Amazon Web Services ブログ

ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカルセンターにおける機械学習を使った患者ケアの向上



ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカルセンター (BIDMC) は、機械学習がどのように患者ケアを向上させることができるかについての複数年にわたる革新的な研究プログラムを開始しました。このプログラムは、AWS からの学術研究後援助成金によってサポートされています。  このハーバード大学医学大学院関連教育病院は、患者のケアと生活の質を向上させることを目的として、機械学習テクノロジーが臨床ケアを強化し、業務を合理化して、無駄を省くことを可能にする新たな方法を見いだすために、さまざまな AWS Machine Learning サービスを使用していきます。

機械学習を使った患者ケアの向上

病院の管理と運営における非効率性は、医療提供者、保険業者、患者、および納税者にとってコスト面における大きな損失であるだけでなく、貴重なリソースが患者ケア以外に流れてしまうことにもつながりかねません。これらの非効率性は、ヘルスケアコストを押し上げ、生命に関わる医療ミスの一因となる可能性もあります。

BIDMC で現在進められている取り組みは、より良い患者アウトカムの促進、入院と再入院の低減、およびすべてのアメリカ国民のヘルスケアコストの削減を目的に、ヘルスケア業界全体で共有することができる新たな手法の特定を目指しています。BIDMC の機械学習研究は、これらの課題に対処するためのデータに基づくソリューションとプロセスを作成し、ヘルスケア業界全体に対する拡張性を備え、患者ケアをさらに強化しようとするものです。

最初の BIDMC 研究プロジェクトでは、BIDMC にある 41 室の手術室のスケジュールを最適化し、これらのスケジュールを調整して入院環境における患者フローを改善するために機械学習を使用しました。別のプロジェクトでは、手術室での業務フローの改善に機械学習が活用されました。現在、受領される手術前の文書パッケージは画像としてスキャンされ、BIDMC のセキュアな AWS クラウドでホストされる Amazon SageMaker 上の TensorFlow で処理されます。この機械学習主導のプロセスは、自動的に同意書を認識して、それを対応する電子カルテ (EHR) を自動的に挿入するため、病院職員は何時間もの手作業を行わずに済むようになります。BIDMC は、EHR をスキャンして記入済みの同意書といった主な要素を検索するモデルを構築しました。同意書が見つからなければ、EHR にシグナルが表示され、看護師がそれらの患者に対するフォローアップを行います。

また、BIDMC には稼働率が高い 490 床を超える医療/外科入院病床があり、BIDMC のチームは、患者が適時に治療を受け、回復できるように外科手術を成功させるべく懸命に努力しています。しかし、手術は記入済みの病歴と身体所見 (H&P) 用紙が原因で延期または予定変更される場合があります。これは手術開始前に揃えておかなくてはならず、病院にファックスで送信されることもある書類の中から探し出すことは困難になり得ます。この問題を解決するために、BIDMC は現在、H&P を識別するための機械学習モデルで使用される重要な医学用語とインサイトの抽出に Amazon Comprehend Medical を使用しています。その結果、貴重な時間を節約し、延期と予定変更を防ぐことが可能になりました。

ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカルセンターの最高情報責任者であるマヌ・タンドン氏は、「テクノロジーと深層学習における進歩には、医療ケアを向上させ、何千人もの患者と医療提供者の生活に有意義な変化をもたらす力があります」と話しました。

ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカルセンターの Health Technology Exploration Center エグゼクティブディレクターであり、ハーバード大学医学大学院の国際ヘルスケアイノベーション教授であるジョン・ハラムカ医学博士は次のように語っています。「煩雑な事務上の作業と管理に費される時間のすべてが積もり積もって何百万ドルもの生産性損失を生じ、患者ケアに直接的な影響を及ぼします。この機械学習研究の後援は、BIDMC、そして世界各国で患者に対するケアを変革することになるプロジェクトを推進するために、ヘルスケアにおいて新進のテクノロジーを使用するという私たちのコミットメントをサポートしてくれます。」

BIDMC における患者アドヒアランスと手術室効率性をサポートする

BIDMC で進められているさらなるプロジェクトは、予約を守る可能性が高い患者と、そうではない患者の予測が関与するものです。このプロジェクトは、Apache MXNet 深層学習 API と Amazon SageMaker を使用して構築されています。これは、BIDMC が予約を守らない可能性がある患者に連絡して治療が適時に行われるようにすることを助け、患者の経験とアウトカムを向上させます。

また、BIDMC は、シンプルな手術室スケジュールの改良によって効率性が向上され、コスト節約が実現し、繁忙期における病院の負担のバランスが保たれる箇所を検知できる、別の機械学習モデルも AWS で構築しました。それと同時に、このモデルはスケジュールに対する変更の結果を予測し、患者ケアに対する悪影響を最小限にとどめる緩和措置を識別することも可能です。

救急科での事前計画を容易にする

将来のプロジェクトには、集中治療室における全体的なリスクレベルの評価と、病院での受け入れ患者数が予想以上に多くなるときの予測が含まれます。例えば、BIDMC の救急科 (ED) では、通常週の中頃に来院する患者数の急増が見られ、これは病院のリソースに負担をかける可能性があります。BIDMC と学術研究パートナーは、Amazon QuickSight および Amazon Forecast などのサービスを使用して、救急科入院、医療機関間での移送、紹介、あらかじめスケジュールされた手術、患者の退院、およびその他の可変要素を含めたデータセットを分析します。

大量のデータが収集されることから、BIDMC は、必要なデータを迅速にロードして処理し、モデルトレーニングを大幅に加速させるために AWS クラウドを使用します。また、BIDMC の研究者は、Amazon SageMaker といった Machine Learning サービスを使用することによって、予想外の患者のために病院で空きがいつ、どこで出るかに関する精度の高い予測を行うことができる深層学習モデルを構築します。これらのプロジェクトは、ヘルスケア業界の内外にまたがったデプロイメントという長期的な展望を持って、効果的なモデルを構築するために役立ちます。

AWS Machine Learning 担当副社長であるスワミ・シヴァスブラマニアンはこのように話しています。「私たちは今現在ヘルスケアで起こっているイノベーションに参加できることを誇りに思っており、強化され、個人向けにカスタマイズされた医療ケアと、向上された患者経験を実現するための機械学習の使用を先導する BIDMC のような組織のサポートに力を注いでいます。 Machine Learning サービスと専門知識によって BIDMC の取り組みをサポートすることは、私たちの組織間における長い交流関係の自然な延長であり、私たちは、患者ケアを進歩させることができるモデルの開発を迅速化するために BIDMC の研究者たちを援助することを大きな喜びとしています。Amazon SageMaker のような AWS Machine Learning サービスを使った BIDMC のイノベーションは、最終的に、他の医療提供者が全国の患者のために命を救い、コストを削減する道を開くことになるでしょう。」

AWS は、公共部門、教育、ヘルスケア、そしてそれ以外の分野全体におけるすべての開発者が機械学習を利用できるようにするという当社のミッションの延長である BIDMC の研究をサポートできることに誇りを持っています。