの包括的なビューを提供します。
  • データセキュリティ保護は、コンプライアンスと分析に必要なリアルタイム運用データと履歴レコードの両方を保護します。AWS KMS は、保管中および転送中のデータの暗号化を提供し、AWS CloudTrail は、すべてのシステムアクティビティに対してイミュータブルな監査ログを作成します。この機能は、セキュリティ監視と規制コンプライアンスの両方に不可欠です。

今後の展望

分散型エネルギーリソースへの移行は、エネルギーアグリゲーターにとって課題と機会の両方をもたらしています。本アーキテクチャは、AWS サービスを組み合わせて、最新の電力市場の複雑な要求を満たす堅牢でスケーラブルな DERMS ソリューションを実装する方法を示しています。

AWS のマネージドサービスを活用することで、アグリゲーターは、包括的なサービスと機能の恩恵を受けながら、コアビジネスに集中できます。このアーキテクチャは、大規模で信頼性が高く安全なデバイス接続と、ニアリアルタイムのデータ処理および分析機能を組み合わせて実現します。柔軟なストレージサービスは、リアルタイムと履歴データの両方のニーズに対応し、高度な AI/ML 機能は高度な予測と最適化を強化します。これらすべては、重要なインフラストラクチャ向けに設計された包括的なセキュリティとコンプライアンス制御によって保護されています。

このアーキテクチャのモジュール性により、アグリゲーターは基本的な機能から始めて、ビジネスの成長に応じて段階的に機能を追加できます。カスタムソリューションを実装する場合でも、サードパーティの DERMS ソフトウェアを統合する場合でも、AWS は次世代の DERMS をサポートする基盤インフラストラクチャを提供します。エネルギー転換が加速するにつれて、このアーキテクチャは、新しい市場機会、グリッドサービス、DER テクノロジーをサポートするように進化できます。アグリゲーターがますます動的な分散エネルギー環境で競争力を維持するのに役立ちます。

ビジネスの加速を支援する方法について詳細な情報が必要な場合は、AWS の担当者にお問い合わせください。

参考資料

翻訳はソリューションアーキテクトの宮城が担当しました。

Fabio Bottoni

Fabio Bottoni

AWS Energy の EMEA スペシャリストソリューションアーキテクトです。AWS テクノロジーを使用したデジタルトランスフォーメーションの支援に注力しています。ビルダーとして、新しいソリューションの設計とコーディングを愛しています。AWS 入社前は、Enel X と Capgemini で IT ソリューションアーキテクトとして、常に IoT ユースケースに特化して働いていました。

Dr. Bin Qiu

Dr. Bin Qiu

AWS Energy, Resources & Industries にフォーカスしたグローバルパートナーソリューションアーキテクトです。エネルギーおよび電力業界で 20 年以上の経験があり、さまざまなスマートグリッドプロジェクトの設計、リード、構築を行ってきました。たとえば、分散型エネルギーリソース、マイクログリッド、リソース最適化のための AI/ML 実装、機器予知保全のための IoT スマートセンサーアプリケーション、EV と系統の統合などです。電力会社のデジタルおよびサステナビリティトランスフォーメーションの実現を支援することに情熱を注いでいます。

Dr. Song Zhang

Dr. Song Zhang

AWS Energy & Utilities のシニア業界スペシャリストソリューションアーキテクトとして、電力会社向けのグリッド近代化ソリューションを先導し、HPC、IoT、AI/ML、データ分析を専門としています。15 年間の電力業界経験を活かし、より広範な電力およびエネルギーコミュニティに積極的に貢献しています。電力会社のデジタルトランスフォーメーションとエネルギー転換を支援する革新的なソリューションを開発する部門横断チームをリードしています。